第13話「フランツの目」 |
名台詞 |
「でも鳥みたいに木の上に住まなきゃならないなんて…フランツが言う通り、本当に私たちも結局は助からないのかも知れませんね。私も正直な事言いますと、二度と人間社会に戻れないんじゃないかっていう気がしてきましたわ。ボート一艘無いんですからね、どうやってこの無人島から脱出できますか?
筏がありましたけど、それは家を造るために壊してるんですからね。」
(アンナ) |
名台詞度
★★★ |
前々回登場の「おばけの木」に家を構えることを決めたエルンストだが、アンナはフローネを助けるためにこの木に登った恐怖がまだ残っていて、高いところに住む恐怖を語る。縄ばしごを作るから大丈夫だと語る夫に、アンナは家のことではなく自分達が置かれている現状を正直に語ったのがこの台詞だ。
アンナは他の家族とは違ってこの島の本当の恐怖を知っている。それは前夜に猛獣と直接対決したことで、その勝利が死と背中合わせの紙一重の事であったことも彼女はしっかり自覚している。実はエルンストもフランツもこの猛獣に襲われたとは言え、猛獣対策を厳重に施した状態から猛獣が吠えていたのを見ていたに過ぎず対決はしていないのだ。だからこそ「探検」から帰って来たフランツが「他の船客が見つからない」=「エミリーは死んだ」という考えに陥ってしまい絶望的になり、そこから「自分達が助かるわけがない」という解を出してしまった時は、口先では「私たちが助かったことを神に感謝すべき」と言いつつも本心ではフランツの意見に賛同していたに違いないのだ。だが一家の母という立場上子供達の前でそれを言うわけに行かず、夫と2人きりの時にこの本心と恐怖を正直に切り出したのだ。そしてこの台詞は普段のアンナのように恐怖から感情的に出てきた言葉ではなく、現在自分達が置かれている現状を冷静に判断して語っているのだ。だからこそ見ている方もこのアンナの台詞に頷いてしまう。
この台詞を聞かされたエルンストも「確かに必ず助かるというハッキリした希望がある訳ではない」と答えるのが精一杯で、あとは言葉を失ってしまう。つまりこの台詞は一家が置かれた状況を冷静に、そして鋭く突き付けるものなのだ。協力者もいない、筏の一つもない、これでこの島から脱出できるわけがないという物語の現状を、視聴者にも突き付けたのだ。 |
名場面 |
無人島。 |
名場面度
★★ |
探検から帰って来たエルンストは一家にその報告をする。椰子やサトウキビが豊富だから食べ物には困らないという事実などを一通り話した後、フローネとジャックにテント外へ出るように言う。ここからは大人同士の深刻な話になるからだ。退屈したフローネは皿洗いでもしようと再びテントに近付くか、ここで中の「大人の会話」を聞いてしまう。救命ボートで脱出した人々は助からなかったと思わねばならないこと、周囲は見渡す限り海原が続いているだけという状況であること…「私たちだけになってしまった」とアンナが言えば、フランツは完全に腐ってて「結局は僕たちも助からないんだ、いっそその方がいいや。こんな誰もいないところで生きていけるわけがない」と絶望のみを口にする。両親がそんなフランツを必死になだめるが、フランツの絶望は並大抵ではない。その様子を見てしまったフローネは駆けだして、「みんな死んじゃったなんて嘘よ、別の島にいるのよ」と海に向かって力説する。
実はこのシーンが一家の絶望のどん底である。島が無人島だと知り、かつ「ブラックバーンロック」号の他の生存者も見つからなかったという事実を認識し、一家は自分達が完全に孤立状態であると確認したのだ。本来ならそれに対しての対策を考えるべき席なのであろうが、実は一家の誰もが絶望的でなにひとつ名案が思い付いていないところはとてもリアルだ。フランツが絶望して腐っているのはもちろん、アンナまでも「脱出の方法をお父さんが考えてくれる」と完全に他力本願モード、そして名案があればすぐに実行に移す「実行力のひと」であるエルンストまでも、前々回から「いつか誰かに助けられるかも知れない」と繰り返すしかない状況だ。フローネとジャックは「無人島」という与えられた環境がとせのように過酷で、どのように恐ろしいか分かっていない。昨夜猛獣に襲われたのも、一度撃退すれば大丈夫とでも思っているのだろう。それとも「お父さんがやっつけてくれる」と簡単に考えているか…。そんな一家の絶望と当面の対策が何もないという現実をしっかりと強調することで、多くの視聴者は早くも「この物語がどう終わるのか」という点を気にし始めて、強烈に物語に引き込まれるというシーンなのだ。
このどん底から一家は少しずつ這い上がって行く。そのために一家は当面の危機を乗り越えることから始める、最初は今回後半のフランツ失明の危機から始まり、猛獣対策や食糧生産などと当面の危機を乗り越えることが生への意欲を上げるという事に気付くのだ。次の絶望が意外な形でやってくるのは、まだ先の話だ。
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感想 |
物語はふたつに分かれた。前半はエルンストとフランツの探検結果を受けて一家が絶望のどん底に落とされる。だがここは最初の底辺でここから少しずつ上がって行くという展開になって行くことに気付いたのは今回の視聴を見た時に気付いた。その中でもフランツの腐りようは日本のアニメで屈指の腐りようだと私は思う。もちろん「哀戦士編」前半までのアムロの腐りように匹敵していて、古谷徹さんという役者さんがこういう役で印象に残った理由の一つになっている。
そしてこういう状況では腐った奴が何らかの被害を被ることが多い。その法則に従ってフランツが毒虫にやられ、失明の危機を迎えることになる。だがこの危機は一家にひとつの光明をもたらしたのも事実だろう、夫婦が力を合わせてフランツを看病し、両親とも疲れればすかさずフローネがその役を変わることが出来るということで「一家の絆」というものが強固であることを皆は思い知るのだ。だからこそまずは「当面の危機」を力を合わせて乗り越えようと思うのだし、次の絶望が来るまでなんとか希望を持って生きる事ができるのである。特にフランツは失明という「無人島に取り残される」以上の絶望と恐怖を味わったことで、これを克服したことで「無人島に取り残される」という絶望からも脱することが出来たのだ。
いよいよこの島での「当面の危機」を解決しながら本格的な生活をするために一家が動きだすのだ。 |
研究 |
・フランツの目を潰した毒虫について
今回の主題はフランツが毒虫にやられたことで失明の危機に陥る展開だ。これを通じてフランツは「無人島に取り残される」と比較にならない絶望と恐怖を味わい、目が治ると同時に自分が持っていた絶望感をも克服するという展開を取った。フランツにこのような試練を与えた毒虫について考察したい。
劇中ではこの虫は「カワス」と呼ばれていた。この「カワス」と呼ばれる虫について他の「ふしぎな島のフローネ」の考察があるサイトを見てみたが、何処もこの虫の正体には触れないか、「調べてみたが分からない」とハッキリ認めているかのどちらかで答えに近付いているところは皆無であった。ならばと当サイトでは正体は分からなくても少しでも正解に近付く努力はしてみようかと思う。
まず「カワス」という虫について当方でも検索をかけてみたが、やはり出てくるのは「ふしぎな島のフローネ」関連サイトばかりで前述したようにどこも正体に迫っていない。そこで今度は劇中での虫の様子をじっくり見てみた、形状はイモムシやケムシに似ているので蛾や蝶の幼虫のように見えた。それを受けて毒を持つ蝶や蛾の幼虫について調べてみたら、出てくるわ出てくるわ。
劇中でこの虫が鳥に襲われ掛かったときに、毒を噴射するかのようにして撃退している様子が描かれていた。このシーンから察するにこの虫はイラガ科の幼虫と考えられる、イラガ科の幼虫ならば体中に毛のような毒針を持っているはずだが、これは省略されたと考えるべきだろう。天敵が近付いて危険を察したり、何者かに触られたりするとこの毒針から一斉に毒を分泌するという。その毒を浴びると激痛を感じ、皮膚は炎症を起こして痛みや痒みが数日にわたって続く。もちろん目に入った場合は失明の恐れもあるのですぐに医者に診せなければならない。イラガの仲間は熱帯地域を中心に世界中に存在しており、その種類は1000種類にも達するという。
だが当サイトの調査でもイラガの仲間に、幼虫が「カワス」と呼ばれているものが存在するかどうかは確認が出来なかった。「カワス」という名称は日本語や英語ではない可能性が高く、これが「ふしぎな島のフローネ」研究において大きな障害となっている可能性が高い(ひょっとすると海外へ輸出され輸出先の言語に翻訳された「ふしぎな島のフローネ」をみればわかるかも?←台湾版では「蛙斯」と表記されているとのこと)。ただ全ての状況証拠は前述のとおりイラガ科の幼虫であることを示しており、「フランツの目を潰したのはイラガ科の幼虫」というものが答えに最も近いであろう。エルンストの治療は目の洗浄と患部を冷やすことで、使用した薬は抗ヒスタミン剤であったのだろう。
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