「あにめの記憶」リアルタイム視聴1
世界名作劇場「ポルフィの長い旅」
・私にとっての「世界名作劇場」復活作品
子供の頃からずっと見ていた「世界名作劇場」シリーズ、1988年作品の「小公子セディ」をもって「卒業」したのは多作品のコーナーでも述べたとおりだ。当時は既に高校3年生で、このようなアニメをみる年齢ではなくなったことと、その次の作品である「ピーターパンの冒険」に興味が行かなかったことが大きな理由であるが、細かい理由については「愛の若草物語」の考察で語って来たのでここでは省略しよう。
それから月日が流れ、私も社会人になってそして結婚という人生を歩むことになるが、新聞のテレビ欄から「世界名作劇場」枠が消えているのに気付いたのはいつ頃だろう?
実を言うと「あしながおじさん」と「ナンとジョー先生」は旅行中の宿でそれぞれ一度だけ見た記憶がある。「家なき子レミ」の時はさだまさしがオープニングを歌っていたというだけでまだ「世界名作劇場」が存続していることを知った(ただし視聴経験無し)。私にとってはそれらの足跡を最後に、「世界名作劇場」はパッタリと消えてしまった。
時は流れ2007年、小学生になった娘が興味を持って図書室から借りてきた本が「母をたずねて三千里」のアニメ絵本であったことが私が「世界名作劇場」を思い出すきっかけとなる。それに続いて「赤毛のアン」等同じシリーズの絵本を借りてくる娘、その頃に私はいつの間にか消えていた「世界名作劇場」が復活していることを知る。だがその季節は11月、途中から見ても話しについて行けないだろうという判断で「レ・ミゼラブル
少女コゼット」の視聴はしなかった。そして某動画サイトで「小公女セーラ」との再会劇へと流れて行き、私の中で「世界名作劇場」熱が高まった2008年1月、満を持して「世界名作劇場」新作開始と同時にリアルタイム視聴に復活することにした。これが「ポルフィの長い旅」となる。
当初、アニメ制作スタッフや原作について調べないまま視聴を開始したが、原作については「展開が全く違うのでネタバレの心配はない」という情報をインターネット上で得たために7月頃に読んだ。確かにこれを前もって読んでいてもアニメの展開は全く分からない、それほどまでにアニメ化で物語が大幅に改編されているので驚いた。この辺りの考察は本文および総評で行いたいと思う。
今回の考察文は基本的に本放送リアルタイム視聴時に書いたものである。放映=初回視聴当日の夜、または日曜日の夜に用事があって見られなかった場合はビデオに録画して初回に見てすぐに書いたものである。例外的に第36話だけは翌土曜日の再放送時に視聴し、その夜に書いた考察文である。
・「ポルフィの長い旅」とは?
「世界名作劇場」2008年作品となった「ポルフィの長い旅」は、1955年にポール=ジャック・ポンゾンが書いた「シミトラの孤児たち」(LES
ORPHELINS DE SIMITRA)が原作である。この原作はギリシャの寒村「シミトラ村」を大地震が襲い、この地震から生き残り孤児となった兄妹、ポルフィラス(通称・ポルフィ)とマリーナ(通称・ミーナ)の運命を描いたものである。日本でも「シミトラの孤児たち」というタイトルで以前から出版されていたが、アニメ放映に合わせて「ポルフィの長い旅」に改題されて再度出版されている。
だがアニメで利用されたのは物語の骨格のみで、多くのエピソードはオリジナルとされた。これは総評でも詳しく考察するが、全52話中原作のエピソードはほんの数話という有様である。原作のポルフィはギリシャからオランダ、オランダからパリ、パリから南フランスという移動はあるが、これは本当に「移動」でしかなくその道中については詳細に書かれていない。オランダなりパリなり南フランスなりにある一定期間滞在し、その滞在中に様々な出来事が起こるというのが原作のスタンスだ。つまり原作では登場人物の人数がそう多くないのだ。
アニメ化に当たってこの「移動」を大きく膨らまし、道中での出来事を描いて「出会いと別れの繰り返し」という構図を大きくした。そのためとアニメ制作側の営業上の理由(…著名声優の起用による宣伝効果)で1〜3話内に完結する物語の連続として、ゲストキャラを数多く用意した。ポルフィの旅程も一筆書きになるように変更され、原作では最初の里親となった人物のいるオランダはカットされてイタリア経由に変更された。さらに最終目的地はパリに変更され、原作での最終目的地となった南フランスはアニメでは単なる通過点となった。最終目的地が変わったことで、ラストも大幅に書き換えられることとなった。特に原作になかったイタリアの滞在時間が長くなった(イタリア滞在は21話分にも及ぶ)こともあり、これらの設定変更で原形をとどめないほど物語の展開が変わってしまった。
またミーナが行方不明になるきっかけも原作とアニメでは大きく違う。原作ではある日突然、ミーナはオランダの里親の元から姿を消すのだ。原作ミーナが行方不明になった理由は、ギリシャが恋しくなって目の前にあるポートで海へこぎ出していって遭難、ノルウェーの船に救助されるがその救助作業中の事故で大怪我をして記憶を失うというものであった。そしてミーナは怪我の回復と共に数ヶ月掛けて記憶を取り戻し、ノルウェーからオランダの里親の元へ連絡し、そこでポルフィがミーナを探して家を出て南フランスにいることが分かるという展開である。
このようにして「シミトラの孤児たち」という物語は、「ポルフィの長い旅」という全く別の物語になったと言っても過言ではない。この事実を知ったからこそ、「ネタバレは無い」と断定して原作を先回りして読むに至ったのだ。
・「ポルフィの長い旅」関連リンク集
「ポルフィの長い旅」についてもっと知りたい、他の方の視点による考察を見てみたい、とおっしゃる方は下記リンク集をご利用ください。
世界名作劇場の軌跡
『ポルフィの長い旅』 |
「世界名作劇場の軌跡『ポルフィの長い旅』」
Omeletto様による、「ポルフィの長い旅」解説サイトです(サイト管理者の連絡先が分からないので勝手にリンクしました、問題等ございましたらご一報を)。
管理人様独自の視点のみならず、「赤毛のアン」主人公アンの視点からの物語の感想や解説が他のサイトにはない試みで見ていて面白いです。
当サイトと同じように、名台詞や名場面を選び出した考察も一部にあります。共通点と相違点を見つけるのも面白いですよ。 |
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「世界名作劇場地理的大解剖」
Norioh様による「世界名作劇場」各作品を「地理」という点を中心に考察したサイトです。この中に「ポルフィの長いブログ」が特設されていて考察と感想が書かれています。
「ポルフィ」については物語への的確なツッコミや鋭い考察で、ある時は笑わされたり、ある時は感心させられたりします。
「ポルフィの長い旅」以外にも地理を中心とした物語の考察は鋭く、また時代設定などにもこだわりをもって考察されています。 |
・サブタイトルリスト
・「ポルフィの長い旅」オープニング
「ポルフィの長い旅」 作詞・岩里祐穂 作曲・多田彰文 編曲・多田彰文 歌・IKUKO
まずこの単刀直入のタイトルが良い。つまりこの曲はこの物語の主題歌として作られ、他の用途が全く無いという事がタイトルだけで見て取れる。いつの頃からかアニメのオープニングやエンディングが、「テレビ局が最も売りたい歌手」の作品発表の場と化しており、物語とは全く無縁の聞くだけで恥ずかしいバカップルソングばかりとなっていた。「ポルフィの長い旅」はそんな現在風のアニメから脱し、オープニングもエンディングも歌手で選ぶのでなく歌や詩の内容で選んできた事に色んな意味で驚きを感じた。その最たるものはこのオープニングテーマ曲である。
この詩の内容も、背景に流れる映像もどちらかというと中盤以降のポルフィの旅が一番見ていられなかった展開の頃に合わせてあるようだ。ポルフィの道がとても長くて何処まで続くのか分からないことを明確に歌い上げ、どんな旅が展開しているのかを期待させて物語に引き込むだけの力がある「主題歌」として立派な曲だ。背景映像も序盤の情けない表情のポルフィの顔ではなく、中盤以降の凛々しいポルフィがアンゲロプロスに貰ったリュックを背負ってひたすら歩いて行く光景が印象に残るようになっていて、その間にミーナの姿を効果的に入れている。そのポルフィのアイテムを見ているだけで、中盤以降の展開を期待できるし、なによりも何がポルフィにこんな旅をさせているのかという事で視聴者を上手に引き込めるようになっているのだ。
またオープニングの最後は一家の写真で終わるというのもこれまたいいと思う。序盤の楽しい展開を毎回のように視聴者に突きつけることで、ポルフィがどれだけ変わってしまったかという点を振り返らせる役割があるのだろう。
曲も詩も気に入ったので思わずCD買った。そしたらC/Wの「シミトラへの思い」はもっと良い曲だった。いつ劇中で挿入歌として使われるのかずっと楽しみに待っていたのは事実。
いずれにしろ、こういうちゃんと「物語とセット」になったアニメ主題歌がもっと増えて行く事は期待したい。
総評はこちらからどうぞ
エンディングテーマについては第48話考察の続きに入っています。
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