・Peninsula Corridor:San Francisco-San Jose Route
 半島回廊:4th & King Streets, San Francisco(サンフランシスコ4番街 キングストリート駅)~San Jose Diridon(サンノゼ ディリドン駅)

 2023年6月24日 プレイ動画追加


アメリカのでっかい通勤列車を愉しもう!

・収録車両
 F40PH-2CAT in Caltrain Livery(旅客用ディーゼル機関車)
 Gallery Cars & Cab Car in Caltrain Livery(2階建ギャラリー形通勤客車)
 GP38-2 Road Switcher in Union Pacific Livery(貨物用ディーゼル機関車)
 その他関連貨車

・別売りオプション車両
 MP36PH-3C Diesel Locomotive in Caltrain livery(旅客用ディーゼル機関車)
 Bi-Level Cars and Cab Car in Caltrain livery(2階建バイレベルコーチ形通勤客車)
 MP15DC Diesel Switcher in Caltrain livery(入換用ディーゼル機関車)


 アメリカ西海岸最大の州であるカリフォルニア州。アメリカ合衆国で最も人口が多い州で、ロサンゼルス、サンディエゴ、サンノゼ、サンフランシスコ、サクラメントといったアメリカでも名だたる大都市が存在する州である。
 最大の都市はロサンゼルスであるが、これに次ぐのはサンフランシスコを中心に、サンノゼ、オークランドを含むサンフランシスコ湾沿岸の「ベイエリア」と呼ばれる都市圏で、この都市圏は全米で第6位の人口規模となる。
 今回紹介する路線はこの「ベイエリア」の都市を結ぶ路線だ。カリフォルニア州北部の経済都市サンフランシスコと、カリフォルニア州を代表する工業都市で「シリコンバレー」の中心都市であるサンノゼを結ぶ「半島回廊」と呼ばれる47.5マイル(約77km)の非電化路線だ。

 この路線の歴史は古く、1863年の開業である。1863年といえば日本では幕末と呼ばれる時代で、アメリカは南北戦争をやっていた頃で大陸横断鉄道がまだなかった時代だ。古くからサザンパシフィック鉄道により運行されていたが、サザンパシフィック鉄道は通勤輸送には熱心ではなく、20世紀も半ばになるとこの路線の旅客輸送は廃止の議論が起きたという。
 1980年代からは沿線自治体による運行補助が始まった時に、この路線に「Caltrain(California Train)」というブランドが付くようになった。1987年には「半島回廊線運営委員会(Peninsula Corridor Joint Powers Board, 略称PCJPB)」が設立されて、路線の運行権が買収されて現在に至る歴史を持つ。

 ゲームではこの路線のサンフランシスコ~サンノゼ間が再現され、頻繁に運行される通勤列車と、一日数本運行される貨物列車の運転をプレイできる。別売りオプションを含めると通勤列車が2種類ずつの機関車と客車、貨物列車も2種類の機関車が用意されていて、様々な列車をプレイできるのが魅力だ。
 このために私は、我が家のPCで「Train Sim World 2」が正常に動作するようになった2022年6月にこのマップを購入、別売りオプションの車両も同時に導入してさんざん遊び倒したマップだ。その様子のほんの一部は、以前このページで記していたが、このたびキチンとした紹介ページにした次第だ。

 本マップに付属の車両は、標準ではFH40PH形ディーゼル機関車が牽引する「ギャラリー形」と呼ばれる2階建て通勤客車と、ユニオンパシフィック塗装のGP38-2形ディーゼル機関車が牽引する貨物列車だ。このうちFH40PH形ディーゼル機関車は旧作時代にアムトラック塗装を紹介していたが、今回はサンフランシスコの通勤列車として活躍する「Caltrain」塗装だ。牽かれる客車が日本製の客車である点も、日本の鉄道ファンとしてはみどころのはずだ。
 オプションではMP38PH形ディーゼル機関車が牽引する「バイレベルコーチ」と呼ばれる2階建て通勤客車と、操車場や車両基地で入換用として使用されているMP15DC形ディーゼル機関車だ。
 車両はそれぞれ後述のアルバムで詳述するが、今回はユニオンパシフィック塗装のGP38-2形ディーゼル機関車については、本マップ区間特有の車両の紹介を優先させるため割愛させていただくことにする。

 この路線のゲームとしての魅力は、アメリカ西海岸の通勤列車を体験出来ることにある。強力なディーゼル機関車が牽引する2階建ての客車という日本の通勤電車とは全く違う風景を手軽に体験出来ることだ。通勤列車は1日数本の快速列車で約1時間で全線を踏破でき、各駅停車でも所要時間に大差はないので気軽にプレイできるだろう。
 そしてこけらの通勤列車の合間を縫うように、貨物列車が何本か設定されていてこれも運転出来るのが嬉しい。それだけでなく操車場での貨車の入換や、車両基地での通勤列車の編成作業などもプレイできるので、ゲームの幅がとても広く楽しいのが特徴だ。

 では、以下のアルバムで車両の紹介と、動画によるプレイ状況と沿線風景の紹介を行っていこう。


・車両の紹介
 最初に紹介するのは、本マップに標準で付録しているF40PH形ディーゼル機関車が牽く「ギャラリー形」と呼ばれる2階建て通勤客車だ。

 F40PH形ディーゼル機関車はアメリカを代表する中・短距離用の旅客用ディーゼル機関車で、アムトラックや各地の非電化の通勤路線で活躍している。
 F40PH形ディーゼル機関車は、1976年から1998年に掛けて506機がGEの手によって作られた。
 「カウル・ユニット」と呼ばれるキャプ(運転室)と機器室を車幅一杯にしたデザインが特徴で、出力は2200kw、最高速度は103mph(166km/h)とされている。
 そのF40PH形ディーゼル機関車に牽かれる客車は、「ギャラリー形」と呼ばれる2階建て通勤客車。「ギャラリー形」の由来は後述するとして、この客車は1984年~1987年に掛けて導入された。
 この客車は日本製で、日本車輌の手によるもの。

 しかし、公共事業に使用する製品が自国製である事を求める「バイアメリカン法」に適用を受けたため、車体以外の多くの機器類はアメリカ製の製品が使われ、最終組立はアメリカ国内で行われため、現地では「アメリカ製」ということになっている。

 私はそんなことなんかどうでも良いのでこの車両はれっきとした「日本製」と考えている。ですので本サイトや動画でもこの車両を「日本製」として扱うことにする。
 「ギャラリー形」は大きく2形式に分かれている。機関車と反対側の編成端に付く4000形と、中間に組み込まれる3800形だ。

 こちらは4000形を型式写真風に撮ってみたもの。「Caltrain」では終端駅での機関車の付け替えを省略するため、編成端の客車にも運転席を付けて推進運転が出来るようにしてある。
 この4000形客車はサンフランシスコ側に連結され、サンフランシスコ行きでは先頭に立って走る。
 外観からも解ると思うが、運転席は2階に設置されている。飾り気のない無骨な前面がアメリカの鉄道らしくて印象的だ。
 こちらは中間車となる3800形、4000形と比較すると運転台がないだけでほとんど同じ。
 この客車の外観上の特徴は、2階建て車なのに床が通常構造であること。

 定員は座席だけで146人(4000形は139人)、とにかく座席を増やして一人でも多く乗れるようにと設計されたのだろう。
 これが客車の車内。中央の廊下部分が吹き抜けになっていて、2階席から1階が見渡せる構造であることが「ギャラリー形」の由来だ。
 このような構造にすることで、床を通常構造としたまま2階建てにすることができたのだ。

 1階席は2人がけ、2階席は1人がけの座席が、車体中央のデッキ方向へ向く「集団見合い」で配置されている。もちろん座席はリクライニングも回転もしない。
 1階席の座席をアップで見る。1階席は横幅に余裕があり、座席が2人がけになっているだけでなく、窓際にも肘掛けが装備されている。
 デッキ扉に隣接する座席だけは、4人向かい合わせのボックスシートになっている。シートピッチが狭そうで、身体が大きい欧米人でも大丈夫なのかと心配になる。
  続いて2階席の様子。中央部に吹き抜けがあるため、客室は完全に左右に分離してしまっている。その分離してただでさえ狭いフロアに通路と座席を無理矢理詰め込んだようで、窮屈な印象は拭えない。
 吹き抜けの上部は荷物棚となっているけど、下に荷物落としたらたいへんな事になるぞ。
 2階席へはデッキに隣接した急な階段でアクセスするが、その様子は後述の動画をご覧頂いた方が分かりやすい。
 通路幅を捻出するため、座席にしわ寄せが来ている。窓際の肘掛けは省略されている。
 一部の窓は非常時に開閉できるようになっていて、その窓には「EMERGENCY EXIT」の表示がある。
 運転席付きの4000形の1階席のうち、運転室側の半分は座席が設置されていない。
 これは自転車ごと乗ることが可能なサービスに対応したもので、その際に自転車収納スペースとして使用する空間だ。
 F40PH形ディーゼル機関車の運転台。典型的なアメリカンタイプのディーゼル機関車の運転席だ。
  こちらは4000形客車の運転台。自動ブレーキ弁の配置が右側となる以外は、F40PH形ディーゼル機関車に準じている。
 車体中央に貫通路があるため、運転室は運転席と助手席で完全に分離している。その狭い空間に機能的に機器類が配置されている。
 続いてMP36PH形機関車が牽く「バイレベルコーチ」形客車を紹介しよう。こちらの車両は別売りオプションとなるので注意。

 日本のディーゼル機関車では見られない流線型ボディが印象的だ。
 MP38PH形ディーゼル機関車は、アメリカのMotivePower社によって2003年から製造された「MPXpress」シリーズの機関車のうちのひとつ。
 「Caltrain」で使われているのはMP36PH-3Cというタイプのもので、出力3000kw、最高速度93mph(150km/h)とされている。
 そしてMP38PHに牽かれる客車は、「バイレベルコーチ」と呼ばれる2階建て通勤客車だ。
 ドアが少なく客の乗り降りに時間が掛かる上、座席が狭いといったデメリットがある「ギャラリー形」に変わる客車として、1975年からカナダのボンバルディア社で製造がされた客車だ。
 「Caltrain」では2003年から導入され、当初は優先的に快速列車に運用していたというが、現在は優先運用はなく「ギャラリー形」と混用されている(併結はしない)。
 まずは機関車と反対側の編成端に付く客車を型式写真風に紹介しよう。こちらも終端駅で機関車を付け替えなくて済むように運転台が設置されている。
 「ギャラリー形」と同様にサンフランシスコ側に連結され、サンフランシスコ行きでは先頭に立って走る。

 前面デザインが昔の日本の通勤電車みたいで、親近感がある。前面窓上の車号の電光表示がアメリカっぽいけど、日本の電車の行き先幕にも見える。
 中間車を型式写真風に撮ってみた。客扉が片側2箇所になり、客の乗降時間を短縮する効果が大きいであろうことが想像できる。また1階席は低床構造になっている。
 台車がディスクブレーキ装備になっているのが、欧米の車両らしくて印象的。
 社内の様子を見てみよう。まずは2階席、「ギャラリー形」の2階席と比較すると、広々としていることが解るだろう。
 ただ座席からは肘掛けが完全に消え、その分は通路幅を拡げて立席スペースに充てている。「ギャラリー形」では立席で乗るスペース自体がなく、混雑時に困ったという。

 車内を通り抜ける際は、自然に2階席を通ることになるよう、2階席への階段は中央に設置されている。
 こちらは1階席。客扉がある分短いが横幅は十分で、2階席と同じ手法で立席スペースとして通路が広く取られている。
 客扉付近はロングシートもあり、車椅子対応で座席が折りたためるようになっている箇所もある。

 1階席への階段は車端から見ると左側に設置されている。階段スペースと逆側にはお手洗いが設置されている。
 ここは車端部の通常フロアの部分。日本の2階建て車と違いこの部分に客扉があるわけではないので、この部分も広々としている。天井が高い分、ここが一番快適かも?
 「ギャラリー形」と同じく、運転室付き車両の1階席は自転車収納スペースになっている。こちらでは全部が自転車収納スペースになっているのでなく、客席が半分程度残してあるのが面白い。
 これはMP38PH形ディーゼル機関車の運転台。近代的なデスクタイプの運転台で、ブレーキハンドルやマスコンハンドルが真正面に配置されている。

 流線型の窓がとても広く、日当たりが良く明るいのが特徴。日本の機関車には見られない開放的な運転台だ。
 「バイレベルコーチ」の運転台だが…前後方向にとても狭くて撮影に苦労した。
 運転台そのものは前述のMP38PH形の運転台をコンパクトにした感じ。こちらも貫通構造になっているので、運転台は狭い空間に上手くまとめられている。
 そして別売りオプション車両のもうひとつは、入換用機関車であるMP15DC形ディーゼル機関車だ。
 本ゲーム内では主に操車場での貨車の入換や、車両基地での通勤列車の編成作業として登場するが、この画像のように本線での貨物列車牽引列車もある。

 ちなみにこっち側はこの機関車の「後位側」、つまり後ろに当たる。「背中合わせ」ではなく「腹合わせ」の重連というわけだ。
 MP15DC形を前位側から型式写真風に見てみよう。L形車体の典型的な「スイッチャー(入換機)」だ。

 MP15DC形は1974年から1980年に掛けて351両が、EMD(Electro-Motive Diesel )社によって製造された。
 出力は1119kw、最高速度は65mpf(105km/h)。
 アメリカ各地の鉄道会社が入換機として採用したので、アメリカでも典型的なスイッチャーである。
 後位側から型式写真風に見てみた。
 前位側から見るとごく普通のディーゼル機関車に見えるが、後位側は入換作業に対応して視界を少しでも広げるためか、ガラス部分の面積が広いのが特徴。

 なのでこちらを前にして本線上を走ると、とても見晴らしが良くて気持ちよい。入換作業でもこちら側が前だと、連結器部分まで見えるので連結作業がとてもやりやすい。
 重連単機で停車するMP15DC形。
 ゲームでは午後にサンノゼからサンフランシスコまで重連単機で走った後、折り返し軽貨物列車を牽引してサンノゼへ戻るのが、本線貨物運用の行路だ。単機回送はパワーありすぎで運転が難しい…。
 MP15DC形ディーゼル機関車の運転台はこんな感じ、運転席そのものは広い運転室の片隅にこぢんまりとまとまっている。配置はF40PH形にソックリだ。
 この機関車でのプレイでは、何度も立ったり座ったりする。入換作業で外に出ることが多いのだ。

…続いては車窓風景を「プレイ動画」で紹介しよう。まずはサンノゼからサンフランシスコまで、朝ラッシュの快速列車を運転した見た動画から。

・「世界の車窓から」
 サンノゼ ディリドン駅→サンフランシスコ4番街 キングストリート駅間 全線プレイ動画
(約63分)

F40PH形機関車牽引のギャラリー形客車で、朝ラッシュのサンフランシスコ行き快速列車を運転してみた。
日本製のギャラリー形客車を先頭にした推進列車 2階席と同レベルの運転席展望動画をお楽しみあれ。
【ナレーター】「VOICEVOX:春日部つむぎ」 
 サンフランシスコ4番街 キングストリート駅→ニューホール操車場間 貨物列車を運転(約92分)

MP15DC形ディーゼル機関車牽引の軽貨物列車で、サンフランシスコからサンノゼへ走ってみた。
文字通り走り回りながらの貨車の連結開放もあり、このゲームでの貨物列車運転の醍醐味が伝わればと思います。
【ナレーター】「VOICEVOX:春日部つむぎ」 

 この「半島回廊」という路線だが、近い将来に路線の状況が大きく変わり、今回した車両達も引退の時が迫っている状態だ
 というのも本路線の電化工事が着々と進んでいて、この記事を書いている時点では2024年に電化開業予定とされている。既に一部区間では電化工事は終わっていて、次期車両(スイス製2階建て通勤電車)の試運転も始まっているとのことだ。
 そうなるとこのゲームの状況は完全に「過去」のものとなり、本ページに記した内容も過去のものとなってしまう。このゲームで再現された大型のディーゼル機関車が大きな2階建て通勤客車を牽引するという、アメリカらしい「でっかい」通勤列車の光景が間もなく見られなくなるのだ。
 この路線の紹介は是非ともその電化工事完成の前にとうしてもやりたかったというのが、この記事だけでなく本サイトで「Train Sim World 3」の紹介を初めた理由のひとつでもあるのだ。ここにこのコーナーの目的のひとつが達せられたかたちだ。

 まもなく見納めになってしまうでっかい通勤列車。
こちらも日本にはないタイプの鉄道を愉しめるので、多くの人に手に取ってもらいたい。


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