第1話 「一通の手紙」 |
名台詞 |
「それはそうだ。しかしお父さんに言わせると、医者というものは医者を一番必要としているところで働くのが一番の生き甲斐であり、それが医者としての使命であると思うんだ。このベルン市には他にいくらでも医者がいる、お父さんがいなくたって大して困りはしない。生活が贅沢で、太りすぎたり糖尿病にかかったりする人の面倒を見るよりも、新しい国で一生懸命働いて病気になった本当に医者を必要としている人たちの面倒を見る方が、どれだけ有意義か知れない。」
(エルンスト) |
名台詞度
★★★★ |
子供達にオーストラリア行きの誘いが来た事を打ち明けた父エルンスト、これを聞いた長男フランツは「断ればいい」と大きな問題と考えない。なぜなら父が仕事に困っているわけでもないし、今の仕事が繁盛しているからだ。これに対して父はこのような言葉で反論する。
この台詞には「仕事は金や儲けだけでない」というこの男の信念が見てとれる。恐らくこの医師は、冒頭で出てきた診察シーンのように太り過ぎとかそういう贅沢な悩みの患者ばかりなのに嫌気がさしているのかも知れない。一度そうなってしまうと本当に自分を求めている場所というのを探したくなる、この台詞にはそんな「現状には満足していない」男の思いというものが込められている。
もちろんまだ若いフランツにはその気持ちは分からないし、私もこの台詞の奥深さは大人になった今だからこそ理解できる。本当は二つ返事で「行きます」と返答したい父の本心、それと家族の存在と板挟みになっている苦悩。こんなこの台詞は大人になって初めて分かる思い台詞なのだ。 |
名場面 |
逆立ち。 |
名場面度
★★★ |
「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ」という物語が幕を開いて最初のシーンと言ってもいいだろう。物語の最初の舞台となるベルンの町の説明があった後、最初のシーンは主人公フローネが通う学校シーン。しかも下校時刻で級友に呼び止められるフローネ、こんな何でもない平和な日常から物語が始まるが、この物語を一度でも全部見たことがある人間にとっては違和感があるシーンだろう。
そしてフローネと眼鏡を掛けた友人の話題は、逆立ちの話題となる。この友人の前で逆立ちするのか?と思ったら、すぐこの友人と別れてしまう。だが一人になったフローネはその公園とおぼしき芝生で一人逆立ちに挑む。すぐにワンピースが垂れ下がってきて視界が奪われ、転倒する。そして「つい夢中になってやり過ぎちゃう」と自分の欠点を語り出す。
まさに「つかみはOK!」と言いたくなるシーンだ。フローネという少女の性格を、短い時間で上手く印象付けていると思う。これをみたら誰も「フローネは無口でお淑やか」だなんて思わないだろう。このシーンでお転婆で活発な少女であると強く印象付けるからこそ、今後の彼女の行動が全て生きてくるのだ。
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感想 |
「ふしぎな島のフローネ」は再放送が多かったので何度も見た記憶があるが、最後に見たのが中学1年頃だったと思うからかれこれ28年ぶりくらいに全話通しで視聴することになる。いやぁオープニングの「♪ちゃらっちゃちゃちゃらっちゃ〜」がとても懐かしかった。そしてこの第一話も良く覚えている。今後の物語の展開が走馬燈のようによみがえってきたぞ。
名場面シーンに上げた冒頭シーンのフローネはもう「いかにも」って感じで良い、てーかこのシーンで彼女が印象付けられた訳だ。それにエルンストの名台詞は今だからこそ分かる深い台詞、恐らくこの感想欄や名台詞欄は「大人になってこそ」というものが多く挙がってくるだろう。なんてったって本放送は小学4〜5年生時、再放送で見た時だってフランツより若かった頃なんだから「大人の目線」で全話通し視聴に挑めば印象は大きく変わると思う。
その中でもエルンストの心境というのが大人になって見るととても印象に残る。詳細は名台詞欄に書いた通りだが、こういう自分の意志と現状の板挟みで揺れ動く大人の姿というのを、包み隠さず描いたのはやはり「世界名作劇場」シリーズの良い点だと思う。今時の作りだったらこの父親は特に悩みもせずに決断を下したであろう。
しかしいつ見ても思うのだが、この物語のフローネとジャックの年齢設定がちょっと間違っているようにも感じる。公式にはフローネ10歳、ジャック3歳ということだがどう見てもこの二人は年齢相応の言動を取らない。フローネはどう見ても7〜8歳児の言動を取るし、ジャックは姿形も含めて5〜6歳程度だ。実はこれは少年時代に再放送を見た時に感じた事で、自分の従兄弟達と比較して感じた事だ。 |
研究 |
・ベルン
物語はロビンソン一家の故郷、スイスのベルンからスタートする。ベルンはスイスのベルン州の州都で現在の人口は約13万、スイスではチューリッヒ、バーゼル、ジュネーブに次ぐ第四の都市であるだけでなく、スイス連邦議会が置かれている等スイスの首都であり、万国郵便連合などの国際機関も置かれているスイスの中枢である。
ちなみに「ベルン」というのは英語読みで、フランス語では「ベルヌ」、ドイツ語で「ベァールン」ということらしい。このドイツ語の「ベァー」がこの町の名前の語源で、この町が開かれた頃に公爵が熊を殺したことでこの名前が付けられたと言い伝えられている。
劇中に出てくる町並みは現在もほぼそのまま、中世ヨーロッパの都市の景観を守っている。「ふしぎな島のフローネ」放映翌々年に当たる1983年にこの町並みは世界遺産に登録された。ベルンの町は12世紀頃に開かれたのだが、1405年に大火を経験して現在見られる石造りの建物が多くなったのだという。また文学作品や美術作品の保護に関する「ベルヌ条約」もこの町で作成された。 |