「あにめの記憶」過去作品・27

「クレヨンしんちゃん(劇場版)
 爆睡! ユメミーワールド大突撃」

・劇場版「クレヨンしんちゃん」ヒット作のひとつ
 毎年のことだが、当サイトでは「クレヨンしんちゃん」連載開始時期から、原作者で「史上最強のギャグ漫画家」臼井儀人先生の命日が含まれる今の時期は毎年アニメの「クレヨンしんちゃん」を取り上げている。今年も約2ヶ月ほどの考察連載にお付き合い願いたい。
 今年は劇場版「クレヨンしんちゃん」2016年作品で第24作目となる「爆睡! !ユメミーワールド大突撃」を取り上げた。まだ上映から間もない比較的最近の作品にしばらくお付き合いいただきたい。

 劇場版「クレヨンしんちゃん」は2010年代に入って再び興行収入が上がり始め、20億円台の大台に載る作品も出るようになって来た。これはいよいよ初期の「クレヨンしんちゃん」を見て育ってきた世代が大人になって結婚や出産を経験し、その子供を連れて映画館に来るようになったからであると私は分析している。「クレヨンしんちゃん」のアニメ放映が始まった頃に小学生だった世代は今や三十代半ばに差し掛かっているはずで、その子供はもう幼児期から抜け出そうとしている世代に育ってきていることだろう。
 2015年作品「オラの引っ越し物語」では舞台を海外へ移動したり、野原一家以外の登場人物をほぼ全てゲストキャラにしたり、人気漫画・アニメ「新劇の巨人」をモチーフとしたパニック要素を盛り込んだりと、これまでの劇場版「クレヨンしんちゃん」になかった新しい試みが数多く導入されるなどした結果か、1994年作品「ブリブリ王国の秘宝」以来21年ぶりの興行収入20億円越え、1993年作品の第一作「アクション仮面VSハイグレ魔王」を抜いて興行収入シリーズ第一位を記録するまでになった。本作品は様々な面でみどころが多く、とても面白い作品でこのような記録を達するのに相応しい仕上がりだったと私は思う。

 その大記録を打ち立てた次の作品が、今回紹介する「爆睡! ユメミーワールド大突撃」である。
 本作の製作スタッフはこのところのアニメ製作スタッフに準じているが、脚本は監督の高橋渉とタレントの劇団ひとりの共同執筆となったこと話題になった。
 キャストには俳優の安田顕と女優の吉瀬美智子の起用が発表され、ここ最近の劇場版「クレヨンしんちゃん」では恒例とも言えるお笑い芸人のゲストは「穿いてませんよ」でおなじみのとにかく明るい安村の起用が発表され話題になった。だが本作ではこれら発表されたゲストとは別に、サプライズゲストの存在があったためこれが上映後に話題になるという構図となった。
 先に結論を言うと本作も前作に続いて見どころが多くとてもよく出来た作品で、上映開始直後の初動収入に限って言えば「オラの引っ越し物語」を抜いてシリーズ1位をーを記録する。最終的な興行収入では「アクション仮面VSハイグレ魔王」に及ばなかったが、シリーズ3位に食い込んだ。

 本作品は2013年作品「バカうまっ!! B級グルメサバイバル」以来3年ぶりの「かすかべ防衛隊」の活躍が主軸となる作品である。これに本作品のヒロインが転入生として合流するところから、今作品のテーマ「夢」の中で物語を展開してゆく。その過程で描かれる子供たちの協調と諍いを通じて見る者に友情を見せつけるだけでなく、大人のキャラクターたちは「子供への思い」を演じて見る者に「親子の絆」を見せつける。このように映画が見る者に見せるべきメッセージが二重で、それぞれ親子で来た親と子に向けたメッセージという構造になっている点は、本作品を見て私が最も感心した点だ。
 特に大人に向けた「親子の絆」というメッセージ部分については、今どきの子(世代は問わず)を持つ親に見てもらいたい作品と感じた。親が子に対して持つ普遍的な気持ち…子供に対する暴力や虐待など親子間の物騒な事件が多いこの時代に、この思いをみさえが力強い演技で再確認するのはこの作品の最大の見どころであるばかりでなく、今現在親をやっている人やこれから親になろうとしている人にキチンと見てもらいたい点である。

 この劇場版「クレヨンしんちゃん」のヒット作品のひとつを、私独自の目線で見てみよう。

・「クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」の登場人物

野原家
野原 ひろし 野原家の大黒柱で35歳、スーパーCEOになって部下を助ける夢を見ているが…。
 …今回はサキの父親と色んな対決を見せてくれる。でも今回のひろしは、「父親」としての姿はあまり目立たない。
野原 みさえ しんのすけの母で29歳、カリスマホストに惚れられて昼ドラみたいな夢を見ているが…。
 …今回の事件を解決させるのがみさえだとは途中まで思いもしなかった。みさえが見せた「母性」が印象的。
野原 しんのすけ お馴染みの主人公で5歳、「ななこおねいさん」に「ひざまくらで耳かき」してもらう夢を見ている。
 …しんのすけが見たもう一つの夢「おねいさんだらけの水上運動会」は笑ったなぁ。
野原 ひまわり しんのすけの妹で乳児、自分が巨大化して両親や兄を思い通りに操る夢を見る。
 …かすかべ防衛隊+αでもっとも活躍したのはこの子かも知れない。ひまわりがいなかったらヤバかったシーン多すぎ。
シロ 野原家の飼い犬、足が長くて体格の良い犬になって走り回る夢を見ている。
 …本作もシロの活躍はひまわりとともにあった、シロがいなかったらかすかべ防衛隊の面々は移動に困ったはずだ。
かすかべ防衛隊
風間 トオル 「かすかべ防衛隊」のおぽっちゃんキャラ、夢は政治家になって世界中を駆け回ることらしいが…。
 …彼が夢見ていたのは政治家になった後ではなく、選挙活動中のことばかりなのが笑える。
桜田 ネネ 「かすかべ防衛隊」の紅一点(のはず)、夢はアイドル歌手になって大勢の前で歌うことだ。
 …なんで夢の中で歌っている歌が「グッド・ナイト・ベイビー」なんだろう?
佐藤 マサオ 「かすかべ防衛隊」の泣き虫キャラ、夢は漫画家になって大ヒットを飛ばすことだ。
 …夢の中ではマサオが書いた作品がなんと1億部突破、ハリウッドからも映画化のオファーが…。
ボーちゃん 「かすかべ防衛隊」の頭脳キャラ、夢は石になることで、夢の中ではまんま石になっている。
 …大和田獏のファンだったとは、渋いなぁ。
その他登場人物
貫庭玉 サキ しんのすけが通うようち園に転入してくる女児、彼女が現れた頃から皆の夢がおかしくなる。
 …本作品のヒロインで、白キャラと黒キャラがいる。この子が悪夢に苦しんだことが全ての発端だ。
貫庭玉 夢彦 サキの父親で夢について科学的に研究する科学者。娘を悪夢から救うために「ユメミーワールド」を作る。
 …本作品でもっとも「父親」らしい役を演じたのは間違いなく彼だ。彼の行動は娘を持つ父親なら誰でも理解できると思う。
貫庭玉 サユリ サキの母親で夢彦同様に夢の科学者。物語の数年前に「ユメルギー」の制御に失敗した爆発事故を起こして死去している。
 …サキは母親を喪ったことをきっかけに悪夢に苦しむようになる。誤解しないで欲しいのは悪夢の正体はこの母親ではない。
河村 やすお しんのすけが通うようち園でばら組に在籍するスポーツ万能の男児。今回は転入してきたばかりのサキをいじめる。
 …「クレヨンしんちゃん」最古参キャラのひとり「ばら組のチーター」を、映画館のスクリーンで見られるとは思わなかったなぁ。
大原 ななこ しんのすけのカノジョ(?)で女子大生の「ななこおねいさん」、今回はしんのすけが見る夢の中だけの登場。
 …容姿は原作漫画の方がしんのすけの好みに近いと思うんだけど、いつの間にか声がヤッターマン2号(リメイク)になってるし。
城咲 仁 みさえの夢に出てくるカリスマホスト、夢の中でみさえに気があるようだったが…。
 …実在の元ホストのタレントがそのまんま劇中に出てきている(声も本人)。彼がいなかったら「獏」を見つけられなかった。
大和田 獏 ユメミーワールドにいた俳優、名前が「獏」というだけで悪夢を食べさせられるが…。
 …本作のテーマがテーマなだけに「出たら面白いのに」と思ったら、サプライズゲストとして本当に出てくるもんなー。
とにかく明るい安村 ユメミーワールドでしんのすけを襲う悪夢の姿。もちろんネタは「穿いてませんよー」。
 …こいつがあの持ちネタで何人も出てきたら、そりゃ悪夢だわ。

2017年10月7日更新
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