第33話「恐怖のハクション!」 |
名台詞 |
「ひぇ〜っ、面白いなぁ。やっぱ普通の猫じゃないよ、ネガは!」
(守) |
名台詞度
★★★ |
学校を休んでまでネガのために薬草を煎じていた守は、薬を優の家に届けに行ったときに哲夫から事の次第を聞かされたのだろう、嬉しそうな顔をしてこう言いながら街へと走り出す。
この台詞が「来る」のは物語がもっと進んでからだ。守はネガが単なる風邪だと思って風邪薬を作ったはずである。だが事態は常識的にどう考えても風邪なわけがない。もちろんこの台詞の段階ではその常識では起こりえないことが起きていると、守は認識していたはずだ。ところが巨大化したネガを見て守は何のためらいもなくこの風邪薬を飲ませる、そこでこの台詞とのギャップを思い出してしまうという見事な内容になっている。
しかも、ネガの病気(?)はこの風邪薬で治ってしまうのだからこれまた笑える。こんな面白い構造の物語を描き、その面白さを生み出す「矛盾」を見事に演じた守が印象に残る話であるし、今回の守の演技を象徴しもっとも印象に残った台詞がこれだったのだ。 |
(次点)「ああ、フェザースターで死にたかった…。」(ネガ)
…今回、ネガの台詞も印象に残るものが多かったが、その中で最も印象に残ったのがこれ。守が作った薬を飲んだ後、高熱と頭痛に苦しむネガの台詞だ。やはり「死ぬかも知れない」という緊急事態に彼が思ったことは故郷のことだった。この思いをきっちり演じた肝付さんに拍手。 |
名場面 |
発覚 |
名場面度
★★★★ |
今回、まず最初に「ネガが太った」とされて画面上でも確かにネガが一回り大きくなったように描かれた。これはポジとの体格の比較でもよく分かるだろう。だが中盤に差し掛かったところでネガを見た守が「風邪を引いている」として、同時にネガも「風邪」の自覚症状を訴え始めることで、ネガは「風邪」だという前提で物語が進む。だが一見「太った」と「風邪」は相関がないように感じるが、この相関を発見するのは優でも守でもなく、優の母のなつめだった。
優の両親がネガが早く治るにと思いを込めて作ったクレープを、最初は優に部屋にいるネガのところへ持って行くように言うが、優は「守がネガの薬を持ってくるはずだから」という理由で行こうとしない。やむなくなつめがネガにクレープを届けることにする。「お待ち遠様」となつめが部屋のドアを開くと、序盤では「太った」だけと思われていたため食事抜きなどのダイエットを強要されていたネガは、クレープを抱きしめながら涙を流す。なつめが「ここに置いておくから全部食べるのよ」と言ってクレープを置き部屋から出て行こうとすると、突然ネガがくしゃみを連発する。これに振り返ったなつめは、くしゃみの前後でネガの身体の大きさが違うように感じた。試しにネガをつまみ上げて鼻をくすぐってくしゃみをさせると…くしゃみの度にネガの身体が大きくなって行くのだ。「信じられないわ!」と叫んだなつめはネガを抱いて家の階段を駆け下り、店舗にいる哲夫の元へ走る。まだネガは何が起きているか理解できていないが、ポジが「くしゃみする度にあなたの身体が大きくなっているのよ!」と説明され驚く。
店舗に来たなつめは、哲夫だけでなく優や俊夫に「ネガを見てなんか気が付かない?」と迫る。これに優が「また太ったみたい」と答えると、「それよ!」と叫んで皆の目の前でネガにくしゃみをさせる。するとネガはまた身体が大きくなり、いつも付けている首輪がはち切れる。「ねぇ、見たでしょ!」と言うなつめに一同驚いて声も出ない。
このシーンのポイントとして挙げられるのは、このネガの「異変」に最初に気付いたのがいつも一緒にいる優やポジではなくなつめだったこと。ネガが普通の猫ではないという事実を知らないなつめが見つけるからこそ、彼女の慌てぶりと「バレるのか?」という緊張感がこのシーンを盛り上げている。同時に「何も知らない人」がこの「異変」を見たらどうなるか、という点が克明に描かれているからこそこのシーンは面白い。
そしてネガ本人がこの「異変」に自分で気付いていない点は彼のキャラクター性がよく出ていて良いだろう。この二つの要素が「異変が発覚する」というこのシーンを見事に盛り上げていて、本当に面白いシーンとして描かれた。
その上面白いだけでなく、今後の物語展開への期待と不安を見事に煽る。もちろんそれは「ネガが何処まで大きくなるのか?」という一点だ。ネガがどうやって快復するかという問題よりも、見ている方はこの本人にとってはたまらない方の問題に不安と期待を寄せ、物語に取り込まれて行くのだ。 |
感想 |
この回はよく覚えてる。本放映当時に見て笑い転げた記憶は今でも鮮明に覚えている。
今回もネガが主役だが、10話のようにネガ主導で物語が進むのではなく、「いじられ役」としての主役だ。ネガをさんざんいじり倒し、その上で起きる優を初めとするドタバタ劇を面白おかしく描いていた。物語を面白く盛り上げるためにマミやパルテノン・プロの人々の登場は最小限に抑えられ、彼らは「マミ(優)の周囲に風邪を引いている(いた)人が大勢いる」という事を示唆するためだけに物語に出てくることになる。もちろん序盤の風邪を引いてマスクを着用していた俊夫にもこの役割は担わされている。こうしてネガが何故病気になったのかを明確にしつつ、誰の風邪がネガに感染したのか分からないという点も話をおかしくする要素のひとつであろう。
その上でネガの病気の内容を「常識的には考えられない面白おかしい内容」として描いたのも秀逸だ。例えばネガがただ熱を出して鼻を出してくしゃみをしているだけなら、この話は面白くも何ともない。これに「くしゃみの度に身体が大きくなる」という要素を付け加えるだけで、周囲の反応が大きく変わってこんなに面白くなるという事の良い実例となるであろう。
しかし、後半から新登場の守は「野生児」の次は「薬屋」か。「北海道生まれ」というキャラと偏見を大袈裟にするだけで、ここまで何でも出来るキャラになってしまうとは思わなかった。しかもネガをしっかりした手順で「風邪」と診察してしまう辺りは、「野生児」としてのキャラも十分に活かされていると思う。名台詞欄に書いた要素と言い、今話は守の存在もこのドタバタ劇を盛り上げる要素になったのは間違いないだろう。 |
研究 |
・ネガの病気 今回、ネガは病気に苦しむ。最初はネガがちょっと太ったようにしか描かれず、優やポジも「ネガが太った」として強制ダイエットなどの方策をとるが、守によって「舌が赤い」「熱が出ている」といった症状を指摘されるに及んで「風邪」と周囲は判断する。以降ネガは高熱と頭痛や身体のだるみに苦しむわけだが、その際になつめが「くしゃみをすると身体が大きくなる」という症状を発見したことで、ネガの病状の全体像が判明するという展開だ。
確かにネガの症状をよく見てみると、「くしゃみをすると身体が大きくなる」という症状以外は任務玄の風邪によく似ている。風邪と言うのは主にウイルスらよって引き起こされる上気道の炎症で、頭痛・発熱・鼻づまり・しくゃみ・倦怠感などの症状を引き起こす。もちろんウイルス性なので人から人へと感染する。
ネガは地球外生命体である、ポジの台詞によりネガが生まれたフェザースターには病気が無いことは確認されている。つまりフェザースターには病原菌のそのものがないか、ウイルスなどがあっても病気にならないかのどちらかであろう。このような場所から来た生命体が、地球上の風邪のウイルスによって地球人の風邪の症状を引き起こしただけでなく、ウイルスとフェザースター人(?)独特の身体的構造が何らかの相乗効果を起こし、ネガに「くしゃみをすると身体が大きくなる」という症状を付け加えたと考えられる。
問題はネガの身体のサイズだ、普段のネガは立位での身長が20センチ程度と考えられる(これは優との身体のサイズの比較から割り出したものだ)。だが風邪を引いて巨大化したネガは、最終的に立位で2メートル程度になったと考えられる。身長で10倍になったと言うことは、体重で1000倍になったと考えて良いだろう(ちなみに大きさから普段のネガは体重200g程度、風邪で巨大化すると200kgと推定される)。
これだけサイズが変わるとなると、巨大化した分の栄養を何処からか補充しているのは確かだろう。クレープにそんな栄養価あるか?とツッコミたくなるが、やはりこれしか食べていないようだ。しかも「くしゃみをすると巨大化」なのだから、くしゃみをしたきっかけに食べ物が吸収された栄養が肉体の成長へと回されているわけだが…ダメ、これはどう考えてもこれ以上の考察は無理。
さらにネガはラストシーンでは一晩で元の大きさに戻っている。ということは治る際に199kgと800g分の肉体が何処かへ消えているわけだ。まさかそれが垢となって優の部屋に堆く積まれているというのは考えたくない。
これらの現象こそネガが持っている魔法の力が関係しているとしか考えられないだろう。風邪のウイルスがネガの魔法を司る神経を侵し、ネガが魔法を自分で操れなくなったということだ。同時にくしゃみによって身体に衝撃が加わると、魔法を司る神経がこれを受けて魔法の力を放出し、ネガの身体を大きくするという力としてしまったのだろう。勿論体内から風邪のウイルスが無くなった時点で魔法を司る神経も元に戻り、ネガは自分で魔法を使って元の姿に戻ったと解釈すべきだろう。 |