心象鉄道19.国鉄の特急電車
(KATO・トミックス・マイクロエース Nゲージスケール)
憧れの「とっきゅうでんしゃ」たち

模型写真・国鉄の特急電車といえばボンネットでしょう!

本記事の模型車両撮影に使った貸しレイアウト
東京都西多摩郡瑞穂町「ファインクラフト」さんです。
(JR八高線箱根ヶ崎駅徒歩20分・駐車場完備)

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1.私と国鉄特急電車
 「日本国有鉄道」、略して国鉄…日本国土の隅々までネットワークしていた公共企業体が消えて、もう30年以上の月日が流れてしまった。
 その国鉄が日本から消えたのは、私は16歳で高校1年から2年になろうとしていたときだった。高校生になってアルバイトをするようになってお金ができ、やっと関東地方の外の鉄道に乗りに行けるようになった矢先に、国鉄が分割民営されて消えたのである。この頃はまだ普通列車で旅をするのが精一杯、関東地方の外へ鉄道を追う舞台が移ったとは言え、特急電車に自由自在に乗ることなどまだ出来なかった。

 そしてその国鉄には、少年時代の私が憧れた列車や、興味を持った過去の列車が沢山ある。今回はそんな国鉄の特急電車たちを模型を通じて紹介したいと思う。中には少年時代の私の目を惹いたものもあるし、手にした本にあった歴史の1ページに出てきた列車もある。様々な形でその存在を知り、「乗ってみたい」「それが叶わなくとも見てみたい」と思ったものだ。
 そんな列車達を、大人になって「模型」というかたちで再現したのが、今回のこのページの趣旨と思って頂ければ良いだろう。

2.「こだま」と「ひびき」

新幹線開業前の東海道の姉妹列車
  子供の頃、私が読んだ少年向けの鉄道の本には、当然のことながら国鉄電車の歴史について書かれているものもあった。ケイブンシャの「大百科」シリーズや、小学館の「全百科」シリーズや「入門」シリーズなどといった少年時代の私のバイブル的な本にもそのような歴史は書かれていて、その中でエポックメイキング的な車両として紹介されていたのが電車なら151系「こだま」形、客車なら20系寝台客車、気動車ならキハ80系という辺りだ。
 もちろん、その中から私は「こだま」形電車の歴史を知ることとなる。東海道新幹線開業前の東海道本線を駆け抜けていた特急「こだま」を筆頭とする姉妹列車達の活躍に強く興味を持ち、中学生になる頃には鉄道趣味雑誌からもこれらの列車の知識を吸収する。
 その中で私が美しいと思ったのは、なんと言っても「こだま」形デビュー時の姿だ。東海道という大動脈でありながら8両編成という身軽さと、2等車を中心にした前後対象の編成内容…特に2両の2等車を挟むかたちでビュフェが2両も連結されているのは、短編成ながらも大動脈を行く特急らしくて美しく見えた。
 そして私がもうひとつ気になった列車は、157系「日光」形で運行されていた「ひびき」だ。実は4〜5歳の頃、親戚の家に行くのに乗った京浜東北線から変わった電車を見た記憶があって、その電車の正体が年を経てもずっと気になっていた。中学生になって過去の鉄道知識を吸収しているときに、その「変わった電車」は昔の東海道特急「ひびき」の写真でヒットした。その小さいときに見たその「変わった電車」は、伊豆へ行く特急「あまぎ」だったであろうことや、この電車が157系という形式名と「日光」形というニックネームを持ち、自分が産まれるよりずっと前に作られた日光方面へ行く準急列車用であったこと、準急用電車なのに特急並みの設備を持つから特急列車にもたびたび使われたことなどを知った。また写真にあった特急「ひびき」は、「こだま」を補完する列車として「こだま」のすぐ後を追うようにつかず離れずして走るまさに「影」のような列車であったことも知る…こうしてカッコイイ列車だなーと、自分が生きた時代と違う列車なのに憧れた。

 そして時は流れ、30代の大人になってこれらの列車を模型でも再現したいと考えた。「こだま」形は当然のことながらデビュー当時、まだ形式名がモハ20系だった時代で再現したいと考えていたところで、マイクロエースからまさにこの時代設定の「こだま」形が発売された。ただ発売時はすぐには手が出せず、数年を経てネットオークションで半額以下まで暴落した「木箱セット」を拾ったかたちだ。
 そして「日光」形は昔からグリーンマックスのキットや、旧マイクロエースの金属製品があった。グリーンマックスのキットに手を出そうと思ったことは一度や二度出ないが、その都度「サハ157をどう再現しよう」と悩んで購入を躊躇っていた。そうしているうちにマイクロエースから準急「日光」時代の姿でプラ完成品が登場、「ひびき」にするならこれでも…と思った矢先にKATOから引退間際の「あまぎ」仕様が発売。これが「日光」形の「決定版」となったのは言うまでもなく、私はこちらを購入する。
 モハ20系はカプラー交換をした以外はそのまま使っている。157系は下図のように、「あまぎ」基本セットと「お召し列車」セットの双方を購入し、双方の先頭車ユニットを入れ換えた。これは「あまぎ」セット先頭車はモハユニット増結を前提にした設計で、連結器のディティールなどが少しおかしいので長編成の先頭に立たせないようにしたためだ。「ひびき」として走らせる場合は、お召し列車用の先頭車ユニットを借りて9両フル編成を組むため、我が家では「ひびき」と「お召し列車」を同時に運行することはしない。
 そして「ひびき」編成の先頭車にはサードパーティの157系用愛称板ステッカーから「ひびき」を貼り付けている。厳密にはスカート部分の形状が、「あまぎ」時代と東海道新幹線開業前では違うのだが、そこは気にしない。
 我が家の東海道新幹線開業前の東海道の列車は、いまのところはこれだけだ。本当は客車時代の「つばめ」「はと」なども走らせたいのだけど、そこは他にもっと優先する模型があるのでずっと見送っている。
国鉄特急電車の祖「こだま」形
この美しいボンネットスタイルは色あせない これはチャンピオンマーク入りだ
そして「日光」形157系
「こだま」の後ろをつかず離れず走る「ひびき」だ
橋梁で「こだま」と「ひびき」がすれ違う
往年の東海道特急の雰囲気が出るかな?
駅で並ぶ
この組合せだとすれ違いでなく始発駅での発車待ちだったはずだ

3.上越特急「とき」

越後を目指す特急「とき」
  子供の頃、夏休みの間は軽井沢にある祖父母の別荘で過ごしていた。もちろんその往復に鉄道を使う事も多く、私は子供の頃から碓氷峠の鉄道に慣れ親しみ、小さい頃は電車が山を越えるときは電気機関車を繋げるのが普通だと信じていた。
 そして子供の頃、夏休みの軽井沢への往復でよく見かける特急の名前は真っ先に覚えた。軽井沢も通る「あさま」「そよかぜ」「白山」はもちろんのこと、「軽井沢へ行く途中で見かける特急」として真っ先に名前を覚えたのは「とき」、同じ上越線経由の「はくたか」「いなほ」の名を覚えるよりずっと前だった。当時は「とき」の意味など知らず、名前が覚えやすい特急くらいにしか考えていなかった。そして「とき」の特徴として、全部ではないけど旧式のボンネットタイプの電車である事にも気付いていた。
 軽井沢へ急行列車(「信州」など)で向かうときは、どこかでこの「とき」という名の特急に抜かれるのはおやくそくだった。特に臨時急行「軽井沢」での体験はよく覚えている、こちらは14系座席車の多客臨(従兄弟はブルートレインだと大はしゃぎしていたが、私は「なんかちがう」と思っていた)だからのんびりしたモノで、記憶に間違いなければ高崎線の本庄駅で長時間停車、その間に「とき」「白山」に立て続けに抜かれた上に115系の普通列車にまで道を譲っていた。
 小学6年生の夏休みは、当時中学生の兄と2人で普通列車で軽井沢を目指した。その時に高崎駅で見送った特急もこの「とき」だったが…これが私と在来線特急「とき」との最後の逢瀬だった。この年、1982年11月に上越新幹線が開業すると「とき」は新幹線に役割を譲って廃止されたのである。
 この「とき」の記憶を模型で再現したくて、KATOの181系を購入したのは1990年頃だ。以前にも本サイトで記事にしているので詳しくはそちらを参照して欲しいが、小学6年生の夏休みに見たあの姿を少しでも再現しようといろいろ手を掛けたものだ。特にグリーン車についてはKATOの181系のものを使うのでなく、トミックスの485系のものを引っ張ってきてサロ181-1100を再現している。その再現に当たって181系と485系の車高の違いに留意し、実物通りの凹凸編成になるようにしたのは前述の記事の通りだ。ただ本来は「とき」末期の181系は台車が違うのだが、そこまでは再現していない。
 そして私は、在来線時代の特急「とき」についてはもう1編成再現している。181系に代わって「とき」の一部列車を担当していた183系1000番台を「とき」の12両編成で揃えているのだ。この183系1000番台はJRマークがないだけでJR化後の姿になっていたので、列車無線アンテナを撤去するなどして国鉄時代の姿に改造している。
 これらの模型は購入から20年以上が経過して老朽化していて、183系1000番台については今年になって先頭車のライトユニットをLED化するなど手を掛けた。181系についても近々同じ改造をするつもりだ。
「こだま」形最後の列車「とき」
こうやって写真に撮ると赤帯の塗り分けが滲みまくってるなぁ
181系「とき」を編成で見る
グリーン車が出っ張っているのが解るだろう もちろんヘッドマークは絵入り
編成中間のグリーン車はサロ181-1100
181系末期の凹凸編成を再現した
こちらは183系1000番台の「とき」
ヘッドライトパーツをLED化 「とき」のマークがきれいに見えるようになりました
いつもの鉄橋ですれ違う「とき」
上越線でこんな光景が当たり前に展開していたのですよ
すれ違いを反対から見る
この鉄橋 上越線の車両を走らせると合うなぁ

183系1000番台ついでの追加記事
 我が家には今回紹介の「とき」編成以外に、もう1本183系1000番台車が存在する。これが中央線「あずさ」用の183系1000番台車で、JR化後に登場した通称「グレードアップあずさ」だ。これは以前にも本サイトで写真だけ紹介している。
 前述の「とき」編成のヘッドライトLED化改造と同時に、この「グレードアップあずさ」も改造を行った。こちらはヘッドライトのLED化の他、KATOの変換式ヘッドマークを装着して「あずさ」表示の質感向上も合わせて行った。ただ手に入った変換式マークが前後でバラバラで、「新宿湘南ライナー」は片側しか表示できないという悲しい有様だ。「かいじ」も表示できるようになったが、出来れば「急行 アルプス」が欲しかったなー。
「グレードアップあずさ」もヘッドライトの改造をしました
変換式ヘッドマークにしたため 「あずさ」表示がきれいになりました
いつもの橋を行く
ヘッドライトが明るくて良いでしょ?

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