「あにめの記憶」4
世界名作劇場「愛の若草物語」
・私にとって最後の「世界名作劇場」強印象作品
私が少年時代に見た「世界名作劇場」は1988年作品の「小公子セディ」までであるが、この「セディ」は惰性で見ていたというのは事実である。最大の理由はアルバイトで多少裕福になった私は、日曜日のたびにどっかへ鉄道を追いかけて出かけるので「世界名作劇場」放映時間帯に留守のことか多くなり、「セディ」は見逃した回が多すぎて話が繋がらず、話に入ってゆけなかったためである。「セディ」は肝心な第一話や、最終話も見逃した中に入っており、物語への執着がなかったのは明らかだ。また「小公女セーラ」追加考察で書いたが、主人公セディと私の年齢差が10歳もあるので主人公に感情移入できなかったのも大きい。
その前の1987年「愛の若草物語」は「セディ」とは対照的にかなり熱心に見ていた。最近になって気付いたのだが、本放送時の私の年齢で考えれば主人公姉妹のメグやジョー、主要登場人物のーリーが同世代だったのが大きかったと思う。この物語に引き込まれて次が楽しみでたまらず、また見逃すと悔しかった記憶があるのだ。
今回「愛の若草物語」再視聴にあたり、例によって例のごとしだが原作と小説版にも目を通した。原作を読んでみて感じたのは、日本での海外名作アニメ化について限界を感じるとともに、いっそ「若草物語」と「愛の若草物語」は別の物と割り切った方がいいのではないだろうか?とも感じた。原作「若草物語」はアニメとはまた違う意味で面白く、何度か爆笑させて貰った。
いっぽうの小説版はアニメの雰囲気を上手に再現しており、今まで私が読んだ「小公女セーラ」「南の虹のルーシー」との比較で言えば再現度は高いと思われる。
一応、主役はジョオということになるのであろうが、今回当サイトでは物語を見直した上で各話ごとの主役を姉妹の中から選びだそうと思う。やはりアニメという性質上姉妹全員を主役のするのは難しかったようで、どの回を見てもそうだが必ず目立つ働きをしている者がいるのだ。そこにスポットを当てて私の独断と偏見で誰が本当の主役か、考えてみたい。
ちなみに「南の虹のルーシー」の概要でも話したが、この物語も主人公として話の中心となる人物と「視点」として話を進行する人物が別となっている。話の中心となる人物は4姉妹全員の中でも次女のジョオだが、「視点」となる進行役は末っ子のエイミーである。従ってナレーターはエイミー役の声優がエイミーの視点で行っており、この点は「南の虹のルーシー」のルーシーとケイトの関係に共通している。物語の前面にジョオの心の内が出てくることはなく、その部分は妹エイミーの解説と視聴者の想像で補完させられるという構成なのだ。またエイミーはナレーターだけでなく、15話以降ではサブタイトルの読み上げ、本放送時はスポンサー企業の読み上げもし、さらにCM前後のアイキャッチでは単独で登場するなどこの物語のマスコットキャラクター的な使われ方もされている。物語の展開的にはジョオが主役だが、キャラクター的にはエイミーといったところなのだろう。
このアニメでは主役格の登場人物が4人いる事を活用して、サブタイトル表示の扉絵ではこの4人が持ち回りで出てくる。窓から4姉妹のうち誰かが顔を出しているというもので、ベスだけは他のキャラより大きめに描かれているのが不思議だ。出てくる人物は本編での活躍度とは無関係で、順番も決められてなく順不同に出てくるようだ。
さらにこれを利用して次回予告に「サザエさん方式」を導入している。本編が終わるとエイミーが出てきて「さぁ〜て、来週の愛の若草物語はぁ?」とポーズを取りながら明るく言うと、続いて4姉妹の誰かが出てきて次回のハイライトシーンを背景に次回本編と無関係な季節の挨拶をし、次回の予告はサブタイトルを読み上げるだけ、最後はエイミーのジャンケンで…(嘘)。…じゃなくて、4姉妹が交代で次回予告を担当しているだけだが、これがどうも順不同のようでランダムなのが面白い。まぁ「世界名作劇場」シリーズでは基本的にナレーターというものがない(作品にもよるが)ので、これまでは主人公の声優が主人公の役で次回予告を担当していたから不思議ではない。ケイトがナレーターを担当した「南の虹のルーシー」でも次回予告はルーシーだったし…。
当サイトの考察では、サブタイトルの扉絵の順序と、次回予告担当順についても紹介して行こう。
原作はルイーザ・メイ・オルコット著「Little Women」、日本では「若草物語」と訳されているので以降は「若草物語」と表示する。「若草物語」はこの作者の自伝小説群の総称で、「愛の若草物語」でアニメ化されたのはこのうちの「若草物語(Little
Women)」と「続若草物語(Little Women Married, or Good Wives)」の最初の二作分である。のちに「第三若草物語(Little
Men)」が「若草物語 ナンとジョー先生」というタイトルで「世界名作劇場」1993年作品としてアニメ化されたのは私が言うまでもないことだろう。
「若草物語」は前述の通り作者の自伝小説でもあり、4姉妹もジョオが作者本人で主人公、姉妹も作者の姉妹がモデルとなっている。ただ「愛の若草物語」としてアニメ化の際、ベスは3歳、エイミーは5歳も年齢が下げられた。ついでに隣人のローリーについては、原作ではセオドア・ローレンスが本名でローリーは通称であったが、「愛の若草物語」ではローリーを本名とした。
さらに原作の舞台であるアメリカ・マサチューセッツ州のコンコードはニューコードという架空の街に変更され、これに伴い街の描写も内陸の街から海辺の街へと変更されている。またアニメオリジナルの物語も多く、特に冒頭には10話以上にも渡って一家が南北戦争の戦災で焼け出されてニューコードに疎開してくるまでの物語が挿入された。ちなみに「愛の若草物語」はアニメで設定変更が多かったが、「若草物語 ナンとジョー先生」では原作の設定を引き継いでおり、原作では続編になっているこの二つのアニメは公式には続編ではないとされている(だがメグやジョオなどの声優は同じである)。
舞台はアメリカで国を二分して戦っていた南北戦争のまっただ中、1963年のゲティスバーグからスタートする。戦争で兵役に出た父の帰りを待ちながら、明るく楽しく、時には喧嘩しながら、時には病と対峙しながら健気に生きる4姉妹の姿が克明に描かれている。アニメでもその世界観は忠実に再現されている。
・「愛の若草物語」と私
「愛の若草物語」は私が高校1年の1月から高校2年の年末にかけて放映された。年齢的にはそろそろ「世界名作劇場」をとっくに卒業していてもおかしくなかった頃だが、日曜日の19時半は相変わらずわが家では食後の一家団欒の時間で、テレビは無条件で「世界名作劇場」にチャンネルが合わされていて親父が真顔でこれを見ていた。
私はこのアニメが結構気に入っていた。今にして思えば「小公女セーラ」の追加考察で書いたとおり、メグやジョオ、それにローリーといった本放送時の私と同世代のキャラクターによって展開する物語だからだろう。確かに言われてみると感情移入してみていたのはこの3人で、エイミーは可愛い女の子という印象が残っていたけどベスについてはあまり記憶がない。
さて、私が主人公姉妹の中で誰が好きか?と聞かれると返事に困る。敢えて言うなら「ベス以外全員」としてしまおうか。ベスについても外見は可愛いし、内気な中にハッキリと自己主張がある性格もいいとは思ったが、あの少女が現実にいたら私はとてもじゃないが仲良くなれそうにない。メグやジョオやエイミーとなら仲良く出来そうだけど、多分ベスと私が会話したら話が続かないと思う。アニメキャラと割り切ってみればいいんだろうけど…ただそのベスに対する評価が、今回の視聴で一番変わった。
それとベスというのは中盤以降、性格ゆえにどうしても目立たなくなるし、またベスが主人公として立ち回る回も偽善的な親切を見せるか他人から何かを贈られたがための行動であるようにしか私には見えなかった。このベスに対する評価は今回の視聴でガラリと変わるのだが、それはその時に本文で語ろう。
私としてはこの4姉妹を、原作もアニメも上手に再現したと思う。性格がバラバラのように見えてもいつも一緒に暮らす姉妹なだけに共通点も多いという描き方には脱帽するほかない。たとえばどちらかというと快活であったり目立ちたがり屋の多い姉妹の中で、唯一内気で人見知りのは激しいベスですら「ああ、この娘も同じ姉妹なんだな」と納得できるだけの描かれ方をしていると私は思う。
ただ当時気に入って毎週楽しみにしていたこの「愛の若草物語」だが、この頃から私も鉄道旅行であっちこっち出かけるようになったので見逃した回数も次の「小公子セディ」ほどでは内が多い方に入る。
さらに今振り返ると、この「愛の若草物語」には私が「世界名作劇場」が離れる原因となった要素もいくつかある。私としては「愛の若草物語万歳!」ではなく、その影の部分にもスポットを当てたいと考えるので、ここでの考察では一部に批判が入ることをあらかじめお断りしておく。どうしても「愛の若草物語」の批判を見たくないと言う方のために、批判文章が長くなりそうな場合は別窓に表示するので、長い批判文を見たくない方はスルーして頂きたい。ただし、私としては「愛の若草物語」が物語が素晴らしいアニメで、個人的に好きなアニメの一つであることは変わらないことだけは同時に宣言しておく。
・「愛の若草物語」関連リンク集
「愛の若草物語」についてもっと知りたい、他の方の視点による考察を見てみたい、とおっしゃる方は下記リンク集をご利用ください。
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「新・愛の若草物語『てぶくろを買いに』」
石神弘一様&りん様による「愛の若草物語」の考察とイラスト他のサイトとブログです。
こちらのイラストはそれぞれの物語の世界観が上手に表現されていて好きです。「名劇学園」は面白かった。 |
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「MPU-Masterpiece Union- 〜世界名作劇場連合〜」
道祖土(さいど)ranran様による「愛の若草物語」の総合サイトです。
現在「愛の若草物語」について最も情報量の多いサイトと思われます。作者のジョオ&ローリーに対する熱い思いがひしひしと伝わってきます。 |
・サブタイトルリスト
サブタイトルリストに入る前に、このサブタイトルにも私が「愛の若草物語」をきっかけに「世界名作劇場」から離れた理由がある。それについて興味のある方はこちらをクリックしてその理由を明記した「愛の若草物語サブタイトル論」を読んで頂きたい。
総評はこちらからどうぞ
エンディングテーマについては第48話考察の続きに入っています。
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