第20話「七色の陽のともに」 |
名台詞 |
「俺は…誘い込まれたのか?……機動部隊で直接叩こうなど我が身の傲り。このドメル、最後の最後に詰めを誤った…。」
(ドメル) |
名台詞度
★★★★★ |
雷撃機による第三次攻撃でヤマトを仕留められなかったドメルは、艦隊決戦で決着をつけようと自らの乗艦に残存空母全隻を伴ってヤマトに直接総攻撃を掛ける。ところがヤマトは既にドリルミサイルの除去に成功しており、除去されたドリルミサイルがドメル艦隊に達したところでヤマトの主砲により打ち抜かれて大爆発。これにより残存空母のうち2隻を失い、さらに艦による砲撃戦で最後まで残ったもう1隻の空母も沈む。ドメラーズはこれでもヤマトと勇猛果敢に戦うが、ヤマトを深追いしすぎたことで七色星団のイオン乱流に巻き込まれてしまい、操艦不能に陥る。こうして敗北を認めたドメルが艦橋の誰にも聞こえぬように呟いた台詞がこれだ。
本作のドメルは、敗北が自らのコマの進め方に問題があったことを認めたのだ。ヤマトを叩くために本サイトに「まるで狸の化かし合いで狼らしくない」と批判されながら(笑)も様々な奇策を打ち出して実行し、これが部分的には上手く行っていて部分的には上手く行ってなかった。第二次攻撃隊による急降下爆撃でヤマトのレーダー類を潰し、そしてドリルミサイルで最大の脅威である波動砲を塞ぐだけでなく、ユリーシャらしき人物をヤマトから融解し拉致することまで成功している。だがヤマトが強すぎた、雷撃機攻撃でヤマトを仕留める事が出来なかったとき、彼は咄嗟に艦隊攻撃を選んだ。これはドリルミサイルで波動砲を塞がれ、艦載機攻撃でヤマトが疲弊していると睨んだためで、その通りであればその判断は正しかったはずだ。
だが艦隊戦を仕掛けるとき、ドメルは「何が起きるか解らない」と自分で発言しつつ、その「想定外」を読み切れなかったのだ。この悔しさ、そしてそれによって敗北へと誘われた自分に待っているものかが何かを悟り、それから逃げずに全ての覚悟を決めたのがこの台詞で、本作のドメルの台詞では最も印象的なものになった。
また、私が旧作22話の考察で指摘したように、この会戦はドメルが空母全隻を伴ってヤマトに総攻撃した事自体が誤りなのである。これは本サイトだけでなく、様々な「宇宙戦艦ヤマト」における「七色星団の戦い」を研究した人々共通の意見だ(その中には「ヤマト解体新書」「空想科学読本」等の書物になっているものもある)。本作ではこの辺りをどのように処理するのかと期待していたら、なんと旧作通りに描いて敗北後にドメルがこの過ちに気付くという設定にしてきた。そのような新設定が見えるという意味でも、この台詞はとても印象的だ。 |
(次点)「意外ですね、簡単に中に入れるなんて…」(アナライザー)
…正直言って吹き出した。本サイトの旧作22話考察だけでなく、様々な場所で「あり得ない」とされ笑い話のネタ(「空想科学読本」の挿絵では、この穴に入り込もうとしているアナライザーが「こんな穴は理解不能」と言ったり、回りで見ている乗組員が「罠だ」と主張している)にされてきた「ドリルミサイルの先端」について、アナライザーがドリルミサイルに潜り込んでこう評したからだ。一緒に作業していた薫が「元々兵器じゃないのよ。それを急いで武器に作り替えた…だからでしょうね」とこの状況を推測すると、アナライザーが「合理的解釈です」と返すところでまた笑った。旧作で「こんなのを作るガミラスの武器は抜けている」と散々批判された「ドリルミサイル先端の穴」について、うまく言い訳したと思うがいかがだろうか? |
名場面 |
沖田vsドメル |
名場面度
★★★ |
名台詞欄で敗北を認めたドメルは、旧作同様にドメラーズの艦橋部分だけを切り離して脱出し、ヤマトの艦底に接舷する。そしてヤマトに無線で呼びかける、沖田の命により相原がこの映像通信を艦橋のスクリーンに映し出すと、そこにはガミラスの司令官の姿があった。「指揮官と話がしたい」とスクリーンの男が語れば、沖田は自分が艦長であることを名乗る。そしてスクリーンの男も銀河方面作戦司令長官のドメルであることを名乗り、「やっとお逢い出来ましたな」と沖田に語りかける。「私も同じ思いです」と沖田が返せばドメルは沖田に「心から敬意を表する」と語るが、沖田は「無用な争いは望まない、このまま我々を行かせてはくれまいか?」とドメルに問う。だがドメルは「それはできない」と静かに返答する、ここでヤマトを見逃せば共に戦った部下達の死は無駄だったことになるとその理由を語る。そして「沖田艦長、軍人として、一人の男として、最後にあなたのような人物と相見えたことを心から誇りに思う。君たちテロンと、我がガミラスに栄光と祝福あれ」と語ると、一方的に通信を切る。
このシーンは旧作22話にもあった、だがそこで語られる内容は少し変わっている。沖田は自分達が人類の存亡を賭けて戦っている事を語らないし、ドメルの側は旧作と違いそれまでの大きなものの為に戦っているわけではない。ガミラスの側も人類滅亡の危機にあるというような描写はここまで一切無いし、それを示唆する台詞も今のところない(気になるのはディッツ提督による「デスラーは遷都を考えている」という話だが)。
だから沖田は人類を救うという使命と正義でイスカンダルへの道を急いでいることは言う必要が無くなってしまった、そこまでの大義名分をテロン側が出せばドメルはそれに釣り合う「正義」が出せないのだ。だから二人が称え合うのは指揮官としての互いの戦い方と、それに必要な勇気。「男と男の会話」であって、このような会話が発生するために互いに「相手がどんな指揮官か気になっている」という伏線が上手く描かれてきたから効いているのだ。
だけど、「正義」という論理が無くなってしまったが為に、同じシーンでも旧作と違って二人の「立場の違い」という部分は鮮明にならなかったのは残念。旧作では両者とも「滅び行く自分達の星の人類を救う」という使命があったからよかったんだけどなー。 |
感想 |
旧作では22話で描かれた「七色星団の戦い」だ、「初代ヤマト」ではあらゆる意味で最も印象的な戦いを、一部設定変更することで不自然さや笑いをかみ殺しながら見なければならない要素を廃して、とても上手く描き直したと感心する。
そしてこの戦いの中に、「沖田対ドメル」と戦いだけでなくガミラス側別動部隊による別の作戦が連動して行われている様まで描かれているのは面白い。前話辺りで「やることがひとつ増えた」という感じで語られていた作戦の正体が、ザルツ人特別部隊によるユリーシャ拉致作戦だ。ガミラス兵がヤマトに乗り込んで特定人物を拉致するという予想外の展開は、ただでさえアツい「七色星団の戦い」をさらにアツくすることに成功したと思う。もちろん、この部隊がユリーシャと間違えて森雪を連れ去るというのは、この作戦の全貌が解ったところで誰もが予想しその通りになる「おやくそく」だ。雪も顔がイスカンダル人似というだけで、いらぬ苦難を強いられることに…。
またこれは名台詞欄に書いたが、「ドリルミサイル先端の穴」についてもちゃんと設定がなされているのが嬉しい。前述のように各所で笑い話のネタにされたの穴について、どのように処理するのかは本作の製作が発表されて以来の最大の注目点だった。ドリルミサイルの穴が無くてもヤマトが勝てるような設定に作り替えるのか、はたまたドリルミサイル自体が無くなるような戦いに変わるのか…色々予想していたが、まさか旧作の設定に「言い訳」をつけてそのままとは思わなかった。その「言い訳」が無理が無くて良かったし、何よりもアナライザーが名台詞欄次点のような発言をしたのは笑った。同じことは放っておけば勝手に敗北するヤマトに、不用意に近付いて敗北してしまったドメルについてもうまく処理したと思う。この辺りは「ヤマト」関連の書物では定番の批判点だからなー。
もう一つ言うとドメルの自爆も、旧作ではどう見てもヤマトが無事でないやられ方をしていた。これを改めるために「波動防壁」という設定が出来たのか、と思ってしまった。第二次攻撃でヤマトの「波動防壁」システムが破壊され、第三艦橋で真田と榎本がこれを修理するという設定をつけたことで説得力が向上。ドメル自爆直前にこの「波動防壁」の修理が完了すると言うことでヤマトの破壊度は沈まなくてもおかしくない程度で収まった。同時にこの修理にギリギリまで時間が掛かり、真田や榎本が間一髪で脱出するという設定も手に汗握って良かった。このためにアナライザーと一緒にドリルミサイルに潜り込むのが真田でなく薫というのも、上手く考えたと思う。
いずれにし、本話は旧作の「七色星団の戦い」のイメージを大きく崩さず、その上で説得力のある内容に書き換えたということで大いに評価したい。ここまでの20話で最も印象の良い話となった。 |
研究 |
・ドメルの七色星団ヤマト殲滅作戦
本作でもヤマトとドメルの決戦の部隊は、「七色星団の戦い」が引き継がれることになった。今回はこれについて旧作との違いを中心に考えてみたい。旧作の「七色星団の戦い」については、旧作22話研究欄をご参照願いたい。
本作でも空母4隻に旗艦「ドメラーズ」というドメル側の布陣は変わらない。まず最初に攻撃機体がヤマトに正面から近付き、ヤマトの艦載機部隊をヤマトから引き離す。直後に急降下爆撃機部隊(第二次攻撃隊)をヤマト直上にワープさせて、ヤマトのレーダー類をピンポイントで破壊する、とここまでは旧作と同じ流れだ。
だが本作ではここからが少し違う、第二次攻撃機部隊はヤマトに致命傷を与えてはならないという使命を持っている。ここで本作戦に連動した別作戦があるからだ。これがザルツ星人の特殊部隊によるユリーシャ拉致作戦で、恐らく表向きは撃沈させられる運命にあるテロン艦からユリーシャを救出するという事になっているのだろう。この作戦は上手く行くが、ユリーシャではなくそっくりなテロン人女性を誤って拉致するという結果になっている。この顛末がどうなるかは今後の物語進展を待つしかないが、雪はユリーシャと間違えられてガミラスで軟禁状態になるか、すぐ別人と判定されて捕虜となるかのどちらかであろう。恐らく後者で、物語が存在が示唆されている「収容所惑星」に行き、そこでドメルの夫人やメルダとの物語があると思うのだけど…。
ザルツ星人の特殊部隊がユリーシャを拉致すれば、あとは力一杯ヤマトを叩くだけだ。まず大型爆撃機でドリルミサイルを放ち、ヤマトの波動砲を塞いだ上で第三次攻撃部隊である雷撃機をワープさせてヤマトを沈めるという寸法だ。ここまでされちゃヤマトは勝てない…はずであったが。
問題は第三次攻撃部隊の雷撃機隊だ。この練度が恐ろしく未熟だったことと、ヤマトの艦載機が第一次攻撃部隊を殲滅して戻って来たことで、この雷撃機による攻撃が効果が上がらなかったのだ。同時にヤマトの艦載機部隊がドメル艦隊間空母のうち1隻を沈めたことで、第四次の攻撃機隊を編成出来なくなってしまう。これはドメルにとって大きな誤算だったわけだ。
だがこの時点で、既にヤマトにはドリルミサイルが刺さっているので放っておけば大爆発。もしヤマトがドリルミサイルの除去に成功してもそれだけの話で、ドメルがヤマトに勝てなくても敗北することはなかったはずだ。
だがドメルが名台詞欄のように判断を誤る。第三次攻撃隊の効果が低く、必要とされた第四次攻撃隊の「代替」を考えてしまったのだ。それが空母全隻を率いての艦隊攻撃で、戦況は激しい砲撃戦になるかに見えた。この時にヤマトはドリルミサイルの除去に成功、反転して彷徨うドリルミサイルがドメル艦隊近傍に達したところで主砲で撃つことで、空母2隻が轟沈、さらなる砲撃戦で残りの空母が撃沈、旗艦は乱流に呑まれて操艦不能になってしまった。
ドメル敗北の理由は、ドメルが名台詞欄で語った自身のミスだけでない。ドリルミサイルの先端の穴がやはりもう一つの敗因だろう。だがドリルミサイルがこんな兵器になってしまったことには、「作戦準備時間の不足」という設定がちゃんとある。本来武器でない削岩機を武器に転用した際、改造する時間がなかったのだろう。これは「亜空間ゲート」使用して先を急いだヤマトが作戦前に得ていた優位点であり、結果的には沖田が「多少困難でも先を急ぐ」という選択を取った事がこの戦いを勝利に導いたと言えるだろう。 |