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第31話 「メグはきせかえ人形じゃない!」
名台詞 「無理だなんて、僕はメグと踊るために来たんですよ。そのドレスは好きじゃないけど、メグ、あなたは本当にきれいですよ、確かに。」
(ローリー)
名台詞度
★★★
 くぅ〜っ、格好良すぎる。
 名場面シーンの直後にメグを見たときは、着飾っているメグをさんざん非難したが、ローリーはそれでは良くないと思いメグにこう声をかけるのだ。メグもメグでローリーに言われた言葉でもって自分を取り戻し、反省していたところでローリーにこう声を掛けられて、最初は「無理しないで」と答えつつも結局はローリーと踊ることになる。短い時間の仲違いだったが、こういう形で和解できるなんてやっぱローリーは年相応以上のかっこよさがあるなぁ。これがアンソニーだったらどうなっていただろう?
名場面 二度目の舞踏会でのメグ登場 名場面度
★★★
 メグがモファッド家に来てから二度目の舞踏会、ここの娘に美しく着飾られたメグが階段の踊り場から登場するシーンは、メグの虚栄心や変身願望が満たされた瞬間でもあり、また着飾られた彼女に群がる男達の姿は彼女のそんな部分を満たすのに十分な登場シーンだろう。
 だが、ローリーと視聴者の多くは思ったに違いない。「こんなのメグじゃない…」と。マーチ家の長女は貧しくても自分で働き、個性豊かな姉妹を束ねる統率力(…この力で家庭教師も勤まる)、それに何よりも母メアリーに忠実で一家を助ける姿こそがメグのはずだ。そのメグの変わり様を見て、メアリーやマーサ、それにジョオの心配が的中したことを嫌でも思い知らさせるのだ。
 このメグを見て呆れた表情のローリーを見て、多くの視聴者はローリーに同意するだろう。だが考えても見ればもしここに出てきたのがメグではなく他の人だったら…きれーだなぁと鼻の下を伸ばすことになったんだろうなぁ…。
今回の主役
・サブタイトル表示→メグ
・物語展開上→メグ
モファッド家で着飾られたことをローリーに非難されたことで、自分を取り戻すメグ。彼女の性格や「望んでいる物」が見えた上で結局は自分は自分でしかないと気付いて成長するいいお話だ。メグ一番の見どころだろう。
・次回予告→ジョオ…またサザエさんになった。休みをもらったからって怠けることばかり考えるのって、何かサザエやカツオみたい。
感想  本放送時にこの辺りを見逃していたせいもあって、後で物語自体が終盤に突入したときに「そう言えばモファッド家がメグを招待するって話はどうなったんだ?」と気になっていた。その謎は本放送から20年の歳月を経て原作と小説版を立て続けに読んだところで解けたわけだが…豊かではない生活を続ける虚栄心と変身願望の固まりが突然贅沢な場所へ行ったらどうなるかというお話だった訳だ。ローンレンジャーで決して裕福ではない暮らしをしている私はメグの気持ちは少しはわかる。少しはね。でもあの着飾ったメグを見たときはちょっと失望した。
 だがローリーが上手くやったためにメグは自分が背伸びしすぎたことに気付いて自分を取り戻すという展開は気に入った。それに至るローリーの活躍もこれまたいい。このエピソードでは主役はメグじゃなくてローリーにしたいね。
 どうでもいいが、ローリーってかっこいいときと情けないときの差が凄いキャラだ。
研究 ・モファッド家
 今回は贅沢好きの一家モファッド家でメグが揉まれるお話。虚栄心と変身願望の固まりみたいな少女が裕福な家で背伸びをしてしまい、自分でそれに気付いて自分を取り戻すというこの話も原作を踏襲した話である。
 だが原作とアニメでは前提からして大きく違う、原作ではモファッド一家がメグとローリーの仲を疑うだけでなく、メアリーに対する勝手な噂話をしたりしてメグが深く傷つくシーンがあるのだ。ローリーと仲違いしたときには、その前提に加えてさらにメグのことを「いいおもちゃにしている」「あれじゃ台無しだ」という声を聞いて自分の背伸びに気付くという内容になっている。あにめでは唐突に理由もなくこれに気付くので、この部分は原作の方が流れが自然だ。
 さらに原作ではメグが若者達と酒を呑んで酔うシーンがある。これはよくないと忠告に来たローリーに「今夜は私、メグでなくお人形なの。明日になればこんな服を脱ぎ捨てて善良になるの。」と返答するシーンがある。私は原作のこちらの部分の方が気に入っていて、これをどうアニメで再現しているのかと楽しみにしていたのになー。ま、よい子の「世界名作劇場」で二日酔いはなしだろうけど。
 さらに家に帰ったメグは母に全てを報告し、さらに自分とローリーの事や母のことについての勝手な噂話に傷ついたことも報告する。これについて母がいい説教をするのだが…長くなるからここまで。興味のある人は原作を買って読むように。

第32話 「困ったマーサおばさんの性格」
名台詞 「いやぁ、ジョオさんには関係ありませんよ。ジョオさんに何言われようと、本人に勉強する気があれば帰ってきましたよ。」
(ブルック)
名台詞度
★★
 行方不明のジョオとローリーを探すメグとエイミーとブルックの3人だが、その途中でメグは「ジョオがローリーをそそのかしたのでは…」と気にする。それに対して即座に返答するのがこの台詞だ。
 この台詞には現在のローリーの気持ちが込められている。勉強何かよりも今は仲の良い友達といることが楽しいというローリーの気持ちだ。ローリーにその気持ちが強いからこそ勉強は身に入らないし、いつもブルックを困らせてばかりなのだ。もしローリーがジョオに、マーチ家の姉妹にこんなに夢中でなかったら…素直に勉強するはずなのだ。
 家庭教師としていつもローリーを見ているブルックだからこそ、このローリーの気持ちが痛いほど分かるのかも知れない。ローレンスはその辺りをローリーやジョオから直接聞いているはずだが…それはブルックには伝わっていないようだ。
名場面 マーサが帰ってきた… 名場面度
 ローリーとボート遊びをしていたジョオをフォレット邸のメイドであるエスターが迎えに来た。そこに知る衝撃の事実は、マーサが療養に行かずに帰ってきてしまったこと。ジョオの休暇はたった1日で終わってしまい、ジョオを芝居に誘うつもりだったアンソニーは落ち込み、ジョオを芝居に連れて行かれずに済んだローリーは笑顔になり、ジョオから金庫の鍵を奪い取る気満々だったデービットはそそくさと逃げ始める。まずこのシーンの男達の表情が豊かで楽しいのだ。
 続いて翌朝、フォレット邸でのシーンに切り替わり、休暇が取り消されて怒り心頭のままマーサに対応するジョオが出てくる。「どうしても行く気がしなくてね…」とおちゃめに言うマーサだが、そんなマーサを見てもジョオの怒りは収まらない。ジョオの気持ちを静めるために「指輪が取れない」と困って見せても、やっぱジョオの表情は変わらず。
 これらのシーンで見え隠れする「ジョオの休暇による皆の目論み」が丁寧に描かれていて本当に面白いシーンに仕上がったと思う。しかもその中で唯一ホッとしているローリーの姿を忘れちゃいけない。なんだかんだでジョオを女として気にしているってことだ。「若草物語」じゃなくて「愛の若草物語」なのはこんなささやかな恋愛を追加したことによるんだろうな…。
 
今回の主役
・サブタイトル表示→ジョオ
・物語展開上→ジョオ
休みが取れたと張り切るジョオと、それを取り囲む男達の物語(w。モテるのね。
・次回予告→エイミー…本放送時は現実世界の夏休みが終わった頃なのに、突然夏休みになったと言われてもな〜。しかし「ちゃんと見てね〜」って…。
感想 批判が多いので別窓にしました。興味のある方のみこちらをどうぞ。
研究 ・ 
批判が多いので別窓にしました。興味のある方のみこちらをどうぞ。

第33話「楽しい楽しい野外パーティだ!」
名台詞 「そうだよ、人間は働いていれば悪いことはしないもんさ。ブラブラ遊んでいるとろくな事はないさ。」
(マーサ)
名台詞度
★★
 ジョオがしきりに夏休みのことを気にしているが、それに対してマーサはジョオに「夏休みのことは諦めたのか?」と訪ねる。「仕方がないわ」というジョオにマーサがこう言う。
 この台詞をリアルタイムで聞いたのは、私がアルバイトを初めて労働の尊さを知ったとき。夏休みに何も働かなかったのをこの台詞を聞いて少し後悔した。この夏休みは青函連絡船に明け暮れていたっけ、正月のバイトのお金を残しておいて初めて北海道へひとり旅とか、軽井沢で過ごした日々など思い出は数あれど、他はだらだらしただけで終わったもんな〜。北海道旅行以外はあまり印象に残らない夏でもあった。
 悪いことはしなかったけど、悪いことをしてしまった気にはなった、このマーサの台詞を聞いて複雑な心境の高校2年の初秋であった。
 この台詞の後、絶妙の間で「だらだらしている悪い男」が現れるのもタイミングが良くて好きだ。
名場面 楽しい楽しい野外パーティだ! 名場面度
★★
 楽しい楽しい野外パーティ、メグはブルックの釣りに付き添い、エイミーはトムと一緒に遊び、ジョオはローリーと語り合い、ベスは一人で花輪を作っている。ベスだけが一人なのが…原作ではちゃんとベスの相手もいるのにね…。
 そして最後は姉妹で「いつかきっと!」を歌って終わる。うわ〜、アニメとしてはベタだが姉妹が本当に楽しそうなひとときを過ごしているからよしとしよう。
 
今回の主役
・サブタイトル表示→エイミー
・物語展開上→ジョオ
前半のジョオとマーサのやり取りが何とも言えず面白い。後半はエイミー中心にも見えるが、やはり今回は我々に労働を教えてくれるジョオだろう。マーサへの気持ちもよく分かったし。
・次回予告→エイミー…え〜と、何か「若草物語」とは思えない画像が出てきたのですが…?(←本放送時の感想)
感想  本放送時はエイミーのお仕置きの回以来久々に見た回である。その間を全く見ていない前提での感想は「何も変わっちゃいない」という点だろうか、この回も言いたい点がよく分からず、マーサの名台詞と最後の野外パーティーシーンが楽しかったのが唯一の救いだった。原作を知らなかった当時の私としては、パーティなんかやんないでジョオの労働についてで全編終わらせりゃよかったじゃないのとマジで思った。
 まぁ、次の回で強烈に「愛の若草物語」に引き戻される訳だが。当時の視聴再開がこの回というのは今考えると良かったかも知れない。前話だったらもうそのままサヨナラだったろうし、次話だったらあまりの落差について行けなかったかも知れない。自分の夏の過ごし方について考えさせられるマーサの台詞もあったりしてもうちょっとみてやろうか、という気にはなったのだ。そしたら次回で…。
 そうそう、突然「小公女セーラ」のピーターが出てきてびっくりした。いや、本放送時マジでピーターが出てきたかと思ったんだよ。今に「お嬢さまぁ」とか言い出しそうで怖かったね。
研究 ・「遠足会」
 この回は前半はオリジナル、後半のパーティは原作から持ってきた話である。前半は前話で積み残した教訓を入れようとしたようだが、どうもこれが中途半端だ。やはり姉妹全員で一致団結して失敗するからこそ教訓を得るのであって、夏休みが逃げていっただけで大げさな教訓には繋がらないのだ。
 そりゃともかく、原作でも夏の一日を屋外で楽しく過ごす一日の話がある。イギリスに住むローリーの友人達が遊びに来るというので、マーチ姉妹と一緒に屋外でパーティとゲームをやろうと決まるのだ。姉妹は招待を受けてイギリスからの友人達も含めて楽しく遊ぶのだ、メグはケイトという二十歳の女性と仲良くなり、エイミーはグレースという女の子と仲良くなる、ベスですらフランクという足の悪い少年と仲良くなる。さらにサリィなどもこの集いに参加していたようだ。
 アニメでは物語の最後の方で僅か5分程度の長さで描かれたが、原作ではこのパーティの様子にかなりページ数を割いている。皆でボートに乗って川を下ったり、クロケットを楽しんだり、食事をしたり…本当に楽しそうに描かれているのだ。
 アニメでは参加人数は7人。ローリーのイギリスの友人達は全員削られてしまったが、ブルックの弟のトムが出てきた。そう、「愛の若草物語」に必要だったのにこれまでいなかったキャラクターである「男の子」がやっと出てきたのだ。「若草物語」もローリー以外は基本的に女性ばかりの物語である、男の子が入って行く余地がないと言わざるを得ない。ローリーの存在は本放送当時の私のように、ジョオやメグと同世代の少年が見る分には問題ないが、もっと小さいベスやエイミーと同世代の男の子が出てこないのだ。そのような役割を負って出てきたはずのトムだが…どうみても脇役で終わりだなぁ。「愛の若草物語」が小学生位の男の子達の印象に残ったかどうか、ちょっと不安だ。

第34話「エイミーは悪い夢を見た!」
名台詞 「やったぞ! こんな大きな魚は初めてだ!」
(トム)
名台詞度
★★★★★
 普通は初めてだわな!
 それより、そんな事を暢気に言ってる場合じゃないだろ。この緊迫シーンでこの台詞、大好き。本放送当時、この一言で「愛の若草物語」視聴復活を決めた。
名場面 エイミーが怪獣に襲われる 名場面度
★★★★★
 まず最初に一言。これのどこが「若草物語」なんだ!?
 釣りへ行ったトムとエイミーだが、いつまで経っても魚が釣れずエイミーがウトウト始めると、トムがエイミー手伝ってと叫んでいる。その声にエイミーが反応して一緒に釣り糸を引くと…確かに大物だ、巨大な怪魚がかかっていたのだ。
 飛び上がって喜ぶトム、腰を抜かすエイミー。エイミーの目の前でトムが食べられてしまうと、怪魚はそれだけでは足りないのか、それとももっと美味そうな獲物を見つけたためか、今度はエイミーに牙を向ける。
 必死に逃げるエイミー、怪魚はいつの間にか手が生えて足が生えて、まるで「地球大進化」のCGよろしく爬虫類に進化する。爬虫類への進化だけでは物足りず、今度は哺乳類に進化だ。魚からライオンへ、生命の神秘だ。
 そこへジョオ登場。格好良すぎる。ジョオは海獣と違って無から突然現れたもんな。ジョオは指先で嫌いなはずの雷を呼び、怪獣を退治するのだ。夢オチになるのはなんとなく予測が付いていたが、ここまでぶっ飛んだシーンを作ったスタッフに脱帽。これは「若草物語」ではないが、原作から外れるならこの位派手にやってくれた方が、中途半端に面白いところだけバッサリれやられるよりむしろすっきりする。
 またこの夢でジョオが助けに来るのもポイントだ。ガラス工房へのジョオの瞬間移動という伏線もそうだが、その伏線に対してエイミーの中で何かあったらジョオがどこからとも無くやってきて助けてくれるという構図が出来ているのだ。姉妹間の信頼や尊敬の念も上手に描かれている。その点で言えばこのシーンは「若草物語」のテーマを実によく再現していて、脱線と一方的に言えないものであるのも確かだ。
  
今回の主役
・サブタイトル表示→エイミー
・物語展開上→エイミー
こんなぶっ飛んだ話はエイミーにしか作れないだろう。私はこの1話でエイミーが強烈に印象に残ってしまった。怪獣に襲われるシーンも凄かったが、ジョオの瞬間移動をしつこく疑うのもこれまたいい。
・次回予告→エイミー…やっぱサザエさんだ。
感想  だから、これのどこが「若草物語」なんだ!?
 しつこいが二度は言わないと気が済まない。いや、これは批判じゃないですよ、誉め言葉だ。本放送時にあのシーンを見た直後の率直な感想としてこの誉め言葉を思い付いていた。
 あのシーンがあまりにも強烈すぎて、他が全く頭に残らないほど凄い回だ。ジョオの瞬間移動の話も今回再視聴するまですっかり忘れていたし…。本放送当時、見逃した回以外はがっかりする話ばかり見ていたから、これを見たときに「やればできるじゃん」とテレビに向かって叫んだ記憶がある。原作から脱線しているのも予測できたし、夢オチという禁じ手を使ったのも本来なら批判点だが、それと引き替えにするだけの予想外の展開と、面白さに溢れている。しかもあの怪獣が怖い顔でなくどことなくユーモラスな顔なのも好感が持てる。それでいて原作のテーマである姉妹の信頼関係もキチンと描いている。最高のシーンだよ、もう。
研究 ・マーチ家とガラス工房
…ってテーマで間取り図作って考察しようと思ったら、他の「愛の若草物語」考察サイトに先を越されていた。
 二番煎じはアレなので、今回はやめときます。だってそのサイトと書くことが全く同じになってしまいそうだし。

第35話「メグ、それはやっぱり恋なのよ!」
名台詞 「私は面白いと思ってるんだけど、そう思わない人もいますから。」
(ジョオ)
名台詞度
★★★
 新聞社に寄りたいから早く帰らせてくれと願うジョオに、マーサは面白かったところだからもっと読んで欲しかったという。そこでジョオが「小説って面白いでしょう」と言うと、マーサが「全くねぇ」と言った後に「お前の小説はどうなんだ?」とジョオに問う、その返答がこれだ。
 ここにジョオの成長を見て取ることが出来る。以前は自分の小説を面白くないと評する人がいれば怒るか悔しがるかのどちらかであったが、自分の小説を「つまらない」と評する声も素直に受け取れるようになったのだ。この「つまらない」を素直に受け取ることが自分の小説をさらに面白くすることにもそろそろ気付き始めているかも知れない。とにかく、最初の頃のジョオと比較すると成長を感じる台詞だ。
 私も本放送時にこの台詞を聞いて感心した。
名場面 ジョンとの再会 名場面度
★★★
 ジョオがマーサに本を読み聞かせてやっている頃、フォレット邸に近付く人影がある。その黒人を見たときに多くの視聴者はジョンがマーチ一家を訪ねてやって来たに違いないと思うだろう。自由を求めた旅に挫折したのか、それともうまくやっているのか、またどこからか逃げてきたのか、ジョンの再登場の理由について視聴者が様々に想像を膨らませるだけの時間を視聴者に与える。
 玄関の扉を叩いたジョンにエスターが対応する、ああ少なくとも後ろめたい状況ではないんだなと理解できるが、やはり何でやってきたのかまだ分からず少しの不安に襲われる。エスターがマーサにジョンの来訪を取り次ぐシーンを挟んで、ジョオの喜びが爆発する。
 居間でジョオとジョンが対面すると、ジョンは脱走後に非常に上手くやってメアリーから借りた金にも殆ど手を付けずに済んだことを告げる。ジョオだけでなく見ている我々までこれには安堵してしまう。そして借りたお金を返すためにマーチ一家を追ってきたことが分かると、誰もがジョンの誠実な人柄に感動する、ジョオでなくてもジョンに仕事のひとつふたつ斡旋してやりたくなるだろう。
 
今回の主役
・サブタイトル表示→メグ
・物語展開上→ジョオ
サブタイトルはメグだけど、今回はどうみてもメグの恋心はついででしかなく、ジョオの周囲を中心に話が進む。ジョンとの再会はジョオの一人舞台状態だし、ジョンに就職まで斡旋しちゃうし。
・次回予告→エイミー…ちゃんと次回予告したのはいいけど、今度はネタバレがひどいしなぁ。次回はサブタイトルからしてネタバレの固まりだから仕方ないか。
感想 …ったく、サブタイトルからしてメグの恋心を中心にした甘〜い話になるのかと思って諦めていたら、話の本筋はジョンとの再会でこれが上手に描かれていて思わず感心してしまったじゃないか。名場面欄でも書いたがジョンの再登場の仕方は秀逸と思う、視聴者にいろいろ想像する時間を与えるつくりというのは私は好きだ。設定はしっかり作るべきだが、その設定をバラす前に視聴者にいろいろそれを予測させられるのは自分が番組作りに参加しているみたいで楽しい。今のアニメってそういうつくりになっているのかな?
 で、メグの恋はサブタイトルにしつつもなんか今回それについては進展も何も無くて、メグとジョオの深夜の会話でメグの心境に変化が無くてなんかそっちについては中途半端な感が否めない。ま、ジョオが二人の気持ちに気付いたと独白する話だと理解して済ませる解釈もありそうだが…なんかジョオが屋根から落ちるために作られたシーンにも見えて少し萎えた。
 私なら今回のサブタイトル、「再会」にするなぁ。
研究 ・ 
 

第36話「ジョオの小説が新聞にのった!」
名台詞 「お〜や、そうかね? ま、とにかくエドの行き先を本当に知らないなら、キングさんにそう言いなさい。どんなダメな息子でも子供は子供だからね。キングの奥様は心底心配しているんだよ。」
(マーサ)
名台詞度
★★★★
 家出をしたエドを探すためにデーヴィットに証言して欲しいとメグを通して頼まれたマーサ、マーサが何を言ってもデーヴィットは口を割ろうとしない。ところが二人は長い付き合いだ、デーヴィットが嘘を言えばすぐ分かる。そこでマーサがこの台詞を言うと、デーヴィットは肩を落として本当のことを話すのだ。
 この台詞にはマーサの母性が強く描かれている。どんな風に育とうが子供は子供、実はこのメッセージはマーサがデーヴィットに言いたいことなのかも知れない。デーヴィットはこの台詞とともにマーサの気持ちをも受け取ったのであろう。そしてエドは家を捨てたのでなく立ち直るために家を出て行ったと正直に言うのだ。
 本放送時の私は、この台詞で自分が北海道ひとり旅なんて企画を夏休みに実行したときの自分の母の気持ちが少しは分かった。私の母も息子がろくに金も持たず知らない土地へ鉄道を追いかけて出かけて行くことが凄く心配だったのだろうな、だから私の計画に最後まで反対したし、本当はこの年の春休みに北海道旅行のつもりでいたのも中止させられたし、私が押し切って行くことになったら毎日一回は電話をするという条件も付けられたのだろうな。自分で自分を評価すると私はあの旅である部分では成長したと思っているし、母も豪雨でダイヤが大乱れになっても無事に帰ってきた私を認めてくれた。こんなマーサとデーヴィットのやりとりと、自分のこの夏休みのことを重ねて見てしまい、初めてデーヴィットというキャラに感情移入したシーンでもあるのだ。
名場面 新聞が届く 名場面度
★★★★
 夕方、一家全員にローリーを加えた団らんのひととき。そこに玄関の呼び鈴が鳴る、ローレンスが遊びに来たと考えたローリーが対応に出る。
 ところが玄関前にいたのはアンソニーだった。アンソニーは「ジョオが興味を持つ記事が載っている」と悪戯気味に言うと翌日の新聞を置いてすぐ立ち去る。意味が分からずおかしな顔をするローリーは、とにかく居間にいるジョオに新聞を渡しに行く。
 ローリーがジョオに新聞を渡すと、ジョオとローリーは「あ〜っ!」と声を上げる。そう小説だ、恐らく自分が書いた小説に違いない…とジョオは新聞を広げる。「あ〜、あったわ!」ジョオが声を上げるとローリーも含めて一家は笑顔に包まれる。「おめでとう」と声を掛けるメグとベス、「早く読んで!」と飛び上がるエイミー、ジョオは新聞を母のところへ持って行って見せると、メアリーは感激のあまりジョオを抱きしめる。そして新聞を届けてすぐ立ち去ったというアンソニーを追いかけるのだ。
 ここまで新聞に載るかどうかで不安な表情だったジョオの表情が一瞬で晴れ上がる瞬間だ、と同時にジョオの喜びがすぐに一家とローリーの喜びとして受け入れられた描写は、見ていて感動する。特に前話名台詞欄に書いたとおり、成長したジョオを見せられた後だけにこのジョオの成功は見ている側も嬉しくなってしまうように出来ているのだ。
  
今回の主役
・サブタイトル表示→ジョオ
・物語展開上→ジョオ
ジョオが自分の小説が新聞に載るかどうかで一喜一憂するお話。どっちなのか早くハッキリして欲しいという気持ちはよく分かるなぁ。
・次回予告→ベス…次回の内容の割には随分明るい声の次回予告だなぁ。まぁベスの声で暗くやったらそれこそ余計に悲しくなっちゃうそうだけど。
感想  話をもっとうまくまとめて欲しかったなぁ。新聞に小説が載る話だけで1話持たないのは分かるが、なんかエドの話を無理矢理押し込んでしまった上にそっちが冗長になってどっちが本題なのか分からない話になってしまったと当時も思った。だがマーサとデーヴィットの会話は良くできており、名台詞欄で書いたとおり少し感動もしてしまった。デーヴィットに感情移入したし、さらに彼が更生してゆくきっかけにもなるんだろうな。
 ジョオの小説家デビューは、ここまでジョオの成長をキチンと見てきた人にとっては非常に感動的なシーンであっただろう。だがジョオの成長はまだ止まらない、次の回でさらに意外な方向へ話が進んでいくとは当時思いもしなかった。
研究 ・新聞に載った小説
 ジョオの小説が新聞に載るのもアニメが原作を踏襲した話である。原作ではジョオが窓から家を抜け出して新聞社へこっそりと向かうシーンから始まっている。前々話以降、ジョオが窓から出入りするシーンがアニメでも描かれているが、これは原作のこのシーンをヒントにしたものだろう(そこから第34話のようなストーリーを展開させてしまうスタッフに脱帽)。ジョオが新聞社が入っているビルに着くと、何度か建物に出たり入ったりしてから意を決して建物の階段を上って行く。その光景を向かいの建物からローリーが見ていたのだが、ローリーは新聞社の建物に歯医者が入っていることもあってジョオが歯を抜きに来たと勘違いする。建物から出てきた真っ赤な顔のジョオにローリーは「痛かった?」と声をかけるのである。ちなみにローリーは新聞社の向かいの建物にフェンシングをしに来ていたのだ、アニメの前半でこの設定から話が大きく膨らんでいる。
 二人はここで「秘密」について語り合い、ローリーはジョオの秘密である新聞社に小説の原稿を提出してきたという話を聞き出すことに成功する。
 それからしばらく、姉妹もジョオの様子がおかしいことに気付く。二週間後、ジョオが居間に飛び込んできて新聞を読み始めると、メグが「何か面白い記事でもあるの?」と聞く、するとジョオは「小説くらいね」と言うとエイミーが「それを読んで」と言うのでジョオは小説を読み始める。その時の様子が変だとベスだけは気付く。
 ジョオが小説を読み終えると姉妹は小説の内容について批評し、メグは感動で泣いていた。ジョオの様子に気付いているベスがその小説の作者の名を聞くと、ジョオは「あなたの姉妹よ」と答える。メグは手に持っていた編み物を落とし「あなた?」と聞き、エイミーは大嘘だと叫んだが、ベスだけは「そうだと思ったわ」とジョオに抱きつく。これをきっかけに姉妹は喜びを爆発させるのだ。そしてハンナへ、母へと喜びが広がり、母は「若草物語」作者が文章に出来ないような喜びを表現したようだ。
 ちなみに原稿料であるが、アニメではジョオが辞退した設定になっているが原作では「初心者には原稿料は支払われない」ということになっているようだ。アニメのジョオはここまで掲載はしてもらえなかったものの新聞社に原稿を売っていたわけで、既にプロだったのだが原作ジョオはまだプロにはなっていない。だが書いた小説が広く大衆に読まれることが大事なので、これは重要な問題ではないだろう。

第37話「チチキトク…ジョオが髪を売った!」
名台詞 「髪の毛が長かろうが短かろうが、国の運命には関係ないわ。ね。」
(ジョオ)
名台詞度
★★★★
 ベスがジョオに抱きついて泣いたとき、ジョオがベスに言う台詞だ。単純明快、自分の髪が長くても短くても世の中は何も変わらないと説くジョオの力強さは大好きだ。本放送当時、ジョオの台詞の中でこれが一番感動した。
名場面 ショートカットジョオの初登場 名場面度
★★★★
 買い物に行っただけのジョオの帰りが遅く、また母が明日から長期出かけるために夕食は皆で一緒に…ということになったのでエイミーが腹を空かせる。そこへジョオが帰って来るのだが…あれ、何か変だぞと誰もが思うジョオの姿だが、まだここでは何が起きているのか原作を知らない人は気付かないだろう。
 ジョオは帰ると、遅いと文句を言うエイミーを無視して母の元に立つ、そして突然札束を渡すのだ。その額はなんと25ドル、キング家の家庭教師を勤めるメグの給料が週3ドル=月額12ドル程度だから、その倍の額を持ってきたと知って視聴者も驚くだろう。「まさか無茶なことをしたんじゃないでしょうね?」とメアリーが言う頃、視聴者も様々な不安を感じるのだ。まさか盗んだ…いや、よい子の「世界名作劇場」で犯罪はないだろう、売春…もっとない。色々思いが巡ったところでジョオは帽子を取る。無いのだ、あのジョオを象徴する長い髪が無くなっているのだ。
 驚きの表情の一家、「あの美しい髪を…」とメグが言い、「どうしてそんなことしたの?」とすがるエイミー、「そこまですることはなかったのよ!」と叫ぶ母、ベスは静かにジョオに近寄るとジョオを抱きしめて泣く。
 そして髪を切った気持ちを独白するジョオ、髪を自慢しすぎていたから虚栄心を罰する気になったと。さらに涼しくて手入れが簡単だとしてこれで満足だとする。ジョオの力強い性格が分かる。
 だが最大の見どころは夜だ。ベッドに入る前にジョオは鏡で自分の姿を見て…布団の中で遂に泣き出すのだ。
 家族の前で強がってみせるジョオと、一人になるとやはり長い髪を失いたくなかったという後悔の念、このジョオの性格の裏表が見える。だが父のために、家族のためにこれを力強く乗り越えようとする次女の姿に見ている方もつい涙がこぼれる。「若草物語」全体を通じても印象に残るシーンだ。
  
今回の主役
・サブタイトル表示→ジョオ
・物語展開上→ジョオ
数話前からジョオの長い髪を印象付ける台詞や描写が続くと思ったら…あの長い髪がもう見れなくなるなんて…。
・次回予告→メグ…なんか次回予告だけで泣けてくる。
感想  ここまで明るく進んだ物語が突如暗転する。みんなで馬車で出かけようとウキウキしていた空気が一転、たった一通の電報が一家を不安のどん底に突き落とす。一家の明るさもトーンダウンし、ジョオが、ローリーが、ベスが、この非常事態に慌ただしく動き始める。この緊迫した展開に当時は非常に驚いたものだ。
 そして極めつけはジョオが誰に頼まれたわけでもないのに、自慢の髪の毛を売って25ドルという大金を手に入れてくるのである。髪の毛って高いんだなぁと本放送時はつくづく感じた。前述した通りメグの月給の倍だからなぁ。この「25ドル」を研究したかったけど、「愛の若草物語」では現在と貨幣価値を比較できる設定がないんだよね。ライムの砂糖漬けが1個1セントと言われても、そんなもんこの近所じゃ売ってないし…。
研究 ・ジョオの髪
 今回も原作踏襲の展開である。ローリーに馬車でドライブに出かけようと誘われるところから物語はほぼ同じである。そして電報が届き、それを母が読むと椅子に倒れ込む。原作の「電報一つでの物語の暗転」はアニメでもよく再現したと思う。ただ原作では電報で落ち込んだ家族に力を付けるのはハンナであり、ここはハンナの活躍がかなり目立つシーンとして描かれている。そしてローリーをマーサの元に使いへやり、ジョオには買い物を、ベスにはローレンス邸へ行ってワインを頂くよう指示し、エイミーにはハンナと一緒に鞄の用意を、メグに荷造りを命じる。さらにブルックが同行を申し入れたりなど、原作とアニメが恐ろしく一致しているシーンとなる。
 原作とアニメが一致しているのはジョオが髪を切って帰ってきたシーンも同じだ。深夜にジョオが泣くこと、ジョオが泣いていた理由はその時のメグとの会話で明らかになるが…その時の「もし出来るなら明日にでも同じ事をする。」という言葉にはじーんと来た。

第38話「悪い知らせの電報が来た!」
名台詞 「私のことも、ああいう風に言ってもらいたいもんじゃ。ジェームス・ローレンスさんはとっても良いお友達ですとな。」
(ローレンス)
名台詞度
★★★
 この台詞を言うローレンスがとってもお茶目で大好きだ。年甲斐もなく燐家の若い姉妹と友達になってしまおうというその心意気…私もそんなおじいさんになりたいね。いや、下心抜きでね。
 いくつになっても若い子と対等に付き合おうとする精神は忘れたくない。そういうことをローレンスがこの台詞を通じて教えてくれる。それを忘れずにいればローレンスのような楽しい老後が待っていると信じたい、本放送時にこの台詞を聞いて心からそう思った。でもなかなかこうなれないのがやっぱり人間なんだよな…。
名場面 母の旅立ち 名場面度
★★
 いよいよ夫の看病のためワシントンに旅立つ母、メグはローレンスに見送りを感謝するという長女らしい行動で始まる。玄関ではメアリーがベスとエイミーを抱きしめ、「姉たちの言うことをよく聞くこと」「ハンナの手伝いをすること」を伝える。二人は素直に返事をする。
 そこへジョオが階段を下りてくる、母はジョオを抱きしめる。「行ってらっしゃい、お母様。」というジョオに留守中の事を頼み、別れの言葉を言ったかと思うと、母はジョオの並みを撫でて「その頭、素敵よ。」と言う。そして馬車に乗って去って行くのだ。後ろの窓から家の方向を振り返る母、手を振る姉妹とローリー。
 次にいつ会えるか分からない別れ、そして父の容体のことで何よりも不安な別れ。一家を束ねてきた母の留守は姉妹に強烈な不安を与えることになり、その不安が上手に描かれたと思う。それと母がジョオに見せた愛情、ジョオにとって髪のことを誉められることが今は最大の慰めなのだ。そこまで考えての母の行動は、視聴者に理想の母と映るのだ。
 
今回の主役
・サブタイトル表示→エイミー
・物語展開上→ジョオ
やっぱり前回の髪の件をまだ引っ張っているジョオが主役。思い出して泣くだけではなく、ローリーに酷評され、デーヴィットに笑われ、アンソニーは誉めたけど他がダメだったなぁ。そろそろ他の姉妹の話を見たい。
・次回予告→ベス…自分で書いた手紙を読み上げるだけで次回予告とは非常にわかりやすい。
感想  とにかく不安な回だ。前回は父の重体の報せを聞いて駆け付けるべくバタバタしているという感じであり、その中でジョオが髪を売るという事件が起きるので父に対する不安を感じてはいたがそれをゆっくり味わっている場合ではなかった。今回は母が出かけてしまうと、姉妹の動きが止まってしまいその不安が前面に出てくるのだ。その全員が持つ不安、家族ではないローリーやローレンスが友人として持つ不安、これらがゆったりと細かく描かれた点は凄いと思う。この回の終盤でローリーが電報を持って馬で走ってくるまで、視聴者も姉妹の父がどうなったかと一緒になって不安になれる、そんな物語だった。
 その合間に出てくるデーヴィットだが、ジョオを慰めに来たつもりが笑ってしまい「やっぱこいつは善人になれない運命なんだな」という意味でこっちも笑ってしまう。上のショートカットに付いては、ローリーにも酷評されたからアンソニーはどう評価するかと思ったら…誉めたので驚いた。ただしその時の言葉の選び方が良くないのがこの男の良いところでもあり悪いところでも…アンソニーのモデルって誰だろう?
研究 ・ 
  

第39話「みんなが書いた手紙、手紙、手紙!」
名台詞 「エイミーのも読まない方が良いんじゃない? お互いに自分の思ったことを書いて出すから、お母様も喜ぶんじゃない? 4人で申し合わせたような手紙じゃつまらないでしょ。ジョオは小説家だし、文章にうるさいでしょ? 私の手紙にもきっと不満があると思うし、エイミーにも…」
(ベス)
名台詞度
★★★
 ベス、ナイスフォロー!
 これでエイミーがジョオに幼いが故という理由があるものの、文章の悪さを指摘されずに済んだわけだ。これを聞いたジョオは「分かった、誰の手紙も読まない。」と笑顔で宣言する。ジョオをハッキリと「小説家」としている点もジョオにとってはポイント高い。実はジョオを最も的確に操れるのはベスなんじゃないかとも思わせてくれる。
名場面 皆で手紙を書く 名場面度
★★
 ベスとエイミーが一つの部屋で、ベスがエイミーの文字や文章内容の面倒を見ながら手紙を書くのだが、まずこの二人のやり取りがたまらずに面白かったりする。そして続いてメグの部屋、静かにひたすら手紙を綴る横顔がたまらない。最後にジョオ、あくびをしている辺りかなり時間を掛けて書いているのだろう。
 なんとも無いシーンだが、このシーンには手紙を書くのにかかっている「時間」が見え隠れしている。ベスとエイミーの会話とジョオのあくびがこれを伝えてくれるのだ。このように時間的要素を加えることによってこのシーンは姉妹の母への思いが上手に再現していると思う。ジョオやメグにも会話があればもっとよかったかも知れないが…。
  
今回の主役
・サブタイトル表示→ベス
・物語展開上→姉妹全員
後半はジョオとローリーのやり取りで展開するが、やはり今回の主題は姉妹が母に手紙を書くことにあり、その意味では全員が主役と言えよう。後半の展開はおまけだし…。
・次回予告→ジョオ…次回サブタイトルを読み上げるときのジョオの声が、深刻な事態を告げる口調で痺れた。いよいよ物語は一番辛いところへ入って行くようだ。
感想  本放送時から思っていたことだけど、これ後半要らない。ローレンス宛の手紙とメグ宛の手紙が入れ替わったから何だって言うんだ? 原作にあるから仕方なく入れたのかと思ったらそうでないと知って…「愛の若草物語」はたまにこういう意味不明な展開があって、これまで気持ちよく見ていたのに突然萎えてしまうことがある。この回は前半の出来が良かっただけに、後半が終わったときは「え?もうおしまい?」って感じてしまったからなぁ。
 ま、原作通りにやったら25分持たないのは明白だから仕方ないけど、もうちょっと「手紙」を活かした物語に出来なかったのかな?と心から思う。メアリーから届いた手紙を読むシーンに半分掛けたって良かったと思うぞ。
研究 ・「愛の若草物語」の貨幣価値
 今回の話も前半は原作踏襲である。原作ではアニメの前話に当たる母の旅立ちと、母と姉妹の手紙の交換についてのみがここで描かれる。紙面の殆どは姉妹が書いた手紙の内容に割かれている。手紙の中にジョオが洗濯をしたことも描かれており、アニメでは洗濯で失敗してさんざんだったという設定のジョオだが、原作ジョオは洗濯をしながら詩を思い付いたというので書かれている…「せっけんあわあわの歌」ってそのまんまやん。
 さて今回の話では「愛の若草物語」での貨幣価値の基準と出来そうな「値段」が出てきた。それは姉妹が母に書いた手紙の速達料金である。「愛の若草物語」世界ではニューコード(ボストン)〜ワシントン間の速達料金が20セントと判明する。これを元にこの物語における貨幣価値が計算できそうなのでやってみよう。
 だが手紙の重さを考慮しなければならない、ジョオから封筒を受け取った郵便局員は「ちょっと重いね」と言う。つまり皆が一生懸命手紙を書き、重量がかさんで定形外となってしまったと受け取ることが出来る。つまり手紙の重量は100グラム近くあると考えられるのだ。4人分の手紙が入っているのだから、それくらいしてもおかしくないだろう。
 ボストン〜ワシントン間の距離を考えると、郵便料金は日本郵政の郵便料金に当てはめても支障は無いだろう、これが410円…面倒だから四捨五入しよう。ということで「愛の若草物語」世界では20セント=400円程度の価値があると考えられる。つまり1セント=20円、1ドル(100セント)=2000円となる。
 これでいうとライムの砂糖漬けは現在の日本円で1個20円だったことになる(第27話を何度見てもライムの砂糖漬け25セント分=25個と解釈せざるを得ない)。日本の駄菓子と比較すればそう悪い値段ではない。メグの家庭教師の給料やジョオのマーサの世話の給料は週4000円(のちにメグは1.5倍=6000円に昇給)…あら安く使われているのね。ジョオの小説の原稿料も4000円、ジョオの髪の値段は50000円、デーヴィットがマーサにねだった…これは考えると頭来るからやめておこう。
 さあ、このサイトをご覧の皆さん。今後「愛の若草物語」を視聴する際は「1セント=20円」という公式を覚えておこう。そうすれば劇中に出てくる物の価格がわかりやすくてさらに楽しめることになる。やっと研究らしい研究が書けた!

第40話「ベスが猩紅熱にかかった!」
名台詞 「ベスの猩紅熱が軽く済めばいい、軽ければ早く治る、治ればうちへ帰れる。しかし、ベスの病気はそんなに軽いものではなかった。みんながベスのことを心から心配している。もし私が猩紅熱に罹ったら、みんなが本気で心配してくれるかしら? 私はそのことが心配だ。」
(エイミーのナレーション)
名台詞度
★★★★★
 マーサの家に預けられたエイミーが、送りに来たジョオの馬車を追って走り転ぶ。そのシーンからラストに向けてゆっくり流れるこのナレーションは、「愛の若草物語」全話中最も優れたナレーションだと思う。
 転んだエイミーから、ベスを見舞いに来たローレンス、そしてフォレット邸の寝室で一人寂しく過ごすエイミーと画面が流れる中、物語の解説をキチンとしつつエイミーの心の叫びをしっかり語っているのだ。ベスに早く治って欲しいこと、早く家へ帰りたいこと、そして病気になったのがベスじゃなくて自分だったら…ここで語り着れていないエイミーの気持ちがひとつだけある、それは早く母に会いたいと言うことだがそれはこの回の前提であるので省いても良いだろう。
 本放送時、このエイミーの解説で私は泣かされた。ベスが病気と闘うだけでなく、それによってここにも孤独に戦う少女が一人いるという事実に涙が出たのだ。そのエイミーの現実をも上手に再現しており、20年の時を経ても覚えているナレーションとなった。
名場面 ベスがフンメル家から出てくる 名場面度
★★★★
 冷たい風が吹く街が突然に出てくる。その中の決して裕福に見えない家がフンメル家だ。その扉が開くと呆然とした表情のベスが出てくる。ベスが橋の上で立ち止まると扉が開けっ放しのフンメル家を振り返る。この時の風による服の揺らぎ具合が何とも言えない。
 再び前を見るベスは、今度は声を上げて泣き始める。泣き始めたベスは家へ向かって駆け出す。フンメル家の扉が風に揺れる。
 台詞が全くない(ベスの泣き声のみ)このシーンだが、この家の中で悲劇が起きたこと、その悲劇はその家の住民だけでなくベスをも襲っていることを無言で示すシーンだ。このシーンを見た視聴者はこれからさらに悲しいな展開になることを悟り、不安に陥れるのに十分なシーンだ。
 しかも、この話に先だって既に父が倒れて母が不在という不安な展開がずっと続いてきた。それでもなんとか明るくやって来た姉妹だが、これ以上何か起きたら限界だというのは誰が説明するまでもなく分かるつくりになっている。その何かが怒った瞬間を示すシーンとしてもよく描けていると思う。
 
今回の主役
・サブタイトル表示→ベス
・物語展開上→ベス
後半はエイミーが主役にも見えるが、全てはベスの病気から物語が展開しているから主役はベスだろう。物語の進行とともにだんだん顔色が悪くなるベスを見て、マーサじゃないが「運が悪いなぁ」と思った。
・次回予告→ベス…泣ける次回予告だ。
感想  ずっと明るく続いてきた物語だけに、ここで父が倒れ母が不在となりさらにベスが倒れるという展開に「そんなんありかよ…」と当時も思った。これまでの「世界名作劇場」シリーズでも不幸がドミノ倒しのように連鎖するシーンは何度も描かれてきたが、物語も40話に達しようというこの期に及んでここまで立て続けに不幸をぶつけてきた作品ってあっただろうか? この辺りまで来ればどんな物語でもハッピーエンドが見えてきている段階だぞ。まぁこの時期に新キャラをどんどん出して視聴者を混乱させた「わたしのアンネット」なんて作品もあったが。ただこのまま明るく終わっても、登場人物にも視聴者にも何にも教訓を残さずに終わってしまうのも確かで、ここからラストに向けて試練を乗り越えるという展開はやむを得ないのだろう。原作もそういう展開だし。
 しかしベスの猩紅熱でジョオの風邪はどっかに行ってしまったなぁ。他人が病気になれば自分は感じなくなってしまうってトコなのだろうか? また後半のエイミーもいい、マーサのところに行きたくないと我が儘を言うだけでなく、ジョオを追いかけるシーンも彼女の寂しさを上手に再現していると思う。さらに最後のナレーションは最高だ。
研究 ・猩紅熱
 今回も原作踏襲だ。ただアニメではジョオの風邪はこの日限りのように描いているが、実際には数日間家から出られなくなるほど重い物だったらしい。またベスは母が恋しくなると戸棚の母の服に顔を埋めて泣き、泣くと気が楽になってまた快活になるという設定も省略された。そんな訳で原作ベスは姉妹の心の支えになっていたのである。だからこそベスが猩紅熱に倒れると皆が心から心配するという伏線にもなっている。アニメはこの辺りの理由が弱いのが少し不自然だ。
 ベスの帰宅以降は原作もアニメも台詞まで含めて同様に進むが、アニメではメグとジョオがベスの看病担当を取り合うというシーンだけ飛ばされる。ベス本人の希望でジョオがベスを看病することになるが、この非常事態に下らない姉妹喧嘩は省略して当然だろう。原作では姉妹の中の良さを描いたようだが。
 またエイミーを上手く丸め込んでおば様の家へ隔離することに成功するのがローリーという点も同じである。ただ最初にエイミーを説得しようとしていたのは原作ではジョオでなくメグだが。
 さて猩紅熱という病気だが、現在でも存在する病気ではあるが医学の進歩により治療が容易になり、かつては法定伝染病であったが現在はそれも解除されている。最初は喉の痛みと高熱で始まり、続いて全身に発疹が広がったり舌に赤い発疹が出来たりするようだ。あれ、ベスの症状とかなり違うような…ベスの症状はルーシーやセーラにソックリじゃないか? 本当は猩紅熱じゃなくて肺炎だった?
 ヤボなツッコミになってきたのが今回はここまで。

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