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第1話「イスカンダルの使者」
名台詞 「いや、これからだ。我々はあまりに敵を知らなさすぎる。判っていることといえば…奴らが、ガミラスという名の悪魔だということだけなのだ。」
(土方)
名台詞度
★★
 まさか第一話から、「さらば」以降のヤマトキャラクターをな台詞欄に載せることになるとは思わなかった。冥王星会戦から帰ってきた連合艦隊旗艦「きりしま」は、火星宙域でサーシャのカプセルを回収した古代機を収容した。この報せを受けた地球の司令部では、連合艦隊を囮とした陽動作戦「メ号作戦」が成功し、これで「ヤマト計画」を実行出来ると藤堂と雪が語り合う。だが土方はこの浮かれた会話に対し、このような台詞を吐いて警告する。同時に画面には地球連合艦隊が回収したと思われる、ガミラス艦の破片が大写しされる。
 この台詞は本作だけでなく、オリジナルの「宇宙戦艦ヤマト」や実写版映画にも共通する、この段階での地球側の実情を上手く示している。それは地球が敵のことを何も知らないままに一方的な侵略を受けているという厳しい現実だ。この現実の前に、単艦で敵地に乗り込むことなど無謀という他はないのは誰が見ても当然のことであるためか、これまでの「ヤマト」ではこの現実を背景に描きつつも敢えて前面に押し出してこなかった。
 だが本作ではこの地球が持つ最大の難点を包み隠さずに表に出すこととなったのがこの台詞であり、これを語るのも過去の「ヤマト」では存在のない土方の役割となったのは上手くできていると感心してしまった。
 この台詞で地球の危機をことさらに大きくする必要が出来てしまったのは、オリジナルのようにサーシャの登場が予定外のものではないという設定変更によるものだ。地球は何らかの形で既にイスカンダルと接触を取っており、その結果でサーシャが火星に墜落したという事となっただけでなく、「ヤマト」の建造とミッションもサーシャの登場で降って湧いたものではなく以前からの計画として描かれた変更点だ。サーシャの生命が失われたとは言え、物語はここまでトントン拍子に計画が進んでしまい、この藤堂と雪の会話はこれによって浮き足だってしまったことは明白である。だからこの二人だけでなく、視聴者にも「そんな浮かれた話ではない」と突き付ける必要が生じたのである。「知らない敵と戦う」という事は、決して計画通りには行かないという警鐘だ。
 地球がガミラスの攻撃を受けた経緯は、研究欄で。
名場面 「ゆきかぜ」の最期 名場面度
★★★★
 冥王星会戦はガミラスの一方的優位で進み、地球艦隊は次々に艦を轟沈させられる。最期に残ったのは旗艦の「きりしま」と、沖田守艦長騎乗の「ゆきかぜ」のみ。そこへ旗艦へ「作戦成功」の報せ…つまりサーシャがメッセージと共に乗った宇宙船が無事に太陽系内部に入った事が知らされる。この報せに沖田は撤退命令を出すが、沖田は従わない。乗組員達は軍歌を歌いながら敵艦に突進して行く。旗艦の艦橋には「ゆきかぜ」乗員達の軍歌が響くが、司令官の沖田は「きりしま」艦長の山南に「進路そのまま」を指示し、地球への旗艦コースへ入る。「ゆきかぜ」は敵艦隊の中に飛び込み、敵の同士撃ちを誘発しながら艦隊の懐深くに突っ込んで行く。しかし最終的には、敵の砲弾の直撃を食らって大爆発する。
 何か現代のアニメを見ているんじゃなくて、太平洋戦争を題材にした映画を見ているようなシーンだったなぁ。そんな戦いは実際には無かったかも知れないけど。ただ彼らの「なんとしても地球を守りたい」という意思は伝わってくる。彼らは自分の「死に場所」と「死に様」を見つけ、それに準じて死んで行く…それは我々の世代には未だピンと来ないが、そんなシーンを上手く描いたと感心した。
感想  いよいよリメイクのヤマトである「宇宙戦艦ヤマト2199」がテレビ放映開始となった。DVDなどは先行して販売されているので既にストーリーなどを先回りして知っている人もあると思うが、「宇宙戦艦ヤマト(初代)」の考察を済ませている当サイトとしては久しぶりの「リアルタイム視聴」として考察を開始することとした。私も先行して販売されているDVDは見ていないので、初視聴の感想等になることは最初に明記しておきたい。
 この新しい「ヤマト」もオリジナル同様に、冥王星会戦から物語が幕を開く。だがこの戦いの意味からしてオリジナルと大きな違いがあり、地球連合艦隊とガミラス艦隊の最終防衛線を賭した最終決戦ではなく、イスカンダルの支援オファーを運んでくるサーシャの来訪を成就させるための一大陽動作戦と位置付けられた。そのためにヤマトによるイスカンダル往復ミッションは計画済みであることは前提条件とされ、事前にイスカンダルと何らかの接触が取れていたという設定に変わっている。さらに言えば訓練生だった古代と島は、サーシャのメッセージを回収する部隊として火星に派遣されたという設定に変わった。
 しかし、古代も島も現代っ子風に描かれているのでちょっと気が抜けた。だが今回の作画ならその方が良いかも、二人とも独特のもみ上げが現代っ子風になっているし(笑)。話は前後するが、古代の暴走癖がそのままなのは笑った。いきなり無断出撃してるし。
 しかし冥王星会戦、宇宙艦の動きが速すぎて笑った。あんな速度で旋回とかしたら、中の人達は大変な事になっているぞ。ガミラスにやられる前に艦内であっちこっちに振り回されて戦死…いきなり地球艦隊の敗北理由が分かってしまった…。オリジナル同様「ゆきかぜ」が沖田の撤退命令に従わずに敵艦隊に突っ込んで行くのだが、ここは軍歌を歌ったりして非常に印象深かったなぁ。
 雪は病院で看護士をしていたのでなく、司令部で通信士をしているという設定のようだ。特に美しく描かれず、普通の女性として描かれたのは好印象である。しかし、土方や山南といった「さらば」や「2」以降のキャラが出てきたのはまいった。
 物語前半で「冥王星会戦」を軸にした設定付けが終わると、後半はかつて海底だった地表に放置されている戦艦大和の残骸へと話が進む。前述したように古代の暴走により話がここへ行くのだが、本話のシーンでは大和の沈没状況が史実ベースなのか「ヤマトワールド」設定優先なのか、まだ判断出来なかったなぁ。
研究 ・物語の地球
「西暦2199年、地球は今、滅亡の危機に瀕しています。今から8年前、人類はその歴史上始めて地球外知的生命体と接触。友好関係を築こうと試みた地球に対し、彼らは一方的に戦端を開くと情け容赦のない無差別攻撃を仕掛けてきました。第二次火星沖会戦で艦隊による直接攻撃はかろうじて食い止められました。しかし、その後彼らは攻撃を遊星爆弾によるロングレンジ爆撃に絞り、その結果人類は地下都市を築いて、そこで生き延びるより他に生き延びる道は無くなってしまったのです。強大な軍事力を持つ彼らに対し、地球防衛艦隊も今や壊滅寸前。地球は遊星爆弾によって大地は干上がり、空気は汚染され、遍く生命は死に至りました。そしてその死の影は、人類最後の砦である地下都市を着実に侵し始めています。地球は滅びの道を歩んでいるのです。科学者によれば人類が滅亡するまで凡そ1年、彼らは冥王星の環境を改造し、今もそこから悪魔の兵器を降らせ続けているのです。」

 今話中盤で、雪が劇中の地球の現状について解説する。設定としては雪が子供達に説明という事になっているが、何で子供達に説明したのかは判らないし、子供達にとって難しい言い回しがあることはこの際気にしてはならない。

 これによると西暦2191年に地球人類が地球外生命体と始めて接触したことは間違いない。だがこれは相手に「地球と地球人類が発見された」というのが実情であろう。恐らく、ガミラスはもっと早い段階から地球に目を点けていて、進出拠点として冥王星の惑星改造と基地建設を開始したのが西暦2191年なのだと考えられる。そこでガミラスは地球人に気が付き、地球人もガミラスのこの動きを察知したと考えて良いだろう。
 本作におけるガミラスの地球侵略の目的がオリジナルと同じであれば、彼らにとってやっと見付けた好環境の星に人類がいればそれは邪魔者でしか無く、一方的に攻撃するしかないであろう。最初の攻撃を受けるまで、この2193年の出来事と見て良いだろう。劇中の映像では最初は遊星爆弾の無差別攻撃で始まったと見て良いだろう。
 そしてガミラス群が艦隊を率いて地球に接近、地球艦隊がこれを火星で阻止したのがこの台詞に出てくる「火星沖会戦」って所だろう。「第二次」としてあるのは戦いは二度に及び、ガミラスは二度による進軍で「相手が弱くてもアウェイでの戦いは不利」として冥王星という拠点基地からの攻撃に切り替えた…というのがここまでの流れだ。
 この戦いの何処かで、何らかの形でイスカンダルから地球人類への支援オファーがあったと考えられるが、その詳細は物語の進行を待ちたい。その結果が本話で描かれた冥王星会戦であり、オリジナル同様地球艦隊は旗艦を残して壊滅する。
 では、ここで雪が語るガミラスとの戦いの前の地球はどうだったか? 恐らく地球人類は宇宙進出を開始してはいたが、まだ太陽系内に限定されていたと言っていいだろう。地球外人類と出会ったときに友好的関係を築こうとしたということは、宇宙での軍というのは真剣に考えていなかったと思われる。テラフォーミングされた火星など、進出した地球人類の暴動や反乱などを前提とした宇宙軍がある程度だったと考えられる。太陽系外恒星への飛行など夢のまた夢だったろう。
 そんなところに、地球外生命体から一方的な攻撃を受けたのだからたまったものではない。イスカンダルとどのように接触したのかは知らないが、地球はガミラスの他にも人類がいてそこが自分達に手をさしのべるとすれば、藁にもすがる思いだったに違いない。
 しかし、ヤマトの世界を見るといつも思うのだが、あっという間に地下都市を造っちゃうんだよなぁ。この時代の土木技術はとにかくすごいようだ。しかしガミラスもえげつない、遊星爆弾に生物兵器を積んで、ガミラス由来の生物を地球に植え付けることで地球人類を駆逐するとは…オリジナルより酷い存在だ。

第2話「我が赴くは星の海原」
名台詞 「みーろんげすばでぃっくあるがでぃざっく。ばっしゅくぐらいくべいはいれがゆーなぶれぶりすくべりふぉーらかんろらんとちぃ? みーろんみにすたっくかるま、ばんめしやれすじれーめぎす。ぐらっくどれいにーだぼるめんろんでぃーや。」
※以下和訳「空母一隻を失ったのだぞ。あの日和見主義者に帝星司令部へ報告されたらどうなると思う? ここは我々だけで処理するのだ。ロングレンジで叩く、惑星間弾道弾をすぐに準備させろ。」
(シュルツ)
名台詞度
★★★
 つーか、これ何語? 何語か判らないので耳コピーをそのまま載せることにした。和訳文は放映時に画面に出てきた字幕である。
 また役名はまだ確認出来ていないが、シーンからしてガミラス冥王星基地の司令官と副官の会話であろう事は間違いないと思われるので、今のところは旧作設定に従い司令官はシュルツ、副官はガンツとしておく。
 冥王星基地は地球人、しかも日本人による恒星間航行戦艦建造の動きを察知したのだろう。かつて日本列島近海だった場所にあった大昔の戦艦の残骸に空襲を仕掛ける。だが地球の国連軍防空隊の迎撃に遭い、戦闘機だけでなく差し向けた空母まで撃沈させられてしまう。これを見た副官ガンツはこの戦いの結果をバラン星のゲールに報告すべきと進言するが、司令官シュルツはこの台詞でそれほ拒み、内々に処理することを選択する。
 前話の名台詞は地球側から見たこの戦いの現状についてだが、この台詞からはガミラス側の実情というものが見え隠れしている。つまりこれは旧作と同じく「ガミラスは決して一枚岩ではない」という実情であり、軍の規律がそれぞれの私利私欲や「立場」が生む感情によって崩壊していることだ。この台詞だけでまだ画面に出てきていないゲールが旧作同様のどうしようもない司令官であることは見えてくる。だが旧作と違い、シュルツはデスラーの直下ではなくゲールの元で冥王星基地を守っている立場であることが明確になり、その上官に失敗を知られたくないという私利私欲と事情を優先させてしまう。これを通じて見えてくるのは、「ガミラスの隙」というやつであり、旧作ではヤマトがガミラスに勝った原因のひとつであろう。この要素をもう第2話で見せつけてきたのだから驚きだ。
 だがそれより驚いたのは、冒頭に書いたようにこの言語である。何語かは分からないが、恐らく地球上でとてつもなくマイナーな言語か、あるいは制作者が勝手に言語を作ったかのどちらかだろう。「南の虹のルーシー」のように「日本語を逆読みするだけ」なんていうものでは無いことは確かだ。この後の惑星間弾道弾の発射シーンでは、この言語による数字の読み上げも出てくるから驚き。この言語も本話でこの台詞が印象に残った理由の1つである。
名場面 ヤマト発進 名場面度
★★★★
 いよいよヤマトに乗組員が乗り込んで、発進の時を迎える。ガミラスが冥王星から放った弾道弾がヤマト目掛けて突進するが、この期に及んで波動エンジンを最初に起動させるだけの電力がない。日本の全ての電力をヤマトに叩き込むが足りないのだ。ところが国連の極東司令部では、世界中の電力が日本に回していることを確認し安堵する。徳川がエンジン始動可を沖田に報告すると、エンジン始動の命令が下る。回り出すエンジン、その間にもガミラスの弾道弾は地球に迫り、大気圏に突入。「船体起こせ、偽装解除」沖田が叫ぶと、「大和」残骸の周囲の地面に亀裂が走り、ついにヤマトが姿を現す。古代と沖田の会話で偽装について語られたあと、沖田が弾道弾の迎撃を命令する。古代がこれに応じて主砲発射命令を出す、照準を合わせと同時に、ヤマトは「抜錨、ヤマト発進」の沖田の号令でついに空へと舞い上がる。そしてヤマトの主砲が弾道弾に向けられ「照準よし!」と報告が来ると、沖田が「撃ち方始め!」、古代が「てーっ」と叫び主砲が放たれる。主砲を浴びて大爆発する弾道弾、国連司令部ではヤマトを見失うが、爆弾の煙の中から姿を現したヤマトを発見。ヤマトは安定翼を出して宇宙へと向かう。
 長い説明だったが、一言で言えば基本的に旧作を踏襲した発進シーンだ。だがヤマトのエンジン始動のために世界中からエネルギーが送られるシーンをここに挟むことで、緊張感と迫力に満ちた印象的なシーンに仕上がったのは間違いない。特に弾道弾破壊の煙から出てきたヤマトがこれまたカッコイイんだ。長々書いたけど、結局それに尽きると言うこと。
感想  前話だけでは判らない設定が色々判ってきた。まず地球艦隊だけど、「地球防衛軍」ではなく「国連軍」という形を取っていること。つまり劇中世界は現代の国際社会の延長という設定を取ったようだ。ちゃんと大陸ごとに代表者と、そこからさらに小さな国に別れていることが今話で示唆されている。宇宙防衛は国連に任されているという形で、各国から代表者が集っている形なのだろう。日本は地球脱出ミッション(劇中では「イズモ計画」と設定)を担当していたというより、そのような脱出ミッションは世界各国にあると考えるべきだ。だがヤマトでイスカンダルへ往復するミッション(「ヤマト計画」)が日本に任されたのは、恐らくイスカンダルと最初に接触したのが日本艦だったとかそういう理由で「イスカンダル担当」とされたのだろう。多分日本艦がユリーシャと接触、または救出したというのが発端だと思われる。
 次にヤマトの名機関長、徳川についてだ。徳川の家族には初代と「さらば」や「2」で出てくる家族と、「新たなる」以降の家族で全く設定が違うという謎がある。前者は孫を溺愛する老機関長の姿が描かれるし、後者では新機関部員であるアムロ太助が出てくる。だが本作では前者とされた、つまり妻子持ちの息子がいて孫を溺愛する老機関長を取ったのだ。
 あとはヤマトの乗組員がかなり増えているらしいこともわかった。今回ではまだ名前がハッキリしない、今後物語に絡みそうな「伏線」としてのキャラクターも何人か増えている。また技師長の真田には「副長」も兼任となり、艦長不在の時は第一艦橋で命令を出したりしている。随分印象が違うなぁ。
 アナライザーは落ち着いた雰囲気で全く別物になってしまっているように見えた。名前も「AU09」に変わっているし、どうもヤマトの一部という設定のようだ。これじゃ雪のスカートをめくるなどのセクハラ行為はしないだろう。
 ガミラスが違う言語を喋っているのも凄い。何語だあれ?というのは名台詞欄でやったからいいか。
 各欄を見ればわかると思うが、そのような設定の部分をじっくり見ていてなかなか他へ目が向いてない。それだけ設定変更点や引き継いだ点が興味深いと言うことだ。う〜ん、ユリーシャがどうなったのか、気になるなぁ。
研究 ・イスカンダルからの支援
 今話では火星へ来たサーシャによるメッセージの内容が明らかになる。
 これによると、スターシアはガミラスの侵略により地球人類が滅亡の危機に瀕していることを知り、1年前から支援の手をさしのべていたことが明らかになる。スターシアのもう一人の妹、ユリーシャを地球へ派遣し、次元波動エンジンの設計図を地球人類に提供していたというのだ。この設定は旧作をよりリアルにするという意味ではとても重要だ。旧作ではサーシャの派遣が地球とイスカンダルの最初の接触であり、サーシャが生命を賭して波動エンジンの設計図を届けて僅かでヤマトが完成してしまい、この辺りの解釈に多くの人が苦しんだところだ。だが本作では、物語の始まりから1年前に地球人類は波動エンジンの技術を手に入れていたことになる。それを完成させるのに1年とは短いと思う向きもあるかも知れないが、基本技術は出来上がっていて図面通りに作るだけなら何とかなるであろう。
 そして、サーシャによって地球に運ばれたものは、波動エンジンのパーツの1つである「コアユニット」である。これは波動エンジンの中心部であり、地球では製造不可能なものであるのだろう。だからイスカンダル人の誰かが持ってくるしかない、ということでサーシャが派遣されたのだろう。地球の国連側はこの件について事前に知っていて、サーシャの派遣に合わせて冥王星での艦隊行動という一大陽動作戦を展開し、ガミラスの冥王星艦隊をサーシャ進入ルートと反対側に引きつけたと言うことだろう。多大な犠牲を払ってまで…。
 では地球はサーシャの派遣をどうやって知ったか、それこそスターシアが次元波動エンジンの設計図を持たせて地球へ派遣したもう一人の妹、ユリーシャだろう。ユリーシャが波動エンジンの設計図を持ってきたからこそヤマトが完成しているのであり、この派遣は成功したと考えて良いだろう。
 では、そのユリーシャはどうなったのだろう? ガミラスの妨害は前述のようにヤマトが完成しているから無いだろう、サーシャのように不時着時の事故で死亡していればその旨が語られていても良いはずだ。用事が済んだらイスカンダルへ帰る、というのは危険だからあり得ないだろう。つまり、ユリーシャは地球かその近傍にいて、ヤマトに乗ってイスカンダルに帰郷すると考えるのが自然だ。
 ここで語られたユリーシャの存在が、今後の物語展開に対する伏線であることは確かだ。ユリーシャがどのような形で物語に出てくるのか、楽しみのようでちょっと怖い。あ、DVDなどで物語を先回りして知っている方は、ネタバレをなさらないように。

第3話「木星圏脱出」
名台詞 「我々の目的は敵を殲滅することではない、ヤマトの武器はあくまで身を守るためのものだ。」
(沖田)
名台詞度
★★★
 波動砲の初使用により、木星にあった浮遊大陸は粉々に吹き飛んでしまう。これら砲雷長の南部が「これがあればガミラスと互角以上の戦いができる」と思わず飛び上がるが、これに副長の真田が「我々木ガミラスの基地さえ潰せればそれでよかったはずだ。しかし、波動砲は大陸そのものを破壊してしまった」と語ると、沖田がこう返すのだ。
 この台詞を沖田に語らせたのは、「ヤマトが何のために宇宙の大海原に乗り出したのか」という原点に返ったからだと思う。彼らの目的はガミラスを倒すことではなく、あくまでも地球人類を助けるためだ。そのために持って行く武器に必要なものは、最大限の防御である。その点を沖田が劇中の登場人物だけでなく、我々視聴者にも示してくれるのがこの台詞だ。
 ここから見えてくるのは、「波動砲」という武器の威力がその「役割」を遙かに上回ってしまっていること。これは今話の最後でも語られることだが、だからこそ武器の使用は慎重になれねばならないという点だ。考えのない武器使用は、ひとつ間違えれば戦闘要員外への無差別殺戮になりかねないという警鐘を鳴らしているのであり、視聴者もそれを強く感じるところであろう。人によってはかつてアメリカが広島や長崎でやったことを思いだした人もあるかも知れない。
 ちなみにこのやり取りにおいて、真田の台詞が旧作の考察では名台詞欄になっている。旧作ではこの浮遊大陸の存在や、そこにある自然については天然のものという設定であったので、真田がその点を指摘したのであり、その「自然破壊」に対する警鐘のしての役割があったからだ。本作では浮遊大陸の設定自体が大きく変わってしまったため、このやり取りの趣旨も大きく変わったといったところだろう。
名場面 火星宙域 名場面度
★★★★
 本話では、ワープテスト、波動砲試射という「ヤマトを象徴する装備」の初使用が目白押しだが、そんな中で私が最も印象に残ったのは今話前半のこのシーンだ。
 作戦室にメインスタッフを集め、ワープテストについてのブリーディングが終わった瞬間からこのシーンが始まる。作戦室のスコープに映し出された火星を見た雪が、「サーシャは火星に眠っているのね、たった一人で…」と呟く。するとヤマトが火星付近を航行するシーン、さらに展望室から火星を見下ろす古代、火星に花束を投げようとする雪へ、そして艦長室から火星を見下ろす沖田、「遠き星よりの使者、ここに眠る」と書かれた火星に作ったサーシャの墓とその上空を行くヤマトへとシーンが流れる。「見ていて下さい、僕たちはあなたの故郷へ必ず行きます。遙か16万8千後年の彼方から、たった一人で地球を目指し、その気の遠くなるような長い旅路の果て、僕らに生きる希望と勇気を与えてくれた。あなたの心に必ず答えます」と古代の呟きがその背景に流され、一度別の女性乗員の姿が出る点を挟んで雪が投げた花束が宇宙空間に舞う光景となる。
 旧作では殆ど顧みられることの無かったサーシャの行為について、本作では地球人類がこれに感謝してキチンと弔いをするというシーンが描かれた。数年前の当サイトでの考察の時に「ヤマト」を全話見直したが、その時に「これでは生命を賭して地球を助けに来たサーシャがあんまりだ」と感じたものだ。そのサーシャがこのような形でヤマト乗組員からの弔いを受けたことで、やっと成仏出来るんじゃないかと感じたシーンとして印象に残った。もちろん、旧作にはない要素である。
 そしてこのシーンこそが、前話からその存在が明確にされている「ユリーシャは生きている」という伏線でもあろう。もしユリーシャがサーシャと同じように他界していれば、ここで一緒に弔われてもおかしくない。ここはそんな所まで見えてくる。
 本話はワープテスト、木星浮遊大陸不時着、敵襲来、波動砲試射とものすごく忙しい展開であるが、このシーンだけ時が止まったかのようにゆったりと物語が流れて行くのも効果的だろう。
感想  今話では早くも、ヤマトを象徴する装備である「ワープ」「波動砲」といったものが矢継ぎ早にテストされる。これらは旧作ではそれぞれ第4話第5話の出来事であり、それぞれに一話ずつ割いている。だが本話ではこれが統合されたのは、まだガミラス側の登場人物が冥王星基地関連しか出てきておらず、デスラーが「可愛い奴だ」という要素が無いこともあるだろう。
 その合間を縫って、名場面欄シーンが入るなど物語の内容はさらに濃くなっているが、これは物語を忙しくさせたのではなく逆にのんびりさせる効果をもたらしたと思う。旧作のヤマトはイスカンダル人に対する想いや感謝をあまり描かないままに旅に出るというちょっと乱暴な展開でもあったが、本作ではイスカンダル人からの支援表明により地球人類が勇気を取り戻し立ち上がったという設定が根底にある以上、そこは無視出来なかったと言うことだろう。
 イスカンダル人ついでに言えば、前話の研究でスターシアの末妹のユリーシャについて書いたが、実は今話では森雪の正体がこれなのではないかと思わせる作りがしてある。名場面欄シーンで地球の救いの神であるサーシャを平気で呼び捨てにしたり、その行為に他の乗組員とは違う同情を寄せていたり、花束を投げるシーンなどがそれだ。森雪がスターシアやサーシャに似ているというのは旧作から引き継いだ設定ではあるが、これを生かして森雪までイスカンダル人にしてしまうのか?
 ユリーシャが誰か、というのは前話から注意して見ている点でもある。男女問わずに誰かの姿に身をやつして彼女はヤマトに乗り込んでいるはずだからである。例えば真琴(佐渡と一緒にいるアホ毛が目立ちすぎの看護士)も候補の一人だし、前話からたまに物語に絡んでくるグレーの髪の女性乗組員(こいつもアホ下が目立ちすぎ)も候補の一人であろう。エンディングに出てくる黄色い服の少女がユリーシャかと思ったけど、あれはシュルツの娘だと判明したし(でもあれだけ目立つようにエンディングに出てくるし、初登場で字幕による人物紹介もあったから今後何らかの形で物語に絡むのは確かだ)…。大どんでん返しで南部や藪の正体がユリーシャだったとしても驚かないぞ。今話の森雪の正体がユリーシャと思わせる作りは、あくまでも「陽動」ではないかと踏んでいる。その通りだったら、こんなに早くそんな素振り出さないでしょう(しつこく言うけどネタバレ厳禁)。
 それともう一つ。これは地球が異星人に侵略されるというSFを見るたびに疑問に思っていたことなのだが、侵略側の異星人が我々の星を指さして「地球」というのがおかしいということだ。地球はわれわれ地球人にとっての「地の星」であり、異星人から見たらだれも「地球」だなんて言わないはずだ。もし火星人が存在したら、火星人は火星のことを「地球」と呼んでいるはずで、それはわれわれ地球人に取っては「地球」ではない、やはり火星のままだ。もちろんガミラス人にとっての「地球」はガミラス星のはずだ。
 ところが本作ではそこも改めてきた。なんとガミラス人は我々の地球のことを「テロン」と呼称しているのだ。なんとまぁリアルな…と思わざるを得ない。SFアニメで侵略側異星人が地球を独自の名称で呼称していたのは、「ケロロ軍曹」だけだと聞いた事がある(あれがSFかどうかは置いておいて)。「Dr.スランプ」に出てきた異星人も違う名称で呼んでいたが、あれはあくまでも漢字を読み違えるというギャグだ。
 今話で浮遊大陸撃破まで行ったから、旧作通りなら次はタイタンで「ゆきかぜ」の残骸を見つける話かな? でもここまでテンポ早すぎ。
研究 ・浮遊大陸
 もちろん、旧作考察同様に本作の考察でも木星に浮かぶ「浮遊大陸」の考察は避けて通れないだろう。これは旧作とは設定がかなり変わっているからである。
 旧作の考察時に、この浮遊大陸を「木星大気最上層に浮かぶ岩石質の島」であり、「大きさは地球のオーストラリア大陸と同等」であることが判っている。ここまでの設定は本作でも受け継いでおり、劇中の台詞から判明することだ。描写的には雪山はないが、山があって谷があり緑の植物に覆われていることも変わりない。だがこの成因が本作では違う事が明らかだろう。
 今話から自らを「アナライザー」と名乗るようになったAU-O9の調査結果によると、大気は早い話がアルコール、生えている植物はガミラスが「生物兵器」として地球に送り込んだ有毒植物と遺伝子的に似ているという。これを聞いた真田が「ここは人為的につくられたもの」であり「何者かが太陽系外から大陸ごと持ち込んだ」と判定するのだ。この浮遊大陸にいるガミラスの司令官の肩書きがそれを証明している。ここにいる司令官ラーレタの肩書きは「実験基地指令」であり、ガミラスがある目的を持って浮遊大陸をここに設置し、植物を植えているのは間違いないだろう。
 真田はガミラスが地球征服後に、地球をガミラスの環境へと作り直しための実験場だと推察する。だがそれだけの施設かというと、そうではないと私は考える。
 生物、特に植物を生かすためには「土壌」が大事だ。土の中にある細菌や微生物が様々なものを分解、合成しているからこそその恩恵を受けて植物は育つことが出来る。これがなければ植物は育つことが出来なくなって絶滅し、それを食べる動物も絶滅し人間も生きて行くことが出来なくなる。
 つまり我々のように高度な生態系を持つ生物が他の星や宇宙施設で生き延びるためには、自分の星の環境をそこへ持って行くしかないのだが、それには母性の土壌丸ごとがひつようだということだ。この背景から考えると、この浮遊大陸は「実験基地指令」が掌握しているとは言え、既に「実験」の段階を終えてガミラス地球移住のための準備基地に昇格していると考えられる。ガミラスが地球を完全に掌握した後に、この浮遊大陸を地球の何処かに着陸させ、ガミラス人の移住はそこから始まるといった所だろう。

第4話「氷原の墓標」
名台詞 「あんたって、つまんない。」
(真琴)
名台詞度
★★
 ヤマトは、波動エンジンの修理に必要なレアメタル採取と、味方の救難信号発信艦の捜索に土星の衛星、エンケラドゥスに降りる。救難艦の探索には雪をリーダーとして、医療班から看護士の真琴、そして護衛要因として古代の3人が救難隊として派遣された。
 救難機の機内ではコックピットの機長席に雪、副操縦士席に古代、機関士席にアナライザー、オブザーバーシートに真琴という配列である。前席で古代と雪が会話している様子を見て、真琴が「あの二人、怪しくない?」とアナライザーに声を掛けるが、「不審な行動は確認されません」と返される。すると真琴が肩を落としてこう呟く。
 正直言って、この台詞は本作のアナライザーに対しての私の思いを代弁してくれたように感じた。そう、ここまでのアナライザーはみていて本当につまらない。雪にセクハラ行為もしないし、あり得ないほどの馬鹿力で雪を救ったりもしない。本来は本話の展開ではアナライザー大活躍の筈なのだが。
 旧作のアナライザーは人間くさいところが面白かった、勝手に乗組員になったり、佐渡と一緒に医務室で酒を呑んで酔っぱらったり…でも本作のアナライザーからはそんな面があるようには到底見受けられない。単なるヤマトの付属部品に成り下がっていて、一人のキャラとして独立しきれていないのだ。こんな意味からもこの台詞が本話ではとても印象に残ったのは確かだ。
 このやり取りの後、サーシャの遺体を思い出した古代が「君、宇宙人に親戚とかいる?」と雪に問うが、それを聞いた真琴のズッコケ方は完全にギャグ漫画のそれになっていた。アホ毛といい、医務室での行動といい、真琴が医務室でのアナライザーのコミカルな面を引き継いでいるのは確かだろう。
名場面 艦長室にて 名場面度
★★★
 古代が艦長室に上がり、救難信号を発信した遭難船について沖田に報告する。遭難していたのは駆逐艦「ゆきかぜ」、「ゆきかぜに…生存者はありませんでした」と報告する古代に、沖田は静かに「生存者はなし…か」と呟く。そして「地球をゆきかぜのようにはしたくないな」と静かに語る。「はい」と答える古代。
 旧作の考察(第6話)ではこの沖田の台詞を名台詞に挙げているが、本作では名場面欄とした。もちろんここは旧作と同様、氷原に生存者がないまま発見された「ゆきかぜ」と「地球の未来」がダブって見えた悲しみというのを、沖田が上手く表現している。地球の未来をそんな悲しいものにはさせないという沖田の強い意志と、それを古代にも持ってもらいたいという思いが上手く演じられている。。
感想  今話は旧作で言うところの第6話。舞台は土星の衛星でも旧作ではタイタンであったが、本作ではさらに内側のエンケラドゥスに改められている。NASAの土星探査機カッシーニの探査により、この物語の舞台はタイタンよりエンケラドゥスの方が相応しい事が分かった結果と言うことだろう。
 だから多くの要素が旧作の第6話を踏襲していると言っても過言では無い。また本作では木星から見て土星と冥王星が正反対にあるという、2199年に実際に起きる惑星配置が考慮されている。そのために「ガミラスの冥王星基地を叩く」「土星の衛星からの救難信号」という要素は相反するものとなり、古代と島の諍いの原因となる。
 結局は旧作同様に波動エンジンが故障して土星方面に行かざるを得なくなるわけだが、ここにシュルツがヤマトの行動を解りかねているという要素を入れたのは面白い。これによりガミラス側がエンケラドゥスに攻撃隊を派遣する理由となり、ヤマトや古代らがガミラスに襲われることに説得力を持たせている。これらの攻撃行動も「捕虜を取り、ヤマトの目的を探る」という理由であり、ヤマトが何で宇宙に出てきたかガミラスは何も把握していないという展開となった。確か旧作では、デスラーがこの時点で「ヤマト」って名前を何故か知っていたもんなぁ。
 そして真琴が「ゆきかぜ」の船倉に閉じ込められ、雪がガミラス兵にさらわれるというピンチも上手く演じられる。だが今回はアナライザーが役不足だ、指から出るレーザービームで真琴を助け出しただけで完全に機械に徹しているからなぁ。
 しかし、本作のヤマトの食堂「オムシス」が出てきたのは興味深い。本当はこちらを研究欄にしようとも思ったが、物語の設定とどれだけ関わるかよくわからないので…。「オムシス」で作られる無尽蔵の食べ物の原料について、真田は「知らない方が幸せ」としているが、視聴者からみればそれで答えは出たようなものだ。口には出さないでおくが、究極の栄養源循環システムがヤマトに備わっているっているってことだ。
研究 ・本作でのガミラス人
 これまで、劇中に出てきたガミラス側のシュルツとガンツを中心とした太陽系攻略最前線である冥王星基地関連のキャラクターだけだったが、今回は初めて冥王星指令のシュルツの上官としてゲールが登場する。シュルツやガンツは旧作同様にいわゆる肌色の身体をしているが、ゲールは旧作のガミラス人特有の青い肌として描かれている。これは番組中に流れるCMでデスラーなども青い肌で描かれている事が判明し、旧作のように「光の加減でそう見えた」という演出はせずに、元々彼らは肌の色が違うという設定を取ったことだ。
 今回はこの「肌の色の違い」の設定が見える台詞がある。それはゲールがシュルツに「(ヤマトを叩けば)二等市民から一等ガミラスに引き上げるよう進言する」と嘯くことだ。つまり本作中のガミラス帝国には「一等市民」と「二等市民」という差別制度があり、これが「肌の色」の関連性がある可能性がある。
 そのような差別制度があると言うことが、「差別をする必要性」があるということだろう。ここで二つの可能性が浮かび上がる。
 ひとつはガミラス星人には二種類の人種がいるというガミラス星内での差別である。この人種の違いは「肌の色」という遺伝的な違いによるものであり、地球人類の「白人」や「黒人」とは別次元の、例えば「ホモサピエンス」と「ネアンデルタール人」の違いのようなものだと考えられる。同じ星のヒトでありながら彼らは種類が違い、どちらも高度な文明を築いたに違いない。そしてこの「種」の間での争いがあり、「青い肌」の人種が主導権を握って「一等市民」となり、「肌色の人種」は差別される「二等市民」になったというものだ。
 だが、この設定だとかなり不自然な点が出てくる。もしガミラスの惑星テロン(地球)侵略が旧作と同じ理由であれば、ガミラス星人は「種の違い」を元に諍いあっている場合でないからだ。星が滅亡するというガミラス人類最大の危機に、共に手を取り合って乗り越えなければ混乱に乗じた内乱が起き、結局は両者とも星から逃げ出すことは出来ずに共倒れするだろう。デスラーにそんなことがわからないはずがない。
 そこでもう一つの可能性としては、ガミラスは惑星テロンだけでなく別の惑星も侵略し、その勢力が広範に及んでいるというものだ。侵略した惑星に人類があれば、これを一方的に滅ぼすのが彼らのやり方に見えるが、実はこれはガミラス人にとって生命生存環境に適していない惑星テロンの場合の特殊なやり方だと思う。ガミラスの生命が生きていける環境にある星であれば、最初は友好的に近付いて相手を安心させてから惑星を軍事的あるいは経済的に侵略し、その結果政治的にその惑星の指揮権を手に入れるはずだ。その結果、惑星改造なんかしなくても移住先としてその惑星にガミラス人居住区を作る事は出来るし、何よりも惑星の生物を全滅させる必要もないので労力や食糧にも困らないことだろう。
 こうして惑星テロンとは違う形で侵略され、ガミラスの指揮権に入った惑星の人類は「ガミラス二等市民」となって、ガミラスに忠誠を誓うことと引き替えに最低限の権利が保障されていると考えるべきだろう。ガミラスのやり方を考えれば、武力ではなく経済的な侵略に成功した惑星の市民や、ガミラスが軍事行動を取る前に降伏した惑星の住民が「二等市民」になったと考えられる。
 この立場にシュルツやガンツがいると考えられ、彼らは「ガミラス人」ではなくその指揮下に入った惑星の人類であるという設定だと考えられる。恐らく最小限の権利が保証されているとは言え、彼らは「一等市民」と経済的な格差を持たされている事は確かだろう。自分の惑星の自治に関する権利も小さく、ガミラス星の政治に参加出来ないなどの差別を受けていると考えられる。だがその星を未来永劫ガミラスの指揮下に置くため、子供達が教育を受ける権利はあると思う。もちろんこれはガミラスに洗脳するための教育だが。
 このような差別待遇に置いた上で、「功績があればその星の市民を一等市民に引き上げる」という餌で「二等市民」のやる気と忠誠心を奮い立たせていると考えられる。これによって上を目指す者達がガミラスにさらに忠誠を誓い、ガミラスに積極的に協力する。そんな体制の筈だ。恐らく惑星テロンを最前線で攻撃している兵士や指揮官の多くが、このような「二等市民」だと考えられる。「二等市民」の中でも向上心があり信頼出来る者を指揮官として冥王星に配置し、その者が「二等市民」の中から兵を募って最前線に赴けば…「一等市民」は遠くから命令するだけで戦争が進むのだ。
 もちろん、この制度を維持するためには「失敗」した場合の処置も決まっているはずだ。その「二等市民」が属する星の人類を滅亡させると脅していることだろう。もちろん、そんなことをすればガミラスの植民地と化したその星の経営が行き詰まり、最も困るのはガミラス自身なのだが…あ、他の星から「二等市民」を連れてくれば解決か。

・(おまけ)たのしいガミラス語口座
地球→テロン
木星→ツーピースト
土星→ゼダン
プラート→冥王星

恐らくではあるが、「みーろん」には「我々」や「私たち」という意味が、「ざっ、べるぐ」は「了解」という意味だけでなく「ざっ」の部分には上官に対する敬語の意味が込められているのだろう(船舶でいう「サー」みたいなものかと)。

(数字について)
10→けす・9→いーはう・8→ばく・7→ぜく・6→い・5→がっ・4→じ・3→ねる・2→べる・1→あう・0→ぜう
…耳コピーままなので、台本通りではないと考えられる。これを見るとガミラスも10進法を採用しており、ガミラス人は人間と同じように片手に指を5本持った生物であることは確かだろう。恐らく指が4本であれば8進法になったはずだし、6本ならば12進法を採用したと考えられるからだ。

第5話「死角なき罠」
名台詞 「ここには、家族や友人を奴らの失った者もいるだろう。だが、差し違えようなんて気は起こすなよ。必ず生きて戻れ!」
(古代)
名台詞度
★★★★
 いよいよ敵冥王星基地殲滅作戦である「メ2号作戦」の発動が迫った。作戦前のブリーディングでブラックタイガー隊の作戦行動を説明した後、最後に古代がこう一言付け加えた。
 ここにはこの「ヤマト計画」の性格というものが上手く描かれている。この計画に沿ってヤマトに乗った者達が持つ「使命」というものを、古代はこのような言葉で皆に伝えたのである。それは冥王星のガミラスを叩くことは自分達がやるべき本題ではなく、あくまでも「通過点」に過ぎないという点だ。
 従って、この冥王星での戦いにおける消耗は最小限に食い止めねばならない、それに必要な「心構え」を古代は上手く説いているのだ。その心構えとは敵に対する私怨を封じること、その「私怨」は「自分が死んででも相手を叩く」という思考回路に軍人を向かわせてしまうことになる。それが一人二人ならともかく、何人も出るようならこの攻撃隊の大きな消耗の原因になりかねない。まだまだイスカンダルへの旅は始まったばかりであり、目の前にいる全員が「今後も必要な人材」であることを認識させるため「必ず生きて戻れ」という「命令」になるのだ。
 この台詞を若くて猪突猛進な古代が自分で思い付いたとは考えにくい。個人的にはCM明け最初のシーン、古代が艦長室から出てきたところがポイントと思われる。この時に古代は山本の転属を申し出て承認されただけでなく、沖田から冥王星作戦における攻撃隊に必要な「心構え」の説教があったと私は解釈している。沖田は艦長として、南部の意見具申にあった「航空隊の消耗」は本作戦の最大の問題点と感じていたはずで、攻撃隊に「絶対に生きて帰る」という心構えを持たせることは必要と感じていたと考えられるからだ。
名場面 反射衛星砲第一撃 名場面度
★★★
 これまで本作ではピンチらしいピンチがなかったヤマトだが(かといって皆無だったわけでもないが)、ここへ来て始めて敵との交戦によるピンチを迎える。「メ2号作戦」が発動し、これに従って攻撃隊が発艦して行くと、作戦指令部となった第二艦橋ではレーダーに敵艦影がないこともあって「静かな海だ」と語り合う。これにより南部が攻撃隊に頼らずヤマトだけで基地攻撃出来るとと訴えるなど、メインスタッフの油断も描かれる。だが真田は「この静けさはかえって不気味だ」と言い、沖田も雪に「対空警戒を厳重にしろ」と命令を出す。そこへ、ヤマトへ迫る高エネルギー砲の弾道。この弾道は何度か直角に曲がりながら、正確にヤマトの左舷側に命中する。ヤマトは敵の奇襲を受けた形となったのだ。
 火を噴く艦体、鳴り響く警報音。雪は発射方向が不明であることや、冥王星から来たものでも無いことを報告するのが手一杯だ。その背景では真田が被弾状況を確認・報告し、ヤマトの防御兵器である波動防壁が破られたことを報告。艦内は重力制御も効かなくなり、艦隊は左舷から煙を噴いている。真田は左舷10時方向から攻撃されたと報告し、沖田は島にこの方向からの死角へ入るように「取り舵一杯」を命じる。
 この反射衛星砲による第一撃は、「ヤマトの混乱」を上手く描いている。「何が起きたかわからない」というものを「恐怖」として描くのでなく、「とにかく原因を掴もう」という人間の心理が上手く描写されている。この混乱こそがガミラス側の「反射衛星砲を使用した攻撃」が「奇襲攻撃」として成功したことが上手く示唆され、本話ではこのヤマトの混乱が収まらないまま第2波、第3波の攻撃を受けるという展開となり、最後に「ヤマトが沈む」という冥王星エピソード最大のヤマ場を迎える事になる。ヤマトが沈むはずはないのだが、「これならヤマトが沈んでもおかしくない」といううまい描写になったと思う。
 また、このシーンの中で「波動防壁」というヤマトの防御兵器が忘れられていないのはポイントが高い。あくまでもこの防御によって最悪の事態は免れたという内容になっているのだ。また重力が効かなくなった事を示すために、佐渡と真琴の存在をここぞとばかりに上手く使ったのは話に緩急をつけるだけでなく、殺伐とした戦闘シーンの中のオアシス的要素としてうまく出来ていると感じた。そういう意味では佐渡の役回りは、旧作とは変わっていないということだ(旧作ではこういう時はアナライザーが絡むが、その代わりを真琴が演じている)。
感想  旧作にでてた「山本 明」は本作では女になったのかー! 私と同じ名前だから愛着のあるキャラだったのに…ここまでことあるごとに画面に出ていたグレーの髪の毛で主計科所属の女性が「山本 明」だったなんて…くそっ、今話まで全く気付かなかった、古代じゃないけど「山本 玲」で「やまもと れい」だとずっと思っていたよ。
 しかし玲が航空隊志望なのに主計に回されたという設定は第一話から解っていて、劇中の何処かで何らかの成果を挙げて航空隊に転属になるエピソードがあるとは思っていたけど…それがこんなに早く来るとは。もうちょっとエピソードを貯めるかと思っていたのになぁ、今回は古代が艦長に意見具申して「考えておく」で保留されると思って見ていたのに。
 それと、私がこのコーナーで度々「ユリーシャは誰だ?」と語ってきたが、前話で初登場し今話で名前がハッキリした少女乗組員である百合亜で決まりでしょう? 百合亜→ゆりあ→ユリーシャってちょっと強引かも知れないが、名前の類似性は見過ごすことは出来ない。雪は陽動だろうし、玲や真琴は役どころが定まったから今さらユリーシャにはなれないだろうし、薫は艦での立場的にないであろう。ま、この点はもう少し見守っていかないと解らないと思うけど…。
 ヤマトの側だけでなく、冥王星のガミラスについても色々と解ったのが面白い。ひとつは前話研究欄での考察がほぼ当たっていることが明らかになったこと。つまり「肌の色」による人種差別がガミラスにはあり、それぞれ「一等市民」「二等市民」とされている点だ。だが差別理由が同じガミラス人の中での人種差別なのか、それともシュルツらがガミラスの植民星民だからという理由なのかは解らない。今話でハッキリしたのはあくまでも人種差別があることだけだ。
 また、本作でもドメルが出てくることが確定したのは本話と言って良いだろう。まだデスラーすら出てきていないが、シュルツやガンツらの以前の上官がドメルだと解った。しかもドメルはゲールとは違って、彼らから尊敬されているのも確かだ。
 さらに言えば、ガミラス側が「ヤマト」という名前を知った理由も明確にされた。それは前話での雪からヤマトへの救難信号がガミラス側に傍受されたという展開を取ったのだ。つまり、ガミラスは地球の日本語を知っていると言うことになるだろう。過去の戦いでガミラスが日本人の捕虜を取って、言語学者などを動員してその言語を理解したと考えるのが自然だろう。あ、よく考えたら、第3話以降シュルツらは当たり前に日本語を喋っているなぁ。
 今話は旧作の第7話に相当し、大まかな内容はこれに準じている。多分シュルツは、本話ラストのヤマト撃沈をデスラーにでなくゲールに報告するのだろう。もちろん、ゲールは「とどめを刺していないのか?」と聞くかなぁ、旧作のゲールならそんなことには気付かないように感じるのだが。はたして?
研究 ・遊星爆弾と反射衛星砲
 もちろん、ヤマトの冥王星基地殲滅作戦に対抗する武器は、本作でも「反射衛星砲」だ。旧作ではこの反射衛星砲は、ガミラスが冥王星基地を守るための防御兵器として設置されていた設定になっていた。ところが本作では、反射衛星砲そのものは同じでもその設定を大きく変えてきた。
 それは冥王星基地における反射衛星砲の設置理由である。考えて見れば一方的に侵略するだけの太陽系に対し、防御兵器があることは不自然かも知れない。敵が乗り込んできたところで相手の方が格下なのは明かで、冥王星近辺に来る前に叩けるはずだ。また強力な敵が単艦で乗り込んでくるというのも予測困難なはずで、それに応じた防御兵器がある事自体が不自然なのだ。
 そこで本作では、反射衛星砲の設置理由という設定を変えてきた。これは「防御兵器」などではなく、惑星テロン侵略のための攻撃兵器である「遊星爆弾」のシステムの一部ということにされたのだ。つまり本作での反射衛星砲を考察するには、「遊星爆弾」について詳しく知る必要がある。
 本作の「遊星爆弾」は、ただ単に惑星テロンに重量物を落として地表を焼き払うというのが目的のようだ。太陽系外縁部の「エッジワース・カイパーベルト帯」にある小惑星を、小惑星自体の温度を上昇させて半溶融状態で惑星テロンへの衝突軌道に乗せているもののようだ。この小惑星を惑星テロンへの衝突軌道に乗せる役目と、半溶融状態にする役目を持つのが「反射衛星砲」ということだ。これらは本話の劇中から解った事である。
 問題は、惑星テロンにぶつける小惑星を直接撃てばいいのに、なぜ「反射衛星砲」に頼るかと言うことだ。それは「惑星テロンへの衝突コース」に遊星爆弾を乗せるためには、秒単位の誤差も許されない精度が必要だからと考えられる。その時に該当の小惑星が冥王星基地の裏側にあれば、遊星爆弾を惑星テロンへ向けて発射することが出来ない。そこで該当小惑星が何処にあっても適切なタイミングで遊星爆弾を使用出来るよう、反射衛星砲というシステムで高エネルギー粒子を反射させて撃つ事を可能にしたのだと推測される。
 このシステムは、冥王星基地に高エネルギー粒子砲といくつかの反射衛星を置くだけで、惑星テロンに効果的に重量爆撃が出来るので効率の良いシステムだ。しかも爆弾自体は天然のものであるので費用面でも効果がある。あまり大きな小惑星を落とせば惑星テロンそのものが破壊されて消えてしまったり、そうならなくとも衝突エネルギーにより何千年も惑星テロンに住めなくなってしまう可能性があるので、大きな小惑星を落としてはいけないことにもなる。
 そして、この遊星爆弾を誘導するためのエネルギーを強くして防御兵器に転用、というのが今回のシュルツの発案であったと考えればいいだろう。
 しかし、冥王星付近にある小惑星を惑星テロン(地球)にぶつけようとすると、どのくらいの時間を掛けて行くことになるんだろう? 地球の冥王星探査機ですら冥王星到着までに9年も掛かるというのに…間違いなく年単位の時間は掛かりそうだ、ならばヤマトが冥王星基地を叩くのはイスカンダルからの帰りでも良かったんだじゃ…。

第6話「冥王の落日」
名台詞 「俺は、自分の艦を二度と沈めない。この艦が地球を後にしたときから、俺の生命は沖田の親父に預けてある。俺たちはやれることをやる、それだけだ。」
(山崎)
名台詞度
★★★★
 カッコイイねぇ、この台詞。
 なんて感心している場合じゃない。反射衛星砲の攻撃により冥王星の海に沈んだヤマトは、偽装沈没の状態で海中に留まる。その時、ヤマト一のネガティブキャラである機関部の藪が「俺たち、いつまで海の底でじっとしてなくちゃならないのかね?」「まだ太陽系だって出てないんだ、こんなんで本当にイスカンダルまで行けるんだろうか?」と不安を口にする。その不安に対して、応急長の山崎 奨が力強くこう答える。
 不安というのは誰にだってあるものだ。それを消すには方法はひとつ、責任者を信じること、そしてその下でやれることをやること。これを山崎という男はとてもカッコ良く伝えてくれる。この心意気は軍艦乗りの心意気なのかも知れない、艦長を信じてやれることをやる。その結果が国を守ることになるという確固たる意志がないと、藪のようにネガティブになってしまうのだろう。しかし、藪に「アホ毛」はないよなぁ。
 旧作の山崎 奨ってキャラは記憶に間違い無ければ、徳川亡き後のヤマトの機関長だったはずだ。徳川は「さらば」だけでなく「2」でも戦死しているので、「新たなる」以降で空きポストになった機関長に用意されたキャラだったと記憶している。確かアムロ徳川太助をしごいていた記憶が…そんな山崎は、本作では機関部の応急長としての登場だ。
名場面 冥王星基地撃破 名場面度
★★★★
 ヤマトは最大の難関である反射衛星砲本体撃破に成功すると、「これより本艦は敵基地殲滅に向け出撃する」と沖田が宣言する。ヤマトは冥王星の海からジャンプして発進、その直後に反射衛星砲が破壊直前に放った高エネルギー砲がその場に落ちてくる。一方ガミラス基地では反射衛星砲が破壊されたことを知り、その爆破によって発生した津波が基地に押し寄せる。同時にヤマトの接近を知ったガンツが「危険だから脱出して下さい」「生きていれば、汚名を濯ぐ機会もあります」とシュルツに意見具申する。そうしている間にもヤマトは冥王星基地に空対地ミサイルを撃ち込み、基地だけでなく艦艇まで破壊される。だが4隻だけは脱出に成功し、冥王星の大気圏外へ逃れようとする。沖田は手を緩めずにこれを追撃、主砲を空対地ミサイルからショックカノンに切り替えて打ち方を始めれば、4隻のうち2隻にれが直撃して轟沈。これを見たシュルツの部下ヤレトラーは「ここは我らが盾になります、どうかご無事で…」とシュルツに言い残すと、反転してヤマトに突っ込む。だが主砲についてはヤマトの砲が練度が高く、ヤレトラーの艦は主砲の直撃を食らい轟沈。この間にシュルツ艦はワープの準備を進めており、ワープでこの宙域から姿を消す。これを見た沖田が「ガミラスの冥王星基地は終わりだ、地球に遊星爆弾が落ちることはもうない」と宣言、同時に古代から帰投の連絡が入り戦いは終わりを告げる。
 旧作の冥王星での戦いは真田を中心とした職人的な技が描かれたが、本作ではヤマト艦載機の空中戦、それにヤマトによる砲撃戦をたっぷりと見せてくれる無骨な戦いに描き直された。旧作の戦いも好きだが、やはり「男の子」としては描き直された本作の方が気に入るかも知れない。
 何よりも冥王星基地が津波だけで消滅という結末を辿らず、ヤマトの砲撃による破壊が大きい事が本作の特徴だろう。主砲も三式弾から始まって、空対地ミサイル、ショックカノンとあらゆる砲弾が使われている。やはりヤマトの戦いは波動砲で簡単に事を済ませてしまう「さらば」以降の戦い方より、こういう戦い方の方が絵になると思う。
 また、ヤレトラーの最期も上手く描いた。これは古代 守を皆に思い出させる効果があると思う。本作では守はまだ出てくると思われるが、古代が敵を取ったと視聴者に感じさせる意味でも、良いシーンであったと思う。
感想  デスラー デターーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
 しかもしゃべり方なんか旧作を凄く意識していた面白かった。声をやっているのは山寺宏一さんとは…。副総統のヒスはいいが、もうひとり女性の秘書官みたいなのがついている。他にお付きの女性が2名、なんか凄いなぁ。そのデスラー、初登場が入浴シーンだからものすごい印象度だ。
 冥王星基地の戦いは、雰囲気がかなり変わって本格的な「戦い」として描かれた。旧作では真田の職人技が光るところであったが、本作では派手なドンパチに描き直された。
 その中でも旧作通り、シュルツがデスラーに「ヤマト撃沈」を直接報告するシーンがあったのは驚いた。旧作ではシュルツはデスラーの直接指揮下にあったのが、本作ではゲール指揮下に描き直されている。だからシュルツがデスラーに直接報告というのは難しいと思っていたのだけど、シュルツがゲールを信用しておらず「手柄を横取りされる」と判断しての直接報告とは、恐れ入った。
 またガミラス「二等市民」について解る台詞もシュルツが吐いている。「素直に降伏すれば、我々のように生きる道もあったものを…」とテロン人に対して呟いているのだ。これでシュルツら冥王星基地を指揮している「二等市民」はガミラス人ではなく、ガミラスに母星を植民地化された人種だと判明したといって良いだろう。だがガミラスの惑星テロン攻撃については、あくまでも「奴隷か死か」の選択を迫ったやり方ではなく、一方的な無差別攻撃だ。つまりこれは、ガミラスにとってテロン人は使い道のないことを意味していると思われる。多分、ガミラス本星で生存可能な人種だけが「奴隷になる」ことを選ぶ権利があるのだろう。それがシュルツらの惑星の人民だということだ。
 残念なことに、本話ではヤマトの乗組員に少なくとも2名の戦死者が発生している。最初はヤマトが冥王星の海に潜んでいるとき、浸水により閉鎖された通路があったがここで最初の戦死者が出ているのは確かだ。それと加藤と一緒に冥王星基地探索をしていた「杉山」という名の航空隊員が撃墜され助かっていないと考えられる。合掌。
研究 ・続反射衛星砲
 もちろん、冥王星基地の戦いにおける考察は、反射衛星砲についてだ。前回は反射衛星砲の本来の役割を考察した。これを直接攻撃兵器に転用したことで、ヤマトに死角のない攻撃をあびせることが出来たため、ヤマトを一時期「偽装沈没」で海底に潜むしかないという状況にまで追い込んだ。つまり今話前半までは反射衛星砲が圧倒的勝利だったと言っても過言では無い。
 だが、反射衛星砲を持ってしても冥王星基地は敗北した。その原因は何だろう…と旧作考察時と同様に研究してみたい。
 もちろん、反射衛星砲自体の敗北理由はヤマトに見破られたことだ。真田と新見によりシステムの概要が見破られ、ヤマトが浮上し「潜水艦航法」を取ったところでシュルツが反射衛星砲の操作したところで反射衛星の1つを撃破するという方法により防御法を掴んだ事がひとつ。そして反射衛星砲発射時に航空機隊に砲自体が発見され、これをヤマトの三式弾で破壊されたことがひとつだろう。だがこれだけであれば、反射衛星砲というシステムが破壊されるだけで冥王星基地陥落まではいかないはずだ。
 旧作では反射衛星砲が空冷式だったことが敗北要因となった。反射衛星砲を使用するたびに多量の放熱を行う必要があるため、排気口があったからだ。だが本作では反射衛星砲は水冷式に改められたようで、水中に設置されていることを考えれば発見されにくいはず。
 ここはシュルツによるこの武器の運用法に問題がある。基地の頭上をヤマト艦載機が飛び交っていることを知っているのなら、ここは徹底的に耐えるべきだった。彼が耐えきれなかったのは、デスラーに「ヤマト撃沈」を先に報告してしまったという大ポカのためだ。このポカによりシュルツに焦りが生じ、反射衛星砲を使用すれば砲塔部が発見されて攻撃されるリスクが高まるという冷静な判断が出来なくなった。
 こうして反射衛星砲は破壊され、ヤマトの冥王星基地への総攻撃を許す結果になってしまう。う〜ん、旧作ではガミラスの兵站や技師が抜けているからこその敗北であったが、本作ではシュルツの独り相撲が原因とは…。恐らくシュルツは次話で壮絶な戦死をすると思われるので、これくらいにしておこう。

第7話「太陽圏より別れを告げて」
名台詞 「俺の父親、遊星爆弾の第一波で死んじまったんですよね。大嫌いだったんですよ、いつも怒鳴ってばかりで。それがこの頃、不思議とよく思い出すんです。決まって怒鳴られたときのことをね。」
(篠原)
名台詞度
★★★
 今回、名台詞欄に名が上がったのは、今回で初めて名前がハッキリした加藤と同じ航空隊のメンバーで、ロングヘアの副隊長だ。旧作の山本が女になってしまったために、新たに設定されたキャラだと考えられる。
 それはともかく、ヤマト艦内で繰り広げられる「太陽系赤道祭」の片隅で、僧侶に扮する加藤に篠原が酒を勧める。「呑めないの知ってるだろ?」と断る加藤に、「(家族との交信は)いいんですか?」と問う。「俺は退路を断っている」「どうせ親父は寺を継げって話しかしない」と加藤が返すと、篠原は静かにこう語る。
 そう、ここで篠原が語る気持ちは「喪ってみて始めてわかる親の偉大さ」という奴だ。多くの若者が最初にそれに気付くのは、親元を離れて独立した生活をしたときだが、それではまだ帰れば親に会うことも親孝行をすることも出来る。だが親が他界してしまえば…という気持ちを、篠原は切々と語る。そして彼が父親に持っていた印象は良くないが、それこそが父の姿であるとするのは見ていて驚くものだ。
 私は両親とも健在なので、その気持ちはまだ理解出来ないかも知れない。恐らく両親のどちらかが他界したときに、この台詞の本当の大きさに気付くのかも知れない。ここにはしっかり、親の「印象が悪い部分」も含めて大事にしなさいという制作者のメッセージが現れていると思う。それに気付くときにはたいてい手遅れであることを、この台詞を書いた人は経験があるのだろう。
 この言葉を受けた加藤は、食べていた食事をテーブルの上に置くと、篠原の肩を叩くと黙って宴会の場から出て行く。「ヤレヤレ」と見送る篠原、その数シーン後ではその父親と交信している加藤の姿が出てくる。
名場面 沖田と徳川 名場面度
★★★★
 「太陽系赤道祭」の間、居場所が無くて困っていた沖田は一人艦長室にあった。その関知洋室の扉を叩くのは、機関長の徳川だった。徳川は最初、事務的に「機関部にいらっしゃったとか?」と問うが、「いや、あれは…」と答えに詰まる沖田に酒瓶を差し出す。そして二人は関知洋室の床に座り込んで呑む。最初に二人が乗り込んだ艦の話から始まって、その頃の若さの話になると、徳川が神妙な顔でな顔で「あれから何人の若者がわしらより先に逝ってしまったことか…」と呟く。「数えたくないな、いや、数えてはならんのだ…人の生命は数じゃない」「生きながらえた者に出来るのは、若者の明日に希望を繋ぐことだけだ」と沖田はこれに返す。「多くの若者の未来を奪った、せめてもの償いですな」と徳川がこの会話を結論づける。沖田の帽子、そして家族の写真が画面を流れる。
 旧作でも本作でも、二人が同じ艦に乗り込んできた信頼関係にあることは何度も描かれている。この会話はその設定が始めて活きたと思われる会話だろう。二人は同じ艦で一緒に戦い、一緒に生き残ってきたことにより大きな十字架を背負わされている。そんな事が見えてくるシーンだ。
 その思いは二人とも、階級を上げれば上げるほどに強く感じてきただろう。多くの仲間達が喪われ、自分達が生き残ったことに悩み、それに苦しんだ結果「若者の明日の希望となる」ことが自分達の役割だという信念を持つに至ったのだろう。そう説明するのは簡単だが、このシーンにはそれだけではない「重さ」が二人にキチンと描かれている。その二人が背負う十字架の「重さ」というのが、うまく表現されていると思うのだ。
 そしてこのような会話は、旧来の中であり信頼出来る関係の者同士が、個室で二人きりだから出来るものである。旧作と比較すれば、艦長室で沖田と酒を呑む相手を古代から徳川に変えるだけで、こうもシーンが変わるという典型例にもなるだろう。
 二人が戦う信念、というものを明確するだけでなく、彼らが敵以外の何と戦っているかという点をも示唆する重いシーンで、とても印象に残った。
感想  今話は特に何も起きない。旧作10話の設定を一部変更して、さらに乗組員達の「過去」に触れつつ物語を進めるという展開だ。
 まずはいやらしい目つきの保安部長の伊東という新キャラから始まる。だがコイツは新たな展開とはあまり関係ないと思う。問題は本話ラストの新見だ、こいつが芹沢と組んで何かやらかすということが上手く示唆されている。恐らく、ヤマトのせいで中止になった「イズモ計画」に関わることだろう。でも人類脱出計画はヤマトのイスカンダルミッションのせいで頓挫しているはずだぞ。
 次に山本、マーズノイド…つまり火星人であることが今話でハッキリした。恐らく火星に移住した地球人の子孫という設定なのだろうけど。同時に地球はガミラスによる侵攻前にも宇宙戦争を経験していることがハッキリする。山本が生まれた頃に「第二次内惑星戦争」を経験しているのだ。これは惑星移住人類と地球残存人類の戦いという、「ガンダム」の設定のような戦争であったと考えられる。火星が廃墟ばかりになっているのは、この戦争の影響なのだろう。恐らく火星は人類生存環境でなくなったのだろう。でも瞳が赤いから火星人って…安直すぎる。
 加藤の設定も面白い。「実家が寺院」という設定は、これまでもお経を上げているシーン等から想像できたがこれが明確になる。その家業と今の仕事の狭間で揺れる青年の姿を上手く描いている。
 旧作では雪の役割だった「見合い写真をみせられる」役回りは南部に回され、さらに南部は雪に片思いという設定が付け加えられた。
 一番驚いたのは雪だ。なんと、雪は「1年前以前の記憶がない」という設定なのだ。何らかの形で記憶を失った雪を育てたのは土方というのもハッキリした。まさか、雪がユリーシャなのか? でも百合亜も気になるしなぁ。艦内DJなんて…それでイスカンダルからのメッセージを届けるとかやっちゃいそうじゃないか。ま、雪は何かの事故などが設定づけられているのだろう。これで旧作にあった雪の両親の設定が消えたと。
 しかし、なんか今話では古代と山本が良い関係になっちゃっているのはちょっとなー。やっぱ古代と雪じゃなきゃヤマトじゃないよ。その雪が古代を気にしている様子だからまだ救われたけど…ひょっとして、このまま古代と山本が一度良い関係になりつつも、山本が戦死するとかそういう展開が待っているのかなぁ?
研究 ・「太陽系離脱」
 いよいよヤマトが太陽系を離脱する。太陽系外縁部でのシュルツとの決戦がないまま、今話では「ヘリオポーズ」突破が「太陽系離脱」と明確に定義づけ、戦いは無しでキャラクターの群像劇として物語が進む。
 この「ヘリオポーズ」だが、太陽から吹き出てくる「太陽風」と銀河系の地場が衝突する場所のことである。太陽から吹き出てくる様々な物質は、あらゆる意味で太陽系を星間物質や銀河系の磁場や放射線から保護している。この太陽風は太陽から一定の距離までに減速され、「末端衝撃波面」という面を形成する。この外側では太陽風物質と星間物質や銀河系磁場と混ざり合った「ヘリオシース」という領域が続き、この「ヘリオシース」の終点が「ヘリオポーズ」であり、太陽風の影響が無くなる境界線のことなのだ。つまりここから外側が太陽の影響が及ばないと言うことなのでこの内側を「太陽圏」としているため、この「ヘリオポーズ」が太陽系外縁を示しているのは多志田。
…というのが私の「ヘリオポーズ」に対する理解なのだが、間違っていたら申し訳ない。
 太陽から「ヘリオポーズ」までの距離は、学説にもよるが50〜160天文単位と呼ばれている。つまり太陽〜地球間距離の50〜160倍ということだ。冥王星までが30〜50天文単位だから、双方の平均値を取れば地球〜冥王星間の二倍ということになろう。ちなみにその内側の「末端衝撃波面」までは、今や太陽系外探査機となったボイジャー1号が太陽から90天文単位の地点で観測している。
 もちろん、それだけ離れていれば従来の無線通信では「瞬時通話」は成り立たない。地球との通信は電波通信を用いない通信方法を取ったのは確かだ。劇中で相原がこれを「超空間通信」と呼んでいた。つまり通信内容をワープさせる(空間を超えさせる)という意味と解釈出来る。本作第1話で「きりしま」と地球が瞬時通話しているのが確認されているので、これはイスカンダルからの技術支援で作られたのでなく、元から地球にある技術だと考えられる。この地球の「超空間通信」は、「ヘリオポーズ」の外側では宇宙放射線などの影響で通信が困難になると設定されている。これが本話での「家族との通信許可」との理由だ。

第8話「星に願いを」
名台詞 「総統は我らに、戦って死ねと仰せられた。すまない…ヒルデ…。」
(シュルツ)
名台詞度
★★★★
 冥王星基地を滅ぼされたシュルツ艦は、名誉挽回のきっかけを掴むべくヤマトを追尾していた。その艦長室で、シュルツは娘であるヒルデからの3Dビデオレターを黙って眺めている。「お父さん、お仕事早く終わらせて帰ってきてね、お母さんもお父さんを心配してるの…」と語りかける娘の3D映像に、シュルツは厳しくも寂しそうな表情でこう語りかける。
 シュルツが娘からのビデオレターを眺めているシーンはこれが最初ではない、確か第3話でもそんなシーンが描かれていた。その時は娘に「勝利」を誓っていたと思うが、今回のシュルツはその時とは違う。
 自分が指揮する前線基地を失ったシュルツは、平たく言えば国家元首に捨てられたのである。つまりもう帰る場所がない、妻や娘がいる家庭へも帰ることか許されなくなった彼は、「早く帰ってきて」と訴える娘に、謝ることしかできない。そしてそんな所へもう帰ることが出来ないという悲しみをこの台詞で上手く演出している。
 旧作のシュルツは、「生命を失ってでも敵を殲滅する」という敵将を描き、同時にそれを実行するために彼らにも「士気を上げる」という必要がある人間くささが大きく描かれている。だが今作のシュルツが演じる「人間くささ」は、家族があってそこへ帰りたい自分、妻や娘に会いたいという多くの人が普遍的に持つ「想い」を前面に出すことだ。
 シュルツというキャラクターに、感情移入して見ていたおっさん達は多いかと思う。旧作でも今作でも、これほど感情移入出来る敵キャラというのは滅多にお目にかかれるものではないと思う。個人的には、今作のシュルツの方が感情移入度が深く、好きだ。
名場面 特攻 名場面度
★★★★★
 シュルツに回ってきた名誉挽回のチャンス、それは「デスラー魚雷」によるヤマト殲滅だ。「デスラー魚雷」にはエネルギーを吸収して増殖するガス生命体が封入されており、ヤマトをこの生命体と恒星の挟み撃ちにする作戦であった。
 だが、ガス生命体が強すぎたのか、ガス生命体は恒星のエネルギーを欲した結果、逆に恒星に飲み込まれてしまった。これでヤマトの勝利が決定したわけではないが、ゲールはデスラー自ら開発した武器が役に立たなかったのはシュルツのせいだと罵声を浴びせることになる。屈辱に耐えてこの罵声を聞くシュルツだったが、副官ガンツがその通信のスイッチを切る。驚くシュルツに、ガンツがそっと頷く。シュルツが頷き返すと彼の表情に生気が戻り、「本艦はこれより、ヤマトへ向け最期の突撃を敢行する」と宣言。ガンツが「シュルツ大差と共に!」と叫ぶと、艦橋の乗組員もこれを唱和する。
 カッコイイー。旧作のシュルツもカッコ良かったが、本作のシュルツも最期はとてもカッコイイ。そしてシュルツが単なる司令官ではなく、多くの部下達から慕われていることもこのシーンから見てとれる。彼が語った台詞は少ないが、旧作のこの台詞と同じ効果がこのシーンにはあると思う。ここまででとても印象深いシーンだ。
 そしてシュルツ艦は、巨大フレアに行く手を塞がれたヤマトに突っ込んで行く。そして波動砲でこのフレアに風穴を開けようと準備しているヤマトに、主砲を浴びせて直撃弾をも食らわせる。だがヤマトは波動砲によってフレアに開いた穴を通過、シュルツ艦はこれを追尾するが…シュルツ艦が通る頃にこの穴は消滅し掛かっていた。シュルツ艦は耐熱限界を超え、艦艇から融解を始めて行く。乗組員達が叫ぶ「ザルツ万歳!」の「ザルツ」とは彼らの故郷の惑星のことだろうか? しかし、シュルツの耳には彼らの叫び声は届いていない、目を閉じた彼の脳裏を支配していたのは妻と娘の笑顔であった。その娘が自分の方に駆け寄ってきたと思うと、シュルツ艦は猛火に包まれ爆発する。
 壮絶なシュルツの最期であるが、娘がいる父親はこのシーンを涙無しで見る事は出来ないだろう。シュルツというキャラクターがこうして人間として完成したことで、今後この物語も「人間同士の戦い」という面を強めて行くことになると考えられる。
 なお旧作考察では、シュルツは名台詞欄で最初の★×5の評価を得る台詞で登場したが、本作考察では名場面欄最初の★×5評価のシーンを飾ることになった。それだけこのシーンが強印象だったと言うことだ。
感想  「シュルツの最期」をどう描くか、これは私にとって本作の評価を決める最初のポイントであった。旧作での「シュルツの最期」は突撃を宣言するあの台詞がとても印象的で、それを引き継ぐのか、そうでないとしたらどのようにしてさらに印象深いシーンにするのかという点で気になっていたのだ。
 今話では見ていれば早い段階で「シュルツの最期」が描かれるエピソードだと気付くはずだ。だから視聴する私の注目度は上がる。まず名台詞シーンで「シュルツが遺してきたもの」を明確にし、シュルツという人物をどのような方向性で描くかが確定する。そして徹底してシュルツを「軍人」として描き、かつ「家族の存在を胸に秘める」という描き方をしたのは恐れ入った。シュルツが娘からのビデオレターを自室でコッソリ見るというのも彼らしくて良い。誰にも語れない寂しさとして彼の家族への思いが完成したからこそ、名場面欄シーンの「シュルツの最期」が活きてくるのだ。「シュルツの最期」の印象度は旧作より上がり、私は★×5の評価をつけずにはいられなかった。シュルツ艦が爆発する寸前、シュルツの脳裏に浮かんだ妻と娘を見た時、涙出たよ。
 そしてもうひとつの見どころ、それはCM直前に突如現れた。旧作11話に出てきた「下品な男」が本作にも登場したのだ。もちろん、旧作と同様にくだらんダジャレを言い、穴に落とされハイお終いである。このシーンがあるからこそ、デスラーの恐ろしさが伝わってくるってもんだ。
 しかし、シュルツが前線で壮絶な戦いをしている頃、娘のヒルデはデスラーを見ては熱狂的に声を上げているもんなー。あれは二等ガミラス臣民に対する教育の結果だと考えるべきだろう。ヒルデは幼少期からガミラスによって教育されたことによって、デスラーを神と崇めるようになったのだろう。教育というのは使い方を誤るとこうなってしまうという事を、視聴者に伝えるために存在するキャラなのだろう。ただしヒルデは、第3話の初登場時に字幕付きだったこと、エンディングテーマ背景での扱われ方を考えると、これで終わるキャラだとは思えない。シュルツの戦死により「一等ガミラス」になったヒルデの姿が描かれるのか? それとも次話辺りで父の死の報せに接した彼女の姿が描かれ終わりなのか、それはこれからのお楽しみ。
 ヤマト乗組員でひとつ印象に残ったのは新見だ。前話のラストで何かしでかしそうな雰囲気を見せた彼女は、早速その本性を見せてきた。つまり彼女は「ヤマト」のために廃案になった「イズモ計画」のメンバーであり、その計画の復活を狙って暗躍しているということだ。もちろん、その首謀者が芹沢であることも確かだろう。イスカンダル到着時に反乱を起こすのは藪ではなく新見なのかも知れない。「ここになら地球人類が移住出来る」とか言って…でもそうすると、雪を拉致する理由はなくなるか。あ、「子孫を多く増やすため」とか言って真琴や玲なども拉致されるのだろう。百合亜はユリーシャだと思うから、例外になるって事かな。保安部の存在なんかをみていると、あの反乱シーンはかなり大きく描かれることだろう。
 それと、百合亜の「霊感少女」っていう設定は…あれはその気があってしつこい男を、うまく回避するための台詞だったに違いない。
研究 ・ガミラス国家について
 今回ではガミラスという国家について上手く説明される。旧作ではあまり気にされてこなかった「ガミラス帝国」の実像に迫る興味深い内容の台詞が語られている。
 まず副総統のヒスの台詞だ、「総統、ガミラス帝国建国1000年、ならびにデスラー紀元103年を閣僚を代表してお祝い申し上げます」としている。これからわかるのは「ガミラス帝国」が建国されて1000年と言うことだが、問題は「デスラー紀元103年」だ。
 これは私の解釈だが、ガミラス星にも現在の地球のように様々な国家があった時代があり、その1つとして1000年前に「ガミラス帝国」が誕生したのだろう、地球で言えば西暦1199年の事で、鎌倉幕府が出来た頃だ。
 その「ガミラス帝国」がガミラス星全土を掌握し、現在の体勢になったところが「デスラー紀元」と考えられる。この時にデスラーの父か祖父が宇宙侵略を開始したのであろう。つまり「機動戦士ガンダム」でいう「宇宙世紀」だと考えられるのだ。
 宇宙侵略を開始したガミラスは、大小マゼラン星雲の統一を実現し、劇中の時点では天の川銀河への進出を開始したという歴史があることは、閣僚の一人が語っている。恐らくこれが103年の間に起きた出来事だろう。日本で言えば西暦2096年頃なので、まだ「デスラー紀元」は始まっていない。
 タランの説明も興味深い。彼はこの考察で前から話題にしている「二等臣民」について説明している。つまりこれは「同化政策」であり、侵略した惑星がガミラスへの恭順を示せば得られる「権利」だとしている。この政策が単なる差別政策ではなく、功績のあったものは「一等臣民」となってガミラス星人と同じ権利を得られることは今話のラストでハッキリしており、忠誠心と希望を煽ることでガミラスの国家を盤石なものとする目的がある。だがディッツによると、このシステムでも恭順しない勢力があるようで、小マゼラン外縁部では外宇宙からの侵略をも受けているようだ。
 この中でやはり疑問なのは惑星テロン(地球)に対する扱いだ。ここまでの設定ではガミラスは惑星テロンに対し、「恭順すれば二等臣民となり権利を保証する」旨の選択肢を与えていない事になっている。これは惑星テロンだけ何らかの特別扱いがあるのか、それとも地球国連側に何らかの設定があるのか、物語の展開を待ちたい。
 そして謎なのは、シュルツ等の故郷の星が「ザルツ」と思われるが、ザルツ人であるヒルデがガミラス本星にいることである。これはどういう事なのか? ひょっとして、ガミラス軍に従軍している二等臣民の家族は、人質に本星に取られているという設定でもあるのかな? そして該当の軍人が手柄を上げたり、戦死した場合は「一等臣民」になって故郷に帰れるという寸法だ。これも「二等臣民」による忠誠心を煽るのに適した手段だろう。
 しかし、ガミラスにもネコやネズミがいるんだなー。生態も地球のそれと同じなのだろう。余計な事書いた。

第9話「時計仕掛けの虜囚」
名台詞 「私には、君に心があるのかどうかさえわからない。君には、私の中にあるような意識はなく、人間らしく振る舞っているだけなのかも知れない。」
(真田)
名台詞度
★★★
 真田とアナライザーは、エンケラドゥスで捕獲したガミラスのアンドロイド兵「ガミロイド」の秘密を探ろうと、確保した3体のガミロイドの生きているパーツを組み合わせて上半のみ修復に成功する。そのガミロイド「オルタ」と名付けられアナライザーと心を通わせるが、このせいでアナライザーが通常作業に支障を来したため真田によってアナライザーはガミロイド解析から外される。それを知ったガミロイドはアナライザーに会うため、そして「女神」に会うため、自分で下半身を修復して解析室から逃亡を図る。艦内では保安部に出動命令が下りガミロイドを砲塔室まで追い詰めるが、そこに真田とアナライザーが現れ、銃を下げるよう保安部隊に乞う。それに対し保安隊長の伊東が真田に「あのガミロイドに心があると思うのか?」と問うと、真田は静かにこう答えるのだ。
 機械に心があるのか、コンピュータソフトに心はあるのか、これはそれ等を創り出した人間にとっては大きなテーマだろう。確かに機械にしろプログラムにしろ、元を正せば単純な計算を繰り返して行くことで複雑な計算の答えや、複雑な思考をするようにできている。人間も同じであり、その人間に心があるなら機械に心が生まれてもおかしくはない。
 このテーマにはこれまで様々なフィクション作品が挑戦してきたのはいうまでもない、「宇宙戦艦ヤマト」旧作ではそれを通り越してアナライザーに明確に「心」を植え付けて話を進めている。
 もちろん、究極に科学的に言えば機械に心なんか生まれるはずはない。だが同じ計算処理をしている人間には心があるという現実、でも一歩引いてみると実は「心」を持っている人間は自分だけなのかも知れない。他人に「心」が本当にあるかどうかなんて、誰にも確かめようがないのだ。同じ人間だからみんなに同じように心があるはずと、我々は信じているに過ぎない。そんなことを見る者に突き付けてくるこの台詞は、真田らしくてとても印象に残った。
名場面 アナライザーとオルタ 名場面度
★★★
 砲塔室から甲板へと逃げてきたオルタの行き先には、重要施設のひとつである自動航法室ある。沖田がガミロイドをそちらに近付けてはならんと叫ぶ中、甲板上でアナライザーとオルタが向かい合う。
 オルタはアナライザーへ向かって手を伸ばした瞬間、脚が疲労破壊してその場に倒れるが、これをアナライザーが手をさしのべて助ける。繋がれた機械同志の手と手、だが次の瞬間のアナライザーは「ヤマトの部品のひとつ」としてオルタの行動を止めるべく、オルタのシステムに入り込むのだ。アナライザーに教わった言葉をひとつずつ呟きながら、オルタは意識を失って行く。最後にオルタが発した言葉は「友達」であった。アナライザーがガミロイドの活動停止を確認すると、タスクレコードを抜き取る。アナライザーの作業が終わるとオルタの身体は宇宙空間へと流れ出す。遠ざかるオルタの姿を、見えなくなるまで見つめるアナライザー。静かに流れるBGM。
 最後の最後、アナライザーは「自分が存在する理由」と「オルタという友の存在」の狭間で揺れていたのは確かだろう。だが人間によって作られたアナライザーは、「存在理由」を自ら切り開いて作り出すことはできない。だから彼は「ヤマトの部品のひとつ」としての行動に徹することになったというその気持ちが、上手く表現されていると思う。それが活動を停止して宇宙空間に流出するオルタの身体を、一人寂しく見送る姿として流された。
 つまり、本作の結論は「機械にも心がある」という形を上手く示唆したことになる。心があるからこそ心が通い合い、そこに友情が芽生えるというメッセージを上手く伝えてきた。ひいては名台詞欄で真田が語ったような、「他の人間に心があるかどうかわからない」ということはなく、人にもひとつひとつ心が宿っているというメッセージを、このシーンを通じて上手く視聴者に伝えてきたと感じる。
 アナライザーは「オルタ」という機械にも心があるからと信じ、彼に優しく接していたのかも知れない。だからこそ「敵に囲まれたら自爆する」ようにプログラミングされているのに、ヤマトの保安隊に囲まれても自爆回路は作動しなかった。オルタが信じていた物、それは友であるアナライザーが救ってくれる事であったはずだ。
 だが、そのオルタもアナライザーによって活動停止させられた事は理解しているに違いない。それがアナライザーの役目であり、そのようにプログラミングされていることは理解していたのだろう。ひょっとすると、オルタは「どうせならアナライザーに殺されたい」と思っていたようにも見えた。
感想  今話を見ていると良く伝わってくることは、前話で物語が一区切りついたことだ。ヤマトとシュルツをはじめとするガミラス冥王星部隊との戦いという、「宇宙戦艦ヤマト」序盤部分の物語は、考えて見ればシュルツの死でもって終結するはずなのだ。前話で第一部が終幕し、エンディングテーマも変わって第二部がスタートしたことは誰にでも理解出来るだろう。シュルツの死に対する余韻は描かない方針のようで、恐らくヒルデも出てくることはないと思う。ガミラス側の物語はシュルツの話からドメルの話へと移行すると思われるが、その過程でヒルデが何らかの形で画面に登場することはあるかも知れない。だが基本的に、ヤマトと直接戦うガミラス人は新キャラが出てくることになるであろう。
 そして今話、まず第二部最初の物語は一話完結もので来た。前話までの解析室シーンで何度も印象的に出てきたガミロイドの物語があることは想像していたが、まさかみんな物語になるとは予想だにしていなかった。解析室のガミロイドが突然生き返って乗組員を襲い、艦内での銃撃戦とかそういう展開になると思っていたのだが。
 まさかアナライザーの物語であのガミロイドを使ってくるとは思わなかった。百合亜による劇中小説の読み上げを交えての情緒的な展開は、これまでの「ヤマト」各作品になかった独特の雰囲気がある。それにしても22世紀にもなって、アナログチューニングのラジオはねーだろ。真田の手作りラジオかな? 百合亜の「ラジオヤマト」って、艦内放送じゃなくてラジオ電波で飛ばしていたのね。
 それはともかくも、アナライザーとオルタの物語での「語りどころ」は名場面欄と名台詞欄で殆ど語ってしまった。二体のロボットが、人工知能としての意識や心、つまり自我に目覚めているかという難しい問題が、今回の最大のテーマだったことは否めないだろう。
 今回はこれまで2人ほど物語に出てきていた「保安部」の初出動だった。敵との戦闘以外で艦内での武装が認められているのは、彼らだけなのだろう。何人くらいいるのかという規模はまだ把握出来ていないが。
 それと、薫が相変わらず「イズモ計画」を諦めていないのは…懲りないやっちゃな、前話で沖田とあんな言い合いをしたばかりなのに。ますますコイツが反乱の首謀者になる予感が強くなってきた。
研究 ・ラジオヤマト
 太陽系離脱の時から艦内で放送を開始した「ラジオヤマト」、これは定期的に岬百合亜によるDJが流れるということのようで、前話と今話ではこの劇中放送と共に物語が進む。
 まず考えたいのは、艦内にラジオ放送設備がある理由だ。艦内の乗組員への連絡手段は艦内一斉放送があるので連れを使えばいいはずだが、それとは別に何かしらの理由があるということだ。これは私は、各部ごとの放送にラジオ電波を利用すると解釈している。戦闘部なら戦闘部、航海部なら航海部、というように各部に対する連絡事項を個別に放送する手段としてラジオが利用されているのだろう。しかも、緊急連絡以外の連絡事項を伝える手段で、これは各乗組員の個室やベッドに受信機があると思う。
 そしてその電波の空きチャンネルを利用して、娯楽番組などを放送出来るようにしていたに違いない。長い航海では人の心を落ち着ける必要があり、このようなチャンネルの設定は避けて通れないとか考えられる。
 だから各人の個室やベッドにある受信機では、その配属部署のチャンネルは常時聴取、娯楽チャンネルはオンオフ可というかたちになっているのだろう。つまり娯楽チャンネルを聞いていても、その担当部署の連絡事項があればそちらに自動的にチャンネルが変わると考えられる。
 では娯楽チャンネルでは何が流れているか、である。もちろんこれも戦闘時以外は24時間何かを流しているはずだ。非番の時間に娯楽チャンネルを聞いて見たら何も流れていない…なんてことのないように。だから普段は様々なジャンルの音楽や、落語や漫才などの演芸などを録音したものが流されているのだろう。だがそれだけではいかん、と思い岬百合亜が自らDJすることを願い出たのが「ラジオヤマト」だと考えられる。
 前話では、放送時間が「艦内時間20時30分から」ということがハッキリしている。恐らく放送は毎日この時刻、それと録音した再放送があって当番者対応をしていると考えられる。百合亜が17〜18歳と思われるので、そう長時間のDJはできないと思われるので1時間番組だと考えられる。日によって前話のように短編の詩を語る回だったり、今話のように「文学館」だったり、前々話のように音楽DJだったりするのだろう。リクエストも受け付けていて、船務科にその窓口があると思われる。狭い艦内だ、リクエスト者の特定が簡単なのでリクエストの際はラジオネームを名乗ることが義務づけられていると思われる。
 周波数は999kHzであることは、今話のシーンで確定している。前述しているが、あのアンティークなラジオは真田の自作だろう。真田も百合亜の番組のラジオのリスナーであり、リクエストまでしているのだ。

第10話「大宇宙の墓場」
名台詞 「お前は戦闘機乗りなのだろう?……私たちの間にこんな物は必要ない。」
(メルダ)
名台詞度
★★★★
 次元断層に落ちたヤマトと、ガミラスDX178艦は、共同で次元断層からの脱出作戦を行う。ヤマトにはDX178艦から通信者として送られた航空隊パイロットのメルダが「人質」のかたちで残る事になった。ヤマトが波動砲を放つことで次元断層に脱出口ができ、DX178艦の曳航によりヤマトが次元断層の脱出口に差し掛かった瞬間、突如DX178艦の方から曳航索が切り離され、ヤマト乗組員に動揺が走る。
 その頃、メルダを監視していた玲は「バカな」と立ち上がったメルダに銃を向けていた。「やっぱり、そういうことだったのね」…これをきっかけに玲とメルダは取っ組み合いの喧嘩になる。DX178艦のゴタゴタが収まり再び曳航索が接続されても、二人の喧嘩は続く。玲が撃とうとした銃はメルダが拾い上げ、玲にその銃口を向ける。だがメルダはこの台詞を吐きながら銃口を下げ、玲に銃を返す。
 乗組員同士の取っ組み合いの喧嘩と言えば旧作「宇宙戦艦ヤマト」の名物だったが、それは男同士の喧嘩であった。だが本作で始めて描かれた取っ組み合いの喧嘩はなんと女同士、その女同士の喧嘩を印象付ける台詞であることは確かだろう。
 メルダは「敵艦に乗っている自分」というものを通じて、様々な事を見通してしまったのは確かだろう。敵艦に乗り込んでいる「人質」という自分の立場が非常に危ういものであり、本来は取っ組み合いの喧嘩をしただけでいつ射殺されても文句を言えない立場であることは重々承知のはずだ。それだけでない、目の前にいる「玲」というテロン人の女性が「家族の仇」として自分を恨んでいることも気付いている。メルダには劇中で艦隊司令官の娘であることが示唆されており、彼女には「敵艦の中で人質のまま死ねない」というプライドもあるはずだ。
 だがその彼女の中にある気持ちは、あるひとつの結論を出していたに違いない。「戦う場所はここではない」「戦う場所は今ではない」ということだ。もしこの喧嘩に玲が勝って、メルダが射殺されるようなことがあれば…惑星テロンに軍規というものがあれば玲の立場が危うくなることもメルダは知っていたはずだ。自分だけでなく玲も救うために、メルダは彼女に「自分達が戦う場所は他にある」という事を上手く告げたのだ。そしてこれは、この旧作にない展開に驚く視聴者にも上手く伝わっている。
 玲とメルダ、この二人が戦場で相見えることがあるかどうかは、今後の展開を待たねばならない。だが二人にこの瞬間から奇妙な友情が芽生えることは容易に想像ができる。そんな旧作になかった新しい物語をも想像させてくれるという意味で、この台詞はとても印象深かった。
名場面 対決 名場面度
★★★
 DX178艦の曳航によって通常宇宙空間に逃れることに成功したヤマトだが、その眼前にゲール率いるガミラス艦隊が立ち塞がる。ゲールはDX178艦に「攻撃の邪魔だ」と突き付けるが、DX178艦の副長と思われる男が「あの船にはディッツ提督のご令嬢が乗っておられるのです」と反論する。だがゲールはヤマトの前に立ち塞がるDX178艦もろとも攻撃を開始、第一撃でDX178艦は「味方に撃たれる」という悲惨な最期を遂げる。ヤマトでは「敵の同士撃ち」という自体に乗組員が驚きの表情を見せ、一方のゲールは「行方不明艦(DX178艦)はヤマトの攻撃で撃沈された、そうだな?」と宣言する。
 そしてその攻撃の手はヤマトにも及ぶが、次元断層で波動砲を使用したことでエネルギーが枯渇しているヤマトに反撃の術がない。ヤマトは直撃弾や至近弾を浴びるが、沖田は「艦首回頭」を命じる。「逃げるんですか?」と問う南部に「そうだ」と沖田は静かに答える。逃走を始めるヤマトにゲール艦隊は追撃を始めようとするが、そこで先ほどの次元断層の突破口が「次元震」という災害を発生させる。これによってゲール艦隊は次元断層に引き寄せられてしまう。「撤退だ! 今すぐジャンプさせろ」とゲールは叫ぶが、副官の「撤退命令を出さずに旗艦が戦線を離脱しては…」という反論にも構わず、ゲールは「死にたいのか? 貴様は?」と情けない声で叫んで撤退命令を出す。ゲール艦隊は次元断層に吸い込まれるが、旗艦だけはギリギリでワープしてしまう。
 今話も終盤になって突如現れるガミラス艦隊、しかも艦隊VSヤマトという戦いは本作ではこのシーンが最初で否応なしに盛り上がる所だ。しかもヤマトは波動砲を撃った直後で逃げるくらいしか手段が無い。嫌でも手に汗握るシーンであり、また戦いに迫力があってとても印象的だ。
 そしてこのシーンのもう一つ印象的なところは、ゲールの「小物」ぶりが明確に描かれている事だ。今話冒頭でも、ヤマト殲滅に焦りろくに作戦を立てずに艦隊を出動させるなどその愚かさが存分に描かれている。その上でのこの戦闘ではゲールが可哀想なほどだ。DX178艦乗り込みの親衛隊からの通報により、ヤマトの航路を塞ぐ形で艦隊を配置出来たところまでは良かった。だがその後が余りにも無計画だ。行方不明艦が突如現れれば、それなりの理由があるはずだがそれを探ろうとしない。落ち着けば「次元断層」という危険が近くにあり、むやみに発砲してはならないという情報はDX178艦から得る事は出来たはずだ。そしてその結果、艦隊を失ってしまう。それだけでない、艦隊をほったらかして自分一人逃げたのである。ここまで来ると戦犯クラスだ。
 恐らくこの戦いでの敗北が、ゲールの降格(バラン星指令から副官へ)に繋がるという設定になって行くのだろう。
感想  いやー、ここまで化けるとは。旧作の13話15話がここまで化けるとはなー。
 ここでヤマトに一人のガミラス女性が乗り込むという設定はなかなか興味深かった。メルダというガミラスの戦闘機乗りだが、今回の展開を見れば彼女の所属部隊が壊滅した(しかも同士撃ちで…)ことは確かなので、メルダはこのままヤマトに捕虜として乗り込み続けることになるのだろう。恐らく次話では独房にでも入るのではないかと思う。しかし、ガミラス人にも「アホ毛」ってあるんだなーって、論点が違うってか?
 そしてメルダというキャラクターは、物語の設定や地球とガミラスの戦いなどにおいて重要な情報を沢山くれる。その中で最も大きい情報は研究欄に回すが、ガミラスの「一等臣民」「二等臣民」や肌の色との関係、地球とガミラスでは互いの言語体系を知っていて翻訳が可能である点(アナライザーがガミラス語翻訳出来るだけでなく、メルダが「テロン語」との翻訳装置を持っている)などなど、物語にとって重要な情報を色々と教えてくれるのだ。
 それともう一つ、ヤマトが異次元断層に落ちたときに、密かに話がひとつ進んでいる。これは私の展開予想が外れたことを認める事になるのだが…それはユリーシャの登場である。ユリーシャはヤマトの自動航法室にいるという事が明らかになったのだ。つまり彼女が自動航法室に一人籠もって、イスカンダルの方向を次元羅針盤を通じて沖田や島に示しているのだろう。異次元断層に落ちたとき、ユリーシャの身体にも何らかの異常が発生したに違いない。ユリーシャは「さらば」のテレサのように反物質でできているとか、実体がないなどの設定があるのだろう。恐らく自分を安定させるために…ユリーシャは百合亜に憑依したのではないか?
 前話でユリーシャが霊感体質であることも考えれば、これは十分にあり得る話だ。百合亜は「何者かに憑依された」という事を自覚していて、その「何者か」が雪に似ていることもわかっているのだろう。だから雪を見て大袈裟に驚いた…ってとこではないか? 恐らくユリーシャに憑依された百合亜は、今後ことあるごとに自動航法室に籠もるようになるのではないかと考えられる。
 最後に、次元断層にはまったヤマトを手を貸し、結果的に地球を救うことになるガミラスDX178艦のラング艦長ならびに乗組員に敬礼っ。彼らは例えそれが敵であろうとも、約束した事は裏切らないという事を我々に見せつけてくれた。ゲールなんかに同士撃ちで沈められるとは、とてもやりきれない。あの艦長や乗組員は、シュルツと同じザルツ人なのだろうか?
研究 ・ガミラス・地球戦争の発端
 今話でひとつの謎が解けたというか、それに繋がりそうな新たな設定が出てきた。これはメルダが語った「テロン人は宣戦布告も無しに攻撃を仕掛けてくる好戦的な種族だからな」という一言である。これは地球人である私にとっても聞き捨てならない台詞であるし、劇中の玲や島、それに南部もその発言に怒りを露わにする。メルダは冷静に「我が家は代々、軍の重責を担ってきた家系だ。その名誉にかけ嘘偽りはない」と言い切る。女とはいえガミラスは酷い奴らだな…。
 と怒るのはごもっともだが、ここでは落ち着いて本作の設定を見直してみよう。本作第1話(研究欄参照)では雪が子供達に戦争に至った経緯を説明しているが、これによると「友好関係を築こうと試みた地球に対し、彼らは一方的に戦端を開くと情け容赦のない無差別攻撃を仕掛けてきました」と言うことになっている。同じく第1話では土方が「あまりにも敵を知らなすぎる」と語っているし、沖田もことあるごとに「悪魔め」とガミラスを評している。視聴者が全員地球人である以上、これらの台詞はガミラスが一方的に侵略しているというイメージを植え付けられ、劇中のガミラスを「悪」として見てしまうだけの効果はある。
 だが第2話以降を見てみると、地球側のそのような「事情」は一切流されない。代わってガミラス側の情報が流され、この中でも第8話などではガミラスが侵略目標とした星には「ガミラスに恭順を示せば二等臣民となる」というやり方が明確に語られている。そして私は第8話研究欄で、なぜガミラスは地球に「恭順すれば二等臣民として権利が保証される」旨の選択を与えていないのか?という疑問を呈した。
 ここまで語るとひとつのことが見えてくる。つまり「ガミラスが一方的に戦端を開いた」と主張しているのは劇中の地球人だけなのだ。ガミラス側はもちろん、イスカンダル側もそれを補強する史料はなにひとつ提示していない。つまりここから見えてくる答えはひとつである。メルダの言っている事が正しいということだ。交友関係を結ぶかどうかは別にして、コンタクトを取ろうとしたら一方的に攻撃されたのは地球ではなく、ガミラスの方だったと考えるべきだ。
 西暦2191年、地球は人類史上初めて地球外文明を接触。これがどのような形だったかは想像に拠るしかないが、恐らくガミラスはそれなりの艦隊を率いることで軍事力を誇示し、地球の為政者と話し合おうとしたに違いない。その内容は「ガミラスの指揮下に入って二等臣民としての権利を得るか?」と、「全面戦争による地球に対する徹底的な破壊か?」の選択であろう。地球側政府はこの交渉内容に驚き、「社会を混乱させないため」とか言ってガミラスとの接触そのものも含め、その事実を国民に伝えなかったに違いない。
 そして、当時の為政者はそのどちらも選択をしなかったのだろう。軍事力の差などを考えず、いきなり相手を攻撃してしまったに違いない。ただしこれは軍部の一部が暴走したと考えるべきだろう。地球人同士の「宇宙戦争」に勝って気をよくしていた軍人達に、このような要求を突き付けられたら暴走するに決まっている。戦争が続く世では勝ち続けることで「自分達の力」を忘れてしまう軍人というのは必ず出てくるのは、歴史が教えてくれる真実だ。
 だがガミラスはそんな事情は知らない。宣戦布告もなく突然攻撃されれば、自動的に「全面戦争による地球に対する徹底的な破壊」を選んだと判断するだろう。ガミラスは地球による先制攻撃を、国民の士気を高めるためのプロパガンダにも使ったに違いない。ガミラス星には「鬼畜テロン」とかポスターが貼られているのだろう。こうして全面戦争に持ち込まれ、ガミラスの猛攻に晒された地球政府は…ガミラスのことを国民に隠していたこともあって、「謎の異星人に一方的に攻撃をされた」と歴史をねじ曲げるしかなかったのだろう。
 こんな汚いことをやってる地球に、救いの手をさしのべてくれるなんて本当にイスカンダルはネ申だわ。冷静に考えればこの戦争のどちらにも与していない勢力からは、見捨てられてもいいと思うぞ。イスカンダルが「戦争を仕掛けた側」を何故救おうとしているのか、今度のはこの謎が何処かで明らかになるのを待ちたい。

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