「夜ノヤッターマン」

「あにめの記憶」リアルタイム視聴7

「夜ノヤッターマン」

・新しいヤッターマンの物語
 1977年から2年間に渡って放映された「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」の誕生から38年の月日が流れた。だがこのアニメは現在の40代のおっさん・おばはん達にとって伝説的なアニメとして今も記憶に残り続けているのは確かだろう。そして6年前のリメイクアニメ、5年前の実写版映画という形で新たに作られたことで、この名コンテンツは若い世代にも広まったし今の子供達(現在の中学生世代)も知るところとなった。私も子供時代に「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」を見て育った世代であり、かつ2008年のリメイクアニメは娘と一緒に愉しんだ。こうして親から子へと受け継がれるアニメ作品であった。

 2008〜2009年のリメイクや実写映画化の後は新作が途切れていた「ヤッターマン」だが、昨年年末になって新作「夜ノヤッターマン」の放映という情報が入った。その聞こえてきた内容の中で今回はドロンボーが主役である事、そのドロンボーの声優陣を一新すること(滝口順平さん逝去によりドクロベェ様の声が変わるのは覚悟していたが)、時代設定が未来であり主人公はドロンボーの子孫と設定されていること…ここまで知ったところで私は情報をシャットアウトした。これはここまでの最小限の情報だけで視聴した方が面白いと判断したのである。いずれにしてもこれまでに無い新しい「ヤッターマン」の物語を作り出そうとしていることは伝わってきた(…だからガリナやアルエットやオダさま等のキャラクターの出演は、視聴前は知らなかった)。

 「ヤッターマン」の売りはなんと言ってもワンパターンであることである。一定の物語のフォーマットが完成していて、そのフォーマットにゲストキャラと様々なギャグを盛りつけて一つの物語を作ってこれを繰り返す。このゲストキャラとそれに伴うギャグで同じフォーマットでも話がガラリと変わるという点が「強み」であった。2008年リメイクでは、そのゲストキャラに当時ブームの芸能人や世相を取り入れたりすることでオリジナルとの「差」を明確にし、2009年の実写映画では実写になった事自体をネタとしてギャグを広げて「差」をつけた。
 今回の「夜ノヤッターマン」ではこのフォーマットを捨てる事が明確になったのだ。私が「ヤッターマンの新しい物語」としたのはこういう部分である。主役側をドロンボーとしたことで戦う相手が変わってくるのは当然だし、戦う相手が変われば展開も変わってくるから既存フォーマットは使えない。これまでの「ヤッターマン」フォーマットに適正化したキャラとも言えるドロンボーの3人をどのように使ってどんな物語にするのか、これはこの視聴において大きなポイントであった。
 そしてもうひとつは、これまでの小原乃梨子さん、八奈見乗児さん、たてかべ和也さんに代わる新しいドロンボーが、どんな演技で物語を盛り上げるかも非常に楽しみであった。

 本コーナーは、2015年1月から3ヶ月にわたって放映された「夜ノヤッターマン」を、TOKYO-MXでの放送日から一週間以内に視聴してそのまま感想や考察を書いたものである。

・サブタイトルリスト

第1夜 世界は真っ暗闇
第2夜 ヤッターマンにデコピンを
第3夜 俺たちは天使じゃないけど天使のフリをする
第4夜 ゆけむり露天風呂紀行
第5夜 母に捧げるハリケーン
第6夜 冬の咲く花
第7夜 夢の海
第8夜 クッシャロテッシャロ湖のクッシー
第9夜 アバレシ番外地
第10夜 ヤッター十二神将包囲網
第11夜 真実のヤッター・メトロポリス
第12話 夜明け


・「夜ノヤッターマン」主要登場人物

ドロンボーその同行者等
ドロンジョ
(レパード)
物語の主人公、明るい性格の9歳の少女でドロンジョ様の子孫。母が死ぬときにヤッターマンが助けてくれなかったことで、ドロンボーを結成する。
 …最初の頃はドロンジョ様を意識した高笑いを繰り返していたが、いつの間にかそれはやめちゃったなー。。
ボヤッキー
(ヴォルトカッツェ)
先祖代々ドロシーの家に仕える男、主に技術的なことを担当。「じょしこうせい」という言葉が気になって仕方が無い。
 …最初は違和感あったけど、物語が進んで過去のボヤッキーとは違う新たなボヤッキー像を創ることに成功したと思う。
トンズラー
(エレパントゥス)
先祖代々ドロシーの家に仕える男、主に力仕事担当。オダ様をよだれを垂らしながら狙っている。
 …そしてこちらは過去のトンズラーとは違い大男だ。そのパワーを活かした格闘戦は過去のヤッターマンより多い。
オダさま ドロンボーと一緒に行動するブタで、なぜか人の言葉を喋る。木に登るのが好き。
 …本作ではおだてブタがコックピットメカではなく正式な登場人物に。ドロンボーより目立つのが玉に瑕だが…。
ドロシー レパード(ドロンジョ)の母で、娘がヤッターキングダムで幸せに暮らせるようになるのが夢だった。
 …美人薄命とはこのキャラのための言葉だろう。エンディングでは永遠の妊婦だし…。
ガリナ ヤッターマンによる強制労働で両親を喪った少年、最初は自分では何も決められず運命をサイコロに託していたが…。
 …終わってみればこいつが主人公を乗っ取っていた。それだけ成長著しいということだ、でも嫌いじゃない。
アルエット ヤッターマンによる強制労働で両親と飼い犬を喪った少女、いつの日か天使が両親のところへ連れて行ってくれると信じている。
 …こちらは逆に中盤では画面の中にいるだけで目立った活躍がなかった。7話まで視聴者サービス要員だったと言われても仕方が無いだろう。
ゴロゾー アルエットの父で、アルエットを目の中に入れても痛くないほど可愛がっている。強制労働に連行される際、ガリナにアルエットを託した。
 …たぜーだぜーって煩かったけど、良い父親だったと思う。
ワン アルエットの飼い犬で、ゴロゾーと共に強制労働に連行されたらしい。
 …なんで犬まで強制労働にかり出されるかなー、しかも連行先でもゴロゾーと一緒だったらしい。
「ヤッターマン」関係者
「ヤッターマン」 戦争により疲弊した台地に「ヤッターキングダム」を作って、人々のために働いているとされているが…。
 …まぁ、だいたい正体は物語中盤までに解ると思うけどね。
ゴロー将軍 ドロンボーを追う「ヤッターマン」の手下のリーダー格、基本的にヤッターマンらしくないマジな悪役。
 …だぜーだぜーって煩かったけど、この悪役に泣かされるとは思ってもなかったよ…。
ヤッター十二神将 「ヤッターマン」の手下の12人の将軍、あ、ゴロー将軍が途中でクビになったから11人だ。
 …名前が安直すぎて笑った。
ゲストキャラ
ビーネとミッちゃん(4夜) 第4夜で出てきたドロンボー一味らに食事を与えた夫婦で妻は臨月、だが夫が「ヤッターマン」のための強制労働が決まり…。
 …ヤッターキングダムが地獄である事を知らしめるために出てきた、あの夫婦の「裏切り」は印象的。しかし奥さんの頭についている触覚みたいなのはなんなんだ?(最終回に出てきた赤ん坊にもついている)
タケシ(5夜) 第5夜で描かれた雪祭りの決闘大会の優勝候補の少年、とても強いが母思い。
 …「タケシです!」の口癖と、立ちション癖が印象的。しかも自分が住んでいる国の圧政に気付いてなさそう。
おじさん(6夜) 第6夜でドロンジョを助けた名も無い男、最初はヤッター兵に捕まるからと冷たく接するが…。
 …てっきり第6夜のラストで死んだかと思ってた。
リュウ(7夜) 第7夜で出てきた漁師でどMが特徴の男、「本当の海」を求めてヤッター兵と対峙していたようだ。
 …素潜りが得意だから長時間息を止めていられるってことは、沿岸で貝やウニを獲っている漁師なのだろう。
クッシーとクッちゃん(8夜) 第8夜に出てくる怪獣の親子。クッシャロテッシャロ湖に住んでいて、ゴロー将軍の迫害を受ける。
 …ここから2夜のために、アルエットに動物の言葉が解るという設定が加えられたとしか思えない。
サンピー(9夜) 第9夜に出てくるサル、ガリナらが見つけた小屋でかつて主人が乗っていたスーパーカーを守っている。
 …マッハGOGOGOにサルが出ていた記憶が、仄かによみがえった。あっちは三平だっけ?


・「夜ノヤッターマン」オープニング
「極限Dreamer」作詞・勇-YOU- 作曲/編曲・太田 雅友 歌・SCREEN mode
 賑やかであるが嫌いな曲じゃない、賑やかでもテンポが良くて聴いているとこっちまで同じノリになってしまいそうな曲だ。最近は某2199の後期オープニングのように賑やかなだけでテンポが上手くない曲が多かったりするんだけど…でもこれらの曲の違いは紙一重だと思う。歌詞の内容は…実はよく聞き取れていない。だが物語の主軸である「夜明けを信じて明るく生きる」という力強さは伝わってくる。
 背景画像は新ドロンジョのイメージビデオ的なものだ。最初はドロンジョになる前のレパードが悲しみ等を表現するところが主として映され、交互にドロンジョになった姿が一瞬現れる。その中でレパードがヤッターマンの亡霊に襲われ、そこにボヤッキーとトンズラーが現れ、レパードもいつの間にかドロンジョになって戦いシーンが再現される。そして戦いにあらかた決着がつくと、ボヤッキーが自爆ボタンを「ポチッとな」して大爆発、爆風に飛ばされるドロンボーの3人が豪快に描かれた後、最後にドロンジョの瞳がズームアップされ、その中にレパードの母であるドロシーが浮かび上がるという内容だ。この内容にはドロンジョの「内面」を上手く再現しているだろう。
 このオープニングはけっこうお気に入りだ。本作は静かに始まる物語も多かったが、それとのバランスが意外に良いのも驚きだ。ただ、歌詞が聴き取りにくいのが…字幕も入らないんだよなー。

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