・Northeast Corridor:New York-Trenton
 北東回廊:New York Penn(ニューヨーク ペンシルベニア駅)~Trenton Transit Center(トレントン駅)

 2023年8月6日 プレイ動画変更


ニューヨークの高速列車と通勤列車を愉しむ

・収録車両
 NJ TRANSIT ALP-46 electric locomotive(通勤列車用電気機関車)
 NJ TRANSIT Multilevel coaches and cab car(2階建マルチレベル形通勤客車)
 Amtrak ACS-64 electric locomotive(高速旅客列車用電気機関車)
 Amtrak Amfleet coaches and ex-Metroliner cab car(アムフリート形高速客車 および メトロライナー形電車を改造した制御客車)

・別売りオプション車両
 Acela Express trainset in Amtrak Acela livery(高速列車用固定編成電車)


 アメリカ最大の大都市、ニューヨーク。あまりにも有名な大都市だからここで改めて説明するまでもないだろう。そのニューヨークの街を北東から南西へと横断するかたちで、アメリカで最も旅客輸送が活発な鉄道路線である「北東回廊」が貫いている。「北東回廊」はアメリカ東海岸を北から南へ、ボストンからワシントンD.Cまでアメリカ有数の大都市を貫きながら735kmを結ぶ路線である。
 今回はその「北東回廊」の一部、ニューヨーク市街とニュージャージー州を結ぶ58マイル(94km)の路線を紹介しよう。なおこの「北東回廊」だが、当サイトでは旧作のワシントンD.C~ボルチモア間については、以前に紹介済みである。

 「北東回廊」のニューヨーク市街駅はペンシルベニア駅、ニューヨーク市街のタイムズスクエアガーデンの下にある巨大な地下駅で、ここからハドソン川を河底トンネルでくぐり、ニューアークを経由してニュージャージー州の西端に近いトレントンまでの区間が本マップの再現区間だ。
 この区間はニューヨークとワシントンD.Cを結ぶ都市間高速鉄道として高速列車が頻繁に運転されると共に、ニューヨークの通勤通学輸送を支える通勤列車も多数運転されている。高速列車は全米に路線網を持つ旅客鉄道公社「アムトラック」が担当し、通勤列車はニュージャージー州の公共交通を担う「ニュージャージー トランジット(NJT)」が担当している。

 車両は通勤列車は前回紹介したサンフランシスコの半島回廊と同様に2階建て通勤客車による運行だが、北東回廊は電化されているのでこの区間では電気機関車の牽引による。客車は「マルチレベル形」と呼ばれるもので、日本の2階建て車両と同様に台車上フロアに客扉を配したタイプの2階建て車である。
 高速列車は2種類用意され、標準でインストールされるのは高速電気機関車が牽引する「アムフリート形」と呼ばれるものだ。
 これに別売りオプションで、アメリカ版新幹線ともいえる「Acela Express」が用意されている。今回は「Acela Express」については最小限の紹介に留めることにする。

 この路線のゲームとしての魅力は、やはり世界有数の大都市であるニューヨークの鉄道を体験出来ることだが、このマップで普通に旅客列車を運転するだけではニューヨークらしい景色を見ることが全くないという点は要注意点である。「自由の女神」「エンパイアステートビル」などといった特定の名所はもちろん、高層ビルが沢山建ち並ぶ摩天楼を見ることすらない。ニューヨーク市街にある車両基地までの回送列車を運転すれば、ニューヨークの摩天楼を遠目に見ることが出来るが…これはニューヨーク ペンシルベニア駅から南西方向への路線は、地下区間がとても長くて地上に顔を出すところはニューヨーク市街から離れた地点であることによる。
 ニューアークからニュージャージー州方面は、大陸の平原的な風景が続くので景色に変化はなくなるが、車両の最高速度までスピードを上げて運転出来るのは楽しい点だ

 では、以下のアルバムで車両の紹介と、動画によるプレイ状況と沿線風景の紹介を行っていこう。


・車両の紹介
 最初に紹介するのは、本マップに標準で付録しているACS-64形電気機関車が牽く「アムフリート形」と呼ばれる高速客車だ。

 ACS-64形電気機関車は2013年に製造が始まった機関車で、最大出力は6400kw、最高速度は125mph(200km/h)。
アムトラックでは北東回廊と、フィラデルフィアとピッツバーグを結ぶキーストーン回廊が主な活躍の舞台だ。
 製造はドイツのシーメンス社の手によるが、主要部品はアメリカ製のものが使用され、カリフォルニア州サクラメントの工場で生産された。
 基本設計はヨーロッパの電気機関車と同様で、ドイツやオーストリアに似たような機関車があることはここではナイショだ。

 なんか怒っているような厳つい顔が印象的で、日本人が好むスタイルではないと思う。
 ACS-64形機関車が牽引するのは「アムフリート形」と呼ばれる高速客車。そしてそのしんがりでもあり、先頭に立つこともあるのがこの制御客車だ。

 この制御客車の顔を見て「どこかで見たような…」と思った方もあるだろう。それもそのはず、この制御客車はかつてはアメリカを代表する高速電車だった「メトロライナー」電車を改造したものなのだ。
 その証は顔だけでなく、後位側デッキ部分の屋根に「パンタ台」があることだ(そのパンタ台はこの画像に写っている)。
 「メトロライナー」電車は、1969年に61両が製造された最高速度120mph(193km/h)の高速電車。ニューヨーク~ワシントンD.C間の都市間列車で使用された。

 ところがこの電車は故障が多く、1988年までに「アムフリート形」の制御客車に改造された。1両は原形(電車)のままで残され、ペンシルベニア鉄道博物館に保存されている。

 「メトロライナー」由来の制御客車を型式写真風に見てみた。台車がイコライザ台車なのがアメリカの電車らしい。
 ここからは「アムフリート形」客車について語ろう。
 1975年から活躍する高速客車で、アムトラックの都市間列車の主力である。
 全長25.91メートル、全幅3.035メートル。車体構造は「メトロライナー」電車の設計を流用している。

 この画像は「コーチクラス」という一般車。日本の鉄道でいう「普通車」だ。
 この車両は「ビジネスクラス」と呼ばれる車両で、日本の鉄道で言えば近郊電車のグリーン車ってところだろうか?
 外観は「コーチクラス」と全く同じで、車内の座席だけが違うようだ。

 ちなみに編成端に制御客車を連結した編成はモノクラスでこの「ビジネスクラス」や後述の「カフェカー」は連結されない。制御客車を連結しない、長距離運用の長編成列車のみに連結されている。
 こちらは長距離運用列車のほぼ中間に連結される「カフェカー」だ。他の車両より窓が少なく、車体中央の窓がない部分がカウンターと厨房だ。

 「アムフリート形」客車の共通的な仕様として、車体両端にデッキがあることと、妻面にはテールライトが設置されていてどの車両も車端に連結できることだ。
  続いては車内の様子だ。これは「コーチクラス」の車内で、方向固定のリクライニングシートが並ぶ。日本の特急電車にソックリだが、やっぱり座席は回転しないもよう。
 座席の向きに偏りがあるが、進行方向によっては後ろを向く席が多くなりそう。
 こちらは「ビジネスクラス」で、「コーチクラス」と比較してクッションが厚めのシートが並び、シートピッチも広めらしい。
 でもやっぱり座席は回転しないらしい。
 続いては「カフェカー」の食堂部分。大きなテーブルと背が低い座席が印象的で、こんな楽しそうな車内の列車は日本にはないなぁ。
 「カフェカー」のカウンターと厨房、厨房と言っても簡単なコンロと電子レンジがあるくらいで、出てくる食事は茶菓子レベルかあっても軽食までだ。
 日本ではこういう車両があっても使う人がいないからなぁ。駅売店を充実させる方向に進んでしまったから…。
  ACS-64形電気機関車の運転台だ。機関車ながら前傾したデザインを取っているため、日本の電車のようなつくりだ。
 2010年代の機関車だけあって、計器類は全て液晶モニタにとって代わっている「グラスコックピット」だ。
 こちらは「アムフリート形」制御客車の運転台。前面貫通型のため運転室は片隅構造で、狭いところに様々な器機を詰め込んでいる。
 こちらは1980年代に電車から制御客車に改造された経緯があるため、計器類はアナログメーターが占めているのでなじみやすい運転台だ。
 信号保安機器類の「後付け」感がとてもすてきだ。
 本マップで出てくる駅は高床ホームなので一般的な車体のレベルで乗降可能だが、アメリカの鉄道は地域にもよるが低床ホームの駅が多い。そのため「アムフリート形」では収納式のステップが仕込まれていて、低床ホームに対応可能となっている。
 続いては、本ゲームでは普通列車を担当するALP-46形電気機関車牽引の「マルチレベル形」通勤客車だ。

 機関車も客車もボンバルディア社の手によるもので、NJTのニューヨーク~トレントン線の車両は帯色がグラデーションなのが印象的だ。
 ALP-46形電気機関車は2001年から2002年に掛けて29両が製造され、2009年から2011年に掛けて36両が追加された。その全機がNJTに投入されている。
 ドイツの101形電気機関車を基本にしており、ドイツで製造され輸出されたというかたちになっている。
 そのALP-46形電気機関車に牽かれるのがこの「マルチレベル形」と呼ばれる通勤客車。
 2006年から製造が始まり、ニューヨークからニュージャージー州方面への通勤列車で活躍中。
 画像にあるのは運転台がついた制御客車、機関車はニュージャージー州側に連結され、ニューヨークへ向かって走る場合にこの制御客車が先頭に立つ。
 「マルチレベル形」の制御客車を型式写真にしてみた。日本の2階建て車両と同様に台車上に客用扉があり、乗り込んだ乗客は上下へ分かれる階段で2階や1階の座席に乗り込むかたちだ。
 「マルチレベル形」の中間客車を型式写真にした。台車上の客扉とは別に、車端デッキにも客扉があるのがわかるだろう。
 これは高床ホームと低床ホームで扉を使い分ける構造による。高床ホームでは台車上の扉を使い、低床ホームではステップが仕込まれている車端デッキの扉を使うようになっているのだ。
 ゲームではどちらの扉も開閉できるが、車端デッキ扉のステップは残念ながら作動しないようだ。
 「マルチレベル形」の車内へ入ってみよう。これは2階席の様子で、「集中離反」の配置で固定シートが並ぶ。
 窓際、通路際双方の座席に肘掛けがあって、座席もゆったりしていて気持ちよさそうだ。とても通勤列車の車内とは思えない。
 こちらは「マルチレベル形」の1階席だ。2階席と同じように見えるが、台枠部分から下では車幅に余裕がないのか、窓際席の肘掛けは省略されている。
 通路部分と比して座席部分の床が一段高くなっていて、そのせいが頭上空間が狭く見えて窮屈な印象だ。
 それでも日本から見れば、通勤列車とは思えない内装だ。
 台車上のフロアは、高床用と低床用の2箇所のドア間に折り畳み式のロングシートが設置されている。ここは車椅子対応スペースとしても使用される。
 客室の広さに比して窓が少なく、実際には暗めの空間なのかもしれない。
 ALP-46形電気機関車の運転台の様子だ。
 作られた時期がACS-64形電気機関車より少し前なので、こちらは速度計などの運転情報は液晶パネルに表示されるが、ブレーキ圧力や電気系についてはアナログメーターとなっている。
 「マルチレベル形」制御客車の運転台。こちらも貫通構造のために運転室は片隅式で、ALP-46形機関車の運転台と全く同じ内容を狭い部分に無理矢理押し込んだ感じだ。上画像と見比べてみると面白い。
 これはオプションとなる、アメリカが誇る高速列車「Acela Express」だ。フランスのTGVを基本にした、動力集中型の高速電車だ。
 2000年からボストン~ワシントンD.C間で運転され、最高速度は150mph(240km/h)…専用の高速新線を持たず、19世紀に開業した路線も走るという条件でこの速度はかなり健闘していると思う。

 前述の通り、今回はこの車両の紹介は最小限に留めたい。「Train Sim World 3」の他のマップにも登場するからだ。
 「アメリカ版新幹線」とも言える「Acela Express」だが、運行開始から20年が過ぎ老朽化が進み、間もなく新車に置き換えられることになっている。
 フランスのTGVを置き換える車両と同形の「Avelia Liberty」というアルストム社製の高速電車の投入が始まっており、2023年中に営業運転開始予定とのことだ。

 マイクロソフトの「Train Simulator」に採用された頃は新車だったが、今では引退が迫る旧型車になってしまったということだ。

…続いては車窓風景を「プレイ動画」で紹介しよう。まずはニューヨークからトレントンまで、元電車の制御客車を運転してみた動画から。

・「世界の車窓から」
 ニューヨーク ペンシルベニア駅→トレントン駅間 全線プレイ動画
(約54分)

「アムフリート形」制御客車を先頭にした都市間列車で、ニューヨークかニュージャージー州まで走ってみた。
昔は電車だった制御客車を運転して、かつての名列車「メトロライナー」の気分を味わってみよう。
【ナレーター】「VOICEVOX:春日部つむぎ」 

 ジャージー・アベニュー駅~ニューヨーク ペンシルベニア駅間 通勤列車を運転した動画
(約59分) 2023年8月6日動画変更

ALP-46形電気機関車が牽引する通勤列車で、ニューヨークへ向かいます。
2階建て通勤客車の「パーク&ライド」用列車という、アメリカらしい通勤列車で走ってみよう。
【ナレーター】「VOICEVOX:春日部つむぎ」 

星条旗を掲げた列車が、大都市の地下から周辺都市へ。
でっかい国のでっかい都市間列車や通勤列車を、多くの人に愉しんでいただきたい。


前のページに戻る