「あにめの記憶」6

世界名作劇場「赤毛のアン」

・私にとって「世界名作劇場」で「一番古い」作品
 「世界名作劇場」シリーズは制作者側の公式では1975年の「フランダースの犬」から、非公式には様々な意見(「ムーミン」からと言う人もあるし「山ねずみロッキーチャック」からだという人もある)があるがそれは各自が決めれば良いことだろう。公式に「世界名作劇場」の最初の作品がなんであろうが、その人の記憶にある最も古いものが最古の作品だと定義すればそれこそ人によってそれは違って当然だ。また作風などから「最初の作品」を定義する方法についても解釈によって変わる、この定義では「アルプスの少女ハイジ」が最古の作品と考える人が多いようだ(私もそうだが)。
 では私の記憶として、一番古い「世界名作劇場」シリーズの作品は何か? と言われれば迷わず「赤毛のアン」と答える。理由は日曜日の夜7時半から本放送をほぼ毎週見た上で(完全ではないが)物語を覚えていた最古の作品だからである。実はその前の「ペリーヌ物語」になると本放送時は「見た記憶」がかすかにあるだけだけでストーリーを理解できていない、ペリーヌが旅をしていたのは覚えていたが何が目的でどんな旅をしていたか覚えていないのだ。さらに前の「あらいぐまラスカル」「フランダースの犬」に関しては見た記憶すら残っていないし、物語の内容は後に見たテレビスペシャル等で知った。「母を訪ねて三千里」「アルプスの少女ハイジ」は小学生高学年頃に見た再放送で物語の内容や展開を理解した。つまりそのアニメをちゃんと欠かさずに見ていたか記憶に残るかどうかの鍵は、見た時にその物語を理解できたかどうかにかかってるのだ。
 つまり自分の中にある日曜夜7時半の記憶としての「世界名作劇場」で一番古い作品がこの「赤毛のアン」という訳だ。アンが引き起こす奇想天外な事件を毎週楽しみにしていた記憶が残っている。当時の私は小学3年生、この手の物語を理解できる年齢にようやく達したのだ。
 また「赤毛のアン」は本放送の数年後に再放送を少なくとも1回は見ている。ちなみに子供時代に再放送を見た記憶があるのは、「ふしぎな島のフローネ」以前の作品だ。

 「赤毛のアン」はご存じの通り「世界名作劇場」1979年作品である。「あらいぐまラスカル」などと並んで制作側が「世界名作劇場」シリーズの看板作品のひとつと扱っているのもここをご覧になる多くの方々がご存じのことであろう。現在はスタジオジブリでお馴染みの高畑勲氏の演出と宮崎駿氏の作画で原作世界を忠実に美しく再現したことで評価が高いが、ネット上で調べてみると高畑氏も宮崎氏も「赤毛のアン」が理解できてなかったから原作を忠実に再現することに注力したという(宮崎氏は「ルパン三世・カリオストロの城」制作のため途中で抜けたのも皆さんご存じの話では?)。またガンダムシリーズでお馴染みの富野喜幸氏(当時の名前で表記)も制作陣に名を連ねているのだから、今思うと本当に贅沢な作品だと思う(スタッフが全てではないというのが私の趣旨だが、さすがにこのメンバーをみてしまうと…)。

 原作もここでわざわざ紹介する必要がないと思われるほど有名な、ルーシー・モード・モナゴメリの「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)である。以前紹介した「若草物語」のように同じ作者によるアンを主人公とした物語群が存在しており、「赤毛のアン」は主人公アンの年齢が最も若い一連のアンシリーズの処女作だ。この続編として計8作がアンシリーズとして描かれており、最終的にアンは53歳にまでなるという壮大な物語の一部なのだ。またこれら一連のアンシリーズとは別に、モンゴメリ財団の依頼でバッジ・ウィルソンによって「赤毛のアン」以前のアンが描かれた「こんにちはアン」(Before Green Gables)が存在し、「世界名作劇場」2009年作品として放映中である。

 今回の考察ではリアルタイム視聴と同じようにまず前編の視聴と考察本文の掲載を先に行った。なおまだ「赤毛のアン」原作は読んでいないが、話を聞く限りその必要はなさそうである。いずれにしろ前回の「ポリアンナ物語」からは原作を先に読むという考察スタイルはやめることにした。これは「ポルフィの長い旅」で原作を先回りして読み、その原作の美しい完結を期待してしまい、「原作を知らなければしなくてもよかったはずのがっかり」を経験してしまったことによる。また前回の「ポリアンナ物語」からは、「世界名作劇場」シリーズの考察として「完結編」や「小説版」との比較は基本的に後で専用ページにまとめる方針に変更したので、これも基本的には行わない方針だ。

・「赤毛のアン」関連リンク集(2013年12月8日設置)
 「赤毛のアン」についてもっと知りたい、他の方の視点による考察を見てみたい、とおっしゃる方は下記リンク集をご利用ください。

「モンゴメリの世界へ−読書でタイムトラベル」
末摘花さんによるモンゴメリ作品の紹介・レビューサイト。「赤毛のアン」や作者モンゴメリについてのことがわかりやすくまとめられています。

・サブタイトルリスト

第1章 「マシュウ・カスバート驚く」 第26章 「コンサートの計画」
第2章 「マリラ・カスバート驚く」 第27章 「マシュウとふくらんだ袖」
第3章 「グリーン・ゲイブルズの朝」 第28章 「クリスマスのコンサート」
第4章 「アン・生立ちを語る」 第29章 「アン・物語クラブを作る」
第5章 「マリラ決心する」 第30章 「虚栄と心痛」
第6章 「グリーン・ゲイブルズのアン」 第31章 「不運な白百合姫」
第7章 「レイチェル夫人恐れをなす」 第32章 「生涯の一大事」
第8章 「アン日曜学校へ行く」 第33章 「クィーン組の呼びかけ」
第9章 「おごそかな誓い」 第34章 「ダイアナとクィーン組の仲間」
第10章 「アン・心の友と遊ぶ」 第35章 「夏休み前の思わく」
第11章 「マリラ・ブローチをなくす」 第36章 「物語クラブのゆくえ」
第12章 「アン・告白をする」 第37章 「十五歳の春」
第13章 「アン・学校へ行く」 第38章 「受験番号は13番」
第14章 「教室騒動」 第39章 「合格発表」
第15章 「秋の訪れ」 第40章 「ホテルのコンサート」
第16章 「ダイアナをお茶に招く」 第41章 「クィーン学院への旅立ち」
第17章 「アン、学校にもどる」 第42章 「新しい学園生活」
第18章 「アン、ミニー・メイを救う」 第43章 「週末の休暇」
第19章 「ダイアナの誕生日」 第44章 「クィーン学院の冬」
第20章 「再び春が来て」 第45章 「栄光と夢」
第21章 「新しい牧師夫妻」 第46章 「マシュウの愛」
第22章 「香料ちがい」 第47章 「死と呼ばれる刈入れ人」
第23章 「アン・お茶によばれる」 第48章 「マシュウ我が家を去る」
第24章 「面目をかけた大事件」 第49章 「曲り角」
第25章 「ダイアナへの手紙」 第50章 「神は天にいまし すべて世は事もなし」

・「赤毛のアン」主要登場人物

グリーンゲイブルズの人々
アン・シャーリー 物語の主人公、豊かな想像力と奇想天外な行動で周囲の人々を驚かせる。
 …色んな意味で印象に残る少女、こんな女の子が一家に一人いたら面白いだろうなぁ。
マシュウ・カスバート アンを引き取った張本人。人見知りが激しく女性が苦手だがアンの事となるとそんな欠点は何処かへ飛んでしまう。
 …そうさのう・・・。
マリラ・カスバート マシュウの妹でアンを自分の子のように厳しく育てる。
 …第一印象悪いがだんだん良くなるおばさんの典型例、だがアンへの愛情はよく見えていたよ。
ジェリー・ブート 男の子を引き取る予定が女の子を引き取ったためにマシュウが雇ったお手伝い。無口だが大食い。
 …食ってる以外目立たないまま終わると思ったが、やっぱ毒入りリンゴ事件で強烈に印象に残る人だ。
マーチン 物語後半でジェリー・ブートの変わりにやってきたお手伝い。
 …突然現れて突然去っていった謎の人w
バリー家の人々
ダイアナ・バリー アンの「心の友」、おしゃべりでおっちょこちょいのアンと対照的な性格。
 …アンに勝手に「心の友」にされるが、アンと気が合う「聞き上手」な性格でよかったねというところだ。
ミニーメイ・バリー ダイアナの妹、喉頭炎で死にかかったところをアンに救われる。
 …喉頭炎の苦しみの声優さんの演技は凄い、台詞がなくてもあの回のミニーは強印象だ。
バリー夫人 ダイアナの母、躾などに五月蠅く頑固で、ぶどう酒事件ではアンに絶交を言い渡す。
 …頑固とはいえ、理解すればすぐ考えを変える頭の回転の良さも持ち合わせているように見えたが。
ミスター・バリー ダイアナの父、物語の終盤ではグリーンゲイブルズの窮状を見かねて助け船を出す。
 …一家団欒の席に座っている印象しか残ってないわ。
ジョセフィン・バリー バリー氏の叔母、気難しい性格だがアンとは気が合い、何かというとアンを手元に置こうとする。
 …アンのような娘を引き取ったマリラが羨ましいのだろう、この人がもっと若かったらどんな行動に出たことか…。
メアリー・ジョー ミニーメイが喉頭炎で倒れた日、大人が不在のバリー家にいたお手伝いさん。
 …一度しか出てこないのに、なんかずっとバリー家で働いているような顔してる。
学校の仲間達
フィリップス先生 アンがアボンリー小学校に転入したときの先生、特定の生徒を贔屓するなど問題が多い。
 …実在したら一発殴りたいキャラ、ありゃアンでなくても怒るわ。
ステイシー先生 フィリップス先生の後任で若くてきれいな女教師、アンの成長に強い影響を及ぼす。
 …フィリップスがああだったから、この先生が女神に見えた。登場人物達もそうだったことだろう。
ジェーン・アンドリュース アンの友人の女の子、恋愛に憧れている。
 …子供の頃に見た時、顔は覚えていたけど名前は忘れていた。良い意味でも悪い意味でも普通の女の子で扱いやすいキャラ。
ルビー・ギリス アンの友人の女の子、ヒステリー持ちでいつも最初に泣き出すのは彼女。
 …この子の泣き声は30年近い時を経て覚えていた、特に石板事件の時の鳴き声は印象に残ってた。
ジョーシー・パイ アンの友人の女の子、何かというとアンに対してだけでなく皮肉や悪口ばかりいう。
 …口が悪いし性格もアレだが、絶対にこの子はアンが大好きで慕っているはずだ。
ギルバート・ブライス アンのクラスメイトの男の子、初対面のアンに対し赤毛をバカにするという行動を取ってしまって最終回まで口をきいてもらえなくなる。
 …アンにツンデレされているうちに、惚れたな。
チャーリー・スローン アンのクラスメイトの男の子、初期の頃はアンに気があるようだったが…。
 …アンに気があるという設定が途中で立ち消えになってしまったのが残念。
ムーディ・スパージョン・マクファーソン アンのクラスメイトの男の子、何かというと「俺はダメだ」と諦めてしまうが…。
 …クイーンに一緒に行った仲間の中では、ちょっと毛色が違うから別の意味で印象に残る。
アボンリー村の人々他
レイチェル・リンド マリラの友人でグリーンゲイブルズの近くに住む女性、剛胆なおばさんという感じだ。
 …体重90キロの巨女、最初にアンとぶつかったのは似たもの同士だからだろう。
アラン牧師 物語中盤で村にやってくる牧師、妻とダンスをしてしまうなど牧師とは思えないおおらかさを持っている。
 …奥さんばかり目立って、この人の活躍が記憶に残らない。
アラン夫人 アラン牧師の夫人、アンに痛み止め塗り薬入りのケーキを食べさせられるが、以来何かあるごとにアンの相談役になる。
 …アンにとって一番身近な「大人」、いつも的確にアンが進むべき道を示す。
スペンサー夫人 アンをグリーンゲイブルズに送り込んだ張本人、中盤でその存在を忘れるが終盤に突如再登場。
 …この人がいなかったら、男の子と女の子を聞き間違えてなかったら、この物語はなかったのだから最重要人物でもあろう。
その他
ナレーター 物語の要所で的確な解説を、ユーモアたっぷりに入れてくれる。
 …この物語のナレーションは、「世界名作劇場」シリーズ屈指のものだと思う。


・「赤毛のアン」オープニング
「きこえるかしら」
 作詞・岸田衿子 作曲/編曲・三善晃 歌・大和田りつこ
 曲も背景画像もとにかく印象に残るオープニングだ。単純な歌詞、壮大なオーケストラアレンジ…このテーマソングも20年以上の長い時を超えて記憶に残っていた。
 歌詞が「聞こえるかしら蹄の音〜」と言っているのに合わせて、アレンジも馬の足音を思い起こさせるようなものだ。歌詞の内容からは私は第1話の光景が目に浮かんでくる、マシュウと一緒に馬車に乗ってグリーンゲイブルズに向かうアンの姿が目に浮かんでくるのだ。
 曲もそうだが今見直してみるとこの背景画像がこれまた凄くて、「赤毛のアン」の世界観ではなく「アンのイメージビデオ」として本当にうまく出来ていると思う。ただアンが馬車で走っているだけなのだが、この動きもカメラワーク(?)も「アンとアボンリーの景色を印象付ける」という目的に従って計算され尽くされているのだ。特にタイトル表示のところで馬車が草原に落とした影だけトが出てくる部分や、馬車が空へ飛んで行くシーンはこのオープニングを強く印象付ける部分だろう。私の勝手な想像であるが、タイトル部分で影が出てくるシーンについては「こんにちはアン」のオープニング画像でも意識して取り入れたと思う。
 また曲が進むに従い季節が流れて行く演出も好印象だ。私が購入したDVDにはこのオープニング画像の原画が出ているが、これで見てもこれまた素晴らしい。流石宮崎駿氏といったところだ。

2014年9月28日 追加考察
NHK連続テレビ小説「花子とアン」について公開

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