第40話「ベスが猩紅熱にかかった!」 |
名台詞 |
「ベスの猩紅熱が軽く済めばいい、軽ければ早く治る、治ればうちへ帰れる。しかし、ベスの病気はそんなに軽いものではなかった。みんながベスのことを心から心配している。もし私が猩紅熱に罹ったら、みんなが本気で心配してくれるかしら?
私はそのことが心配だ。」
(エイミーのナレーション) |
名台詞度
★★★★★ |
マーサの家に預けられたエイミーが、送りに来たジョオの馬車を追って走り転ぶ。そのシーンからラストに向けてゆっくり流れるこのナレーションは、「愛の若草物語」全話中最も優れたナレーションだと思う。
転んだエイミーから、ベスを見舞いに来たローレンス、そしてフォレット邸の寝室で一人寂しく過ごすエイミーと画面が流れる中、物語の解説をキチンとしつつエイミーの心の叫びをしっかり語っているのだ。ベスに早く治って欲しいこと、早く家へ帰りたいこと、そして病気になったのがベスじゃなくて自分だったら…ここで語り着れていないエイミーの気持ちがひとつだけある、それは早く母に会いたいと言うことだがそれはこの回の前提であるので省いても良いだろう。
本放送時、このエイミーの解説で私は泣かされた。ベスが病気と闘うだけでなく、それによってここにも孤独に戦う少女が一人いるという事実に涙が出たのだ。そのエイミーの現実をも上手に再現しており、20年の時を経ても覚えているナレーションとなった。 |
名場面 |
ベスがフンメル家から出てくる |
名場面度
★★★★ |
冷たい風が吹く街が突然に出てくる。その中の決して裕福に見えない家がフンメル家だ。その扉が開くと呆然とした表情のベスが出てくる。ベスが橋の上で立ち止まると扉が開けっ放しのフンメル家を振り返る。この時の風による服の揺らぎ具合が何とも言えない。
再び前を見るベスは、今度は声を上げて泣き始める。泣き始めたベスは家へ向かって駆け出す。フンメル家の扉が風に揺れる。
台詞が全くない(ベスの泣き声のみ)このシーンだが、この家の中で悲劇が起きたこと、その悲劇はその家の住民だけでなくベスをも襲っていることを無言で示すシーンだ。このシーンを見た視聴者はこれからさらに悲しいな展開になることを悟り、不安に陥れるのに十分なシーンだ。
しかも、この話に先だって既に父が倒れて母が不在という不安な展開がずっと続いてきた。それでもなんとか明るくやって来た姉妹だが、これ以上何か起きたら限界だというのは誰が説明するまでもなく分かるつくりになっている。その何かが怒った瞬間を示すシーンとしてもよく描けていると思う。
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今回の主役 |
・サブタイトル表示→ベス
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・物語展開上→ベス
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後半はエイミーが主役にも見えるが、全てはベスの病気から物語が展開しているから主役はベスだろう。物語の進行とともにだんだん顔色が悪くなるベスを見て、マーサじゃないが「運が悪いなぁ」と思った。
・次回予告→ベス…泣ける次回予告だ。 |
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感想 |
ずっと明るく続いてきた物語だけに、ここで父が倒れ母が不在となりさらにベスが倒れるという展開に「そんなんありかよ…」と当時も思った。これまでの「世界名作劇場」シリーズでも不幸がドミノ倒しのように連鎖するシーンは何度も描かれてきたが、物語も40話に達しようというこの期に及んでここまで立て続けに不幸をぶつけてきた作品ってあっただろうか?
この辺りまで来ればどんな物語でもハッピーエンドが見えてきている段階だぞ。まぁこの時期に新キャラをどんどん出して視聴者を混乱させた「わたしのアンネット」なんて作品もあったが。ただこのまま明るく終わっても、登場人物にも視聴者にも何にも教訓を残さずに終わってしまうのも確かで、ここからラストに向けて試練を乗り越えるという展開はやむを得ないのだろう。原作もそういう展開だし。
しかしベスの猩紅熱でジョオの風邪はどっかに行ってしまったなぁ。他人が病気になれば自分は感じなくなってしまうってトコなのだろうか?
また後半のエイミーもいい、マーサのところに行きたくないと我が儘を言うだけでなく、ジョオを追いかけるシーンも彼女の寂しさを上手に再現していると思う。さらに最後のナレーションは最高だ。 |
研究 |
・猩紅熱
今回も原作踏襲だ。ただアニメではジョオの風邪はこの日限りのように描いているが、実際には数日間家から出られなくなるほど重い物だったらしい。またベスは母が恋しくなると戸棚の母の服に顔を埋めて泣き、泣くと気が楽になってまた快活になるという設定も省略された。そんな訳で原作ベスは姉妹の心の支えになっていたのである。だからこそベスが猩紅熱に倒れると皆が心から心配するという伏線にもなっている。アニメはこの辺りの理由が弱いのが少し不自然だ。
ベスの帰宅以降は原作もアニメも台詞まで含めて同様に進むが、アニメではメグとジョオがベスの看病担当を取り合うというシーンだけ飛ばされる。ベス本人の希望でジョオがベスを看病することになるが、この非常事態に下らない姉妹喧嘩は省略して当然だろう。原作では姉妹の中の良さを描いたようだが。
またエイミーを上手く丸め込んでおば様の家へ隔離することに成功するのがローリーという点も同じである。ただ最初にエイミーを説得しようとしていたのは原作ではジョオでなくメグだが。
さて猩紅熱という病気だが、現在でも存在する病気ではあるが医学の進歩により治療が容易になり、かつては法定伝染病であったが現在はそれも解除されている。最初は喉の痛みと高熱で始まり、続いて全身に発疹が広がったり舌に赤い発疹が出来たりするようだ。あれ、ベスの症状とかなり違うような…ベスの症状はルーシーやセーラにソックリじゃないか?
本当は猩紅熱じゃなくて肺炎だった?
ヤボなツッコミになってきたのが今回はここまで。 |