第24話「フローネの家出」 |
名台詞 |
「ああ、美人さ。フローネみたいなブスとは違うよ。」
(フランツ) |
名台詞度
★★★★★ |
手製の楽器を弾きながらエミリーのことを思い出すフランツが、ジャックに「エミリーおねえちゃんきれいだったね」と言われた時に思わず答えてしまった「ふしぎな島のフローネ」でも有名な台詞。ある意味「ふしぎな島のフローネ」という物語と、フローネというキャラクターを象徴しているかも知れない。またこの台詞を言うときのアムロの演技も最高で、「ブス」という単語を視聴者に印象付けるように抑揚を工夫していた。もちろんその後、怒りのフローネに対ししどろもどろに対応するシーンの演技も最高だ。
なんてったって包み隠さずストレートに「ブス」である。でも現在のアニメやマンガではなかなかお目にかかれない単語であろう。現在この単語を使ったらすぐ「女性蔑視」とか苦情が来て放送禁止になって、別の言い回しを考えなきゃいけなくなるかも。例えば「容姿に恵まれなかった人」とかいう表現で、不細工な女性だけに限定できない言葉に代えさせられる運命だろうな。
もちろんこのストレートな表現にフローネは怒り心頭だ。それはこの前のシーンでフローネがフランツの音楽を聴きながら、お姫様になりきっていることを思えば当然だろう。お転婆で不細工でもやっぱり女の子は女の子、この1話はフローネとその一家が時間を掛けてその事実を教えてくれる1話であり、この台詞はその発端だ。 |
(次点その1)「なあフローネ、人間に大事なのは姿形の美しさじゃない。気持ちが美しいかどうかなんだ。どんなに顔がまずくても、気持ちさえ美しければ…」(エルンスト)
…火に油を注ぐとはこの台詞だろう。つまりフランツが思っていた「ブス」というのは、父であるエルンストも同意していたのは確かだ。もちろんこの言葉を向けられたフローネはそれについて父を問い詰めるが、それに対するエルンストもしどろもどろ。もちろんこれもこのサイトで注目している「エルンストの失敗」のひとつだ。この台詞を知ったアンナがエルンストにどう説教したか聞いてみたかった。 |
(次点その2)「そりゃあ、フローネはエミリーほどの美少女じゃありませんよ。でもとっても素直だし、気立ての優しい素直な子よ」(アンナ)
…フランツにお説教しているときのアンナの台詞だが、この台詞をよ〜く聞いているとアンナまでもフローネの「ブス」を認めていることになる。つまりエルンストと同じく容姿でのフォローをしていないのであり、これもフローネが聞いていたら火に油を注ぐ結果になっていたことだろう。少年時代の私はこの台詞を聞いて誰にも「美しい」と言ってもらえないフローネが可哀想だと思った。今回の名台詞★×5は、この3点セットでの採点だが、最も印象深いのはやはりフランツの「発端」であり、あれがなきゃ次点の二つの台詞は出てこなかったことになる。 |
名場面 |
説得。 |
名場面度
★★ |
別の木を「自分の家」と称してここに住むと宣言したフローネ、このことをジャックに聞いた一家は驚いてまずエルンストとフランツがなだめに行く。もちろん原因を作った張本人と、火に油を注いだ人物の二人で行って自体が解決するわけはない。ここで母アンナの登場だ。アンナは採れたてのトウモロコシをフローネに差し出し、フローネはそれを受け取るとアンナの隣で座って食べる。
アンナはフローネに対して家に戻るよう説得するわけではなく、ジョンとメルクルの仲の良さとフランツとフローネの幼い日の思い出を重ね合わせて話をするだけだ。そしてアンナがフローネに諭したのはただ一言だけ、「長引くほど仲直りが難しくなる」とそれだけだ。これに対してフローネはやっと本音を言う、「他の人と比べて言われてから余計に腹が立った」と。すかさず母は答える、フランツにとってエミリーは二度と会えない人だから余計にきれいに見えてしまったと。それだけ言うと「私は帰りますよ」と腰を上げるアンナ、その背中に「お兄ちゃんは?」と尋ねるフローネ。アンナはフランツがフローネのために牡蠣を採りに行っている事を言うと、「いいわねフローネは、もう2〜3日頑張ってみる?」と言い残してその場を立ち去る。
フローネの頑強に怒りが瞬時に解ける瞬間だ。アンナは母として、そして女として「ブス」と容姿をバカにされたフローネの気持ちをよく理解していたのだ。だからこそ「家出」を止めさせるような言葉は一切使わず、あくまでもフローネに掛ける言葉は「家出」状態の継続が前提であったのだ。その上でフローネの怒りを抑えるべく「本音」を引き出させ、これに対する理解となぜ兄がああ言ってしまったのかという謎解きをする。こうしてアンナはフローネの心を見事に操ったのだ。
このシーンは世の中のフローネと同世代の子を持つ「親」に見て貰いたい。もちろん母親だけでなく父親にもだ。子供が言うことを聞かないときはただ叱ればいいってもんではない、時には子供の気持ちに同意して接近してみるのも手なのだ。私は今回の再視聴で、アンナからそんな重要なことを教えて貰った。
|
感想 |
題して「フランツの問題発言」、サブタイトルもこうした方がいいんじゃないかと昔から思っていた。フランツの問題発言を受けてフローネが怒り心頭となって家を飛び出してしまい、それに対する家族の反応を時間を掛けて描いた。この中には家族の絆や思いがしっかり描かれており、フランツにしろエルンストにしろ故意に問題発言や火に油を注ぐ発言をしたわけでないというのも見ていれば理解できるだろう。アンナの場合は問題発言というより、説教の中でフランツを逆上させないために「敢えて同意した」と受け取ることも出来る。
こういう兄妹喧嘩は兄妹がいる視聴者は頷きながら物語を見ていたはずなのだ。フランツの言う通り兄妹間での問題発言は相手を傷つけるなんかではなく、ものの弾みやちょっとした冗談で言っていることなのだ。もちろん普段の会話なら冗談で済んでいる範疇だろう、だがここで描かれたように冗談で済まされない要素が加わるとその兄妹がとてつもなく憎くなる。もちろんフローネが本音として吐いた「他人と比べられた」という要素も立派な理由になるし、このシーンの場合は無人島に閉じ込められているという閉鎖環境が兄妹間の冗談を許さぬ状態にしている可能性は高い。閉鎖環境が生む絶望は一見仲良く見える兄妹間の関係を、若干変えてしまっているのは確かだ。
その兄妹間の亀裂を、特に娘を上手く操縦することで解決したアンナは立派な母親だ。今回エルンストが失敗してその教訓を得られぬままだったのに、あんなはそれに対しいとも簡単に事を解決させた。もちろんあんなが少女時代に同じ経験をしたという理由もあるが、何よりもこの母が子供達から絶大な信頼を得ていることの方が大きな理由だろう。 |
研究 |
・島の大きさ
前々話の研究欄で島内の位置関係について考察した。続いて島の大きさについて考えてみたい。さらに島の大きさが分かれば山の標高がわかる可能性も高い。
また前々話の鳥瞰図だ、まず島の大きさを推理するには特定の2点間における移動時間がわからないことにはどうにもならないのだが、実はその「特定の2点間の移動時間」が分かるシーンが皆無なのが問題だ。ここではひとついろいろなシーンから推測してみたいと思う。
まずは15話での「引っ越し」シーンだ。一家は猛獣の遠吠えを聞いてから慌ててテントを脱出し、木上に設置された新居へ走った。このような緊張状態でどれくらいの時間なら逃げ切れるかという問題だろう。また道中で既に猛獣に追い付かれていて、森の中の暗がりから睨まれていたなんてシーンも展開する。あのような猛獣が獲物を前にして「様子見」をして襲ってこないなんていうのは間違いなく短時間、せいぜい2〜3分だろう。その地点で銃をぶっ放したことで猛獣は逃げ、また家に向かって襲ってくるまで5分程度は要すると思う。猛獣が一家に追い付く時間を考慮すると、砂浜(「3」地点)と木上の家(「1」地点)は徒歩で10分と掛からない距離と推測される。
それだけではない、幼児であるジャックが木上の家と砂浜を一人で問題なく往復していることや、20話では捻挫していたフランツが比較的短時間で畑(「2」地点)間で来ていることを考えると、木上の家から畑までは徒歩5分程度、砂浜までは8分程度、岬までは10分程度であると考えて良いと思われる。これに不動産表記などで決められている「80メートル=徒歩1分」ルールに従って計算すると、上記地図の「1」と「2」の間が400メートル、「3」までが640メートル、「4」までは800メートルとなる。砂浜を中心に畑まで240メートル、岬まで160メートルというのは劇中の描写とほぼ一致するので、あながち間違っていないだろう。ただしこの鳥瞰図やオープニングでの鳥瞰図を見ていると、畑はもうちょっと砂浜寄りであってほしい。
いずれにしても木上の家から岬まで800メートルが正しいとしよう、上鳥瞰図を我が家のモニターで見ると45ミリが800メートルということになる。これを元に単純にこの島の横幅(東西方向の岬から岬までの一番長い部分)を測ってみると、2134メートルということになる。ただしこの鳥瞰図は斜めの位置から見ているので、その分を考慮して長さを2割くらい足してから切りの良い数値にしてだいたい2200メートルと思えばいいだろう。実感しやすいように言うと、静岡県熱海市の沖合に浮かぶ初島より少し大きいサイズということになる。
次に高さだ、次のキャプ画はオープニングのラストであるが、島の東西方向の横幅2200メートルが分かればこのシーンから島の標高を算出できる。このシーンの原寸サイズを私のPCで表示した場合、島の横幅は138ミリとなる。それに対し島の東西方向の突端部水際線を基準にした島の最高峰の高さは20ミリであるから、これを2200メートル:138ミリの比率で計算すると島の最高峰の標高は318.8メートル。これで島のサイズがほぼ分かった事になるだろう。
エルンストとフランツは、静岡県の初島より少し大きい程度の島の探検に3日以上を要した。山の山頂まで登ったことを考慮してもちょっとこれは掛かりすぎだと思う。また22話で一家は「1」地点から「7」地点までおおよそ半日掛けて移動したと思われるが、これもせいぜい2キロ程度の移動だろうから2時間以内には到着して欲しい。まあ裸足で歩いていることだし、他にも色々と問題があったのだという解釈を採るしかないなぁ。
|