第13話「失ったもの残ったもの」 |
名台詞 |
「泣いたっていいんだぞ。これからはお前とミーナ二人きりで生きて行かなきゃならない。ミーナを守れるのはお前だけなんだからな。だから今は泣いたっていい。」
(バーンズ) |
名台詞度
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母の懐中時計を渡された事で両親の死を受け入れようとしているポルフィに、バーンズが優しく声をかける。かけがえのない両親を亡くしたポルフィに同情すると共に、ポルフィとミーナに待ち受けているこれからの人生のことを思ったのだろう。ポルフィはミーナを支えて生きなきゃならないから、これから泣いている暇なんて無いという意味も含んでいるだろう。両親を失ったポルフィに対し、今だけは自分が父親の代わりになって彼を受け止めようと言う気持ちもあることだろう。バーンズは色んな思いを込めてこの台詞を吐いたに違いない。家族と離れて暮らすバーンズにとってポルフィは息子のような存在だっただろうし、その息子のようなポルフィが人生で一番辛いであろう瞬間を迎えているのを黙って見ているわけに行かなかったのだろう。そのバーンズの「父性」がにじみ出ている台詞で、この物語の中でも1・2を争う名台詞になると思う。
この台詞に対しポルフィは泣かなかった、涙を堪えて妹の看病に戻ると告げてその場を立ち去った。視聴者はポルフィが大泣きすると予想していただろうが、彼はこの言葉で力を与えられたのかも知れない。ミーナの両親の死を知った後のショックがかなり大きかったことを考えると、このポルフィの「強さ」は元来のものではなく、ここでバーンズに与えられたものかも知れない。
それと、バーンズの3話での名台詞を思い出した。 |
(次点)「だから、父さんも母さんも死んじゃったんだ。」(ポルフィ)
…ミーナが両親の死を始めて知る。状況を理解しようとしないミーナに、ポルフィは思わずこの台詞を大声で言う。まるで怖い夜道を一気に走り抜ける子供のように。これを聞いたミーナは手に持っていた母の懐中時計を落とす。この間が秀逸なシーンである。この台詞以降、ミーナから表情と声が消える。 |
名場面 |
バーンズがポルフィに両親の死を告げる。 |
名場面度
? |
バーンズはポルフィを外に連れ出す、そこは遺体安置所…まさか、セーラもジョンも…。と思ったら、CMを挟んでポルフィとバーンズは海辺に出る(丘の上にあるはずの教会の隣がなぜ海岸なのか?というツッコミはしてはならない)。「あれほどのことがあったというのに、海はちっとも変わらないんだな。」と神妙な声でバーンズが言う、それでも妹を気遣い、両親が迎えに来ると信じているポルフィだが、バーンズはそんなポルフィを呼び止めて正直に話す。ポルフィの両親をこの救護所に運んだのが自分であること、その二人が助からなかったと。
最初は信じたくなかった、ポルフィの最初の返答は力無く「…バーンズさん、何言ってるの?」である。バーンズはさらに経緯を説明する、この時のバーンズの声をよく聞くと涙声なのだ。地震が起きてすぐにシミトラ村のポルフィの家に駆け付けたこと、倒れているポルフィを見つけて瓦礫を掘ったこと、ミーナがすぐに見つかったこと、だが発見した両親は残念ながら…「嘘だ!嘘だ嘘だ!」ポルフィは叫ぶ、ミンチンに父の死を知らされたセーラと同じ反応だ。無論あの時と同じように視聴者も一緒になって「嘘だ!」と叫びたくなる。
だがバーンズは静かに「辛いだろうがこれは現実なんだ」と言うと、ポケットからアネーク愛用の懐中時計を取り出してポルフィに渡す。それを受け取ったポルフィの身体が小刻みに震える、この懐中時計を渡されたことによってポルフィは両親の死を現実として受け入れざるを得ないことを悟ったのだ。これは見ている視聴者もそうであっただろう。そして両親の死を受け入れたポルフィはミーナを気遣い、看病のためテントへ戻る。
ポルフィが親の死を知らされ、その死を現実として受け止めるこのシーンは間違いなくこの物語の名場面の一つとなるだろう。恐らく、「ポルフィの長い旅」という物語そのものがここから動き出すのだから…。
私もこのシーンで涙が出た。始めて「ポルフィの長い旅」で泣かされたシーンである。 |
(次点)妹の無事を知ってミーナに抱きつくポルフィ。
…両親を失ったと分かった今、ミーナがたった一人の家族。家族が一人でも生き残ったというポルフィの安堵がきっちり表現されている。 |
感想 |
…大地震って事はあれだ、火山の噴火が近いと父は判断し、モートンさんに相談を持ちかけるんだな。できっとモートンさんの指示で家族みんなが船を造って島を脱出sur(ry…なんてボケてる場合じゃない!
つまりポルフィの家庭の幸せを破壊する「何か」は大地震だった訳だ。当時のギリシャの歴史とか調べたら、この地震がすぐヒットしてネタバレしてしまった訳だ。ちなみに「世界名作劇場」シリーズで「地震」が起きたのは「ふしぎな島のフローネ」以外に私は知らない。
家族の名前を叫びながら走るポルフィ、やがて彼は一軒の家が無惨にも瓦礫の山と化しているのを見つける。村長の家だ、瓦礫の中にボロボロになったエミリー(勝手に命名)が…私は「コリーナ死んだのか?」とテレビに向かって叫んでしまった、子供達は全員生き残ると思っていたのに…。
さすがにポルフィと家族の夢が詰まった工場とポンプが変わり果てた姿になり、ポルフィの家が瓦礫の山になっているのは予想通りとは言え心が痛かった。瓦礫を掘るポルフィを見て心が痛んだ。痛い、痛い。
救護所に場面が移り、村長一家全滅を聞かされて「ダメだったか…」と視聴者が言ってしまうよ、あの作りじゃ。でもミーナは生きていた、頭に包帯が巻かれているが生命には別状がないと。良かった、この災害でそのまま生き別れという私の予想は大外れだったが、ミーナの安否が分かったのは物語を見る上で大きい。
しかしポルフィの両親の死をバーンズから告げられてしまう。ポルフィはなんとか涙を堪えたが、テレビの前の私が…予想通りとは言え、あのシーンが一番辛かった。この物語では人の死を淡々と描き、それに意味を持たせて無理に感動させるような作りにはなっていない。だから視ている側も白けることが無く、むしろそれでもって登場人物の悲しみが強調されて見ている方が涙してしまうのだ。
そしてミーナが意識を取り戻し、ベッドから起きて両親を捜すシーンに心が痛んだ。ポルフィは他に手段が思い浮かばず、ミーナに両親の死を告げる。それ以降、ミーナが表情を失うのを見てまた心が痛む。
こんなシーンでも「救い」があるのが「世界名作劇場」だったのを、ポルフィを視聴する上でずっと忘れていた。そう、どんなに酷いシーンでも必ず「救い」のシーンがあるのが「世界名作劇場」なのだ。「ふしぎな島のフローネ」ではあの海難事故で海に流されて死んだと思ったフランツの無事が確認されたし、「わたしのアンネット」ではダニーがメルクルとともに谷に落ちてもメルクルが無事だったことがそれに該当するだろう、「小公女セーラ」でもセーラが父の死を知った晩にベッキーの温かい励ましがある。その歴代の「救い」シーン以上のものとして、この状況下でザイミスに妹が誕生するのだ。私の予想ではこの赤ん坊は災害で母と運命を共にすると思っていたのに、まさか無事だったとは…今まで辛いシーンばかりが続いたこの話で、唯一救われたシーンだった。
しかしザイミスも父を失っている。素直に喜んでいいのかどうか分からない。そんな状況の横で表情を失って人形のようになっているミーナ…前々回までの幸せな物語が嘘のような展開に引き込まれ、今後が不安のような楽しみのような私であった。 |
研究 |
・劇中の地震について
1953年8月12日、ギリシャ西部でマグニチュード7.1の地震が発生。死者およそ800人…2001年にアメリカで制作された「コレリ大尉のマンドリン」という映画にもこの地震は描写されているそうだ。ギリシャ西部のイオニア諸島で大きな被害が出たようで、まだ私の調査では場所が確認できていない「シミトラ村」や「ヤニーナ」(どちらもたぶん架空)は西ギリシャ地方にあると思われる(アレッシアの存在を考えれば離島で構成されるイオニア地方とは思えない)。震源地はギリシャ西方沖、ギリシャ西海岸とイオニア諸島の中間付近と思われる…以上、この地震について番組終了直後に調べた結果分かったことだ。
シミトラ村の震度は劇中の様子から確認できる。地震発生時にポルフィは立ってられずに転倒していること、倒木や崖崩れの発生、木造および石造りの家屋の倒壊、地割れの発生、さらにミーナはあまりの揺れで全然歩けなかったと証言している。これらの状況を現在の日本の震度階級と照らし合わせると震度6であることが分かる。ただし家屋の倒壊率を考えると1996年以前の規程で行けば震度7ということになり、日本で言えば阪神淡路大震災レベルの大地震であることがわかる。
津波は発生していないようなので、おそらくは活断層タイプの地震ではないかと推測される。津波が無いことについては劇中でポルフィとバーンズが何の警戒もなく海岸へ出ていることと、バーンズの台詞「あれほどのことがあったというのに、海はちっとも変わらないんだな。」から判断できる。
余震については劇中では描かれていないが、実は描かれていない場所で発生している確率が高い。
以上、劇中で発生した地震について推理してみたが、他にもご意見等あったら遠慮無く頂きたい。 |
・さて、本日の考察の最後に10話研究欄(それ以外含む)での私の予測がどうだったのか、箇条書きしてみよう。 |
・出来事が史実にある自然災害等 |
当たり |
1953年8月12日発生の地震と思われる。 |
・出来事による村の壊滅 |
当たり |
シミトラ村は地震発生により壊滅状態に。 |
・火山の噴火 |
ハズレ |
日本で言うところの阪神淡路大震災クラスの大地震だった。 |
・多量のガソリンに引火してポルフィの家大爆発 |
ハズレ |
ガソリンスタンド開業前にそれは起こったので引火のしようがなかった。 |
・ポルフィの両親の死去 |
当たり |
地震発生時に瓦礫の下敷きになって死去。 |
・他の村人も家が破壊されたりして多くの死者が出る |
当たり |
村の家という家は殆ど倒壊したくさんの死者が出た。 |
・出来事は学校の授業中に発生する |
ハズレ |
学校は夏休みのようだ。 |
・上記によって子供達は助かる |
ハズレ |
コリーナが自宅の下敷きになって死去。ポルフィはお使いにでていて難を逃れた。ザイミスが助かった理由は不明。 |
・救護所が複数できて分断される |
ハズレ |
救護所は村の教会に一カ所。 |
・ポルフィとミーナが生き別れになる |
ハズレ |
ポルフィは頭に怪我をして意識を失っているミーナを見つける。 |
・ザイミスの母はお腹の子もろとも死亡する |
ハズレ |
生存し地震翌日に教会で女の子を無事出産、この物語の「救い」となる。ただしザイミスの父は死去。 |
・コリーナがポルフィに助けられて改心 |
ハズレ |
コリーナは死んでしまった。 |
・米軍が災害派遣で村へ来たためにバーンズやジョンの父が物語に絡む |
当たり |
災害派遣か救助隊なのかは分からないが、米軍が救護活動を行っている。バーンズはミーナを救出、ポルフィの両親の遺体を収容する。 |
・アレッシアが父と一緒に救援物資を届けに来る |
不明 |
13話ではこのような場面が描かれることはなかった。 |
・サチェル・ペイジの話題並びにダモンの台詞より舞台は1947年以降で1955年頃 |
当たり |
地震が1953年のものと思われる。 |
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