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第11話「いつか見た世界」
名台詞 「この艦はもうダメだ、君は下へ行って離艦を指揮しろ。異星人との友好関係は築けない、息子にもそう言ったんだ。それが…それを我々が……早く行け、これは命令だ!」
(島 大吾)
名台詞度
★★★★
 ヤマトの航海より8年前、地球とガミラスの初接触の航海に機関長として参加していたのが、ヤマト機関部応急長の山崎だった。山崎が乗っていた艦は島大吾艦長率いる「むらさめ」、島大吾は島の父親であり、ガミラスとの最初の戦闘で戦死した設定だ。山崎は「むらさめ」の最後についての箝口令を破り、「むらさめ」で何が起きたかを島に正直に語る。その語りの中の回想シーンに出てくる「むらさめ」艦長命令がこの台詞だ。ガミラス艦からの攻撃で被弾し、「むらさめ」に大きな損害が発生したところで、艦橋にいた艦長はこう言ったのである。
 山崎が語った「むらさめ」の真実…それはメルダが語った通り、地球とガミラスの戦役は地球側が戦端を開いたという事実だ。国連軍司令部は、突如出現した地球外艦隊に対する防衛艦隊を差し向けただけでなく、その先遣隊として最も先行しており最初に地球外艦に接触した「むらさめ」に先制攻撃を命じたのである。もちろんその結果は圧倒的な火器の差による敗北で、「むらさめ」はたった一発の被弾で総員退艦に追い込まれるほどの損害を受け、さらなる被弾で艦橋などが損害を被り撃沈という一方的敗北を喫した。
 その「むらさめ」艦長は敗北を察するといち早く退艦指示を出すわけだが、その命令に戸惑いを見せた機関長に対して咄嗟に出た言葉が息子のことであった。彼は本当は「宇宙人とも仲良くなれる」として「戦いに行くわけではない」と息子に言い残してきたのだが、この航海でその信念が上官によって打ち砕かれた時に、彼は事実とは違い「息子には異星人と仲良くできない」と言い聞かせたと自分に言い聞かせることで「信念を曲げられた」現実に対処をしたのだと考えられる。そしてその思いが戦闘となり敗北を目前に控えた時に、このように言葉として出すことで、自分の行為を自分で恥じている台詞なのだと私は解釈した。それは忘れるはずのない息子に対し、詫びる気持ちを込めているのだと思われる。
 そして、「それを我々が…」のあとは、「自分達で証明してしまった」と言いたかったのだろう。彼の「宇宙人とも仲良くできる」という信念とは逆のことを、自分自身で行ってしまった悔しさや怒りというものがこの台詞の最後にしっかり込められている。
 この「信念を曲げられた行為」を命じられ、その上で敗北し生命を散らして行く軍人の気持ちを強く描いていると思う。信念とは逆のことでも上官の命令とあらば逆らえない現実、その「自分の信念」を後世に伝えられず間違いなく間違った形で歴史に残る悔しさ…この台詞は回想シーン中の台詞でありながら、とても印象深い台詞であった。
 そしてこの台詞の後、山崎が機関室へと去ると「むらさめ」艦橋が被弾し、「大介、希望を持て」の言葉を遺して島 大吾は戦死する。この話を聞いた息子大介は、納得のいかない様子で山崎に怒りをぶつける。そりゃそうだ、これまで「宇宙人と友達になれる」と言い残して戦死した父が、命令とはいえ異星人に先制攻撃をしたのだから…名誉を傷つけられたと憤慨するのは当然だろう。
名場面 ドッグファイト 名場面度
★★
 作戦室で今後の航海とメルダの処置について打ち合わせ。バラン星が近付いたところでメルダの解放が決まるが、山崎から真実を告げられた島は激しく感情を爆発させてこれに反対する。その瞬間、捕獲したメルダの乗機と、ヤマトの「ファルコン」が発艦したとの報告が入る。「脱走したんだ」と呟く島と、驚いて艦橋に上がり「ファルコン」と連絡を取る古代。次のシーンでヤマトを発艦するガミラス機とファルコンの様子となり、ファルコンに乗っているのは玲だと判明する。玲は古代の呼びかけによる通信を切り、「ここなら、私とあなたの二人だけ」と呟く。玲はメルダ機の背後に付き機関銃を発射するが、メルダ機はこれを器用に交わす。と思うとメルダ機はリバースをかけて急減速し、玲機の背後についてロックオン。玲機のコックピットではロックオンされたことを示す警報が鳴る。玲は何とかこれを交わそうと飛行を続けるが、エンジントラブルが発生して近くの惑星へ向け墜落を開始する。無線でメルダが「脱出しろ」と呼びかけると、玲は脱出レバーを引いて脱出。玲機は爆発し、宙空に舞う玲にガミラス機に乗っていたメルダによる救援の手がさしのべられる。
 こういう一対一のドッグファイトは迫力があって良いねぇ。ガミラス人に個人的感情による恨みがある玲がメルダにドッグファイトを申し込んだのであろうことが、このシーンを見ているだけでわかるようにできている。そしてその「勝負」はあくまでもメルダが優勢であることは、物語展開上とても良い。でないとこの勝負は後を引かない形で幕を閉じることはできなかったと考えられる。もし玲とメルダが逆の展開を辿り、メルダ機が墜落するような自体になれば、玲がそれを救助したかどうかは疑問である。「自覚」がしっかりしているメルダだからこそ、「今は本来の戦闘ではない」という自覚があり「私闘による戦闘機戦はあり得ない」と考えていることに説得力があり、乗機が墜落した玲を救出するという展開に説得力が生まれる。多分玲機をロックオンしたメルダ機が発砲しなかったのは、その辺りの理由だろう。
感想  今回は2つの物語が同時展開する。どちらも前回で初登場のメルダをきっかけとした物語であり、ひとつはメルダの「戦端を先に開いたのは地球側」という発言に動揺する島や山崎を中心とする乗組員達の動揺、もうひとつはメルダという「家族の仇」の存在に揺れる玲の動揺という、ふたつの「動揺」が描かれた事になる。
 特に前者は島にとってショックが大きかった。島は山崎から父が戦死したときの現実を知らされ、明らかに冷静さを失ってしまう。その山崎もメルダの発言をきっかけに「事実」をいつまでも隠しておいてはならないと動揺するし、何よりもこの自体に沖田も動揺している事が分かる。もちろん沖田はガミラスとの戦闘の発端となった戦いに司令官として参加しており、「地球側が戦端を開いた」という事実を知る一人で「いつまでも隠しきれない」と感じていたことだろう。それが隠しきれなくなれば、乗組員達の多くは「正義は自分達にある」という心の支えを失い、ヤマトの航海の正否に関わってくる。今話ではメルダの言う「戦端を開いたのは地球側」という前回研究欄ことが事実であることが明確になり、その首謀者も判明してくる。そのような重要な設定が確立し、これまでと違う「ヤマト」のストーリーが紡がれる重要な分岐点であると見て良いだろう。もちろん、この動揺もイスカンダルで発生する反逆の伏線であるはずだ。
 そして後者は、玲の複雑な心境を描いている。私には玲にとって、メルダのいう人物がその冷静な物事を見る目やこれまでの経緯から、「信用出来る人物」と心の中で思っていても「玲の中にある過去」によって素直にさせないというように描かれているように見えた。そして玲は前話ではメルダに言い負かされ、さらに取っ組み合いの喧嘩をして負けたという事実だけが残っている。彼女は「過去のこと」と「メルダに勝てなかった」という思いから、メルダに「新たな恨み」を持ったと言うことだろう。それを精算するために無断出撃を覚悟で、メルダに勝負を挑んだ。それで本人がスッキリするというストーリーだが…見ている方は何か知らないけどもどかしくて…。
 また今回は「サービスシーン」が多すぎ、雪と玲の入浴シーンなんてちょっとやり過ぎだぞ。旧作では雪のネグリジェ姿があったけど…メルダもほぼ裸で身体検査を受けるというシーンがあったが、こちらに萌えることはなかった。やはり種族の違いか…でも佐渡の診察結果によると、メルダは遺伝子レベルで地球人と同じ構造だという。これは凄い驚きだ。つまり地球人とガミラス人はまっったく同じ構造で、男女の別もあり、下品な話ならあんなことやこんなこともできてしまうということだ。恐らくこれはイスカンダル人や、シュルツらザルツ星人にも言えることなのだろう。そうすればスターシアと古代守が結婚し、間に子供ができたという旧作の設定にも頷ける。
 それと冒頭では、「宇宙の狸」…もとい、「宇宙の狼」ことドメルが本格登場する。いよいよ彼がバラン星基地に配属されるのだろう。また旧作のように「狸の化かし合い」みたいな戦いばかりを続けるのかな?
研究 ・ガミラス・地球戦争の発端2
「時に、西暦2191年4月1日。天王星の監視ステーションが、太陽系に進入する地球外文明の宇宙船らしき存在を、映像で捕らえました。国連宇宙軍は内惑星艦隊を直ちに召集、ここに史上初の太陽系外からの敵に対する防衛行動が発令されたのです。日本からは戦闘艦艇27隻が参加、指揮を取るのは第二次内惑星戦争で勇名を馳せた沖田十三提督です。冥王星軌道で彼らと最初に遭遇したのは、日本艦隊の巡洋艦「むらさめ」。しかし、異星人はその「むらさめ」に対し、一方的な攻撃を仕掛けてきたのです。奮戦空しく「むらさめ」は撃沈、救助された乗員一名を除き艦長・島大吾二佐以下の乗組員全員が、この戦い最初の戦死者となりました(以下略)。」

 これが島がヤマトの映画室で見ていた、「地球とガミラスの戦端」を伝えるニュース内容である。もちろんこれは大衆向けの「大本営発表」でしかなく、前線の真実を伝えているとは考えにくいという声もあるだろう。そしてメルダの証言、この後の山崎の告白により、この「大本営発表」は真実ではないことが明らかになる。
 そして沖田と山崎の回想により明らかになる事実。異星人艦隊に差し向けられた地球艦隊の司令官、沖田に「攻撃したまえ」と迫る国連軍軍務曲長(当時)の芹沢の声。「人類初の異星文明との接触だ、性急に過ぎる」と反論する沖田を、芹沢は「静観して手遅れになったらどうする?」と迫った上で、芹沢は沖田をその場で解任。異星人艦との接触海域まで来ていた「むらさめ」に、「直ちに邀撃行動に移れ」と直接指示する。その命令により、「むらさめ」はガミラス艦に対して主砲により発砲するなどの先制攻撃をしたのだろう。
 なぜこんな事になったのか? これは物語進展を待てばそれなりの情報が手に入ると考えられるが、おそらくは国連軍首脳が「異星人との接触」という初めての出来事に接し、内部分裂を起こしていたと考えられる。藤堂や土方などが「穏健派」として彼らとまずコンタクトを取り意思疎通を取る事を目指したのに対し、芹沢らは「強硬派」として徹底抗戦を訴えていたのだろう。「穏健派」は恐らくまずは軍備を持たないメッセージ船に護衛艦数隻を伴って相手艦と接触することを訴えたと思うし、「強硬派」は相手が「艦隊」であることから「好戦的」とみなしてこちらも艦隊を派遣すると訴えたのだろう。そして当時の国連軍首脳が「強硬派」が多数派であったとすれば…「穏健派」の影響もあり「取りあえず相手と接触を取る」を建前としながら、「防衛」を言い訳に「艦隊を差し向ける」という行為に説得力が生まれよう。そして艦隊が相手と接触の弾まで来たら…「強硬派」はやりたい放題、とのことだ。
 もちろん、この「強硬派」の存在理由は前話研究欄で想像した通り、その前の太陽系内での地球人による反乱を抑えたなどの「身内による」実績に拠るためだろう。その実績が「強硬派」を勢い付かせていた時にガミラスが来れば、いい気になった彼らは「宇宙人」も同じように武力討伐ができると考えたに違いない。科学力の違いなどの考慮は無かった事だろう。
 そして、この戦いに地球は敗れるわけだが、ここで「強硬派」が勢いを失ったことも目に見える。「強硬派」はことごとく更迭されて「穏健派」が国連軍首脳を占める事になったと思われる。「強硬派」はこの処分と引き替えに自らの失態…「未知の敵に先制攻撃して敗北した」ことを国民に隠すことを条件にしたに違いない。敵に先制攻撃されたという設定は、国民の士気を高めるために必要と判断され「穏健派」もこれをやむなく呑んだというのが実情だろう。
 その後の泥沼の展開の中で「穏健派」指揮による地球艦隊の度重なる敗北は、「強硬派」再起の要因となっていったことだろう。芹沢が国連軍首脳に復帰し、芹沢を中心とした「強硬派」が「人類再起」の切り札として立ち上げたのが人類地球外移住計画の「イズモ計画」だったのだろう。ガミラスに勝って形勢を逆転する要因が見えない以上、「穏健派」は渋々この計画を承認したという設定だと考えられる。その直後にユリーシャによりイスカンダルからの支援のオファーがあり、その情報を最初に掴んだのが「穏健派」であれば…「ヤマト計画」が「穏健派」によって進められ、「イズモ計画」の廃案…それを由としない勢力が「イズモ計画」再起に向け水面下で動くという、芹沢や薫の行動に繋がっていると考える事は容易だ。
 本作で旧作と違い、このような地球側の「政治分野」を取り上げているのが非常に見ていて興味深い。果てしてこの私の推理は合っているのか、それとも見当違いなのかは、今後の物語展開に期待したい。

第12話「その果てにあるもの」
名台詞 「命令に逆らう、軍人としては間違った行動だ。あってはならない。だが、軍人であっても一人の人間として行動しなくてはならん時もある。人は、間違いを犯す。もしそれが命令であったとしても、間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気も必要だ。そうわしは思う。」
(沖田)
名台詞度
★★★
 作戦会議中に島と口論したことで、罰則として島と共に艦内清掃を命じられた古代は、最後の清掃場所として艦長室を訪れる。そこで出迎えた沖田は「ちょうどお前と話がしたかったところだ」として語り始める。その内容は恐らく、前回の山崎の回想シーンにあったガミラスとの初接触のことであろう。沖田は古代に「地球側が戦端を開いた」事実と、その過程を説明したに違いない。そして国連軍司令部から先制攻撃の命令を拒否し、現地で司令官を解任された時の判断が正しかったと思うかどうかを古代に問う。「正しかったと思います」と答える古代に、沖田は静かにこう告げるのだ。
 これは沖田が持つ「信念」である。彼は自分の信念に従って地球艦隊の司令官という職に就いていることは、以前からも示唆されてきた。その信念は多くの人が共感し、信頼を得ているからこそ彼は司令官としても人気があるのは、旧作も含め劇中で散々描かれてきたことだ。
 だが、ガミラスとの戦争の発端となった艦隊派遣は、彼の信念と軍指令との方針が真っ向から対立した出来事であったはずだ。沖田は未知の宇宙文明に対し、まずはコンタクトを取って相手の考えを聞くべきであり、友好関係を取るにしろ戦うにしろその結果次第だと思っていたはずだ。だから「先制攻撃」という命令を受け入れることはできず、自分を貫いた。
 その結果が「現地での司令官解任」である。これは軍人、いや指揮官としては恥ずべき汚名であろう。このような汚名を着ることは軍人として正しくない。
 沖田がこの台詞を通じて古代に言いたかったのは、「自分の信念」を貫くために「汚名」を着せられる覚悟があるかという点だろう。本来軍人が戦う理由は平和のためであり、その平和のための信念を燃やしているならどんな仕打ちを受けても信念を曲げてはならないという論理だ。今NHK大河ドラマでやっている「八重の桜」風に言えば「ならぬことはならぬ」といったところだろう。
 そしてさらに、この台詞には視聴者に向けたメッセージもあると思う。これは台詞の後半部分だ。人というのは完全無欠ではなく間違いを犯すもの。しかも間違いを犯した人は取り返しの付かない所まで追い込まれないと気が付かないものだ。だから自分が「間違っている」と思ったら立ち止まる勇気も必要だということを、この台詞は視聴者に説いていると感じる。今回の名台詞はこの直前の徳川の台詞(名場面欄参照)とどちらにするか悩んだが、こちらを取った。
名場面 島と徳川 名場面度
★★
 作戦会議中に古代と口論したことで、罰則として古代と共に艦内清掃を命じられた島は、その過程で機関室を訪れる。黙ってモップで床を磨く島に、「お前の所はおふくろさんと弟だったかな?」と機関長の徳川が声を掛ける。その声に島の手が停まったことを知ってか知らずか「うちは長男夫婦と孫、それに次男が独り」と続け、次男が船乗りになりたいと言い出していると語り出す。「でもいい話じゃないですか…」と島が答えると、「いや、次男より孫だ。これがめっぽう可愛くてな、あれに良い婿を見つけてやるまではわしは死ねんのだ」と徳川は島に迫る。「徳川さんの目に叶うのは大変そうだな」と島が返せば、「そうだ、お前立候補せんか? アイ子は将来いい女になるぞ、お前なら許す」と胸にしまっていた写真を突き付ける。島はまだ幼い孫の姿を見て驚き「考えさせて戴きます」とおどけると、二人は笑い合う。こうして心が通ったところで徳川が島に語る。「真実っちゅうもんは1つとは限らん、こちらにはこちらの、相手には相手の真実があるもんだ。だが、事実は1つだけだ。戦争は起こっちまった。それでもわしやお前には家族がいる。わしらは恵まれておると思わんか?」。
 この徳川の説教は、名場台詞欄にも書いたが名台詞欄をどっちにするかかなり悩んだ台詞だ。「ガミラスとの戦いは地球側が先に戦端を開いた」という事実は、父がその先制攻撃を仕掛けた艦の艦長だったことから他の船員よりも重い事実だ。その事実を山崎に知らされ、明らかに動揺していたのを徳川も知っていたはずだ。その島の動揺を見て、部下である山崎も動揺している徳川としては、自分が何か島に声を掛けねばならないと感じていたのだろう。
 その徳川の手段は巧妙だ。いきなり残してきた家族の事を語り出すことで切り出し、その過程で自分の「孫バカ」ぶりをうまく利用して島の心を掴む。自分が可愛がっている孫を「嫁にやってもいい」と言うのは、徳川がどれだけ島を信頼しているかの証となるのは言うまでも無い。こうして島の心を掴んだ徳川が語ったのは、事実はどうあれ自分達に自分達の言い分があるように、敵には敵の言い分があるという現実だ。これを「真実」という言葉で説明した上で、「事実」は違うところにあるとする。
 その「事実」とは、今戦争になってしまったということと、自分達は家族が生きていてそれを守らねばならないという現実だ。端的に言えば、その家族の事を思えば味方同士でいがみ合っている場合ではなく素直になるべきだということ。そして何よりも、その守るべき家族がまだいるということが何よりも幸せだという現実だ。この艦には家族全滅の悲劇を味わった者が少なくないからだ。
 この「家族」をキーワードに、島は「事実」を受け入れる事と戦うことになる。彼が元の彼に戻り古代と仲直りするためには、ガミラス人と私闘を演じて独房入りを食らった玲との会話を待つことになるが、このシーンが意固地になっていた島の態度を軟化させた事は確かで、徳川の踏んだ手順とともにとても印象的であった。
感想  今話もラストシーンまで特に何も起きない。前半はガミラス帝国でのデスラーやドメルを中心として物語が進み、後半は前話で山崎から「事実」を知らされた島の動揺を中心としたストーリーが進む。その合間を縫ってユリーシャについての話が進む。どうやらユリーシャは、ヤマトに実体のない形で乗っているようだ。百合亜が夢で見た雪の事故は事実なのだろうけど、これに何らかの形でユリーシャが絡んでいるというのは考えすぎだろうか? 例えばユリーシャが「メッセージ」を持ってきたところに雪がいたとか、そういう伏線のような気がする。しかし、ユリーシャの件について百合亜がシロだとは思わなかったな。
 そして同時進行で進むガミラス側の話も興味深い、ここまで芹沢や薫が「地球もヤマトも決して一枚岩ではない」ことを演じてきたが、今話ではガミラスも決して一枚岩ではないことが明確となる。デスラーへの忠誠があるだけで、みんなやっていることがバラバラと来ている。高官は裏では互いに批判し合っていることは明確になっているし…デスラーに対して忠実でいればそれでいいという政治体制の欠点が見え隠れしているのが面白い。そして多くの高官は、デスラーに対して「忠実」ではあっても、誰もデスラーの方を見ていないというのは何かの伏線でわざとそう描いているのか、それともたんなる偶然なのかはまだ判断出来ない。
 その中でドメルが本格的に物語に絡み始める。デスラーからの勲章授与のシーンで、ヤマト討伐にドメルが加わることが明らかになるだけではない。シュルツと同じようにドメルにも「家族」が設定され、今話ではドメルの夫人(エンディングのスタッフロールの名前「エリーサ・ドメル」から見てそうとしか思えない)の存在が明らかになっている。さらにドメルが訪れた墓は、夫人との会話から二人の子供のものであろう。どのような理由で子を失ったのかは今後の物語展開を待つこととして、二人の子は少なくとも幼少期に亡くなったのは確かなようだ。
 そのドメル夫人の声、リメイクヤッターマンと実写ヤッターマンでオモッチャマを担当していてたたかはし智秋さんじゃないですかー。そういえば前話辺りから、メルダの親父であるディッツ提督の声もどっかで聞いたと思っていたんだけど、「南の虹のルーシー」で父ちゃん役だった堀勝之祐さんだし、ヤマト掌帆長の声なんかどう聞いても野原ひろしだから笑う必要のないところで笑えてしまうし、デスラーは「復活編」の古代だし…。
 ディッツ提督ついでに言うと、メルダはヤマトから解放されて無事に近くのガミラス基地にたどり着いて保護されたようだ。ディッツ提督も娘の乗艦が撃沈させられたと聞いて、いてもたってもいられなかったはずだ。だがメルダはどうして助かったのかすら語っていないということだ。つまりヤマトに連絡員として乗り込んで捕虜となったことすら語っていないのだ。彼女はヤマトから得た情報を誰にも語っていない、というのは間違いないだろう。敵ながらアッパレだ。
研究 ・ガミラス星
 今話ではガミラス星について、またはガミラス帝国において様々な新しい設定があることがわかる。ガミラス国家の政治面については今後の展開もあるので、今回はガミラスの文化面についてまず考察してみたい。
 ガミラス帝国の首都は「帝都バレラス」であることは前にも出てきた記憶がある。ここには政治面の機能が全て集中しているだけでなく、ガミラスが植民地とした惑星からも多くの人が流入していることが、ヒルデが住んでいることなどから判明している。ここでは前線から司令官クラスの指揮官への勲章授与の式典などが行われていることは劇中に描かれている通りだ。その車列に花束を持った少女が乱入しても制止されないなど、ガミラスには寛大な面があることを伺わせるシーンもあった。
 その式典に使用した自動車でもあり、またドメルらが移動に使用した自動車は、車輪に拠らず浮上走行するという優れものだ。恐らく何らかの形で車輪を回すより効率的に車体を浮上させる技術があるのだろう。停止時はちゃんとランディングギアが出てから着地するのが面白い。ランディングギアには小さな車輪が就いている模様で、故障時に牽引走行ができるようになっているのだろう。また我々が知っている乗用車と同じように、前灯と尾灯がついていて尾灯が赤というのも面白い。
 ガミラス人は地球人類と同じように、墓を作って死者を弔うという文化があることも判明した。これは旧作では全く描かれなかった要素である。恐らく墓石には死者の名前と、死んだ日付けなどが書かれているのだろう。
 そして花を美しい物ととして認識し、これを愛でると共に死者の弔いに供えるという文化も地球人と共通だ。もちろんガミラスでも花はプレゼントとしての効果もあることは確かだろう。そして今話の描写では、ガミラス星には緑色の草があることもわかっている。つまりガミラスの生物体型は地球とほぼ同じということがわかってしまうのである。人間だけでなく様々な哺乳類動物や、画面に出てくる緑の草や色とりどりの花だけでない。猫のような生物がいることは木星の浮遊大陸シーンで判明しているし、デスラーの台詞からネズミや猫がいることも確定だ。さらに言えば、爬虫類や両生類、それに昆虫などもガミラスには存在していることだろう。今話のシーンでは鳥の存在も確定している。
 それとガミラス星の天候、ドメルへの勲章授与式シーンでは青空が拡がっていることが描かれ、その後は黒い雲に覆われ、何と雨まで降り出している。つまり気象的にも地球と同じと考えられる。もちろん雷が鳴ることもあれば、季節の変わり目には竜巻に悩まされる地域があったり、冬は雪に閉ざされる地域もあるのだろう。
 今話のガミラス星シーンを拾うだけで、ガミラス星についてこんなにわかることがあるとは、正直驚いた。

第13話「異次元の狼」
名台詞 「そいつは俺が確認済みだ。それからお前ら! お前らもシーガルで、俺と一緒に戦術長のお手伝いだ!」
(榎本)
名台詞度
★★★★
 手術直後で昏睡状態の沖田を見舞った古代は、決断する。異次元からの敵の攻撃に対し、薫の具申で真田が採用した「亜空間トランスデューサ」ではなく、自分が具申して却下された「亜空間ソノブイ」による索敵を独自に行うことを。これを掌汎長の榎本と共に運用員の岩田と遠山に命じるが、彼らは「発艦命令がない」と反論する。その二人に対し、榎本はこう言って古代によるシーガル強行発艦を支援する。
 これまで榎本が見せてきた古代に対する役柄は、古代を兄のように、父のように見守る恩師の姿である。設定上も榎本は古代の訓練学校時代の教官であり、この師弟関係というものはここまで徹底的に印象付けられた。このここまで演じてきた設定が活きたという面でまず印象に残った。
 そしてこれは、今のところ艦橋で何が起きているか解らない榎本にある、教え子が自分の教育の成果をどのように見せてくれるのかという思いが上手く描かれていると思う。榎本の教育はこの台詞の前に本人が語った通り「常に一手先を読む」ことであり、この自分の方針が間違っていなければそれが艦橋とは違うやり方であっても「古代のやっていることは正しいはずだ」と思っていたはずである。そんな「古代を俺が育てた」的な彼の自信というものが見えてきて、彼の性格をうまく描き出していると思う。
 しかし、今話の榎本掌帆長はとことんカッコイイよなー。こう言う人に教わってみたかったと思った人も多いかと思う。ただ、声が野原ひろしで笑う必要のないところで笑えてしまうのが玉に瑕だけど。
名場面 名場面度
★★★
 今話で最も印象に残ったのは、ヤマトがまんまと罠に掛かったシーンだ。亜空間からの攻撃とはいえ、ヤマトがデブリの影に隠れたことで持久戦となってしまうが。目下のヤマトの敵である次元潜航艦「UX−01」の艦長・フラーケンは「ヤマトはこちらが先に動くのを待っている」と状況を分析した上で、「隠れん坊にも飽きてきたところだ」として動く。艦影がヤマトから離れるような動きをとったように見せ、その様子をみるのだ。だがこの艦は実はヤマト近傍の亜空間に潜んでいる。ヤマト側ではこれを的確に予測していたが、迂闊にも薫の具申で「亜空間トランデューサ」を使用してしまう。こうしてフラーケンはヤマトの位置を察知し、亜空間からの魚雷攻撃を仕掛けるのだ。
 フラーケンの戦術はまさに「相手からこちらは見えない、だがこちらから相手が見える」という絶対有利な状況を上手く利用したかたちで、持久戦でもその優位性を保っていることを忘れておらず決して慌てなかった点は素晴らしい。旧作のガミラス司令官にはない冷静な判断だ。
 これに対しヤマト側は「見えない敵からの攻撃」という事態だけでなく、その中で艦長が倒れるというさらなる緊急事態に浮き足立ってしまった事が上手く描かれている。索敵法について薫の案と古代の案がぶつかってしまい、副長の真田が私情を挟んで薫の案を採ってしまうというあってはならない事態を演じている。亜空間ソナーが亜空間にいる相手から自分の居場所を察知出来てしまうものであるなら、どう考えても古代案の方が優れているのだ。また自分の案や仕事に固執するという性格を演じてきた薫の、「欠点」がここで上手く活きたというのもこのシーンの見どころであろう。
 さらに「UX−01」艦ではヤマトが亜空間探査を始めたことに大袈裟に喜ぶ副長・ハイニの姿を描いたのも大きい。これは「ヤマトが敵の罠に掛かった」という緊張感を演出するだけでなく、視聴者の不安を煽る要素が大きい。視聴者はこの不安により、ヤマトがこの危機をどう乗り切るのかと身を乗り出して見入ることになる。とても印象的なシーンだ。
感想  いよいよドメルが銀河系方面軍指令に就任する。ここでゲールの悪行が暴かれる展開を予測していたが、旧作とは違いそのような面はないようだ。ゲールが女を囲っていたり、略奪品をコレクションにして飾っていたりとか、そういう無法司令官ぶりはでないようだ。
 その代わりにドメルの最初の「一手」が描かれたのが、前話ラストシーンから今話だ。前話でドメルがディッツに「特務艦を使わせて欲しい」と言っていたのは、これだったとは…。次元潜航艦という旧作にはなかった特務艦を設定し、これによりヤマトからは決して見えないところからの攻撃という、旧作以上の「狸の化かし合い」みたいな戦いをいきなり演じる事になる。やっぱりドメルは狼じゃなくて狸、ついでに言えばその「狸の化かし合い」を専業とするフラーケンは狸中の狸ってとこだ。全然狼らしくないぞ、マジで。
 ヤマト側では今回までに、「旧作になかったキャラ」の性格がかなり確立したと言って良いだろう。名台詞欄では野原ひろ…じゃなくて榎本について、名場面蘭では薫についてその点を無解説した。二人とも初登場からコツコツと積み上げてきたそのキャラクター性を、今回は様々な意味で活かして大役をこなしたと言って良い。ただし薫については新しい設定が示唆されている、それは古代 守と何らかの関係があるという設定だ。守の同期で親友である真田が公認と言うことは、薫は守の恋人だったという設定でもつくのだろうか? それを理由に薫を姉のように慕う古代なんか見たくないぞ。
 下甲板の運用員コンビの名前が今話でハッキリした。身体がでかくて坊主頭の方は明らかに裸の対象を意識しているね。名前もそうだし…裸の対象が乗っているヤマトなんて…。
 しかし、「UX−01」艦の副長の声、どっかで聞いた声だと思ったら…バート・トーマスじゃないですか。こんな銀河の果てでこの声に再会出来るなんて。
 それと、「UX−01」艦の魚雷攻撃で、ヤマトに少なくとも5人の戦死者をだした。合掌。
研究 ・特務艦「UX−01」
 今話のヤマトの敵はデスラー直接指揮下にある特務艦「UX−01」艦だ。この艦は「次元潜航艦」とされており、ワープ中に通過する「亜空間」と通常空間を自由に往来出来るだけでなく、「亜空間」である程度自由に活動が出来るという艦と見て良いだろう。
 「特務艦」というからには、通常は戦闘に加わらず艦隊支援などを専門にする艦ということだ。現実の海軍では工作艦、砕氷艦、標的艦、測量艦、輸送艦、給油艦などがあり、これらは基本的に直接の戦闘には加わらず、あくまでも艦隊支援が任務なのはその艦種名を見てからも一目瞭然だろう。
 だが今話で出てきた「UX−01」艦はそれらの特務艦とは趣を異にする。魚雷を装備するなど敵殲滅を目的としたれっきとした戦艦であるように描かれているのだ。ここからこの艦の役割などを推測してみたい。
 「UX−01」艦の今話の動きはこうだ。敵艦近傍の亜空間に潜み、亜空間から通常空間を見る事が出来る潜望鏡で敵を目視したり、ここから発するレーダーで敵を発見し、魚雷攻撃をすると言う繰り返しだ。この動きしかしていないということは、裏を返せば武装は魚雷しか無いのかも知れない。
 つまり、この特務艦任務はふたつだ。ひとつは今回のように「見えない場所から」の一方的な攻撃による「奇襲攻撃」を専門とする特殊部隊であることだ。だがこれだとデスラー直接指揮である理由が弱いような気がする。このような部隊が各司令部ごとにあってもいいような気がする。
 もう一つは、10話で描かれたような次元断層に落ち込んだ艦艇の捜索・救出任務だ。こうして行方不明になった艦が重要な艦でなければ見捨てられ、ガミラスにとって重要任務を帯びた艦であればこれを助けに行くということになっていれば…ならば機密性が高くてデスラー直接指揮下にあることも頷ける。助けられた重要任務艦の乗組員には、次元断層に落ち込んで遭難したことに箝口令が敷かれるのだ。
 だがこれでもまだデスラー直接指揮下に入る理由は薄いと思う。すると考えられるのは、技術的な問題、または価格が高すぎるなどの問題で建造数が少ないということだ。このようにガミラス全体でも数隻しかないという艦であれば、これをデスラーが直接指揮するという名目にしておくのは頷ける。多分「UX−01」艦は建造費が天文学的に高く、技術的にも建造困難であり、本作の最先端技術をいくと考えらればいいのだ。

第14話「魔女はささやく」
名台詞 「波動エンジン…ああ、お姉様が来たんだ。」
(百合亜…ユリーシャ憑依中)
名台詞度
★★★
 名場面欄を受けて、雪はユリーシャに憑依された百合亜を航法室に残して機関室へ走る。雪が航法室を出て行くと、ユリーシャは百合亜の髪を撫でながら、一人こう呟くのだ。
 この台詞は百合亜に何が起きているのかを明確にした台詞である。もちろん名場面欄シーンの中でも、百合亜が上司である雪を呼び捨てにするなどあり得ない光景が続き「百合亜に何かが起きている」事は十分に示唆されていたが、その正体がユリーシャであることは明確になったと言えるだろう。波動エンジンが存在しているだけでなく、それが正しく動いていると言うことはサーシャが間違いなく「波動コア」を地球に届けに来たという事。その事に安堵し、姉を思う台詞がこれだ。地球に波動コアを届けに来たサーシャを「姉」と呼ぶのは、ユリーシャ以外にあり得ない。
 ユリーシャは前話まで、ヤマト内部の「怪奇現象」として劇中に登場し、何らかの形でヤマトに乗っていたことは明確になっていた。だがそれは確定ではなく一視聴者として予測するだけだった。今話でも憑依された百合亜がここまでこれを示唆する台詞は吐いているが、まだ彼女は自分がユリーシャであると名乗ったわけではない。「岬さん」と言われたことに疑問を呈しただけだ。だがこの台詞で全てが明確になった、百合亜に何が起きているか、ユリーシャがどういう形で乗り込んでいるか…そういう意味で印象的な台詞だ。
 また百合亜を担当している役者さんが、ここで上手く百合亜とは違う「他人」を演じたのも見ていて面白い。憑依される前の「百合亜」と、このシーンの「ユリーシャ」を上手く演じ分け、それを決定的にしたという意味でもこの台詞はとても印象的だ。
名場面 自動航法室 名場面度
★★★
 リンケによってヤマト乗組員の意識は全員過去に飛ばされてしまい、過去の夢を見るという形で意識を失う。その中で雪が見た「過去」は、病院に入院中にユリーシャから何かを預かったという「過去」だ。雪の夢に出てきたリンケは「何故お前が…」と言い残して夢から去る、夢の中のユリーシャは「大丈夫よ」と言い残すが、それは夢ではなく現実の雪に向けた言葉と解釈している。
 そこで雪は百合亜にたたき起こされる。目覚めた雪が「岬さん」と雪が声を掛けるが、百合亜は「はてな?」と悩み込むが、続いて「この艦は動いている、波動エンジンがついている」と呟く。「何言ってるの?」と雪は問うが「目覚めたらここに立っていた」と百合亜が返す。古代の記憶シーンを挟んだ後、雪は自動航法室の設定を見るが航路情報がロックされていて、何処かへ勝手にワープしようとしていることを掴む。そこへ百合亜が「その先に彼らが待っている。この艦は拿捕される。この艦には波動エンジンがついている。ならば波動コアを抜けば停止する」と語りかける。これを聞いた雪は頷くと、「あなたはここでじっとしていて」と言い残し、航法室を出て行く。そして名台詞欄の台詞に繋がる。
 意味不明な方向に向かっていた物語が、始めて正常な方向に舵を切ったのはここであろう。物語は突然、古代や雪の意識の中にある「過去」を見せつけられるという展開を見せていて視聴者の多くが戸惑っていたはずだが、その「過去」にユリーシャが出てきた事で事態は一転する。雪は意識を取り戻し、これも言葉使いが正常でない百合亜とともに「現在何が起きようとしているか」「どう対処すれば助かるか」という事を掴むのである。結果雪は「波動エンジンを停止される」という解決法を見いだし、始めてこの異常な物語は解決への方向性を見いだすのだ。
 だがそんな物語上の転換点という意味と同時に、このシーンで大きいのはユリーシャの存在が明確になったことだ。このシーンまでは百合亜の言動がおかしいことに多くの人が気付き、そして続く名台詞でこの時の百合亜は百合亜でなくユリーシャだと気付くと上手くできている。ユリーシャは波動エンジンに現在の問題があることを突き止めていて、雪に正しい対処法を伝えるという重要な役割をする。こうしてこれまで伏線が張られ続けた「ユリーシャの存在」に明確な答えが出るのだ。だがユリーシャについてはまだ「存在」が明らかになっただけで、それ以外は何も解らない。
 またこのシーンでは雪の過去がハッキリしただけでなく、雪が事故に遭い記憶を失うという過程でユリーシャが関わっているという事実もハッキリした。だが雪がユリーシャから預かった物は何なのか、二人の病院での関係が何だったのかはまだこれから。いずれにしろユリーシャの存在またはその雪が預かった何ものかが、リンケの弱点であることは確かだ。
感想  今話は旧作で言うところの第19話ってとこなのかな? ドメルが仕掛けた厭戦作戦に相原がまんまと引っかかったあの話だ。それをガミラスの専門部隊がちゃんと出てきて、さらに本格的に全員を引っかけたって所だろう。そこにうまく「ユリーシャの謎」を織り込んで、ヤマトをピンチから救うというストーリーであったが、ちょっとユリーシャを謎についてはもう引き延ばしすぎのような気がしてきたが…ま、それはイスカンダル到着時に解けなきゃならないものだから、まだまだ明かすことは出来ないから仕方なかろう。
…とこう書いてみたものの、やはり今話は「わかりにくい」という感想をつけざるを得ないだろう。ガミラスの厭戦作戦のせいで、各々の意識が過去の一番の思い出に飛ばされてしまうという設定はよいと思うのだけど、古代が見た記憶と雪が見た記憶がリンクしながらその物語が展開するというのはとてもややこしい。
 またユリーシャが百合亜に憑依していたことも確かで、そのおかげで百合亜はリンケの精神攻撃から隔離されていたのも事実だろう。憑依したユリーシャにより百合亜の意識が停止させられていたから、とこれは見るべきだ。百合亜に憑依したユリーシャの役割は、名場面欄に書いた通りだ。
 リンケの精神体がヤマト内で活動していることと、波動エンジン動作については相関はないと考えている。問題が波動エンジン停止で解決するのは、あくまでもエンジンを止めればヤマトが動けなくなるというそれだけだろう。雪が波動エンジンを止めて波動コアを抜いただけで物語を解決させず、その後リンケの一言でまた雪の意識が過去に戻ってしまったのは、物語に一山作るという意味で面白かった。これによって古代が主役らしく物語を解決するというシーンは、物語を盛り上げるという意味で良かった。あれがなかったら今話は「訳がわからん」で終わっていたことだろう。
 どうでも良いけど、ヤマト艦内で古代が掛けた公衆電話、とても懐かしかったぞ。
研究 ・リンケの作戦
 今話ではリンケによる超常的な作戦が描かれる事となった。今話の作戦はどうにもわかりにくいので、ここで再整理してみたい。
 彼女が精神体をヤマト船内に送り、これによりヤマトの乗組員の意識を操作、こうして乗組員全員が意識を失った状態のヤマトを乗っ取ってガミラス基地にワープさせ、ヤマトを拿捕するというとんでもない作戦だ。こんな事をされたらヤマトは手も足も出せないままガミラスの手に落ちてしまう。
 リンケやその上官のセレステラは、我々がいう「幽体離脱」のように肉体と精神体が切り離せる体質または技術をもった人種なのだろう。しかもその切り離した精神体を、好きな場所に自在にワープさせて活動出来る技術も手にしているはずだ。さらに言えばこれに関連して、他人の意識をある程度操作することもできるのだと思われる。今回はヤマト乗組員に対し、一番大事にしている人を意識させてその夢を見させ意識を失わせ、さらにその夢に介入することでその当人の思考を操作して戦う気力を削ぐという行動までしている。つまり、ある程度他人の意識を操れるという恐ろしい人種であるのだ。
 これはそのような技術も体質も持ち合わせていない地球人にとって、最大の脅威であることは確かだ。だがヤマトはこれを食い止めた。それはヤマトにイスカンダル人の存在があったからに他ならない。
 恐らく、イスカンダル人もこのような精神体と肉体を切り離す術を持っているのだろう。ユリーシャが地球で病院での入院生活を経て死んだことは今回は示唆されており、ユリーシャは死んだのではなく精神体を切り離したというのが正解かも知れない。するとひとつの伏線が解けてくる。第2話のヤマト発進シーンで真田がヤマトにコンテナを積み込むシーンがあったが、これにはユリーシャの肉体が搭載されていると考えられる。地球人の医学には「肉体から精神体が離れる」という概念がないため、ユリーシャは脳死したと考えたのだろう。ユリーシャが「肉体をイスカンダルに戻せば復活出来る」とか言い残していれば、地球人がユリーシャの「亡骸」をイスカンダルへ輸送しようと考えるのは自然だ。そしてユリーシャは精神体だけがヤマトに乗り、自動航法室に引きこもっていて大事なときに百合亜なり誰かに憑依するのだ。
 そして自分と同じ能力を持つイスカンダル人が、リンケらによって脅威なのだ。つまり同じ能力を持つ者がいればリンケが行おうとした精神操作を元に戻す事ができる。ユリーシャが各人の夢に入り込んでリンケの存在を伝えれば、リンケのやっていることが無になるのは確かだろう。
 さて、上記の解釈だと問題はサーシャがあっけなく死んだことに対しての解釈が別途必要になる点だ。これは肉体が死んだら精神体も死んでしまうという解釈を取れば解決可能だ。ユリーシャの場合はあくまでも肉体が生きていて、ヤマトの何処かに積載されているという解釈がされるからこそ、精神体だけで生きていられると考える事が出来る。なんか面倒な人達だなー。

第15話「帰還限界点」
名台詞 「ヤマト、侮り難し。全砲門開け! ヤマトを仕留める!」
(ドメル)
名台詞度
★★★★
 名場面欄にもあるように、ドメルは単艦でやってくるヤマトを完璧に艦隊で包囲したが、ヤマトは前衛艦隊を突破して旗艦のドメラーズに突っ込んできた。そのヤマトを見てドメルが口にした言葉がこの台詞だ。
 「ヤマト侮り難し」は旧作でもあったが、こちらでは台詞というよりヤマトと始めて対峙したドメルが日記に書いたというのが正解である。だからドメルの名言でありながら、彼の戦闘中にこの台詞を吐いていない。このドメル語録の中でも印象的な一言を、戦闘中にヤマトの戦いぶりを見たドメルがリアルタイムで発してくれたという点でこの台詞はとても印象的である。やはりこう言う台詞はこういうシーンで言わないと、後になって日記に書かれても説得力ないもんなー。てーか、旧作のヤマトではこの台詞に至るヤマトの行動は、ヤマトが故障してただ逃げているだけだったし…つまりドメルの「ヤマト侮り難し」に説得力がなかった。
 このシーンはヤマトは逃げているわけではない。ガチで戦っていて、予想以上にドメルを手こずらせているという現実が眼前で展開されている状況だ。しかもヤマトは怯まずに敵旗艦に突っ込んでくる…こういうシーンを目前にするからこそ、ドメルが「侮り難し」と言って説得力が生まれるってもんだ。ヤマトをリメイクするなら何とかして欲しかった台詞を、キチンとそれ相応のシーンに作り替えてくれたという点で、この台詞は評価したい。
名場面 中性子星カレル163宙域の戦い 名場面度
★★★★
 オムシスの故障によりピーメラ星系での補給を決めたヤマトに、ドメル艦隊がいよいよ牙をむく。補給への道のりを急ぐヤマトに斥候隊が嫌がらせ攻撃を仕掛けワープを急がせるが、中性子星の影響によりワープアウト地点が限定されるためその予想地点で艦隊が待ち伏せ攻撃を仕掛けるという作戦だ。ヤマトはまんまとこの作戦にはまり、ワープアウトした「中性子星カレル163」付近にワープアウトすると、ここには旗艦ドメラーズ自らが率いる艦隊が真ん前にいた。ドメルはヤマトを発見するとすぐに別のワープアウト予想地点にいた艦隊に集結を命じる。ヤマトでは副長の真田が艦載機による迎撃を命じるが、ここで沖田が復活してこれを制し、艦載機を使わず波動防壁で防御しながらの強行突破を選択する。
 こうしてヤマトは最大戦速で敵艦隊に突っ込む。ヤマトが波動防壁を張るとこれが合図であるかのようにドメル艦隊も砲撃を開始する。だが波動防壁の被弾が多くすぐに波動防壁は破られてしまう。ヤマトは強行突破のために正面へ火力を集中、行く手を塞ぐ敵艦のいくつかを撃沈させる。だが敵艦が多すぎて、撃ち落としても次から次へと新手が加わるという状況だ。
 こんな困難な状況でもヤマトは大きな被害のないまま前衛艦隊を突破、名台詞欄の台詞を挟んでいよいよドメラーズも砲撃を開始。ヤマトは直撃弾を受けながらも沖田の「狙うは旗艦ただ一隻」の声と共にドメラーズに突っ込んで行く。ヤマトの主砲はドメラーズに直撃するが跳ね返されてしまい、ドメラーズの第二波攻撃は島の操縦で何とか交わすと、ヤマトはドメラーズに接触。火花を散らして接触しつつもヤマトは超至近距離でドメラーズに主砲を食らわす。ドメラーズの主砲塔は炎上し、ヤマトとドメラーズはすれ違う。「旗艦全開! このまま振り切る」と沖田が叫ぶとヤマトは先頭宙域から脱するため速度を上げるが、ここに他のヤマトワープアウト候補地点から急行した別艦体が立ち塞がる。これらの艦も一斉攻撃を開始、ヤマトは絶体絶命のピンチに陥る。「これでチェックメイトだ」ドメルが呟くと、ヤマトは被弾して猛火を発する。
 本作では久しぶりの本格的な艦隊VS単艦決戦だ。しかもドメルが「狸の化かし合い」のような戦い方ではなく、狼らしい真っ向勝負でヤマトに戦いを挑んできたのは旧作を含めて始めてだ(旧作の異次元断層での戦いはあくまでも「ドメル艦隊演習中にヤマトが通りかかった偶発的な戦い」である)。ドメルはヤマトに嫌がらせの威力偵察、そしてこれでヤマトが疲弊した頃を見計らった上ではあるが、ヤマトを特定数地点のみにしかワープ出来ない状況下に誘い込んで待ち伏せをするという正攻法で挑んできた。そしてその結果で生じた戦いを、本作では凄い迫力で描いている。
 特に戦闘シーン前半で描かれる視点、ヤマト第一艦橋の窓越しに見たシーンは凄い迫力でまさに「手に汗握る」というシーンとして完成している。そして最も大迫力のシーンは、ヤマトとドメラーズのすれ違いシーンだ。接触して火花を散らせながらすれ違う迫力も大きいが、ヤマトの超至近距離での主砲攻撃や、その後の互いの艦橋が至近ですれ違って行くシーンもとても印象的な描かれ方をしている。最初はそのすれ違いシーンだけを名場面欄に紹介しようかと思ったほどだ。
 そしてこの戦いはヤマト側に有利な状況はなにひとつなく、沖田の作戦も限られた状況で勝ちに行くのでなく意外な行動で一か八かに賭けると言ってもおかしくない。敵旗艦に狙いを定めての強行突破なら、旗艦に対する同士撃ちを恐れる敵艦は旗艦とのすれ違いの前後では砲撃出来ないはずだという計算もあっただろう。だがその後方にさらに新手の艦隊が現れるとは、沖田の予想外だったはずだ。こうしてヤマトを徹底的にピンチに落としたという点でも、この先頭は印象的だ。
 そしてこの戦いは、ヒス副総統による戦闘中止命令で終わる。ヤマトを撃破寸前まで追い込んでのこの命令に、ドメルはさぞかし悔しかったことだろう。つまり旧作のバラン星での戦いの終末の要素を、ここに持ってきたわけだ。
感想  今話は名場面欄が全てだ。旧作であるようでなかった、ドメルとヤマトのガチの戦いだ。名場面欄に書いたように旧作も含めてこれまでのドメルの戦い方は「狸の化かし合い」と言っても過言では無い、旧作でのヤマトとの最初の遭遇はヤマトに化かされていただけだったし、リレー衛星による厭戦作戦、バラン星での生物虐待による精神戦、波動砲を警戒しすぎてのドリルミサイル発射も「瞬間物資移送機」という化かし合いが必要だったし、本作でも狸のプロであるフラーケンや、リンケの精神攻撃など…そういう戦い方しかなかった。だからドメルが狼らしく、罠を張って追い詰めてという今回の戦いは旧作から通じて狼らしくなかったドメルを本当に狼にしたという点では強印象な一話であることは確かだ。
 それ以外の点を見て行くと、今話で明確にされるのはヤマトもガミラスも一枚岩ではないことが決定づけられる点だ。ガミラスでは親衛隊の横暴だけでなく、「二等臣民」による蜂起が描かれ国が不安定になりつつある点が描かれている。そこへデスラーの乗艦が爆破されるという事件が起きる、劇中ではヒスが「暗殺」と言い切っていたが実際の所はどうなんだろう? ドメルに戦闘中止・帰還命令が出たのはこの辺りと関係があるはずで、来週以降の展開が待ち遠しい。
 一方のヤマトでも、薫を中心とした「イズモ計画」の生き残りによる不穏な行動が本格的に描かれ出した。薫に気がある伊東がこの薫の動きに同調し、伊東の部下の星名もこの動きに乗っている。あいつはただ単に「百合亜のお友達」キャラかと思ったらそうでもないようだ。薫の次のターゲットは島だが、薫が島に何を言ったのかはまだ解らないつくりはちょっともどかしい。同時に薫が真田に近付く理由が、「イズモ計画」が完全に遂行不能になった場合の保険であることも見てとれる。だが彼らが雪の経歴を調べていた理由だけは、今話だけではちょっと解らない。
 ヤマトの動きと言えばもうひとつ驚いたのは、百合亜がユリーシャのままであることだ。疑問点があると髪をいじくりながら「はてな?」というキャラはユリーシャと見て良いだろう。ユリーシャと真田の会話は難しくて訳が分からなかったのがこれまた良い。これは恐らくであるが、ユリーシャは百合亜に憑依する前は雪に憑依していたのかも知れない。それが1〜3話辺りの雪の言動…雪がユリーシャという陽動…だということにするのだと思う。ユリーシャは必要なときだけ、憑依した人物の身体を借りて何かしらの行動をしているのだろう。必要が無ければ憑依した人物の体内で寝ているのだろう。
 問題はデスラーがどうなったかだ、デスラーの乗艦がエンジントラブルで派手に爆発したとは言え、ここでデスラーが死んでしまってはお話にならないのは確かだ。爆発シーンをじっくり見ると、デスラーが乗っていると思われる艦橋部分は爆発に巻き込まれていないようにもみえる。デスラーのことだ、死んだと見せかけて何処かに隠れて本件の真相を暴こうとしているのだろう。この辺りの真相解明は、来週…でも来週はピーメラ星だろうからなぁ、あの昆虫人間が出てくるのかな?
研究 ・惑星オルタリア
 今話冒頭では悲惨な光景が描かれている、原住民が反乱を起こしガミラスに反旗を翻したと見なされた惑星オルタリアの悲惨な末路だ。オルタリア自治政府の総統は反乱で首都を包囲され「逃げ出した」としたが、彼は市民の保護をガミラス親衛隊長官であるギムレーに懇願している。だがギムレーの答えは「この星を焼き尽くしましょう」であり、オルタリア自治政府総統をその場で射殺する。そしてギムレーは、無慈悲な無差別攻撃をこの惑星に対して行うのだ。
 そして本シーン以外でも、物語中盤のガミラスの重鎮が閣議をするシーンでは、ヤマトの包囲網突破をきっかけに「二等臣民」による蜂起が各所で起きている事が示唆されている。これをもとにこの惑星で何が起きたのか考えて見たい。
 劇中ではこの惑星オルタリアの原住民が何度か出てくる、彼らはアメリカ大陸などの先住民族のように顔にペイントするなどの風習があり、また服装などもこれに近いように見受けられる。つまり彼らの技術レベルは地球で言えば現在より数百年前程度である可能性が高い。原始的な農耕を中心とした民族が住む星に、ある日ガミラスが侵攻したと考えるべきだろう。もちろん宇宙戦争をする手段など持たない彼らは、ガミラスの言うがままに侵略されて「二等臣民」になったのだと思われる。
 ただし、この星のシーンでは近代的な都会のシーンも描かれている。これはこの星の原住民が住んでいるのでなく、ガミラス「一等臣民」や他のガミラス「二等臣民」による入植者が住んでいるエリアだと考えるべきだろう。もちろん、ギムレーの攻撃…いや、それ以前の反乱の段階で「一等臣民」には避難指示が出され、この殺戮による「一等臣民」の犠牲者はないと見るべきだ。
 ここから「二等臣民」になった星の政治についても見えてくる。占領された星は惑星単位で一国家とすることを強制され、その星の住民による「自治政府」があることは確かだ。その理由はギムレーと話をしていた星の責任者が、デスラー同様に「総統」という役職であることが解るからだ。つまり形だけの「独立した政府」を作る事で予算などは自治的に管理させ、ガミラス側からの持ち出しを減らすと共に住民への配慮としていると考えられる。
 彼らが反乱を起こしたのは、ガミラスによる支配がうまくいってなかったからだろう。つまりガミラスはこの惑星の民を満足させていないのは確かだ。重税か、あるいは資源か…ガミラスが占領した以上は、資源確保などの何らかの理由があるはずだ、その理由がわからない以上は彼らが何でガミラスに対し不満を持っているのか考える事は難しい。
 だがそのガミラスに不満を持っている彼らは、何らかの形で「惑星テロン」がガミラスに屈せずに戦い、そして今や単艦とは言えガミラスと互角に渡り合っている事を知ったのだろう。そうすれば彼ら民族が「俺たちにもできる」という思考に繋がるのは理解出来る。一人が立ち上がればそれはいつしか集団となり、止められない大反乱になったのだろう。彼らはスタジアムのような場所に集まり、反乱の旗を上げて決起集会のようなことをしていたようだ。
 これに対し自治政府の総統が何をしていたか…何もしていなかったと考えられる。ただしそれはギムレーが言うような「能なし」という意味ではなく、あくまでもその反乱者達に対する理解だ。自治政府総統もガミラスの支配に賛成ではなかったようで、だからこそかれは逃げ出したのではなく、惑星の解放や住民の保護を求めたのだと思われる。ギムレーが相手ではそんなことは通用しない、それだけのことだ。
 ではなんでその惑星オルタリアに、イスカンダルのスターシアは手をさしのべないのであろう。いや、正しくは手をさしのべようとしたのかも知れない。だが彼らが波動エンジンを作れるまでの技術力がないと判断したのだろう。スターシアはガミラスの魔の手から救う対象として、ある程度の技術力を有している人類と考えていたのかも知れない。すると11話に出てきたガトランティス帝国に手をさしのべなかった理由がわからない、彼らは後に白色彗星を作るような大悪人になると解っていたのかな?

第16話「未来への選択」
名台詞 「指揮権は、俺にある。」
(島)
名台詞度
★★★★
 シーガルでビーメラ4の調査から古代達が帰ってくる。彼らは艦内スタンバイのコスモゼロを通じた雪との交信で、艦で何が起きていたかは知っていたはずだ。これにより格納庫が開くと、艦長代行に祭り上げられた島は「誘導ビーコン、スタンバイ」と命令を出す。保安部が銃口を突き付けると、薫は「調査隊が帰投した」と言うが伊東が「彼らを受け入れる必要は無い」と返して「航海長、ハッチを閉めて下さい」と島に迫る。これに対する島の返答が、これだ。
 薫が保安部の連中を焚き付けたことで発生した反乱、その反乱において必要な「艦長代行者」に島を選定して薫が色々と焚き付けたところから、多くの視聴者が「島がそんなことをするはずがない」と読んでいただろう。特に旧作の「ヤマト」を知っていれば、島の役どころは「サブ主人公」であり、常にヤマトの目的やその艦長の命令に従順で、主人公古代と共にその上で大活躍するキャラであることは解説するまでもなく解っているはずだ。
 だから多くの視聴者は、島がどのような形で「反乱への反乱」を行って反乱を阻止するのか、という点に絞られる。島のキャラクター性を見ていれば、彼が反乱に手を貸しているのはその反乱を阻止して本来の目的「イスカンダルへ行く」ことを遂行するためである。それが最初に明確になるのはこの台詞で、島はこの一言に自分が持つ「使命」と「責任」を全て叩き込んでいる。
 もちろん、これで済むわけはない。彼が指揮権を持っているにしてもこれは薫、いや伊東の傀儡政権だからだ。この台詞で伊東の意のままに動かないことを選んだ島は、伊東に銃口を向けられて名場面欄シーンとなる。
 こうして島の「キャラクター性」が上手く守られ、彼が何故この反乱に手を貸したか明白になる印象的な短い台詞だ。本来島というキャラクターは、このような事情があっても反乱に手を貸すような人物ではないはずだが、ここで本作での星名というキャラクターが上手く活用され、彼がこんな茶番を演じた「理由」までも説得力を植え付けている。今回の反乱で最も印象に残る活躍をしたのは島だと言っていいだろう。
名場面 終局 名場面度
★★★
 名台詞を受け、「困ったな、言うこと聞いて下さいよ」と伊東が島に銃口を向ける。これに島は力強く「断る」と答えると、伊東は島のこめかみに銃口を突き付けて「残念です…本当に、残念だ」と呟いて引き金を引こうとするが、ここで犠牲者を出すことが本意でない薫が伊東に体当たり、よろけた伊東に「もう終わりにしてよ、こんな事」と叫ぶ。すると伊東は「これだから女は…嫌いなんだよ」と呟いて今度は薫に銃を向ける。島が伊東に銃を向けて威嚇する、そして銃声…次の瞬間、伊東の銃が床に転がり、銃を撃たれ手の押さえがら銃声の方向を見る伊東の姿があった。その銃撃をしたのは…同じ保安部の星名であった。そして体調が復活した沖田による叱責、伊東は星名に「俺を裏切ったのか?」と問うと「嫌だな、表返っただけですよ」と静かに語る。島が星名に笑顔を見せ、薫は予想外の展開に立ち上がれないままだ。
 薫が保安部の伊東を焚き付けて発生させた反乱は、薫の夢である「イズモ計画」の成就だけでは済まなくなっていた。それは「犠牲者を出す」という事実がないと遂行出来ない現実であり、必要であってもそれを望んでいなかった薫の「甘さ」が上手く演じられている。甘いのは薫だけでない、反乱を阻止する者に対し感情的になってしまい、押さえるべき人物を一人に絞らなかった伊東の「甘さ」も演じられている。彼は薫のことなど気にせずに島を殺害すべきだったはずだが、彼が本来嫌いな「女」という人間と手を組まざるを得ないという感情、その「女」が結局は足を引っ張るという感情に負けて、銃口を向ける相手を変えてしまうという「失態」を演じる。
 こうしてこの反乱の終局には、反乱者自体が一枚岩ではない点、意思や目的が統一されていない非常に危ういものであった点が明確に描かれ。ここで島が反旗を翻していなくてもこの反乱はいつか失敗するであろう事を視聴者に見せつけ、非常に説得力のある形で終局を迎えた点が印象的な一点。
 そしてもう一つが「星名の謎」だ。彼は劇中で佐渡が評していた通り、ここまで「伊東の腰巾着」を見事に演じていた。だが以前から彼の行動がおかしいことに、勘の良い視聴者は気付いていただろう。例えば薫が島を色気仕掛けで反乱に取り込んだ後、彼は薫や伊東の動きと無関係に島に声を掛けている。島の反乱取り込みは薫や伊東の仕事であり、星名が声を掛ける理由など無いはずなのにである。また今話でも佐渡を艦長室に連れていったり、艦長室では佐渡による沖田の診察を「伊東の了承済み」なんてあり得ない説明で反乱中の保安部員に説明したりと、反乱者側からしてみれば怪しい行動が多かった。この星名の謎が解決すると同時に、これまで百合亜の尻を追っかけていただけの情けない男に見えた星名が始めてカッコ良いシーンを演じ、彼が何のためにヤマトに乗り込んでいるのかという謎に迫ったという点で印象的だ。
感想  ビーメラ星と言えば、旧作では蜂のような社会性を持った人類と、彼らがガミラスに支配されるという悲しい物語と、アナライザーが雪に恋をするというとんでもない物語を思い出す人は多いだろう。アナライザーが雪と肉体関係を結びたい旨を語ったのは、このビーメラ星での事だった。
 だが本作ではこのビーメラ星を舞台に、旧作ではイスカンダル星で描かれた一部ヤマト乗組員による反乱が描かれた。その伏線はヤマトが地球を出発してからずっっと描き続けられており、薫が保安部の伊東や機関部の藪を取り込んで行くシーンは何度も描かれている。さらに薫や伊東は島を取り込んだり、雪の過去を調べたりといった怪しい行動をしていた事も記憶に新しいところだ。
 そして今話ではいよいよ薫と伊東が立ち上がる。もちろんその理由はこれまで散々伏線が張られ続けた「イズモ計画」の成就だ。この反乱行動は最初は上手く行った。だが名場面欄で語ったように、薫と伊東のチームワークが決して良かったとは言えず、さらに彼らの中で目的や条件の意思統一が図れていないという欠点を演じながら、最後は星名といういわば「逆スパイ」の一撃でとどめを刺されて失敗に終わる。どーでもいーが伊東よ、もうとっくに視聴者の誰も「雪=ユリーシャ」なんて思ってもいないぞ。
 同時進行は古代を中心に進むビーメラ星に眠るイスカンダルの謎についてだ。古代、百合亜、それに主計長の平田の3人はアナライザーと共にシーガルでビーメラに降り立ち、金属反応に従って進むうちにイスカンダルの宇宙船やかつてこの星にいた人類の遺跡を発見。ここでイスカンダルの波動コアを発見するという内容だ。ここでは百合亜がユリーシャになったり百合亜に戻ったりと見ている者を混乱(劇中の古代や平田も混乱していた)させたり、昆虫のような原生生物に襲われたりと波瀾万丈の道のりを辿りながら、ヤマトの航行に必要な何らかの情報を得ることになる。その内容については次回以降に持ち越しだが。
 同時に今話では、ガミラス側については一切触れられず、本作で始めて地球人だけで進む物語となった。見ていて違和感ありあり。
 今話からいよいよ、イスカンダルがなぜ地球を救おうとしているかという謎解きにも入り始めている。「あまねく生命の救済」って、それはガミラスに恭順した星は除外ってことかな? まずは地球よりオルタリアを守ってやれよ…と思うけど。スターシアのメッセージが途中で切れているのでその内容はまだこれからだ。しかもうまく伊東を誤解させるところで途切れているし。
 しかし、雪が古代に惚れるならちゃんとそれなりのシーンが欲しかったなぁ。旧作と一緒で「主人公に惚れるのは当然」と一方的に突き付けられているように感じた。これじゃ玲が納得いかないのも頷ける。玲が古代に惚れるのはちゃんと「理由付け」もされていて、当然に感じるのだが。
 あとアナライザーが巨大ロボになるのは笑った。これは実写版の影響だよね? その巨大ロボ化したアナライザーに「お姫様抱っこ」されて、楽しそうに笑っている百合亜(ユリーシャ憑依中)も見ていて楽しかったぞ。
研究 ・反乱
 いよいよ「イズモ計画派」が動き出す。「イズモ計画」とはヤマトのイスカンダル航海の前に立てられた「人類地球脱出計画」で、「ヤマト3」のような事をやろうとしていた計画だろう。薫はその「イズモ計画」の主要メンバーの一人であったことは劇中でも描かれており、国連軍本部に残る芹沢の指示でヤマトを乗っ取り「イズモ計画」を成就させることが目的のひとつだったようだ。
 彼らがなんでここまで「イズモ計画」に固執するのかは解らないが、彼ら「イズモ計画派」はヤマトのイスカンダル航海に懐疑的なのは確かだろう。今話ではイスカンダルの正確な位置すら解らないという新事実が提示され、このヤマトのイスカンダル航海自体もかなり危うい計画であることは明確となる。そのヤマトの危うさを知るからこそ「イズモ計画派」は燻り続け、ヤマトへの乗り込みにも成功しているのだろう。そしてもし、ヤマトを乗っ取り「イズモ計画」を成就させ、人類を救うことが出来たなら彼らは救世主として崇められることになる。つまり彼らが「イズモ計画」にこだわるのは、そんな芹沢の政治的野心からだと考えられる。
 ではこの反乱がどのような形で行われたのだろう。薫は反乱のために、まず保安部を味方に引き入れる必要があると感じたはずだ。反乱を起こしても保安部が健在なら、彼らに捕まってしまうのは目に見えていたからだ。また保安部が味方なら、艦内を制圧する際に力になるのは確かだ。だがこの保安部の部長、伊東にも何らかの考えがあったようで「イズモ計画派」の薫に彼の方から近付いてくるという幸運に恵まれた。
 さらに薫は「カウンセラー」を兼任しているという立場を利用して、特に気の弱い乗組員などを味方に取り込むことをしていたようである。劇中に描かれたのは機関部の藪についてだけだが、他にもこうして薫に取り込まれた乗組員がいることだろう。
 後は艦を乗っ取った後の指揮権者を誰にするか。各部責任者で最も扱いやすい人物として、薫が選んだのが航海長の島だった。古代は艦長の命令に絶対服従だし、真田は説得はしてみるものの失敗に終わることは目に見えていたのだろう。そこで薫は色仕掛けまで使って島を陣営に引き込む。結果的にはこれが失敗の源であるのだが。
 やり方はこうだ。反乱時期は人類移住候補惑星滞在時か、その近傍にヤマトがあるとき。そして艦長の病状が悪化していて、さらに古代が艦外活動をしていて不在の時だ。まず真田を説得し、失敗したら保安部によって真田を拘束。同時に保安部が艦内を制圧して航海長の島が最上位指揮艦であることを宣言すること。続いて艦橋のメインスタッフを拘束するという手順でヤマトを乗っ取ることであった。
 薫はこれらの行動に付いて「犠牲者を出さないように」という条件で行っていた。だがここで保安部の伊東が暴走する。彼は反乱を成功させるために流血も厭わないと考えていたのだ。そして隠れていた玲の行動は、艦橋メインスタッフを拘束から解き、戦術長である古代との連絡を復活させる役割があった。古代の帰還は島に「表返る」きっかけを与える。
 同時に「逆スパイ」の保安部星名が動く。まずは一時的にも艦長に復活してもらうため、彼は佐渡に沖田を診察させる。そして艦橋での流血を避けるために急いで艦長室から艦橋に降りたというところだろう。
 星名の行動も興味深い。彼は薫や伊東の反乱の動きをいち早く察知し、彼らが島を指揮者に傀儡政権を作ろうと知ると早速薫に取り込まれた島に相談を持ちかけている。彼はそこで自分の正体(土方の直属で「イズモ計画派」の監視とそれによる反乱阻止の為に乗り込んでいること)を語り、島に薫の話に乗ったふりをするよう頼んだのだろう。ここで彼が艦長にこれを報告していたかどうかは解らない。ただし彼の職位の低さを考えれば艦長に直接相談など困難であり、手の届く範囲で島の協力を得たというところだろう。島が艦長に相談という手はあるが、事態が事態なだけにそれを躊躇ったことはあり得る。
 また艦長はともかく、古代不在時に事を起こすというのが彼らの用意周到さを伺わせる。艦長の片腕であり反乱などに絶対に手を貸さないであろう古代は、反乱者から見れば目の上のたんこぶだ。伊東が古代を警戒してシーガルを帰還させようとしなかったのは理解出来る。ただ伊東の失敗のひとつに「古代を警戒しすぎた」というのもあるだろう。彼が「ひとまず穏便に済ます」ほど器用であれば、反乱は成功したかも知れないが。
 ついでに言うと、伊東は反乱が軌道に乗ったら艦長にはそのまま病死してもらい、副長の真田はイスカンダル航海強硬派によって殺害された…という筋書きで二人を殺害するつもりだったらしい。薫は艦長と真田の処置については、何も考えていなかったようだ。「犠牲者を出したくない」という考えがある辺り、彼女が「甘い気持ち」で反乱を起こしたことは容易に想像が付く。この辺りが反乱失敗の最大要因だったと考えられ、例え星名がいなくてもこの反乱はさらなる反乱を呼び、ヤマトは人類を救うことが出来ずに地球にも帰れなかっただろう。本作での人類を救った最大功労者は、星名 透という若い乗組員になりそうだ。

第17話「記憶の森から」
名台詞 「あなたからその事実を知らされても、兄は行ったでしょう。どんな状況でも、どんな理不尽な命令だったとしても、やると決めたらやり抜いちまう。兄は、そういう奴だから。」
(古代)
名台詞度
★★★
 今話で古代の兄である守と真田が親友同士であったことが真田の口から語られる。その上で真田は、守に第1話冒頭の冥王星宙域会戦「メ号作戦」が陽動であるという事実を告げられなかった事を悔やんでいた。そして真田が「陽動であることは極秘だった。親友に事実を告げる勇気もなく、ただ命令に忠実に…俺はそういう男だ」と自分を評すると、古代がこう返したのだ。
 これまでも劇中で散々描かれていたが、本作では古代から見た真田というのは考える事が堅苦しく人間とは思えない上官の一人でしかなかったはずだ。今話では「亜空間ゲート」を使用するために遺棄された衛星に乗り込むという任務で、古代は真田と行動を共にしたことで真田のこれまで知らなかった面を知る。それが真田の過去であり、真田にもかつて笑いあう友がいて、その友から趣味的に興味のない詩集を勧められていた事実。その真田の「友」が自分の兄であったという驚くべき真実だ。
 そして真田が持つ後悔、それは自分が知っていた極秘情報を友に語れば、友を死なせずに済んだかも知れないという思いであり、彼は自分が守を死なせてしまったと感じていたのだ。だが弟はそれと違う考えを持っていた。真田の口から何を行っても兄の運命は変わらなかったという、彼が「弟」として守を見て知っていた真実だ。兄は自分の使命に殉じたのであり、軍に騙された訳でもなんでもないというのが、古代が知っている兄の姿である。この「弟」としての思いが上手く描かれている台詞だと感じた。
 この台詞を聞いた真田は、「そうだな、そういう奴だ。古代(守)、弟は立派にお前の後を継いでいるよ」と呟く。これは第13話で真田が薫と共に、古代の言動を見ては守を思い出すという言動が劇中で描かれていたが、それが伏線としてうまく活用されたと見ていいところだろう。古代の言動は兄によく似ているというこの伏線が、古代のこの台詞に対する真田の呟きとしてうまく活きたと思う。
名場面 亜空間ゲートシステム再起動 名場面度
★★
 亜空間ゲートを再起動する際、数秒間であるが制御室は中性子線に包まれるという。真田は古代と雪を中性子線シールドが施された室外に残してドアをロックし、一人で制御室に入って再起動のための操作を行う。名台詞欄シーンを経て、雪はドアを開けて真田を救おうと悪戦苦闘し、古代が「兄についてもっと教えてくれ」と叫ぶ中、真田は守が愛した詩の一編を読み上げながら携帯端末の起動ボタンを押す。システム再起動まで10秒間のカウントダウン。やがてシステムが再起動し、雪が「制御室内に中性子発生、中にいたら生きていられない」と呟く。直後に雪は制御室の扉を開くことに成功するが、二人が制御室に飛び込むと中には真田の姿は見あたらなかった。古代は「俺はもっと聞きたかったんだ、俺が知らない兄さんの話を…あなた自身の話を…」と呟きながら腰を落とすが、その時に制御室内のプールから人影が現れる。「中性子は水を通りにくいんだ」と笑顔で語る真田だ。「まったく、あなたって人は…」と呟きながら、古代は真田に手をさしのべる。真田がプールから上がると、二人は笑顔で見つめ合う。
 いやー、真田らしいシーンだ。彼は制御室内に入る前から「亜空間ゲート再起動時に中性子線が発生する」と判断していたのだろう。だからこそ制御室に一人で入るが、その時にはこのプールの存在に気付いていたに違いない。プールに溜まっている液体が「水」とわかると、「中性子線が発生したらここに飛び込めば大丈夫」という考えのもと、念のため古代と雪を扉の外に置き去りにして制御室での作業を続けたに違いない。つまり彼は思い付きなどではなく万全の体制だったわけで、こういう形で本作における真田の「こんなこともあろうかと」が発動されたという点でとても印象的なのがひとつ。
 そしてこの真田のピンチと思われるシーンで古代が「もっと兄のことを聞かせてくれ」と懇願しつつも、真田が無事だったとわかった瞬間に変に盛り上げようとしなかった点はとてもリアルでよい。ここでは大袈裟に喜んだり抱き合っちゃったりしそうな所であるが、男同士の友情シーンなのだからそうなったら「気持ち悪い」と白けてしまうところだっただろう。古代が静かに喜ぶだけでなく、「あなたって人は…」と呆れたようにも聞こえる台詞を吐きながら手を出すという形はとてもリアルだ。だからこそこのシーンは盛り上がり印象深い。
 そして真田と守の「過去」を通じて、古代と真田の信頼関係に至るという本話の目的を上手く描いたと思う。このシーンは今話を象徴するシーンのはずで、とても印象的だったと私は思う。
感想  今回は間違いなく、旧作18話を元にした話だろう。真田を主役に据えて彼に過去を語らせ、その中で真田と守の関係を明らかにして、古代にとって真田が兄の代わりへと変化する重要な話である。旧作の「宇宙要塞13号」はビーメラ星で情報を得た「亜空間ゲート」の監視衛星へと姿を変え、守の過去については真田との関係だけでなく本作のオリジナルキャラである薫との関係にも踏み込んだ。つまり薫は守の恋人だったという設定がハッキリし、第13話の感想欄で私が書いたことが図らずとも現実になってしまったかたちだ。
 そしてヤマト側では、同時進行で「ユリーシャの謎」についても話が進む。前話で伊東が「雪がユリーシャ」と勘違いを弁論ぶった事をきっかけに、艦内の雪を巡る空気が不穏になったため話が動いたという形だ。これも内容的には第14話の研究欄で私が想像した通りである。ユリーシャは「亡骸」という形でヤマトに載っており、ユリーシャの精神が自動航法室にあるという設定だ。だがヤマト側はユリーシャが精神体の形で生きていると誰も気付いてなくて、百合亜に憑依していることにすら誰も気付いていない。そしてユリーシャの亡骸から「記憶」を引っ張り出してイスカンダルへの道のりを示すのが「自動航法室」の役割であるという、ヤマトのメカ側の設定もひとつ明らかになった。確かに人の身体から「記憶」を引っ張り出すのは、人道的にどうかとは思う。
 また前話では全く触れることの無かったガミラス側の物語も今回は進んでいる。ドメルは旧作21話と同様に軍事裁判にかけられ、本作ではデスラー暗殺と妻の反政府活動を理由に、旧作同様に弁護人もつけられないまま一方的に死刑を言い渡される。しかも裁判長は副総統のヒス、告発人は親衛隊長官のギムレー。つまり旧作21話よりさらに酷く、ガミラス帝国では政治と司法が分権されていないというとんでもない国家のようだ。この裁判の酷さは旧作21話研究欄とほぼ同様なので、そちらも参考して頂きたい。いずれにしろドメルの罪状は全て濡れ衣と考えられ、デスラーがどうなったかも含めて次話(1時間拡大版)でハッキリすることだろう。
 ま、デスラーが「暗殺された」と言い張っているのはヒスだけ、それに14話から不穏な言動を繰り返すゼーリック、それにギムレーと、デスラー暗殺の首謀者はこの辺りの誰かだろう。ここは推理小説的な展開だと、これまでとは違うヤマトが見られて面白いかも知れない。
 来週は夏休み1時間拡大スペシャル、珍しく入った予告編では七色星団の戦いが示唆されている。つまりデスラーが復活し、ドメルがブタ箱から出てくるのは既定路線と見ていいだろう。またあの間抜けなドリルミサイルが出てくるのか? ドメルは相変わらず狸の化かし合いみたいな戦いをしたり、波動砲を必要以上に警戒して自滅してしまうのか? 乞うご期待ってところだ。
研究 ・乗組員の過去
 今話ではこれまで断片的に語られていた主要キャラの「過去」が明かされる。今回は今話の趣旨に従い、これを再整理してみたい。
 今回、過去が明らかになる人物の中で最も大きく扱われているのは真田だ。旧作にあった「月の遊園地の事故」「それにより両手両足が義足」「この事故で科学に目覚めた」という設定は無かったことにされ、もっと最近、劇中における数年前の過去が明らかになっている。2192年時点では恐らく軍のものと思われる研究機関に属していて、「研究室」と呼ばれる部屋で何らかの研究をしていた事は確かだ。その時の助手が薫、守は真田の親友でこの研究室に度々顔を出しては軍の秘密情報を漏らしていたようだ。
 薫はどの時点から真田と師弟関係にあるのかはわからないが、恐らく「真田先輩」と呼んでいることから士官学校時代から先輩・後輩の関係にあると推測される。守と真田が同期という設定は壊さないだろうから、この二人に何らかの形で「後輩」の薫が絡んでいると見るべきだろう。個人的には守と真田の共通の友人の妹ではないかと考えている。薫が守に惚れたため二人に色んな形で接近したというストーリーは、これまでの劇中の薫の言動を見ていれば誰にでも容易に想像が付くだろう。そして薫と守が恋人同士であったことも明確になるが、もし旧作のように守がスターシアに救助されイスカンダルにいる設定となったら…雪に対する玲以上にものすごい嫉妬が見られそうだ(笑)。薫は情報分野の士官となり、「イズモ計画」主要メンバーを経てヤマト乗り込みになったのは言うまでも無いだろう。
 もう一人は雪だ。雪の記憶が1年前で途切れていることは以前から語られ続け、第14話はその原因が「テロの可能性も否定出来ない交通事故」であったことが示唆されている。同時に第14話ではその事故によって雪とユリーシャが同じ病院に入院していたことも示唆されており、少なくとも雪はユリーシャを知っていると考えられていた。
 だが今話では雪とユリーシャは「同じ事故」に遭ったのは明確になったものの、二人が少なくとも「事故後」に会っていないであろうことは確定した。もし事故で記憶を失った雪がユリーシャと会っていれば、前話で伊東に問い詰められた際にそれを理由に言い逃れることが出来たはずだ。だが第14話などを見ていると、雪はユリーシャからメッセージカードを受け取っているのは間違いなく、雪とユリーシャは過去に接点があったのは確かだろう。
 また「事故」は自動車の単独事故として描かれている。つまりその通りであれば、二人が同じ事故に遭うならば同じ自動車に乗っていたという事だ。これで確定だろう、雪とユリーシャは「事故」前に接点があったことだ。二人が事故前に何らかの関係があったからこそ、二人が同じ事故に遭ったのだし、メッセージカードがあるということだ。
 これも第14話に情報がある。雪が元々国連軍の士官(または候補生)や職員、または国連関係者であった可能性だ。国連が地球を救う異星人の到着に応じたが、その異星人は帰る術がない。国連に必要なことはこのユリーシャに同世代の世話役を付ける事で、これが雪だったというものだ。
 もうひとつ、雪と南部の関係にも迫っておきたい。前話や今話では「雪がユリーシャ」という話題が出ると決まって南部がこれを否定していた。これは惚れた女がそのように言われるのが耐えられないだけの問題ではないと思う。南部が以前から雪を知っていた可能性があるということだ。だが「事故前」の雪については「何度か見かけた」程度で、面識はなかったと考えれば…南部の否定にも道理が通る。こんな推理をしてみたがいかがであろう?

第18話「昏き光を越えて」
名台詞 「ひとつ忠告。偵察は戻って来るのが任務。必ず戻って来ること、いいわね。」
(玲)
名台詞度
★★★
 前話を受け、本話冒頭では「亜空間ゲート」の向こう側の偵察という任務から物語が始まる。亜空間ゲートの向こう側にあるバラン星付近の敵勢や、そこにある大マゼラン星雲へ抜ける亜空間ゲートが生きているかどうかの確認である。だがこの任務は敵に襲われる可能性があり人選に苦慮したが、戦闘機隊の篠原が立候補した。
 そして出発前に独りで緊張する篠原に、玲が「らしくないわね」として立候補の理由を尋ねる。篠原がかつて見た偵察機の姿に憧れ、元々偵察機乗りが志望であったことを語ると、玲はいつもの冷静な表情を崩さずに篠原にこう告げる。
 篠原による偵察は今話では前半部分のメインストーリーとなっている。前述したように危険なだけではなく、物語が進むと「タイムリミット」という困難があることがわかる。航海を急ぐヤマトは亜空間ゲートが使用できなかった場合に備え、3時間で篠原の偵察機が戻らぬ場合は「亜空間ゲート使用不可」と断定して出発するという冷酷な作戦だ。さらに小さな戦闘機で亜空間を飛び、何万光年も離れたバラン星まで行って帰ってくるという「距離」。さらにテレビの前の視聴者はそのバランに、ゼーリックが観艦式を行うために艦隊を集結中という情報まで知っている。とにかくあの手この手でこの偵察任務を盛り上げてある。
 その中で一貫したテーマは「偵察とは何か?」であり、その答えとして先に「それは必ず帰ってくること」という絶対条件があることを示唆するのがこの台詞だ。篠原の言うように偵察機がどんなにカッコ良くても、会敵したら戦うのでなくその情報を持ち帰るのが仕事であり、戻ってこなければ意味が無いという現実だ。この玲の忠告は篠原だけでなく、視聴者にも向けられていると言うところだろう。
 さらに今話が進むと、これまでに存在が明らかになっていた「ガミラスとの戦いで死んだ玲の兄」はどうやら偵察部隊にいたようだ。そしてその任務で帰らぬ人となったのが玲の兄だろう。この「偵察は必ず帰ってくること」とテーマにはそのよう設定を明らかにする意味もあったことがわかってくる。
 しかし、本作では非常の存在感が強く、理由がなくても画面に出てくるあきらちゃんがやっと本欄に登場した。こいつ、基本的に無口だからなぁ。今話みたいにベラベラ喋る玲というのはなんか違和感ありあり。
名場面 デスラー復活 名場面度
★★★
 前話でガミラス星からバラン星に出発した国家元帥のゼーリックは、バラン星に艦隊を集結させて大々的な観艦式を行う。観艦式ではデスラーが死去したことと、これを隠す中央政府を批判し反旗を翻す演説を行う。その途中で亜空間ゲートからヤマトが現れ、観艦式は実践の場へと姿を変える。味方艦隊が密集し同士撃ちの可能性が高い中で無理矢理総攻撃を掛け、「数こそが力」「歴史には犠牲が付き物」と演説ぶって、味方側に損失を出しつつもヤマトをバラン星に沈めた(かに見えた)。
 「ヤマトバランに死す、この程度の艦1隻沈められなかったとは、狼の名も墜ちたものであるな。ドメルよ」と独りで高笑いするゼーリックに、「ご機嫌のようだね、ゼーリック君」という無線通信の声が届く。「貴様は!?」と驚くゼーリックの前にあるモニターは、紛れもないデスラーの姿を映し出していた。「先ほどは高説を賜り、感銘の至り」と言葉を続けるデスラーに「そんなバカな! 貴様の艦は確かに…」と叫ぶゼーリック。「君も頭の悪い男だね」とデスラーが吐き捨てれば、ゼーリックは自分が殺したのは影武者だと気付く。デスラーはゼーリックの暗殺計画はセレステラが掴んでいたことを明かし、「君の罪状は明白なわけだが、何か言い残すことはあるかね?」と問う。ゼーリックは錯乱してモニターを拳銃で撃ち抜き「違う、断じて違う…」と呟くと、艦隊に向かって自分が正しい事を演説ぶるが、その途中で銃声。その背後では銃をぶっ放したゲールが息を切らせていた。ゼーリックはそのまま倒れて絶命するが、ゲールはその亡骸を見て「逆賊め」と呟く。
 15話から続いていたガミラス側の「デスラー暗殺事件」はこのような顛末を迎えた。暗殺計画そのものは既にセレステラによって内偵済みで、これに従ってヒスとギムレーがゼーリックを祭り上げたというのが実情だろう。ドメルをデスラー暗殺の罪で告発したのもゼーリックであるが、ヒスとギムレーはその段階ではセレステラからデスラー暗殺とその対処について知らされていなかったと解釈すべきだ。
 そしてこのシーンで印象的なのは、旧作ではその最期以外に全く良いところがなかったゲールの活躍である。ゲールは上役であり自分を推してくれるゼーリックが何を考えているかも知らされておらず、他の将校と同時にデスラーの死を知らされた事になる。これまで自分を推すゼーリックに辛酸をなめさせ続けられたゲールがこれで納得がいくはずがないであろう。彼はゼーリックの野望が失敗に終わったと知るやいなや、何とゼーリックを裏切りデスラーへの忠誠を取ったのである。そのゲールが旧作を含めて始めてガミラス将校らしく振る舞ったという意味でとても印象に残った。
 またこのシーンでのデスラーの台詞が、本当に皮肉な言葉が選ばれていて面白い。それも今話で最も印象的なシーンとして盛り上げていたと思う。
感想  …ったく、1時間拡大スペシャルなんていうから期待していたら、来週が特番で中止になるから「数合わせ」で二話分まとめて放映しただけかよ…考察書くのが忙しくなるだけじゃないか!
 今話はヤマトとガミラスの物語が交互に同時進行する形だ。ガミラス側はデスラー暗殺事件に「オチ」をつけるべき話だから期待していたし、ヤマトは「バラン星突破」という旧作でも時間と迫力をもって描かれた戦いを新たな設定で描き直した。ヤマト側の物語は前半の「バラン星偵察」の物語と、後半の「バラン星突破」の物語でふたつに別れている。
 名場面欄に記した通り、デスラー暗殺についてはゼーリックが首謀者であり、セレステラからデスラーに話が漏れていたという設定がわかる。15話で死んだのは影武者ということにされ、デスラーは見事復活だ。このゼーリックの反乱における彼の演説も素晴らしいが、ギレン・ザビのようになれなかったのは彼に隙があるという描き方をちゃんとしていたからこそだろう。だがその最期はギレン・ザビに似ていたかも知れない。妹が自分に銃を向けるとは思っていなかったギレン同様に、ゼーリックは「腰巾着」とまで評された腰抜けの部下に殺害されるのだから。今話のガミラス側の物語はゼーリックが主役で、その悲劇が主筋だったと見て良いだろう。
 ヤマトでは前半は名台詞欄で語った通り。そして後半では満を持して亜空間ゲートに突入、バラン星を突破する作戦に討って出る。観艦式で集結している艦隊のど真ん中を突っ切るという作戦は、15話で見たドメル艦隊との戦いと同じ戦法だ。だがヤマトはバランに一度沈んで相手を油断させ、その隙を突いて波動砲を発射してバラン星を撃破するという戦いとして描かれた。
 同時に旧作のバラン星の戦いにおける「不自然」を解消したと言っていいだろう。バラン星はヤマトによって撃破されたが、その理由として「亜空間ゲートを使用して敵が追撃してこない」という作戦のひとつであったことは言うまでも無い。またバラン星に亜空間ゲートのエネルギー制御をしていると言う設定は、旧作で3000隻いたとされるドメル艦隊が突如消えた不自然を解消している。ヤマトのバラン星突破時に艦隊の恐らく半分はバラン星の爆発に巻き込まれて轟沈し、残りは亜空間ゲートが使用出来なくなったことで取り残されたと見るべきだろう。またゼーリックの反乱により「バラン星で観艦式」という設定が加えられ、ガミラス星近傍の艦隊も含めてガミラスの艦隊の殆どがバラン星付近にいたという設定が取られる。こうすれば次の「七色星団の戦い」で他の艦隊が出てこないことに説明が付く。
 さー、いよいよ次は「七色星団の戦い」だ。旧作ではここにこの戦いの準備期間として1話入れた。本作でも時間的に見ればそうなるだろう。その答えは今回は僅か数分後に出てしまうが…。
研究 ・デスラー暗殺事件
 16話ではヤマトの側の反乱が描かれていたが、その手前の15話以降はガミラス側でも反乱が起きていることが描かれ続けた。極秘裏に前戦の視察に出発したデスラーの乗艦が、エンジンに何らかの細工がされて爆破されるというシーンが描かれた。これでデスラーの死去が示唆され、これに動揺するガミラスの様子が描かれ続けた。
 これにより手持ちの艦隊全てを動員してヤマトを殲滅寸前に追い込んだドメルは、即座に戦闘を中止して帰投するように命じられたため、ヤマトが助かるという皮肉な状況も生まれている。そしてそのドメルが帰投すると、「デスラーの極秘視察」を知る人物としてデスラー暗殺の首謀者として告発され、死刑判決を受けるシーンも描かれた。
 この暗殺の首謀者は今話でガミラス国家元帥であるゼーリックであることが明確になる。前話で「ドメル死刑判決」の報せに浮かれるなど不穏なシーンが描かれていたが、ではゼーリックがデスラーを暗殺してどのようなメリットがあるか考えて見たい。
 ガミラスの「国家元帥」と言う立場であるが、一般的に「元帥」といえば軍組織において大将よりさらに上級の役職を指す。旧日本軍の場合は「元帥府」に列せられる軍の最高顧問集団であり、陸軍大将と海軍大将の事を指している。つまり「元帥」という称号がある以上、ゼーリックはガミラス軍の最高責任者の一人であり、軍の全てを牛耳っていると言って良いだろう。
 つまりゼーリックの上役はデスラーだけ、デスラーが亡き者となれば強大な軍事力を背景にガミラスを乗っ取ることが可能な立場である。彼はデスラーを殺害することでその通りのことをしようとしたのだろう。
 ゼーリックとしては平時にこの事件を起こしても国の乗っ取りは不可能と見ていたのだろう。そこへヤマトが現れてこの討伐に国のエネルギーが集中するという、これまでにない状況を迎えたところで事を起こしたと言うことだろう。ヤマトが現れたことで反政府活動が活発化し、植民星の一部が蜂起したこともあり親衛隊側も忙しくなっており、ここで軍を集結すれば国の乗っ取りが可能と見たのだろう。
 ゼーリックは現在のガミラスの体勢に不満を持っていたのだと考えられる。親衛隊の傍若無人ぶりを快く思っていないのはゼーリックも同じことだろう。ただ多くの官僚は植民星を親衛隊による恐怖政治で制圧することはやむを得ないと考えていたが、ゼーリックは「純血こそ正義」として植民星人を切り捨ててガミラスだけの国家を作ることを欲していたようだ。彼の最終目的地はそこなのだろう。
 そのゼーリックの暗殺計画の顛末は劇中で描かれたとおりだ。ただまだ謎はある、ドメル夫人の反政府活動の真相である。これはゼーリックの暗殺計画とは別の展開で起きており、ドメル夫人を拘束したのは親衛隊であることは明白だ。この辺りに付いては物語の展開を待ちたい。

第19話「彼らは来た」
名台詞 「何故、尋ねないのかな? どうして波動エンジンではなく、コスモリバースを直接持ってきてはくれなかったのだ?と。」
(百合亜…ユリーシャ憑依中)
名台詞度
★★★★
…お前がそれを聞くか?
(詳細は名場面欄参照)
名場面 沖田とユリーシャ 名場面度
★★★★
 艦内点検中の沖田が自動航法室へ行くと、ユリーシャが憑依したままの百合亜がいた。ユリーシャは「その奥にあるもの(波動砲)は、戦うためのもの」と沖田に突き付ける。続いて場面は艦長室に変わり、「波動エネルギーは武器ではない、武器にしてはいけない。あれは星を渡るためのもの、一年前、あなたたちに渡した設計図はイスカンダルへ来るためのもの。」とユリーシャは訴える。沖田は「16万8千光年を旅する我々には、ガミラスから身を守る武器が必要だった」と静かに波動砲を装備した理由を語る。これに対しユリーシャは茶を飲んだ後、「そして、作ってしまった…真田が。それではガミラスと同じ、波動砲は本当に身を守るためだけのもの?」と問う。沖田は「信じて欲しい、我々を」を訴えると、ユリーシャはティーカップを置いて沖田に「(名台詞欄の台詞)」と問う。
 そう、イスカンダルが地球に手をさしのべるなら「エンジンの設計図をやるから、それを使ってコスモクリーナーを取りに来い」ではなく、「コスモクリーナーを差し上げましょう」としてくれれば、イスカンダルにとっては地球からの艦がいつ来るかと首を長くして待つ必要は無いし、地球にとってもわざわざ十何万光年まで出向く必要がなくなるので良いことずくめのはず。だが、イスカンダルはそれでも「取りに来い」と言う。伊東ではないがこれでは上から目線でガミラスと同じ穴の狢と言われても仕方が無い。
 もちろん旧作では、スターシアが「地球人の勇気と力を試す」という趣旨の事を後付けで言っている。
 その地球人から見れば最大の謎が、なんとイスカンダル人のユリーシャの口から出てくるのだ。しかも「なぜそう問わないのか?」と。これはとても興味深い点であったのが一点。
 そしてもうひとつ、ユリーシャが「波動砲」という波動エンジンシステムを大量破壊兵器に転用した地球人を見ても、地球人に絶対的な不信を抱かないのは誰もこれを聞かないからであろう。伊東のような例外はいるが、基本的にヤマトの乗組員は「イスカンダルからの救済」が不確実であっても、それを信じて一心に進む姿を見ているのだ。恐らく、地球人がこのような疑問をユリーシャにぶつけ、「コスモリバースを直接くれればいいのに」なんて不満を漏らせば、その時点でイスカンダルからのオファーは無かった事になるのかも知れない。
 沖田はこの疑問に「そうか、その手があったか」ではなく、「我々は試されているのかも知れない、あなたに…あなた達に」と答える。これに対しユリーシャは「私はただ観察するだけ、判断するのはスターシア姉様の務め」と答える。そう、沖田の言う通り「試されている」のであり、まだコスモリバースをくれると決まったわけではないのだ。沖田はこの真実に接し「では、その目で全てを見届けて頂きたい。ヤマトが…いや、人類が救うに足りうる存在なのかどうかを」と力強く答える。これもカッコイイね。
感想  ドリルミサイル キターーーーーーーーーー!!
 本作でもガミラスで最も印象的かつ間抜けな武器が出てくるのか。ああ、もうドメルの敗北が見えるようだ。
 今回は旧作の21話ですね。七色星団でのヤマトVSドメル艦隊の決戦を前にした緊張、そして互いの心境を上手く描いているのも共通点だ。ただし、旧作との違いは「七色星団」という戦場はドメルの挑戦状で決まったのでなく、ヤマトがイスカンダルへ急ぐため避けて通れない難所という設定にされた。この方が自然だ、なぜなら普通、いくら挑戦状を受けたからと言って何も知らない所へノコノコ出て行く軍人はいないと思うからだ。
 名場面欄に記したように、今回は沖田とユリーシャの腹の探り合いを通じてイスカンダルが地球に与えた「試練」について語られている。イスカンダルの全権を握っているのはスターシアだが、ユリーシャや(生きていれば)サーシャはイスカンダルに向かう地球人の観察をして「救うに足りうる存在かどうか」を調査するやくがあると言うことだ。ただ、なんで地球が「救う」星として選ばれたのかがわからない。それは今後の物語展開だ。
 ガミラス側の動きも興味深い。ドメルが釈放されるが、ドメルの奥さんの罪が晴れていないというのは予想外だった。ドメルの妻が本当に反政府運動に荷担していたかどうかは別にして、今後何らかの形で物語に展開するのだろうか? また前話からメルダが再登場しているのも、どういう伏線なのか気になる点だ。
 そして出てくるガミラス側のメカは、ここまで本作に出てきた艦隊とはまるで違う。旧作のルビー戦線やらサファイヤ戦線から来たあの三段空母まんまだ。空母からの艦載機発艦シーンはよかったね。また、差別的発言をされた惑星ザルツの兵士達がガミラスの歌を歌って忠誠を誇示するシーンも良かった。惑星ザルツがイスカンダルに救ってもらえなかったのは、こうして自分達そのものを捨てたからなんだろうな。
 この最大の戦いを前にした緊張の話は本当に面白かった。今回は全編を名場面にしても良いと思えるほど、名場面が続いていて本欄を選ぶのに苦労したよ、本当に。
 こうして満を持していよいよ七色星団の戦いが始まる。こんな時に限って…来週の放送はお休みかよ…。
研究 ・波動エンジンは誰が作ったのか?
 今話では波動砲の秘密についてハッキリする。イスカンダルが技術供与した波動エンジンの設計図には波動砲は描かれていなかった点がユリーシャによって語られ、これが地球製であることは明確になった。その上で作ったのは真田であるということが解ったのだ。
 ユリーシャが「波動エンジンは星を渡るためのもの」としたように、ガミラスの艦艇も基本的には波動エンジンで動いているようだ。恐らく「波動エンジン」のシステムをガミラス語で「ゲシュタム」といい、ワープを「ゲシュタムジャンプ」、波動防壁を「ゲシュタムフィールド」と呼んでいる。またガミラスでも波動砲の原理自体は解っていて、「兵器開発局」で開発中という設定だ。もちろんその試作品がデスラー艦に積まれるという設定が、物語の最終盤で描かれるのだろう。
 ではその「星を渡る道具」である波動エンジンを誰が開発したのか、実は旧作でもこれはハッキリしていない。ガミラス艦は当たり前のように波動エンジンで超光速で宇宙を旅している。その技術を地球がイスカンダルから供与を受けたという事だけが描かれている。
 これは私の想像であるが、少なくとも本作ではこの波動エンジンはイスカンダルで開発された物だと思われる。イスカンダルは「宇宙に存在する知的生命体の救済」という崇高な使命を感じているが、恐らく自分たちの恒星系外の文明と通信などの形で接触する等の経緯を経て、その文明に会うために恒星系外への飛行技術を模索するという歴史を辿ったのだろう。こうして「波動エンジン」に行き着いたと考えるのが妥当である。
 だが旧作と同じ設定であれば、イスカンダルには同じ恒星系内にガミラスというもう一つの知的生命体がいる。波動エンジン開発前にガミラスとの交易は進んでいたのだろう、この流れの中でイスカンダルの波動エンジン技術情報がガミラスに漏れたのは想像に難くない。この情報によりガミラスも独自に波動エンジンを開発し、星の海に乗り出したのだろう。だがガミラスがこのエンジン技術を用いて行ったのは一方的な侵略だった。こうして「波動エンジン」の技術を最初に発見したイスカンダルが、「宇宙に存在する知的生命体の救済」を使命として感じたに違いない。
 このような歴史を想像すれば、イスカンダルが波動エンジンを用いた大量破壊兵器である「波動砲」が開発されたことについて神経質になっているのも容易に想像出来る。地球がガミラスと同じ轍を踏むのではないかという危惧を抱くのは当然だろう。沖田が「波動砲は自分の身を守る物」と言い切ってくれているのでまだ良いが、もし「波動砲」の存在でイスカンダルがヘソを曲げるような事があれば、真田のせいで人類が滅びることになってしまう…それだけはちよっと。
 だけどイスカンダルはガミラスが隣にあるのを知っているのだから、強力な防御兵器が必要なのは説明するまでもなく理解出来るはずだ。「自分達を侵略しようとしている人達の隣へ丸腰で来なさい」なんて言うのなら、それは非常識の誹りを受けても仕方ない。それともヤマトの船体に巨大な赤十字を書けば、それは病院船と見なされて攻撃対象から外されるという条約でもある…はずはないのだから、波動砲の設置は理解して欲しいな。

第20話「七色の陽のともに」
名台詞 「俺は…誘い込まれたのか?……機動部隊で直接叩こうなど我が身の傲り。このドメル、最後の最後に詰めを誤った…。」
(ドメル)
名台詞度
★★★★★
 雷撃機による第三次攻撃でヤマトを仕留められなかったドメルは、艦隊決戦で決着をつけようと自らの乗艦に残存空母全隻を伴ってヤマトに直接総攻撃を掛ける。ところがヤマトは既にドリルミサイルの除去に成功しており、除去されたドリルミサイルがドメル艦隊に達したところでヤマトの主砲により打ち抜かれて大爆発。これにより残存空母のうち2隻を失い、さらに艦による砲撃戦で最後まで残ったもう1隻の空母も沈む。ドメラーズはこれでもヤマトと勇猛果敢に戦うが、ヤマトを深追いしすぎたことで七色星団のイオン乱流に巻き込まれてしまい、操艦不能に陥る。こうして敗北を認めたドメルが艦橋の誰にも聞こえぬように呟いた台詞がこれだ。
 本作のドメルは、敗北が自らのコマの進め方に問題があったことを認めたのだ。ヤマトを叩くために本サイトに「まるで狸の化かし合いで狼らしくない」と批判されながら(笑)も様々な奇策を打ち出して実行し、これが部分的には上手く行っていて部分的には上手く行ってなかった。第二次攻撃隊による急降下爆撃でヤマトのレーダー類を潰し、そしてドリルミサイルで最大の脅威である波動砲を塞ぐだけでなく、ユリーシャらしき人物をヤマトから融解し拉致することまで成功している。だがヤマトが強すぎた、雷撃機攻撃でヤマトを仕留める事が出来なかったとき、彼は咄嗟に艦隊攻撃を選んだ。これはドリルミサイルで波動砲を塞がれ、艦載機攻撃でヤマトが疲弊していると睨んだためで、その通りであればその判断は正しかったはずだ。
 だが艦隊戦を仕掛けるとき、ドメルは「何が起きるか解らない」と自分で発言しつつ、その「想定外」を読み切れなかったのだ。この悔しさ、そしてそれによって敗北へと誘われた自分に待っているものかが何かを悟り、それから逃げずに全ての覚悟を決めたのがこの台詞で、本作のドメルの台詞では最も印象的なものになった。
 また、私が旧作22話の考察で指摘したように、この会戦はドメルが空母全隻を伴ってヤマトに総攻撃した事自体が誤りなのである。これは本サイトだけでなく、様々な「宇宙戦艦ヤマト」における「七色星団の戦い」を研究した人々共通の意見だ(その中には「ヤマト解体新書」「空想科学読本」等の書物になっているものもある)。本作ではこの辺りをどのように処理するのかと期待していたら、なんと旧作通りに描いて敗北後にドメルがこの過ちに気付くという設定にしてきた。そのような新設定が見えるという意味でも、この台詞はとても印象的だ。
(次点)「意外ですね、簡単に中に入れるなんて…」(アナライザー)
…正直言って吹き出した。本サイトの旧作22話考察だけでなく、様々な場所で「あり得ない」とされ笑い話のネタ(「空想科学読本」の挿絵では、この穴に入り込もうとしているアナライザーが「こんな穴は理解不能」と言ったり、回りで見ている乗組員が「罠だ」と主張している)にされてきた「ドリルミサイルの先端」について、アナライザーがドリルミサイルに潜り込んでこう評したからだ。一緒に作業していた薫が「元々兵器じゃないのよ。それを急いで武器に作り替えた…だからでしょうね」とこの状況を推測すると、アナライザーが「合理的解釈です」と返すところでまた笑った。旧作で「こんなのを作るガミラスの武器は抜けている」と散々批判された「ドリルミサイル先端の穴」について、うまく言い訳したと思うがいかがだろうか?
名場面 沖田vsドメル 名場面度
★★★
 名台詞欄で敗北を認めたドメルは、旧作同様にドメラーズの艦橋部分だけを切り離して脱出し、ヤマトの艦底に接舷する。そしてヤマトに無線で呼びかける、沖田の命により相原がこの映像通信を艦橋のスクリーンに映し出すと、そこにはガミラスの司令官の姿があった。「指揮官と話がしたい」とスクリーンの男が語れば、沖田は自分が艦長であることを名乗る。そしてスクリーンの男も銀河方面作戦司令長官のドメルであることを名乗り、「やっとお逢い出来ましたな」と沖田に語りかける。「私も同じ思いです」と沖田が返せばドメルは沖田に「心から敬意を表する」と語るが、沖田は「無用な争いは望まない、このまま我々を行かせてはくれまいか?」とドメルに問う。だがドメルは「それはできない」と静かに返答する、ここでヤマトを見逃せば共に戦った部下達の死は無駄だったことになるとその理由を語る。そして「沖田艦長、軍人として、一人の男として、最後にあなたのような人物と相見えたことを心から誇りに思う。君たちテロンと、我がガミラスに栄光と祝福あれ」と語ると、一方的に通信を切る。
 このシーンは旧作22話にもあった、だがそこで語られる内容は少し変わっている。沖田は自分達が人類の存亡を賭けて戦っている事を語らないし、ドメルの側は旧作と違いそれまでの大きなものの為に戦っているわけではない。ガミラスの側も人類滅亡の危機にあるというような描写はここまで一切無いし、それを示唆する台詞も今のところない(気になるのはディッツ提督による「デスラーは遷都を考えている」という話だが)。
 だから沖田は人類を救うという使命と正義でイスカンダルへの道を急いでいることは言う必要が無くなってしまった、そこまでの大義名分をテロン側が出せばドメルはそれに釣り合う「正義」が出せないのだ。だから二人が称え合うのは指揮官としての互いの戦い方と、それに必要な勇気。「男と男の会話」であって、このような会話が発生するために互いに「相手がどんな指揮官か気になっている」という伏線が上手く描かれてきたから効いているのだ。
 だけど、「正義」という論理が無くなってしまったが為に、同じシーンでも旧作と違って二人の「立場の違い」という部分は鮮明にならなかったのは残念。旧作では両者とも「滅び行く自分達の星の人類を救う」という使命があったからよかったんだけどなー。
感想  旧作では22話で描かれた「七色星団の戦い」だ、「初代ヤマト」ではあらゆる意味で最も印象的な戦いを、一部設定変更することで不自然さや笑いをかみ殺しながら見なければならない要素を廃して、とても上手く描き直したと感心する。
 そしてこの戦いの中に、「沖田対ドメル」と戦いだけでなくガミラス側別動部隊による別の作戦が連動して行われている様まで描かれているのは面白い。前話辺りで「やることがひとつ増えた」という感じで語られていた作戦の正体が、ザルツ人特別部隊によるユリーシャ拉致作戦だ。ガミラス兵がヤマトに乗り込んで特定人物を拉致するという予想外の展開は、ただでさえアツい「七色星団の戦い」をさらにアツくすることに成功したと思う。もちろん、この部隊がユリーシャと間違えて森雪を連れ去るというのは、この作戦の全貌が解ったところで誰もが予想しその通りになる「おやくそく」だ。雪も顔がイスカンダル人似というだけで、いらぬ苦難を強いられることに…。
 またこれは名台詞欄に書いたが、「ドリルミサイル先端の穴」についてもちゃんと設定がなされているのが嬉しい。前述のように各所で笑い話のネタにされたの穴について、どのように処理するのかは本作の製作が発表されて以来の最大の注目点だった。ドリルミサイルの穴が無くてもヤマトが勝てるような設定に作り替えるのか、はたまたドリルミサイル自体が無くなるような戦いに変わるのか…色々予想していたが、まさか旧作の設定に「言い訳」をつけてそのままとは思わなかった。その「言い訳」が無理が無くて良かったし、何よりもアナライザーが名台詞欄次点のような発言をしたのは笑った。同じことは放っておけば勝手に敗北するヤマトに、不用意に近付いて敗北してしまったドメルについてもうまく処理したと思う。この辺りは「ヤマト」関連の書物では定番の批判点だからなー。
 もう一つ言うとドメルの自爆も、旧作ではどう見てもヤマトが無事でないやられ方をしていた。これを改めるために「波動防壁」という設定が出来たのか、と思ってしまった。第二次攻撃でヤマトの「波動防壁」システムが破壊され、第三艦橋で真田と榎本がこれを修理するという設定をつけたことで説得力が向上。ドメル自爆直前にこの「波動防壁」の修理が完了すると言うことでヤマトの破壊度は沈まなくてもおかしくない程度で収まった。同時にこの修理にギリギリまで時間が掛かり、真田や榎本が間一髪で脱出するという設定も手に汗握って良かった。このためにアナライザーと一緒にドリルミサイルに潜り込むのが真田でなく薫というのも、上手く考えたと思う。
 いずれにし、本話は旧作の「七色星団の戦い」のイメージを大きく崩さず、その上で説得力のある内容に書き換えたということで大いに評価したい。ここまでの20話で最も印象の良い話となった。
研究 ・ドメルの七色星団ヤマト殲滅作戦
 本作でもヤマトとドメルの決戦の部隊は、「七色星団の戦い」が引き継がれることになった。今回はこれについて旧作との違いを中心に考えてみたい。旧作の「七色星団の戦い」については、旧作22話研究欄をご参照願いたい。
 本作でも空母4隻に旗艦「ドメラーズ」というドメル側の布陣は変わらない。まず最初に攻撃機体がヤマトに正面から近付き、ヤマトの艦載機部隊をヤマトから引き離す。直後に急降下爆撃機部隊(第二次攻撃隊)をヤマト直上にワープさせて、ヤマトのレーダー類をピンポイントで破壊する、とここまでは旧作と同じ流れだ。
 だが本作ではここからが少し違う、第二次攻撃機部隊はヤマトに致命傷を与えてはならないという使命を持っている。ここで本作戦に連動した別作戦があるからだ。これがザルツ星人の特殊部隊によるユリーシャ拉致作戦で、恐らく表向きは撃沈させられる運命にあるテロン艦からユリーシャを救出するという事になっているのだろう。この作戦は上手く行くが、ユリーシャではなくそっくりなテロン人女性を誤って拉致するという結果になっている。この顛末がどうなるかは今後の物語進展を待つしかないが、雪はユリーシャと間違えられてガミラスで軟禁状態になるか、すぐ別人と判定されて捕虜となるかのどちらかであろう。恐らく後者で、物語が存在が示唆されている「収容所惑星」に行き、そこでドメルの夫人やメルダとの物語があると思うのだけど…。
 ザルツ星人の特殊部隊がユリーシャを拉致すれば、あとは力一杯ヤマトを叩くだけだ。まず大型爆撃機でドリルミサイルを放ち、ヤマトの波動砲を塞いだ上で第三次攻撃部隊である雷撃機をワープさせてヤマトを沈めるという寸法だ。ここまでされちゃヤマトは勝てない…はずであったが。
 問題は第三次攻撃部隊の雷撃機隊だ。この練度が恐ろしく未熟だったことと、ヤマトの艦載機が第一次攻撃部隊を殲滅して戻って来たことで、この雷撃機による攻撃が効果が上がらなかったのだ。同時にヤマトの艦載機部隊がドメル艦隊間空母のうち1隻を沈めたことで、第四次の攻撃機隊を編成出来なくなってしまう。これはドメルにとって大きな誤算だったわけだ。
 だがこの時点で、既にヤマトにはドリルミサイルが刺さっているので放っておけば大爆発。もしヤマトがドリルミサイルの除去に成功してもそれだけの話で、ドメルがヤマトに勝てなくても敗北することはなかったはずだ。
 だがドメルが名台詞欄のように判断を誤る。第三次攻撃隊の効果が低く、必要とされた第四次攻撃隊の「代替」を考えてしまったのだ。それが空母全隻を率いての艦隊攻撃で、戦況は激しい砲撃戦になるかに見えた。この時にヤマトはドリルミサイルの除去に成功、反転して彷徨うドリルミサイルがドメル艦隊近傍に達したところで主砲で撃つことで、空母2隻が轟沈、さらなる砲撃戦で残りの空母が撃沈、旗艦は乱流に呑まれて操艦不能になってしまった。
 ドメル敗北の理由は、ドメルが名台詞欄で語った自身のミスだけでない。ドリルミサイルの先端の穴がやはりもう一つの敗因だろう。だがドリルミサイルがこんな兵器になってしまったことには、「作戦準備時間の不足」という設定がちゃんとある。本来武器でない削岩機を武器に転用した際、改造する時間がなかったのだろう。これは「亜空間ゲート」使用して先を急いだヤマトが作戦前に得ていた優位点であり、結果的には沖田が「多少困難でも先を急ぐ」という選択を取った事がこの戦いを勝利に導いたと言えるだろう。

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