第3話「かわり者」 |
名台詞 |
「洗って食べられるわ、せっかくの新しいお肉よ。」
(アーニー) |
名台詞度
★★★ |
アーサーとベンがパーカーのテントを張り直し、そのお礼にもらった羊の生肉。それがペティウェルの飼い犬ハッピーに盗まれて食いちぎられてしまう。その量は肉を置いていたトランクとの比較では3分の2、ケイトの手との比較では半分位にまでなっている。せっかくの贅沢な肉が無惨な姿にされて、「食べられないの?」泣きべそをかくルーシー、暗い声で「捨てよう…」と呟くベン。この家族の暗い表情を見て、母アーニーは力強くこの台詞を吐く。
この台詞には一家を束ねる母としての力量が見事に表現されている。なんてったって今まで保存食程度のものしか食べられなかった一家が贅沢な料理に飢えているのを一番よく知っていたのも彼女だし、この肉をだれだけ家族が喜びどれだけ楽しみにしているか知っているのも彼女だ。だからこのまま捨てることになればとうてい家族の笑顔は得られない。家族が笑顔であり続けるにはたとえ量が少なくたってこの肉を食べるのが良いという彼女の母としての判断だ。実際にこの日の夕食では少ない肉を巡って子供達の笑顔が出る。
それともう一つ、アーニーはこの肉を料理したくてたまらなかった。贅沢な食材で美味い料理を作る、これにこの母が飢えていたと思われる。新天地に来て自分が母としての「張り」を保つために、この肉の料理を自分でしたかったのだろう。
この台詞を通じて彼女が家族を上手にコントロールできる立派な母であることが分かる。このようにこの母によって苦しい展開でも家族に笑顔が戻るシーンが、この物語を支えて行くのだ。 |
(次点)「おうち帰りたい…」(トヴ)
…やっぱ幼児の反応はこうだな。何ともないように見えるこのシーンだが、本当は家族の誰しもが持っていて押し殺している不安を、トヴだけはハッキリと表現する台詞である。 |
名場面 |
アーサーVSペティウェル第一戦。 |
名場面度
★★★ |
ハッピーが盗んだ羊の生肉と、その一件でのペティウェルの態度を見て早くもペティウェルとアーサーが対決する。もうアーサーは最初からブチギレモード全開だ。ペティウェルに何かを言おうとしたアーニーを止め、子供達をテントへ返すとアーサーはペティウェルの元につかつかと歩く、そして羊の生肉が自分の家でたいへん貴重だったと訴える。
ペティウェルは金で解決しようとする、それはアーサーを逆上させるだけなのに…アーサーはペティウェルに誠意を求めるが、もちろんペティウェルからはそんな言葉のかけらすら出てこない。それどころか金で解決しようとしたときは「自分の犬のしたことに責任を取る」とか言いながら、いざ謝れと言われると「たかが犬の悪戯に何故自分が謝らなければならないのか?」と矛盾したことを言い出す始末。それを聞いてアーサーはさらに逆上する。
ここでアーニーのストップが入る。これがなかったらアーサーはペティウェルを殴ったかも知れない。そんなことになったら大変だ、ここでアーニーが止めにはいるのは妻として賢い選択だ。やっぱアーニーは良い母で良妻なのだ。
止められたアーサーはまだ納得がいかない顔をしているが、アーニーに止められたことで無言でその場を去る。この男も妻が止めると言うことはこれ以上やっても無駄だし、何よりも家族にとって良くないという可能性を感じるのだ。実はこの一家、アーニーで持っているような気がする。
そして名台詞のシーンへ行く。この話は母アーニーの見どころ満載だ。
(後ろにトム・ソーヤーがいるように見えるのは気のせい?) |
(次点…というより)母にパーカーにお礼をよく言ってくれたか?と言われたルーシーとケイト。
…ルーシーは「おねえちゃんこそ何も言わなかった」「おねえちゃんがお礼を言わなかったのは確かよ」の部分が正解、ケイトは「あんたはいわなかったわ、さよならって言っただけよ」の部分が正解。つまりケイトは何も言わずにパーカーの元から走り去り、ルーシーは「さよなら」と言いながら姉の後を着いていったんだな。
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登場動物 |
飼われているもの→モッシュ・ハッピー(ペティウェルの飼い犬・初登場)
野生のもの→コアラ・カモノハシ |
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感想 |
コアラを抱いたルーシーが原住民と会ったときはどうなることかと思ったが、意外にもコアラを渡したらあっさりと話が済んだのでちと拍子抜け。しかしこの話の主題はその後の羊の生肉を巡るエピソードだった。
ポップル一家に不幸をもたらすのにハッピーって名前は皮肉か?とマジで思う。それより皆でハッピーを追いかけるときのルーシーの走り方がパタリロみたいで笑える。そしてペティウェルの性格の悪さ、当時もここで「この〜おぼえてろよ〜」と思ったものだ。
海で肉を洗うケイトの姿の表現がこれまたいい、家族の楽しみを奪われた悲劇がここにすべて詰まっていると思う。でもこの話、なんだかんだで一番印象に残るのは母アーサーなんだよな。 |
研究 |
・羊の生肉
実は原作とアニメではこの辺りの順序が少し入れ替わっている。原作ではもこの羊肉のエピソードは最初の大事件なのはアニメと共通なのだが、原作の場合はオーストラリアに上陸した翌日には早速アーサーがアデレードへ行って家を買う話になり、羊肉のエピソードはその後の話になっている。また羊肉の入手理由も違い、原作ではアデレードで仕入れてきているようだ。一晩中テントの柱を支えて徹夜したのもパーカーではないし、肉を奪うのも「黒犬」とされているだけでペティウェルの犬ではないし、ボロボロの肉を海で洗うのもケイトではない。
羊肉、恐らくこのシーンで出てくるのはマトンだろう。子羊の肉であるラムは最近スーパーでもよく売られているので簡単に口にすることは出来る、私もラムを生姜焼きにしたり肉豆腐に牛肉の変わりに入れたりしてみたが…後者は悪くなかったが前者は独特の臭いで不味くは無かったけどちょっと…。
マトンはそれより臭いがキツイというのだから、特定の料理にしか使われないようだ。日本ではジンギスカン料理で、確かに肉を焼くと…スーパーで売っているラムとあまり変わりが無いような気がする。スーパーで売っているラムの臭いがマトンの臭いなのかなぁ?
そのマトンを一家はソースをかけて焼いただけのようだ、スーパーで売っているラムの臭いと同じだとすれば想像すると「ちょっと…」と思うが、よく考えたら屋外での料理である。臭いが家の中にこもったりしないし、何よりも風ですぐ飛んで行くだろう。肉の食感をなるべく活かすならあのように料理するのが一番かも知れない。
しかし、ただでさえ量が少ない肉を分け合うのはいいとして、トヴにも同じ量をというのは親心を考慮したとしてもやりすぎのような…。 |