第51話「俊夫!思い出さないで」 |
名台詞 |
「1983年12月23日、日記を付ける習慣はないけど、今日のことは何処かに残しておくべきだと思った。ショックだった…どんな事情があったのか優はまだそれを話してくれない。俺をあれほど夢中にさせていた天使が、実は優だったとは。今まで半年も隠していた優のことを思うと、なんだかあいつが凄く意地らしくて。俺…その照れるけど、ハッキリ言って優を大切にしなければって…」
(俊夫) |
名台詞度
★★★★ |
今話の序盤、俊夫が家で趣味の模型作りに没頭している。ラジカセから流れるBGMはもちろんお気に入りのマミちゃん、しかもデビューしたての頃にレコードからダビングしたテープで、聞くのは久しぶりの物だ。そして「パジャマのままで」が終わると、次に吹き込まれていたのはマミの曲ではなく、自分の声だった。この内容がこれである。
このテープに吹き込まれていた「1983年12月23日」とは歌謡祭のあったあの夜、そう25話で俊夫が優の魔法を目撃したあの日だ。俊夫はその衝撃と、優がマミだった事実とそれに着いて感じた事をキチンと残しておかねばならないと感じたのだろう。日記を付ける習慣がないから日記帳など持ってるはずもない彼が、とりあえずテープに吹き込んだというのは十分にあり得る話だ。当時のカセットテープは紙とペンが無い場合において、自分の気持ちや思いを記録できる最大の媒体だったのだから(勿論現在ならパソコンがこれに代わるわけだが)。
もちろんピノピノによって25〜26話の記憶が消されているので、俊夫自身はこの声を吹き込んだ記憶はない。いや、この声を吹き込むことになった出来事すら覚えておらず、翌日学校に行っては優から聞き出そうとし、それでも解らずみどりから聞き出そうとし、挙げ句はマミから直接聞き出そうとまで企む。
ただこれによって俊夫が理解した大事な点は、「優を大事にしなければならない」という部分だ。何が起こったのが思い出せない、どうして思い出せないかも解らない、だが何か重大な事件があって「優を大事にしなければならない」と自分が感じた事だけは、これを聞いた彼の胸によみがえってきたのだ。そして彼は今話で自分の優の関係について悩むことになる。
このカセットテープに吹き込まれた台詞には、この25話で彼が受けた衝撃と、それを受けての優への気持ちが良く出ていると思う。またこの声を聞いて、何食わぬ顔で「この事実を忘れた28話以降の俊夫」を演じた水島裕さんも凄いと思う。そしてこのテープの存在が今話の「優の物語」に決着を付けるべききっかけとして、物語を大いに盛り上げるのだ。 |
(次点)「だってそうだろ? あいつが思い出したらみんなパァなんだぞ。切り札握っているのはあいつなんだ!」(ネガ)
…ネガが今回の物語だけでなく、27話以降の構図をサラッと言ってのける。つまり27話で魔法を取り戻して以降は、優の魔法使用が何処まで続けられるかを握っていたのは俊夫だったのだ。こんな構図を視聴者に教えてくれたネガに拍手。 |
名場面 |
告白 |
名場面度
★★★★ |
マミのファイナルコンサートの会場に俊夫の姿はなかった。みどりからそれを聞かされた優は俊夫を捜して雨の街へと走り出す。俊夫はこのところの優が自分に冷たいことと、なのに守と仲良く語り合いながら歩いているのを気に病んでいたのだ。俊夫は何をする宛てもなく街をぶらつき、そんな俊夫を優は街のおもちゃ屋さんで発見する。優は俊夫が遊んでいた怪獣のラジコンを取り上げて「おもちゃが好きだね、君は」と声を掛ける、俯く俊夫に「早く行こ、コンサート始まっちゃうよ、楽しみにしてたんでしょ?」と急かす。だが俊夫はその優の手を払い「当てつけか?」と返し、「俺バカだった、本当にみどりの言う通りだった。あんまり近すぎて気付かなかったんだよ。もう手遅れかも知れないけれど、マミちゃんにあんまり夢中にならないようにしようって…」と続ける。それを聞いて「ダメだよ。今日のコンサートは見なくちゃ」と声を上げる優に、「いいんだよ、無理しなくて」と言う。「どういう意味?」と問う優を置いて店の出口へと歩き出す俊夫は、背中を向けたまま「守となら無理することもないし、優にはあいつの方が似合うと…」と言い出す。その俊夫の言葉が終わらないうちに優は俊夫の腕にしがみつき、「バカ、そんな事言ったら泣いちゃうから。」と叫ぶ。その言葉に振り向いた俊夫を見る優の瞳には涙が溢れていた。「俊夫のバカ、何考えてんだよ? 私が…私が一番好きなのは、俊夫だからね!」と言い切る。
理由はどうあれ、優が俊夫に対して冷たくなったことで俊夫がついに優という存在の大きさに気付く。彼は優の気持ちが自分から守へいってしまったと勘違いしたことで、自分が優とどう向き合っていて優が自分をどう思っていたのか、それに対して自分がどう動いてしまったのかを思い知ることとなった。そして自分が大事にしなければならないのは優であり、みどりにもそれを散々警告され続けてきたことも思い出し、これまでマミに夢中になっていたことを後悔して優への気持ちを吐露した上で、自分は引き下がろうとしてしまったのだ。。
対して優は、俊夫が25話で魔法を目撃したことを思い出されるのが怖かった。もちろん優の本心では俊夫がそれを思い出せば、俊夫が自分の方を振り向いてくれるのだから嬉しいに越したことがない。だが全てがファイナルコンサートに向けて動いている中ではそういってられない現実があったのだ。だから俊夫を避けるしか優に思い付く術がなかった。
その俊夫が優のことで苦しんでいる、それによって優は俊夫がやっと自分の方を見てくれたことに気付いたかどうか解らない。だが確実に言えるのはマミも優の一部であり、そんなマミを追いかけるのが俊夫であると言うことは間違いない。同時にマミの最後のステージを、どうしても俊夫に見て欲しいという思いもあっただろう。その上で俊夫に「守とならお似合い」と言われたことで、優は遂に耐えきれなくなって俊夫が好きだとハッキリ言うのだ。
こうして「優の物語」にひとつの決着がつく。優がこれまでハッキリ言うことの無かった「好き」だと言う思いを、やっと俊夫に告白したのである。そしてその前段として、優が告白してもおかしくない状況と設定をキチンと作った。それは俊夫が自分の優に対する気持ちに気付くことである。こうして優から俊夫に明確に思いが伝えられ、残るは俊夫の気持ち次第ということになる。この俊夫の気持ちは今話で示された「25話の記憶が復活しそう」という部分と明確に絡んでおり、この結論は最終回に持ち越される形となった。
このシーンは優と俊夫の恋愛物語という点では、終局に向けての明確な転換点だ。 |
感想 |
前話の感想欄で書いた通り、今話でいよいよ「優の物語」に決着を付ける。その「優の物語」とは言うまでもなく、優が俊夫に自分の気持ちを伝えるまでだ。物語展開を考えればこれに「No」という返事はあり得ないと思うので、「クリィミーマミ」の根幹を成す「優と俊夫の恋物語」という面では優が告白をすれば物語に決着がつくと考えて良いだろう。しかも名場面欄で上げた告白シーンでは、優が告白する前に俊夫が自分の気持ちに気付いてこれを吐露するという前提が着いた。つまりこれはもうここで相思相愛の関係が成立したと見てよく、俊夫の返答は「25話の記憶復活」と絡めた「魔法少女の物語」としての決着の一部となったとすることもできるだろう。
また今話では前話以上に「物語の終わり」を意識させるつくりになっている。その最大の物は、優が自室で寂しそうな表情でネガを持ち上げて「もうすぐお別れだね」というシーンだ。そのほかにも15話で登場の「吉野のおじ様」、45話で登場の超能力少年がゲスト出演するなどのシーンも描かれている。
今話でこれらの物語の根幹に置いたのは、27話で優が魔法を取り戻すために俊夫が失った「マミの正体」という記憶である。ここで多少後付の感はあるが、俊夫がマミの正体を知った衝撃や、それについての優への思いが明確にされたのは良かったと思う。消えた記憶とその間の出来事という謎について考えうちに、優に対する気持ちだけを思い出すという複雑な構図は、この物語で俊夫が優への気持ちに気付くもっとも自然な設定だったのではないかと感じる。そしてこの「失った記憶」が戻るか否かという結果により、優が魔法を使える可否が決まるという設定で優の心が大きく揺れ動くという展開は、見ていて面白く、また「クリィミーマミ」らしい展開だと当時も感じたものだ。
こうして「優の物語」にも決着がついたところで、「魔法少女アニメ」としてどうオチを付けるのかが焦点となる最終回を迎えるのだ。 |
研究 |
・マミの活動記録
ここでは「劇中世界の一般人」から見た視点で、アイドル歌手としてのクリィミーマミの活動履歴を追ってみよう。リリースされたシングルは3枚、他にファイナルステージのみで歌われた2曲がある。この2曲はそれぞれ「BIN-KANルージュ」「LOVEさりげなく」のB面と解釈すべきだ。また「パジャマのままで」は「デリケートに好きして」のB面という解釈も成り立つ。このシングル3枚がマミの活動の前半に偏っているのは、後半は歌手活動以外にも手を広げているので新曲発表が後手に回ったと解釈すべきだ。
1983年 |
7月 |
新宿でパルテノン・プロにスカウトされる。そのままプールのショーのステージで初出演、このショーがテレビに流れることで瞬時に存在が知られる。
「デリケートに好きして」でデビュー
ザ・トップテンに初出演 |
8月 |
院中の暴力団幹部を見舞うスキャンダルが発生するが、雑誌等に掲載されず。
磯浜海水浴場でミニコンサート、飛び入りの観客の少女とデュエット。 |
9月 |
雑誌のグラビアにセミヌードを披露し、恋人がいると爆弾発言もするが、よく似たニセモノによる仕業と判明。 |
10月 |
新曲「BIN-KANルージュ」発表 |
11月 |
映画「北の動物家族」のオーディションに参加するも落選 |
12月 |
NPB歌謡祭新人賞にノミネート、特別賞受賞。 |
1984年 |
1月 |
新曲「LOVEさりげなく」発表
テレビドラマ「スパイハンター0010」にゲスト出演 |
2月 |
視聴者発案のカチューシャ「ルミナウォーク」を開発、ファンに配布。
「どっきりカメラ」出演 |
3月 |
ハイソサエティクラブ主催のファンクラブ設立 |
4月 |
「素人のど自慢大会」ゲスト出演
乗っていたヘリコプターが遭難、一時行方不明に。
コンサート会場が突如崩壊という事故発生 |
5月 |
立花家の秘宝をめぐる番組でリポーター初体験 |
6月 |
1周年コンサートで突如姿を消し、引退。 |
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