第31章 「不運な白百合姫」 |
名台詞 |
「ああ神様、どうかお願いです。この船をあの橋のどの棒杭でも結構です、近づけて下さい。真ん中を通したりしないで下さい。きゃー神様、その前にもう一つお願いがございます。あの橋に近付く前にこの船を沈めないで下さいまし、お助け下さい。私の出来る限りのことはいたしますから、今すぐに!」
(アン) |
名台詞度
★★★★ |
浸水警報、浸水警報、総員起きて配置に付け! 浸水甚だし、このままだと沈没する! 防水区画突破、ビルジ(汚水)ポンプを動かせ、フル稼働だ! ポンプ稼働するも、浸水の方が早く効果無し!
メーデーメーデー、本船浸水せり、付近船舶もしくは人がいたら救助求む! 本船はこのまま橋の棒杭へ向けて航行する! 「(該当の台詞)」 フルアヘッドエンジン(全速前進)!
(棒杭に近付く)「ああっ神様!」…よ〜し、総員退船スタンバイ(掛けていた膝掛け等を回収する)! 退船! と同時に棒杭に激突。
…ってまぁこんな感じなのだが、この船で流されているときのアンの台詞、笑うシーンじゃないのにおもしろ可笑しくてなかなか良い。アンの必死さが読み取れるし、神様に祈る順序まで判断し損なって「その前に」とか言っちゃっているのは本当に面白い。この台詞がなきゃ次点欄のマシュウの台詞を選んだが、私にはどうしてもこっちの方が印象に残った。
アンがボードから脱出し、沈み行くボートを目の当たりにするダイアナ達の様子もいい。呆然と沈むボートを見る3人、無言の後「沈んじゃったわ」と二人に訴えて倒れるルビー、笑うシーンじゃないのに面白く描かれてる。
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(次点)「アン、お前のロマンスをすっかり捨ててしまうんじゃないよ、アン。いや、その…ロマンスは少しある方が良いよ。ありすぎても困るが、その…少しは残しておく方が良いよ。」(マシュウ)
…ボートでの遭難騒動に「いつになったら落ち着くんだい?」とマリラ、それに対しアンは「私がロマンスを持ちすぎなければいい」と教訓を語る。それに対してマシュウがアンに静かに言う台詞だ。想像力を捨ててしまったらアンはアンでなくなる、マシュウがそれを一番よく知っているのだ。 |
名場面 |
アンとギルバート。 |
名場面度
★★ |
名台詞欄で上述したとおり、アンを乗せたボートが沈んでしまうが、その直前にアンはボートから脱出して橋の橋脚にしがみついて助けを求める。程なくアンの友人達がすぐ近くを通り過ぎるが、アンを乗せたボートがタイタニックになるのを目の当たりにした少女達は大声で泣きながら走っていたため、アンの助けを求める声には気付かずに通り過ぎてしまう。
絶望しかかったアンだが、偶然にもボートに乗って釣りを楽しむ少年の姿を見つける。大声で叫ぶとボートの主はアンの声に気付きこちらにやってくるが、そのボートに乗る人物をよく見るとギルバートだった。そう、アンは最も助けて欲しくないない人に救助されることになったのだ。何処まで行っても不運な白百合姫だ。
アンを船着き場におろしたギルバードは、「どうもありがとう」と素っ気なく言い残して立ち去ろうとするアンの腕を掴む。そして「僕たち友達になれないかい?」とアンに問う、赤毛をバカにしたことを詫びた上で「あれはもう昔のことだろ?」とアンを説得するのだ…ってやっぱこの男、空気読めないなぁ。それを言っちゃ今更「君の髪はとてもきれいだと思う」と言っても全てが無駄になってしまうのに…。
「君の髪はとてもきれいだと思う」の言葉に反応はするアン、「仲直りしよう」とさらに詰め寄るギルバードの顔を見てやはり思い出すのは赤毛をバカにされたあの瞬間だった。そう、アンにとってはあれは過去のことではなく、自分が深く傷つけられ未だその傷から立ち直れていない現在進行形の出来事なのだ。それに気付いたアンは厳しい声で「いいえ、私あなたとは仲良しになれないわ!」と言い切る。「それにせっかくだけど、なりたいとも思っていないの!」とアンが続ければギルバートももう我慢できない、「わかったよ、もう二度と仲良しになろうだなんて言い出さないよ!」…あちゃ〜、売り言葉に買い言葉だ。とにかくギルバートは「まっぴらだ!」と言い残してまたボートに乗って去ってしまう。
アンについては前述したので続いてギルバートの気持ちを考えるならば、アンのピンチを救ったことはアンと仲直りする千載一遇のチャンスと受け止めたに違いない。ギルバートからみればこれまで、アンの助けになるような行動を取ったことは一度もないのだ。だからこそ今回こそはと意気込んだに違いない。だが前述したとおり、ギルバードがアンの赤毛をバカにした件はギルバートにとっては過ぎた話だが、アンにとっては現在進行形という違いがあった。しかもギルバードはアンに対しても「あれは過ぎたこと」と明言してしまったのである。これではアンの気が収まるわけはなく、残念ながらギルバードの言葉の選び間違いでまた仲直りの機会を失うことになってしまったのだ。
この二人が和解するのって、確か最終回だった記憶が…。
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今回の命名 |
新たな命名無し。 |
感想 |
今回も典型的な「事件が起きる」と盛り上げておいて、案の定大きな事件になるタイプの話だ。「赤毛のアン」という物語はそうやって「事件が起きるぞ、起きるぞ…」と盛り上げるのが本当に上手い、事件とは無関係そうな物語の妄想から始まるがその物語に「船」が出てくる。続いて妄想から我に返ったアンは仲間達と湖の畔にいる、仲間達とその物語に付いて語り合い目の前に「乗って下さい」とばかりにボートが置いてあるという「事件が起きる」という展開を絵に描いたように進めて行くのだ。そのテンポも非常に良く、事件に必要な要素を次から次へと本当に良いタイミングで出してくる。そしてまさに満を持して事件となるのだ。これが最近のアニメだったら、この途中で回を区切って「次回につづく」になっちゃうんだろうな。
しかしアンの髪が伸びるのが早すぎるなんて言っちゃいけないんですよね? どう考えてもあのヘアースタイルが元に戻るのは年単位の時間がかかるわけで…毛染め事件は4月はじめ、今回の話はおまれして見ても8月下旬だろう。5ヶ月弱であんな髪が伸びるはずがない。私も同じ位の期間床屋に行かなかった事があるが(10月上旬から翌年3月上旬まで)、三つ編みに出来るほど髪は伸びなかったよ。それどころかそれだけの期間でも後ろで結ぶことすら出来る状況ではなかったし。アンはヅラか?
それとも植毛でもしたのか…なぁんて野暮な話はやめておこう。
ところでアンとダイアナとルビーとジェーンと、おまけにギルバートの釣り竿は何処へ消えたんだろう? |