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第21話「ドメル艦隊 決死の挑戦状!!」
名台詞 「人類の攻防を賭けて、この一戦に期待する!!」
(沖田)
名台詞度
★★★★
 いよいよガミラスと地球の戦いにおける天王山、七色星団との戦いの火ぶたが切って落とされる。ヤマトはドメルの挑発を受けて、七色星団での決戦に挑むこととなったのだ。ドメルからの挑戦状には、ガミラスが地球に移住する計画でありヤマトとの戦いにはガミラス人類の未来がかかっていることが明かされる。ガミラスとの決戦は避けられないと判断し、ドメルの挑発を受けたのだ。
 そして戦闘宙域に到達したヤマトの艦長席で、戦いを前に沖田がこの台詞を叫んで乗組員全員と自分自身を奮い立たせる。自分たちが地球人類の未来を全て背負っている重荷を感じると共に、死への恐怖、勝利への淡い期待、これがすべて入り交じった沖田のこの雄叫びは、嫌でも戦い前のこのひとときを盛り上げる。
名場面 ガミラスの軍事裁判 名場面度
★★★★
 バラン星の地球侵略拠点を失ったドメルに対しての軍事裁判が劇中で描かれた。そう、敵はやはり悪人ではなく法に則って戦う人間であると改めて見せつけられるのだ。名将だったドメルは被告人席に立たされ、傍聴人や陪審員から基地を失ったことに対する失敗を責め立てられる。無論それまでのSFアニメに無い要素で、失敗した敵将はちゃんと「裁判」という形を踏んで始めて死刑を宣告されるのだ。それまでの「悪の組織」だったら失敗はそのまま殺されて終わりだったろう。
 だったら何で冥王星のシュルツは軍事裁判にかけられるまでもなく「帰ってくるな」という宣告になったのかが分からなくなるが、それはこの際置いておこう。
 軍事裁判にて陪審員全員一致の評定で死刑が求刑され、裁判長によって死刑が宣告されたドメルは、国家最高責任者であるデスラーの恩赦で釈放される。ただしこれは形式上の話であって、正確にはデスラーにヤマト殲滅を厳命されたというところだろう。そう、ガミラスにはドメルを上回る司令官はいないのだ。こうして再びヤマトと戦うことになったドメルは水を得た魚のように新兵器を開発し、さらにガミラスの最前線から有能な将校を集めるのである。お金の使い放題、将校や艦船も使いたい放題とは死刑囚から破格の待遇になったわけだ。
 しかし、デスラーもこんなやり方じゃ万が一の場合国が滅びることになるとわかるだろうに…。
人類滅亡まで あと 215日
感想  一つの戦いが終わった後の静けさと、一大決戦の前の緊張が描かれている。前者は敵が重要基地を失い、その司令官が裁判にかけられるという形でやってくる。ヤマトの知らないところで一人の司令官が裁かれているという戦争の新たな一面を、子供の頃は新鮮な思いで見ていたものだ。正直言って軍事裁判やら軍法会議っていうシステムは「ヤマト」に教わった、軍人が失敗をするとこのような場でもって裁かれて、始めて処遇が決まるという公正な軍のシステムを「ヤマト」は教えてくれたのだ。
 そして他に優れた司令官がいないという事実でデスラーによって恩赦されるドメルを見て、これまたそれまでのSFアニメとは違う印象を感じた。そう言えばガンダムには「軍法会議」って用語は出てくるが、実際にその法廷の場が出てきたことは無かった気がする。
 ドメルが恩赦されると場面はガラリと変わって次の戦いへの緊張感に包まれる。ヤマトがドメルからの挑戦状を受託し、いままさにヤマトとガミラスの決戦が始まろうとしているシーンを、私は怖がりながら見ていた記憶がある。
 このような戦争ものアニメで描かれることの無かった戦争の一面をきっちりと書いているこの話は結構好きだ。でもこの話当たりから「打ち切り」が決まった影響で話を縮められているんだとか…。
研究 ・ガミラスの裁判
 名場面でも挙げたとおり、この話にはガミラスの軍事裁判が出てくる。被告人はドメル司令官、罪状は自らの作戦の誤りによってバラン星基地を失ったことである。軍事裁判というより、軍法会議と言った方が正しいか。
 画面を見る限り、裁判所の様子は中央に被告人席があり、その周囲を取り囲むように傍聴人席があり、正面中央に裁判長が座り、裁判長の両脇に陪審員が8名並んでいる。被告人席の左側には証人席があり、この裁判では証人としてゲールが出席している。
 この裁判の面白いところは、傍聴人も自由に発言できる様子である。「思い上がるな」と怒鳴った被告人席右側の人物は何段にもなった席の中段にいるため、検察等の告訴人側ではなく、座っている位置から単なる一傍聴人に過ぎないと思われるのだ。さらに驚くべき事に、裁かれる被告人には弁護人がつかないのだ。つまりこの裁判では、ドメルは自分が正しかったことを自分で証明せねばならず、重要な基地を失った事によって形成された世論とも自分一人で戦わねばならないのである。こんな一方的な裁判あるか?
 そして陪審員が罪状を判断して求刑し、それに対して裁判長が最終的な刑を判断するようである。ここでは陪審員全員一致で死刑が求刑され、裁判長が「死刑。死刑に賛成する。評決するまでもない、当軍法会議は太陽系方面作戦司令長官ドメルを死刑に処することに決定する。」と主文を読んでハイおしまい。これだけで死刑になっちゃうんじゃ、デスラーでなくとも恩赦したくなっちゃうよな…。

第22話「決戦!! 七色星団の攻防戦」
名台詞 「このままではヤマトに止めを刺すことは出来ない、自爆装置をいつでも入れられるようにしておけ、セットカウントは30秒。これが私の最後の決め手だよ、ゲール君。」
(ドメル)
名台詞度
★★★★
 艦隊を全滅させられたドメルはそれでもなおヤマトを倒すために必死の攻撃を続ける。ヤマトの上方から爆雷を浴びせるが、ヤマトの足を止められない。ここでヤマトを逃がしてしまったらまた国へ呼び戻され、今度こそは間違いなく死刑だ。そんな屈辱にドメルが耐えられるはずもない、そこでドメルはヤマトの下方に回り込み、「最後の決め手」を使う決断をする。それは自爆してヤマトを道連れにすることである。
 そして副官ゲールにこのような台詞で「決め手」を使うことを宣言する。前話でドメルはヤマトを撃破できなかったら「総統への忠誠心」が最後の決め手になると語ったが、その答えがこれだったのた。
 ゲールは恐怖に怯えるが、ドメルは表情は硬いものの落ち着き払った声なのが印象的だ。艦隊を失った今、ヤマトを止められないし逃がしてしまっても国で死刑が待つだけ。ヤマトを止められず地球が復興したら自分たちガミラス人類の未来はない、だからどうしてもヤマトを止めなければならない、ヤマトを止めるには自爆しかない。この期に及んでいずれに死しか選択肢のないドメルは、勇気を持って自爆の道を選ぶのだ。
 このドメルのデスラーやガミラス民族全体への忠誠心が良く現れており、やはりヤマトの敵は人間なんだと実感せずにいられないシーンだ。色んな意味で怖くもあり、感心させられたシーンである。
名場面 沖田とドメルの会話 名場面度
★★★★★
 七色星団での戦闘が終わったかに見えたとき、ドメルの旗艦は下方からヤマトに接近してヤマトに艦体を固定させる。そしてヤマトとの通信回線を開き、ビデオスクリーン越しに沖田と対面するのだ。
 まずは互いに敵将を称えるシーンから始まる。ドメルは素直に沖田の勇気と決断と知恵を称え、沖田も相手が今まで戦ってきた司令官だと分かると起立する。沖田は互いに自分たちの星の人類のために戦ったが、これ以上犠牲を出すことは望まないからイスカンダルへ行かせてくれとドメルに言うが、ドメルは「生命に替えてもヤマトをイスカンダルには行かせない」と言い切る。そしてもう一度沖田を称えた後、「ガミラス星並びに偉大なる地球に栄光あれ!」と言って艦の自爆装置のレバーを引く。
 この会話には互いの立場が良く現れている。戦争というものにはどちらも必ず「正義」があり、その正義のために戦うのである。地球は自分の星を攻撃してきたガミラスの脅威を排除し、イスカンダルでコスモクリーナーを引き取り人類を救うべく戦ってきた。これは地球の、ヤマトの正義であって我々から見れば正当な理由だ。ではそれをガミラスから見れば、自分たちが移住して生き残るためにどうしても地球が必要だから、ヤマトの反攻、つまり地球の正義を認められるわけは無いのだ。逆も然りで、ガミラスは自分たちが生き延びて子孫繁栄のために地球を侵略して移住するという正義があるが、これを地球人が受け入れられないのは当然の話。戦争というのはこのようにして発生するのであって、必ずどちらか一方が悪なんて事はないのだ。
 この沖田とドメルの会話では、その互いの正義をキチンと認め合っている。その上でヤマトは何としてもイスカンダルに行かしてくれという立場を取るし、ドメルも何が何でもヤマトを阻止するという結論になってしまうのだ。その相容れない会話の果てが、ドメルの自爆であって、それによってヤマトにも多数の戦死者が出てしまった事実である。
 このような戦争の構図を「ヤマト」という物語はキチンと描き、我々に教えてくれた。戦争というものは決して一方的に見てはいけない、そんな事を言いたいのだと私は思う。
人類滅亡まで あと 208日(と思われる)
感想  オープニングテーマ無しでエンディングも特別版に差し替えられ、物語の部分が長く取られたこの話。そうまでして制作側は七色星団におけるヤマトとドメルの死闘を描きたかったのだろう。この戦いにもうちょっと時間をかけて欲しかった気もするが、視聴率が低くて途中打ち切りになった背景を考えれば致し方ない。恨むなら本放送当時の視聴者を恨むしかない。
 この話を子供の頃に見たときの記憶は、とにかく煙を噴いて痛々しいヤマトの姿が印象的だった。ドメルの作戦が上手くいっていて為す術もなく追いつめられていくヤマトを見て、心配で見ていられなかったのだ。
 今見るとこの戦いには、実際の海戦の描写が多くて感心させられる。当時の男の子を夢中にさせたのがよく分かる。急降下爆撃に雷撃、そして空中戦という要素がたくさん詰め込まれているのだ。ひょっとして、「ヤマト」ってSFの皮をかぶった純粋な戦争アニメなのかなと勘ぐりたくなる。
 ヤマトがいよいよガミラスに近づく。面白いのはまだまだこれからだって、もうあと数話で終わりとは…。
研究 ・ドメルの七色星団ヤマト殲滅作戦
 前話からそうだが、ドメルは今回のヤマト殲滅にかなりの自信を持っていたようだ。その作戦内容は暗黒星団が後方に控える宙域にヤマトを呼び寄せるところからはじまる。最初に空母からの攻撃機隊が通常飛行でヤマトの周囲に展開し、ヤマトの戦闘機をヤマトから引き離す。この時にまだ物質転送機を使わないのがポイントだ、これを最初に使ってしまうと続く攻撃が「奇襲」でなくなる。つづいて急降下爆撃機隊を物質転送機でヤマトの上方にワープさせ、急降下爆撃によるピンポイント攻撃でヤマトのレーダー群を破壊する。ただこの急降下爆撃機にはヤマトそのものを破壊する力はない。急降下爆撃機は最初の戦闘機隊と交代してさらにヤマトの戦闘機を引き離し続ける。その頃に物質転送機で今度は雷撃機をヤマトの側面にワープさせ、ヤマトの足を止めるべく雷撃を行う。上手くいけばここでヤマトは沈没だろう。こうしてヤマトの速力が落ちたところで今度は重爆撃機1機をヤマトの前方へワープさせ、大型のドリルミサイルをヤマトの波動砲発射口に撃ち込む。このドリルミサイルはヤマトの中心部である波動エンジンを破壊して爆発する予定だが、さらに念を入れて空母艦隊で総攻撃を行うというものであった。
 完璧である。これなら誰が見てもヤマトの敗北が目に見えるようだ。でもドメルは負けた。
 ではドメル敗因の分析に移ろう。ここまでヤマトを窮地に陥れたガミラスの兵器は必ずどこかに落とし穴があった。設計者の意図を疑いたくなるようなアホなものばかりで、ガミラスの兵器は何処か抜けているとしかいいようが無いのである。今回も例外ではなく、ドメルを敗北に追い込んだのはあの「ドリルミサイル」である。
 ドリルミサイルが艦隊に食い込むと、すぐに真田とアナライザーが現場へ向かう。すぐに真田がドリルミサイルの先端から中に入れることを知って飛び込むのだ。ガミラスの技術者よ、何でドリルミサイルのよりによって先端に人が入れるような穴を空けておくのだ? なぜそこを塞いでおかない? 塞いでいれば真田達が中に入るのにもっと時間がかかって、ヤマトの中でどかーん!…だったはずだ。
 次にドメルの作戦自体に問題がある。ドリルミサイルを撃ち込んだ時点で勝利は見えているのだから、空母全隻を伴ってヤマトを総攻撃する必要などなかった。そうすればもし物語と同じようにドリルミサイルが反転しても空母艦隊全滅という悲劇は避けられたのだ。攻撃にはリスクが伴うという戦いの第一歩をドメルは忘れてしまったのだろう。その基本を忘れたドメルは、「何としても自分が見ている目の前でヤマトを叩きたい」という欲が前面に出てしまったに違いない。本当に勝ちたいなら、空母全部での総攻撃ではなく、雷撃機でしつこく攻撃する方が得策だったのだ。
 結果、ドメルはガミラスの機動部隊を全滅させ、ヤマトを止めるために自分も自爆することになってしまったのである。敗因の半分はドメル自身の責任だが、そのドメルの慢心を止めることが出来たはずのドリルミサイルをあんな構造にした技術者も問題だ。さあ、すぐ軍法会議にかけるのだ、ドメルだけがあんな死に方なんて納得できないぞ。

第23話「ついに来た! マゼラン星雲波高し!!」
名台詞 「島、我々はイスカンダルではなく、ガミラスへ来てしまったのではないのか? ガミラスという星は宇宙の何処にあるのか、これまで謎のままだった。イスカンダルだといっているあの二つの星こそ、実はガミラス星そのものじゃないのか?」
(古代)
名台詞度
★★
 ヤマトが突然のミサイル攻撃を受ける。ガミラスを七色星団で打ち破ったと信じていたヤマトの乗組員は、今度の攻撃が誰からなのか全く見当がつかず、ミサイルの破片を拾って分析を始める。真田はその分析結果をガミラスのミサイルだと報告する。この事実に驚愕した古代が、この台詞を吐くのだ。
 ミサイルは正面から飛んできた。つまりヤマトの進行方向、スターシァの誘導電波が発信されているイスカンダル方面から来たのである。この事実は紛れもなく進行方向にガミラスの攻撃拠点があることを意味し、ヤマトは事前に察知したイスカンダルの画像を見ながら、イスカンダルとガミラスが全く同一地点にあると疑うのだ。これは彼らにとって恐るべき事実であり、その気持ちがよく表現されている。
 事実、物語が進んでいくとイスカンダルとガミラスは双子惑星であることが分かる。ガミラスとイスカンダルは互いに回転しながら中心恒星の周りを回っているのである。つまりイスカンダルへ行く事自体が、ガミラスの懐に飛び込むようなものであって、ガミラス本国からどんな妨害があるか分からないのである。
 沖田の決断により、ヤマトはガミラス星での戦いを受けることになる。いよいよガミラスの本土決戦が始まるのだ。
名場面 デスラーとスターシァのホットライン 名場面度
★★
 ヤマトがガミラスの妨害に遭い、足止めを食らってしまった事実を知ってスターシァがガミラスに抗議する。そう、ガミラスとイスカンダルとの間には国交があり、最高責任者とデスラーとスターシァの間にはホットラインでいつでも連絡が取れるようになっているのだ。ただし、このホットラインは殆ど使われていないらしく、ガミラスとイスカンダルの国交はほぼ断絶状態にあることも分かる。
 スターシァはデスラーが他の星を侵略してまでの移住に抗議する。この二つの星は星の寿命が近づきつつあり、近いうちに星が失われるような災害が起こる可能性があるのだろう。これに対しイスカンダルは星と運命を共にする道を選び、ガミラスは他の星を侵略して移住する道を取った。両極端なふたつの星の代表者による会話が成り立つわけもなく、話がかみ合わないままホットラインは切れる。
 この二人の会話には、「運命」の受け止め方が二つあることを示している。ひとつは運命を受け入れた上でその運命に流されること、これはスターシァが取った手段である。もうひとつは運命を受け入れた上で自ら新しい運命を切り開くこと、これがデスラーが取った手段。どちらが正しいか私には分からないが、残念ながらこの件においてはどちらの言い分も正しくないと私は思う。二人ともとらなかった手段は、「他の星に助けを求めること」である。住めそうな星に頭を下げて「○○人の移民を受け入れてくれ」とお願いする道をどうして取らないのだろう。これこそが助け合いを構築する上で必要だと思うのだが…結論、二人ともプライドが炊く過ぎてそんなことが出来ないって事だ。そのせいで、どちらの星も多くの犠牲者を出してしまったのだ。
人類滅亡まで あと 164日
感想  いよいよイスカンダルが近い、はぁヤレヤレ…と思って安堵していると裏切られる話。子供の頃、イスカンダルとガミラスが隣同士と聞いてそりゃないよーと思ったものだ。そしてヤマトがガミラス星に誘導され、ガミラス本土決戦が始まったとき、どうなるか不安でたまらなかったような。
 デスラーとスターシァの対話では、名場面に書いたとおりのことが子供の頃から疑問としてあった。つまり何で二人とも平和的に「地球に移住させてくれ」って話をしてこなかったのだろうと。戦って侵略するか戦わずして星と共に滅びるかの二者選択しか思いついておらず、第三第四の選択を模索していない辺りが見ていてもどかしかった。今でもその謎は解けていない。
研究 ・イスカンダルとガミラス星
 いよいよヤマトがイスカンダルまで0.8光年の位置に迫った。ここでスターシァがヤマトに直接交信し、イスカンダルへの誘導信号を発信する。0.8光年という距離を考えればこれも電波信号でないのは確かだろう(劇中では誘導電波と言っているが)。そしてその位置から前を見ると、大マゼラン星雲の全景が…あれ、あれぇ?
 大マゼラン星雲の直径は1.5万光年。その2万分の1の位置から大マゼラン星雲を見ているのだから…そういう野暮なツッコミは無しだったね。話題を変えよう。
 さて、イスカンダルについての詳細は島が語っている。中心恒星からの距離は3億キロのところにある第8惑星だと語られている。この3億キロというのはだいたい2天文単位に相当するから、太陽系で言えば火星軌道(約1.5天文単位)と木星軌道(約4天文単位)の間でかなり火星寄りということになるだろう。中心恒星の温度がどれ位か語られていないが、その温度によっては地球とほぼ同じ環境があっても不思議ではない距離だが、中心恒星の寿命が少し短くなることを考慮しなければならない可能性と、木星タイプの巨大ガス惑星が重力的な影響をしないかが心配と言えば心配である。
 これに加わった新事実は、イスカンダルとガミラスが二重惑星であるという事実だ。恐らく中心恒星から2天文単位という軌道を中心に、互いが回転しながら公転していると考えるべきだろう。この二つの惑星はかなり近接している、つまり二つの星の回転と自転が一致していなかったら、双方の海はものすごい勢いで満ち引きを繰り返していそうな気がする。いずれにしろ二つとも火山と地殻変動があるようなので、恐らくマントル対流があって内部はかなりの高温状態だろう、それは互いの星の朝夕力によって冷めることもないと思われる。
 この星の成り立ちはどうなんだろう? 恐らくイスカンダルは地球とほぼ同じ物質で構成されており、ガミラスは地球と比較すると浸食に弱い物質で構成されていることだろう。つまり二つの惑星は違いところで成立したのは間違いないだろう、そして恒星系が確立する段階で互いの重力に引かれ、衝突すると思われたところで互いの星が微妙なコースをたどり、中心恒星に対する1つの軌道を共有しながら回転するようになったのだろう。地球と月の関係のように互いの自転速度に影響し合ったり、距離関係も変わったりしていることだろう。しかしこの二つの星が近接して回転することで、双方とも軌道が安定し、自転も安定して極端なボールシフトなどは発生せず、生物が進化するのに適した環境を守ってきたに違いないと思われる。
 ならまだまだ星の寿命なんて来ていないと思うけどなー。

第24話「死闘! 神よ、ガミラスのために泣け!!」
名台詞 「そこに都市はなかった、ただ廃墟があるだけであった、破壊の限りを尽くされた地上には、音もなく動くものもなかった。古代は知った、宇宙のひとつの星が今死んだのだ。」
(ナレーター)
名台詞度
★★★★
 戦いの後の静けさ、そしてヤマトが何を行ってしまったかを冷静に淡々と述べるこのナレーションは、ガミラス本土決戦の終結を告げるにふさわしいものである。そう、ヤマトはガミラスを突破して地球を救うという正義のために、大虐殺をやってしまったのだ。ヤマトが引き起こした火山活動とヤマトの攻撃により、ガミラスの都市だけでなく、町も村も全て壊滅してしまった。生き残った者は殆ど居ないだろう。老若男女を問わず、ヤマトはガミラス人をほぼ皆殺しにしてしまったのである。
 その事実を短い解説ですべて説明しきってしまったこのナレーションは、本当に優れたナレーションだと思う。この回では名台詞が多すぎでひとつに絞るのに難儀したが、このナレーションを挙げることにした。
(次点)「ヤマトの諸君、艦長沖田だ。我々は遂にイスカンダルへ来た。見たまえ、今諸君の目の前にイスカンダルがある。この機会に艦長として一言だけ諸君に申し上げたい。ありがとう、以上だ。」(沖田)
…長い旅路の末にやっとイスカンダルに到達した喜び、これが見事に表現された台詞だと思う。同時にそれまで地球のために生命を賭して戦った皆に対し、沖田の感謝の言葉が発せられる。涙が出そうな感動的な台詞だ。
名場面 ヒスが戦闘停止を進言 名場面度
★★★
 デスラーの副官、ヒスがついにデスラーに戦闘停止を進言する。ヤマトが火山の大噴火を引き起こし、それだけで緊急事態宣言クラスの大事になっているのに、デスラーはそれでもヤマトとの対決に固執する。戦艦も無いのにヤマトに勝てるわけもなく、また本来ならば戦争など後回しにして大火山活動の対策を取って多くの市民を助けねばならない…ヒスは政治家として常識的かつ人道的な考えがあったかどうかは分からないが、ヤマトを倒すことだけに執着してしまいついに他のことが頭から消えてしまったデスラーを止めようとする。「ガミラスにも破れることはあった」と説いて戦闘停止を訴え、ヤマトと講和し、地球政府と話し合いを行って共存の道を探るように進言する。
 しかし、そのデスラーからの返答は銃声であった。デスラーは自分の思い通りにならない副官を抹殺する。それまでキレ者だった国家最高責任者が、ついに単なる暴君に変わってしまった。そのデスラーに待っていたのは…敗北である。単なる敗北ではなく、自分の国の滅亡という最悪の事態であった。
人類滅亡まで あと 161日
感想  ガミラス本土決戦。冥王星、バラン星、七色星団とヤマトに連敗し、艦体も空母部隊も有能な司令官も全て失ったガミラスがヤマトを本土に招き入れて決戦を行う。下には硫酸の海、上からは爆雷、上もしたも押さえられてしまったヤマトはどうするのか?と思ってみていたら、沖田が「海へ潜れ」と…大丈夫かいなと思ってみていたら、またアナライザーが大活躍。やっぱヤマトってアナライザーで持っているんだなと感じさせられた。
 そして激戦の描写はハッキリ言って背筋に寒気が来るほどの迫力だった。デスラーの狂気と戦いの後の静けさ。最後には目的地に着いた喜びと、この話は盛りだくさんのような気はするが、無理の無い構成で今見ると感心させられる。本来なら2話くらいに分割するつもりだったのだろうが、よくまとめたと思う。
研究 ・ガミラス星
 ガミラス本土決戦。ヤマトもガミラスも星の特性を活かした戦いを展開する。
 ガミラス星の特徴を挙げていこう、直径は1万6千キロだから地球よりちょっと大きい程度の星と見て良いだろう。ガミラスの断面は内核星と外皮に別れている、内核星には大陸と海があり、大陸の山脈が厚さ10キロの岩盤でできた外皮を支えているという。外皮は内核星を全体を覆っているが、所々に穴が空いていて内核星と宇宙との出入りが可能になっている。内核星と外皮の間の空洞は水の流れによる浸食で出来たという、つまり元々は外皮の外にあった海の水が地下水となって地中を流れて行くうち、惑星内部の岩石を浸食して流してしまったようた。元々ガミラス星自体が浸食を受けやすい岩石で出来ていたと考えるべきで、特に浸食を受けやすい地層が地表から一定の距離にだけ集まっていて、長年の浸食作用でそこだけ流され、海水が全て地底に流れてあのようなかたちになったのだろう。恐らくガミラス人類が誕生する前には既にあの形になっていたと考えられる(あそこまで浸食するなら数十億年単位の時間がかかっていると考えられ、ガミラスでの生物の進化は全て内核星での出来事と想像される)。
 星としての寿命が近いから星の全てが急激に硫化しているという、火山からは亜硫酸ガスや硫酸性溶岩が噴出され、このために海は濃硫酸で雨も硫酸だという。つまりガミラス人は外出が出来ないわけで、恐らく食用に養殖している物以外の人間以外の生物は絶滅していることだろう。なんだか凄い世界だ、これなら地球を侵略して移住しようというのも頷ける。
 デスラーはこの環境を活かして、ヤマトを海に沈める作戦に出た。しかしヤマトが自ら海に沈んで波動砲で最大の火山脈を打ち抜くなんて考えもしなかったのだろう。そのデスラーにとって予想外の行動が、ガミラス人類を滅亡に追い込むのだ。

第25話「イスカンダル! 滅び行くか愛の星よ!!」
名台詞 「スターシァさん、いいんですか? 古代守さんを連れて帰って。運命を受け入れるだけでは愛は実りませんわ。あなたは私たちに仰ったじゃありませんか、明日の幸せは自分の力で掴むものだって。」
(森)
名台詞度
★★★
 最終話1回前のこの話では、これまでの戦いシーンから一変、藪の反乱以外は「愛」と「幸せ」がテーマである。いよいよヤマト出航と言うときになって、古代守を愛してしまったスターシァに心の動揺が生まれる。自分はこの星を捨てられないが、守と一緒にいたい。しかし、イスカンダル一族に代々受け継がれてきた生き方は「運命を受け入れる」というものであり、自分で切り開くことではない。
 ヤマトがイスカンダルに着くまで、スターシァはヤマトに、地球人に「自分の星の未来は自分で掴め」というようなメッセージを送ってきた。だからこそイスカンダルまで来られる技術供与はしたが、コスモクリーナーは技術供与でなく現物を譲渡という形を取って自分のところまで取りに来させたのだ。このスターシァの矛盾に森は気付き、このような台詞でヤマトに留まるように言う。しかしスターシァは結局はイスカンダルに残る道を選び、ヤマトを降りる。その決意を知った守はスターシァを追い、彼女と共にイスカンダルに残ることにする。
 この台詞は視聴者にスターシァの矛盾に気付かせ、その上で矛盾していると分かっていても自分の星を、故郷を愛しているスターシァの生き方をしっかり示すものとして非常に重要である。そしてスターシァの叶わぬ恋に視聴者はどうにかならないかと感じる、だからこそその後、守がスターシァを追ってヤマトを降りるシーンが感動的になるのだ。
名場面 スターシァと守が艦を降りる 名場面度
★★★★
 星に残ると決意してヤマトを降りるスターシァ、その前にスターシァと守が熱い抱擁を交わす。そして未練を断ち切るようにスターシァはヤマトのタラップを下る。思わず追いかける守は「兄さん!」と叫ぶ弟を振り返るが、「進…許してくれ」との言葉を残してスターシァの後を追う。そしてスターシァが乗っているホバークラフトに飛び乗って、再度スターシァと抱擁…。
 タラップを駆け下りるときに守が落とした帽子がこれまたいい演出をしている。そう、名台詞の言葉を受けて自分の幸せのために自分で運命を切り開いたのは守の方だった。唯一生き残った家族である弟と、ヤマトに乗れば帰れることがほぼ確定している故郷、それよりも目の前にいる愛する女性を取ったのだ。なんとも感動的な。
 子供向けとの人と気が強かった当時のアニメに、「戦争」だけでなく大人の恋愛をもしっかり描き込んだ「ヤマト」はこのシーンを持って大人の視聴に耐えられる質の高いアニメになったのだろう。
人類滅亡まで あと 131日
感想  この回の感想に入る前に、古代守の声を担当した故広川太一郎さんに敬礼!
 (第一話を見たときはまだ氏の逝去のニュースを知らなかったので。)

 往復旅行の片道がやっと終わった。無事にコスモクリーナーを引き取り、あとは地球への帰り道だけである。今回は戦いもなく平和な1話だろうと思ったら、反乱を起こす不届き者(こんな事言ったら徳川さんに叱られそうだ)がいて驚いた。誰も故郷が恋しくないのかなぁ…でもあれだけ長い航海をしてきたのだから、確かに反乱の一つも起こしたくなるのが人情ってもんだろう。
 最後の方は思いっきり恋愛ものになってしまったけど、戦争だけでは話が終わらない質の高い物語であるという素晴らしい内容であると思う。スターシァと守の恋愛要素はごく自然に、さらにしつこくもなく出てくるので私はいいと思う。これが全話通じてやったらちょっと…と思っただろうけど。
研究 ・イスカンダル星
 いよいよヤマトがイスカンダルに到着した。星の外見は地球にそっくりだが、地球と比較すると海の比率が高そうだ。大きさはガミラス星とほぼ同じ、大気組成は地球とほぼ同じで劇中のスターシァの説明から気圧は若干低めと見て良いだろう。惑星としての寿命が近いせいか、頻繁に地殻変動や地震、それに火山活動が起きているようだがガミラスのような硫化現象はまだ見られない。つまりガミラスよりは少しだけ長生きしそうなのだ。
 劇中に描かれる風景を見ていると、樹木の存在は確認できないが少なくとも芝のような植物があることがわかる。あれだけ緑の草原があるのだから、昆虫や小動物の存在は間違いないだろう。ただし人間はスターシァ一人になってしまったようだ。スターシァだけになってしまった理由は…このシリーズでは語られていなかったっけ? 確か科学技術が高すぎた事による戦乱で王家を残して滅んだのだったような。
 スターシァやサーシァなどの人間は地球人と同じようだ。つまりイスカンダルでも地球と同じように、単細胞生物から始まって…(中略)…猿が木から下りて人間になるという壮大な進化のドラマがあったに違いない。さらに驚くべき事に、地球人とイスカンダル人での好配が可能なのだ。それはこの後のシリーズでスターシァと守の間に娘が出来ることで確認できる(他のイスカンダル人が滅んでいる以上スターシァに浮気のしようがない)。つまり同じなのは外見だけでなく、当然生殖機能も人間と同じだろうし、下世話だが性器も全く同じなのだろう。それよりなにより遺伝子レベルで地球人とイスカンダル人はよく似ており、DNAの構造も同じということになる。それほどまで地球とイスカンダルの生物の進化は共通しているって事だ。
 これほどまで地球と共通しているのだから、藪達が残るために反乱を起こしたくなるのも理解できるなぁ。

第26話「地球よ、ヤマトは帰ってきた!」
名台詞 「地球か…何もかもみな懐かしい…。」
(沖田)
名台詞度
★★★★★
 私としてはヤマトシリーズ一の名台詞は、沖田が最後に言ったこの台詞だと思う。この台詞はヤマトシリーズだけでなく、日本アニメ史上に残る名台詞なのは言うまでもないだろう。
 地球を目前にしたヤマト、艦長室で療養する沖田は佐渡に席を外すようにいう。するとガミラスとの戦いで戦死した息子の写真を眺め、涙を流す。この涙は息子だけでなく、ガミラスとの戦いで死んだ人全てに対する喜びと悲しみの涙だと私は思う。地球人類を救うため、ガミラスを倒しつつ行った旅の終わり、沖田には様々な思いが胸を過ぎったはずだ。
 その思いが、この短い台詞に全て溢れている。
 そしてこの台詞を静かに口にすると、沖田は静かに息を引き取るのだ。このシーンには子供の頃から感動した。私はここで終わりにすれば…とよく思ったものだ。
 とにかく、地球を救うミッションに全力を注ぎ、生命を賭してこれを実行した亡き沖田艦長に敬礼!
 え? 完結編? なにそれ?
名場面 ラストシーン 名場面度
★★★★★
 全ての物語が終わった後、エンディング代わりにヤマトが地球に帰還するシーンが出てくる。誰の台詞もなく、宇宙空間からヤマトが現れたかと思うと目の前を通過して行き、そして地球へと帰還して行くのである。
 ヤマトが見えなくなると台詞の代わりにテロップが流れる。「西暦2200年9月6日ヤマト生還 宇宙は何事も無かったかのごとく平和な時を息ついていた」という文字が画面に流れると、ヤマトを象徴する「赤い地球」が徐々に色を取り戻して青い地球へと変わって行く。たった数秒で地球の海が全部復活するのは大変なことだなんてツッコミは無しだ。
 このシーンはヤマトの帰還を象徴し、物語とはまた別の感動を味わえる。テレビの前で一緒にヤマトと戦ってきて良かったと心から感じることが出来る。この安堵感を味わい、視聴者が登場人物と気持ちを同じに出来るようにするために通常のエンディングと違う終わり方をさせたという作りに感心する。
人類滅亡まで あと   日
感想  あり得ない、あり得ない、あり得ない、最終回で森が生き返ったことだけが子供の頃からも不満だった。死んじゃった者があんなに簡単に生き返るなんて、ここまで戦死者をリアルに描いて来たのは何だったんだ?と問いたくなった。私は森があのまま生き返らなくても良かったと思うし、どうしても殺したくないなら何故最初から意識不明の重体で古代の看病で気が付くとかいう設定を取らなかったのだろう? 気が付いた森を古代が抱いて艦橋に来れば話は丸く収まったはずだと思う。ああ〜、美しい最終回なのに森が死んで生き返ったのだけは唯一の汚点だ。
 それとは対照的に、沖田の最期は上手く描いたと感心する。子供の頃も最後の沖田が写真を落とすところで涙が出たもんだ。沖田の最期がああも上手く描いていたからこそ、後の「完結編」で簡単に生き返ったときにはそれを受け入れられなかった。いや、私はまだヤマト「完結編」を同じシリーズの物語とは認められない。ここで森が生き返ったことと、「完結編」で沖田が生き返ったことの2点は、佐渡が仮死状態を見抜けなかったという初歩的な医療ミスを犯したという設定にせねばならず、私は人を生き返らせるというあり得ない設定のために佐渡をそんなヤブ医者扱いするなんて許せないと言う立場を取りたい。2人が生き返ることで最低の扱いを受けるのは佐渡なんだ。
 それは置いておいて、デスラーの白兵戦格好良かったお。それに必死になってコスモクリーナーを動かす森も格好良かった、真田がこっそりと空間磁力メッキを開発していたのも格好良かった。死んだ人が生き返るエピソード以外はみんな格好良かった、そんな最終回だった。
 最終回の研究を「ヤマトの航海」というテーマで書いたが、結局は総評になってしまったので今回は省略する。

・「宇宙戦艦ヤマト」のエンディング
「真っ赤なスカーフ」作詞・阿久 悠 作曲・宮川 泰 歌・ささきいさお
 これもオープニングテーマと並んで有名な曲だ。雄壮なオープニングに対抗するようなバラード調の曲、そして内容は見送られているときに見つけた真っ赤なスカーフを通じて長い航海への旅立ち、生きて帰れるかどうか分からない旅立ちの思いをうまく歌い上げている。またささきいさおの声がいい。
 背景に流れる画像は赤い地球で始まり、ヤマトの旅をなぞるように火星、土星、冥王星と続きいきなり銀河系の全景へと流れる。銀河系全景が出てくるときに彗星が流れてくるのにツッコミを入れるのはヤボだからやめておこう。次にイスカンダルが出てきて、スターシァの顔が出てくる。最後に青い地球が出てくることで、完全にヤマトの物語をトレースしていると考えられるだろう。最終回まで見ると「あ、なるほど」と思うのだが、最終回ではこのエンディングは流れない。
 なおオープニングと違いこちらにはアレンジ違いなどのバリエーションはない。オープニングがカットされた回ではエンディングは完全に違うものに差し替えられている。
 曲も画像もこの物語にふさわしいと思う。両方合わせて壮大なスケールの「ヤマト」の余韻を味わうのに相応しいものだ。最近のアニメは、特にエンディングで訳の分からない歌手とタイアップで物語とは全然無関係な曲が出てきたりする。リメイクヤッターマンのエンディングがどうしても気に入らないのはそこだ。「ポルフィの長い旅」を見習えっていうんだ。そんなことはともかく、今のアニメはエンディングで物語の余韻にひたることもなく、「放送局が今売りたい歌手」の歌に付き合わされるだけの存在になっていると言いたい。そんなんで本当にそのアニメが印象に残るのだろうか? 「ヤマト」はオープニングもエンディングも高評価を得ているのは、これらも物語と一体になっているからであって、人気歌手をむりやり投入した結果でないことは明白だろうに。これは「小公女セーラ」以前の「世界名作劇場」にも言えるし、80年代中頃までは当然の流れだったと思う。
 こんな質の高いエンディングテーマを聴けるアニメって少なくなったなぁ、と久しぶりに「真っ赤なスカーフ」を聴いて思ったことなのだ。

・総評
・物語
 やはりその頃までのSFアニメと比較して全く違うというのが最初に思うことだろう。それは今回見直した感想も同じである。
 特に味方に戦死者が出るという点については作る側にとってかなりの冒険でもあっただろうし、敵を単なる悪役ではなく目的と正義をもって地球を襲わせている点についても抵抗が大きかったと思う。このあたりの設定については本文中で何度も述べているのでこれくらいにしておくが、この設定こそがSFアニメの歴史を大きく変え、単なる勧善懲悪ストーリーと決別してリアルSFアニメという分野を作って行くのである。「ヤマト」の成功は「999」を生み出し、「ガンダム」シリーズのヒットに繋がり、さらに以降に出てきた様々なSFアニメに大きな影響を及ぼしたのだ。
 ストーリーの根幹は「単艦で地球を救う」というものだが、それに無理がない設定がされている。異星文明から技術供与された強力戦艦、侵略を受け絶滅寸前の地球、それを救うべく航海という3本柱、実は基本はこれだけなのである。この柱が揃っていればここまで壮大なストーリーになるのである。難しい裏設定とか人のつながりに無理に凝る必要はない、柱を基準に物語に出てくる人の「群像」を描くだけで良いのだ。難しく考えなかったことが「ヤマト」の良さだとも私は考える。「999」は後付の設定(メーテルの正体や、千年女王のこと、メーテルとエメラルダスの関係など)が多く設定が難解になってしまった上に矛盾も多く人を選ぶところがあるが、この初代「ヤマト」は誰でも楽しめると思う。そろそろ日本のSFアニメは複雑な設定なんかやめにしてこういう簡単明快な物語に回帰してほしい。
 ただし、単純明快なのはいいが物語の進行速度にムラが大きいのが「ヤマト」の欠点だ。太陽系脱出に10話も費やしているのは内容的にもそこまでトラブル続きだったから仕方がないとしよう、しかし七色星団の戦い以降の展開が早すぎるのである。恐らく七色星団の戦いを作る頃に放映打ち切りの宣告があったのだと思われる。ビーメラ星人登場回のような一話完結ストーリーは無くなり、七色星団の次はいきなりガミラス本星、それが終わったらすぐにイスカンダルと展開が目まぐるしく動くのである。イスカンダルから地球への帰路は最終回1話に押し込められ、その僅かな時間にデスラーが仕返しを挑んでくるという忙しいストーリーになってしまった。そのデスラーとの戦いもじっくり描かず、真田の「こんなこともあろうかと…」という反則技を使ってしまう(ただしこれは当たったと思う)。物語に対して絶対的な放映時間が不足し、ついにはオープニングテーマを削って本編を伸ばすという荒技まで投入する。
 この終盤の展開の早さは、全39話で作られた物語を無理矢理26話に縮めたのだから仕方がないと言えば仕方がない。恨むなら肝心な本放送時に他の番組を見ていた当時の視聴者を恨むしかないのだ。
 しかし、この26話構成の物語はストーリーが単純化してわかりやすくなったとも考えられる。「ヤマト」が社会現象になるほどのブームになったのはそのおかげもあるかも知れないのだ。

・登場人物
 「ヤマト」は基本的に男だけの物語だ、この点は当コーナーで前回取り上げた「小公女セーラ」とはまるで逆である。レギュラーキャラの女性はたった一人だけだし、他の女性は乗組員の家族程度のものだ。スターシァやサーシァは異星人なので女性として取り上げるかどうか悩むことだが、本編で取り上げたように地球人の男と性交可能という点を考えれば女性として扱ってもいいと考えられる。
 主人公の古代進はそれまでのヒーローアニメ主人公の正確を引き継いでいるが、戦況判断については冷静になる面もある。艦長の沖田を病に伏せっている人間として描いたことは古代を主人公として際だたせる重要なポイントだっただろう。もし沖田が健康体だったら、主人公を乗っ取ってしまっていただろうから。
 女性乗組員か森だけというのはリアリティという面から見るとちょっと問題があるような気はする、だがもし「ガンダム」でホワイトベースクルーの女性がフラウだけだったらという論点と比較するべき者ではないだろう。「ガンダム」では色々なタイプの女性を主役艦に複数乗せることで色々な女性が感情移入できるように作っているが、「ヤマト」の場合の森は一人で何でも出来てしまうタイプの女性として描かれている。森の役割の広さは不自然なほど広く、冷徹な仕事一貫の女性、綺麗に着飾る女性、主役の恋人役、男とともに戦う女性、モテる女性、母親タイプの女性、となんでもこなすのだ。
 島や真田や徳川という面々も各々の役割に合った性格が与えられていると思う。真田についてはちょっと掘り下げすぎのような気がするが、ヤマトでの存在感を考えれば仕方ないだろう。アナライザーはそれこそ一人で何度もヤマトを救う活躍をしているのだが、その点は強調せずに別の論理、機械の心というテーマに踏み込む重要な役割の方が大きい。
 敵役もユニークである。デスラーは冷徹な独裁者としての一面と、有能な軍人としての側面と、さらに最後は復習に燃える敗北者としても描かれている。敵が「人間」であると言うことを誇示するためのシュルツ、ヤマトを何度も聞きに追い込むドメル、敵のガミラスが一枚岩でなく人間くさい組織である事を示すためのゲール。悪を悪として描くのでなく「人間」として描かれた彼らは当時のアニメでは珍しかったと思うし、また敵ながら格好良かったと思う。
 さて、最後に名台詞の数である。やはり沖田艦長が圧倒的だったなぁ。当時も今も印象度も強かったし。

名台詞登場頻度
順位 名前 回数 コメント
沖田 ヤマトを束ねるリーダーが堂々の1位。最終回の台詞には泣かされた。
デスラー 2位は意外にもデスラーだった。総統として相応しい台詞はもちろん、落ち着き払った声も良かった。
古代 3位でやっと主役、感情的になる台詞も多かったが冷静に敵情を判断している事も多かった。
真田 今振り返ると最も良識のある台詞を吐いているような。18話の自分の過去を暴露する台詞がよかった。
ドメル 「これが最後の決め手だよ」には泣けてきた。でもやっは「狼」じゃなくて「狸」のような…。
徳川 存在感も威厳もある男だが、いい台詞を吐いても他の人がもっと良いことを言うことが…。
シュルツ この人の存在感はあの最後の演説で決まり。SFアニメの「悪役」が「敵役」に変わった重要なきっかけであった。
佐渡 「世界名作劇場」に出てくるデイトン先生とワイルド先生と気が合いそうじゃな。
太田 森に気があるだろう?
アナライザー ロボットのくせに恋に悩むなよ…。
ナレーター ガミラス壊滅の解説は秀逸。そこに何もなかった…名解説だと思う。
紅一点だけど私はタイプじゃないんで…って訳じゃないけど名台詞には恵まれてないなー。


・「宇宙戦艦ヤマト」のプラモデル
 今回見たDVD-BOXのおまけだった「ヤマト」のプラモデルを製作したので紹介しよう。
 一応架空のものでも、模型である以上は当サイト内の別コーナーで紹介するので、ご覧になる方は下記のリンクからどうぞ。

宇宙戦艦ヤマト・1/700プラモデル

・「宇宙戦艦ヤマト」実写版(2010年12月放映)感想
 2010年12月、かねてから話題になっていた「宇宙戦艦ヤマト」の実写版映画が上映された。多くの設定変更をはらみつつ批判点もあるとはいえ、私としては「ヤマト」の世界観をうまく実写にしたと感心している。この映画を見た私なりの感想と批評を残しておきたい。なおネタバレがあるのでまだ見ていない人はこのページの閲覧に注意してた頂きたい。。

「宇宙戦艦ヤマト」実写版(2010年12月放映)感想


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