第19話「おこげドレスと素敵な紳士」 |
名台詞 |
「他人の家を覗き見するなんて、とても不作法なことだということは僕だって知ってるけど、どうしても君の家の方に目が行ってしまう。君の家には僕の家には無いものがいっぱいあるんだ。姉妹がいる、お父さんはいらっしゃらないようだけど、優しそうなお母さんがいる、笑い声がある、歌声がある、家庭の温かさに満ちあふれている、僕の家にはそれがないんだ。羨ましくなってつい君の家の方を見てしまう。時々、居間の窓のカーテンを引き忘れることがあるでしょう?
夕方、ランプが付くと暖炉の火が赤く燃えて、まるで絵のようなんだ。君たち姉妹はよくお母様を取り囲むようにして座っている、お母様の顔が正面を向くとき、ちょうど窓辺に置いてある花の影になって、とても優しく見えるんだ。僕はどうしても眺めないではいられなくなる、僕には母がいないもんだから。」
(ローリー) |
名台詞度
★★★★ |
カーテンの裏でジョオはローリーに何故自分の家を観察するのかを問う、するとローリーは「やっぱり気がついていたんだね」と前置きしてから、このような長い台詞で返事をするのだ。ジョオはまるで引き込まれるようにこの台詞を聞き続ける。
この台詞にはローリーの孤独が全て表現されている。両親を早くに失った孤独、そのせいか兄妹もいない孤独、心を打ち明けられる人が誰もいない孤独。この長い台詞で視聴者はこの少年に引き込まれ、こりゃなんとしてでもマーチ家姉妹と仲良くなって欲しいと願う訳だ。そして物語はその通りに展開する。
またこれはジョオの心をも動かし、他人の家を覗き見するローリーの行為を咎めることはせず、逆にメグにそれを指摘されたときには「もっと覗いて下さいって言ってあげたい」とまで言う。ジョオはこの台詞で自分たちが精神的に恵まれている事に気付いたのだろう。
ちなみにカーテンの裏側での会話だが、原作ではジョオがローリーに海外での話題を求めたので違う会話となっている。原作の場合、あにめのこのシーンに該当する会話は、アニメでは次話となるジョオの見舞いシーンで行われている(これに該当する台詞もある)。小説版はアニメと同様で、この台詞も丸々文章化されている。 |
(次点)「初めての舞踏会でメグが捻挫をしたことや、ジョオが隣のローリーと知り合いになったことを聞いたのは、次の日の朝でした。」(エイミーのナレーション)
…ジョオがベスとエイミーの寝室に灯りがついている事を見つけたから、二人が出てきて話を聞かせろとダダこねるのかと思ったら…そういう予想通りのオチだったのね。このナレーション好きだ。 |
名場面 |
ジョオとローリーの二人だけのダンス。 |
名場面度
★★★★ |
ドレスの継ぎ接ぎを見られたくて踊らないというジョオは、継ぎ接ぎの事を説明して「おかしかったら笑って、本当、おかしいよね。」と自嘲気味に笑う。ローリーは「僕は気にしないけど」と言って、人気のない「細長いホール」で踊ろうとジョオを誘うのだ。誰にも見られずに踊れると聞いて、ジョオも承諾して二人は誰もいないホールに向かう。
ローリーが「お願いします」と挨拶すると、二人は楽しそうにポルカを踊り出す。この時の二人の楽しそうなこと、互いに上手だと相手を誉め合い、ジョオはこういうのが好きだと告白する。そして二人とも「楽しかった」と満足してソファに座る。
このシーンで思うのはただひとつ、なんかいい雰囲気だな〜二人ともと。特にローリー、おまいは私の1歳年下だろ(本放送当時)? なのになんでそんな紳士なんだ? なのになんでそんな女性の扱いが上手いんだ? とテレビに向かって叫びたくなった。でもこのローリーって少年にも、自分にそっくりな面もあるなぁと感情移入して行くのはまだ先の話。
とにかくこのシーンでここから先の物語展開、つまりマーチ家姉妹とローリーによる楽しい楽しい物語展開が約束されたのだ。原作でもこのシーンがそうだし…でも原作も小説版もこのシーンにはあまり行数を割いていない、理由は簡単で文で書くシーンじゃないからだ。
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今回の主役 |
・サブタイトル表示→エイミー
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・物語展開上→ジョオ
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ジョオとローリーの会話は二人が仲良くなって物語を展開させて行く上でしても重要だ。ここで二人が仲良くなってくれなきゃ「若草物語」にならないからね。メグが怪我するのもそのためのスパイスでしかない。
・次回予告→ベス…ジョオが大胆なんじゃなくて、ベスが大人しすぎるんだと思うんだが…。。 |
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感想 |
一番の感想は名場面欄に書いたとおり、当時私とローリーとは1歳違い、なのに大人の対応をするローリーに心底感心したもんだ。当時の自分だったらあの状況できれいなお嬢さんに声掛けられたら、しどろもどろになって訳わかんなくなったかも。とてもじゃないがあの紳士的な対応は出来ない。
それとこの話で好きなのは、同時進行で出てくるベスとエイミーの寝室。舞踏会の話が聞きたくて聞きたくて溜まらないエイミーと、口先では「明日の朝でもいいじゃない?」と言いつつ本当は聞きたくて溜まらないベス。ベスが素直でないシーンは珍しいがここは何度見ても面白い。エイミーが鼻に付けていた洗濯ばさみが途中で消えたりまたついていたりなんてツッコミはしてはならない。そしてオチとして二人はランプをつけたまま寝てしまっているのもこれまたいい。
物語としてはメグとジョオが舞踏会に行きましたってだけしか話は無いのだが、その中に色々な事件がてんこ盛りになって、かつ冗長でもなく本当によくまとめられたと当時も今も感心している話である。原作でもこのシーンはコンパクトかつ事件満載に描かれていて、読んでいて面白い部分の一つである。 |
研究 |
・舞踏会2
前回に続き原作踏襲の物語である。前回は面白いところをバッサリやられてしまった感があったが、今回は逆に私が原作では余計だと思っていた部分が削られていて私好みの展開になったと思う。その中の一番はカーテン裏でのジョオとローリーの会話で、やっぱどう考えてもあのシーンでの二人はアニメのように「なぜローリーがマーチ家を覗くのか?」という会話をして、ローリーという人物の孤独を浮き彫りにした方が自然だと思う。まぁ単純比較できない部分もあって、アニメの舞踏会は初冬の出来事として描かれているが、原作だとクリスマスなどのイベントが終わった後という違いがあることを前提にしなければならない。クリスマスの話で既にマーチ家とローレンス家の交流は始まっていたのだから(それでもジョオとローリーは初対面だが)。
でも他は細かいところを含めて、よく原作に忠実にしたなぁと今見ると思う。ジョオに踊りを申し込んだ赤毛の男が今度はメグと踊っている点とか、ジョオがコーヒーをこぼしてドレスを汚す点、メグの怪我、ローリーの送迎などここまで原作とは全く無いことをやっていたことが信じられない程に忠実に行った。
だがもうひとつ大きな違いがある、ベスとエイミーだ。原作でもベスとエイミーは寝室で睡魔と戦っていたようで、アニメと違うのはメグとジョオが帰って来ると部屋から飛び出してきて舞踏会の話を聞き出すのである。私としてはアニメで改編されたとおりの寝てしまったという方が笑えて好きだけど…。 |