第17章「アン、学校にもどる」 |
名台詞 |
「懐かしいアン。お母さんは学校でもあなたと遊んだり、話をしたりしちゃいけないと言うの。私のせいじゃないから気を悪くしないでね。私、前と同じようにあなたを愛しているわ。あなたに会って、私の秘密をみんなしゃべりたくてたまらないの。ガーディ・パイなんて大嫌い。あなたに赤い薄紙で新しい栞を一枚作ったわ。今、とっても流行ってるんだけど、学校じゃ3人の女の子しか作り方を知らないのよ。栞を見たら思い出して。あなたの忠実な友、ダイアナ・バリー。」
(ダイアナ) |
名台詞度
★★★ |
これを「台詞」と言っていいかどうか分からないけど、ダイアナ役の声優がダイアナの声と役で読み上げているのだから「台詞」としよう。実はこの教室で行き交ったアンとダイアナの手紙、どっちを名台詞欄に挙げるかかなり悩んだが、ダイアナの手紙の方が予告無しにやってきて物語を推し進める役割が強く印象に残るため、こっちを挙げることにした。でもアンの返事も捨てがたいのでこういう取り上げ方をすることにした。
午後の授業を受けるアンのところへ、生徒達のネットワークを通じてアンの元に手紙が届く。その手紙を開き差出人を見ると、なんとそれはダイアナからだったのだ。アンは喜んでダイアナからの手紙を読み、これに感動する。
もちろんこの手紙から読み取れるのは、引き裂かれても変わらぬダイアナの「心」である。前日のシーンでは互いに教室でこっちを見てもくれないことを気に病み(実は交互に見つめ合っていたのだが)、夜になれば窓に映る心の友の家を見つめてはため息をつく、そんなシーンが描かれていた。心からの友が目の前にいるのに話も出来ない苦しみと、なんとか自分は相手を嫌いになってはいないという気持ちだけでも伝えたいと、先にダイアナが心を込めた手紙とプレゼントをアンに贈ったのである。これわ通じて見えてくる事実は、アンからの返事にあるとおり二人の心が通じ合っていることであり、どんなことがあっても変わらぬ友情を我々に見せつけてくれるのだ。 |
(次点)「我が愛しのダイアナへ。もちろん、あなたがお母さんの言いつけに従わなくてはならないからと言って私、怒ってなんかいないわ。私たちの心は通じ合っているんですもの。あなたの美しい贈り物はいつまでも取っておくわ。ミニー・アンドリューズはとてもいい女の子よ、想像力は持っていないけどね。でも私、ダイアナの心の友だった後なのでミニーの心の友にはなれないの。字を間違えてごめんなさい。私、まだ字の綴り方があんまり得意じゃないのよ。大分上達はしたけどね。死が我々を引き離すまで…あなたのアン、またはコーデリア・シャーリー。 追伸
今晩はあなたの手紙を枕の下にして眠るつもりです。アン、またはコーデリア。」(アン)
…上記ダイアナの手紙に対するアンの返事。ダイアナと心が通じ合っていることに感激している心のこもった手紙である。でも「コーデリア」にこだわるなぁ。 |
名場面 |
橋の上で。 |
名場面度
★★★★ |
アンがグリーン・ゲイブルズの居間で絶望に沈んだ気持ちでパッチワークをしていると、突然窓の外にダイアナが現れて手招きをする。思いかげない出来事に笑顔で駆け出すアンだったが、だがダイアナの表情が決して明るくない事にすぐに気付く。そしてグリーン・ゲイブルズの近くを流れる小川に架かる橋で、ダイアナは足を止める。
「お母さん、まだ怒ってらっしゃるのね」、先に口を開いたのはアンだった。ダイアナは頷くと「それにね、もう二度とあなたと遊んではいけないって言うの」と深刻な声で母からの宣告をアンに告げ、大泣きして母にアンは悪くないと訴えたがダメだった事も告げた。「私たちもう二度と会えないの?」とアンは大声で聞くが、ダイアナは涙ながらにやっとの思いで最後のお別れを言う許しだけもらってきたことを告げる、しかも10分間限定で母は時計で時間を計っているという。「あんまりだわ」と今度はアンが泣き始める。
「でも、いったいどうすればいいの?」とダイアナが聞いても、名案は思い浮かばず小川の流れる音だけが響きわたる。「わかったわダイアナ、でも永遠の別れを言うのに10分じゃ短いわ。若き日の友として決して忘れないと約束してくれる?」と力説するアンと、ダイアナは「もちろんよ、それに決して心の友なんか持たないわ。持たなくないの、どんな人だってあなたみたいに愛することは出来ない」と訴える。この言葉にアンが驚く、「あなた本当に私を愛してくれるの?」と笑顔になって尋ねるアンに、ダイアナは「もちろんよ、知らなかったの?」と平然と答える。アンは「私を愛してくれる人がいるなんて思ってなかった」とした上で、もう一度言ってとダイアナに言う。「あなたを心から愛しているわ、いつまでも変わることなく。本当よ」とダイアナが繰り返せば、またアンは感激する。ちょっと脇道に逸れ始めてないか?
しかし時間はない、アンはダイアナに形見としてその黒髪を欲しいと告げる、ダイアナが了承するとパッチワークの途中だったアンが偶然はさみを持っていたこともあって、ダイアナの髪を切ると持っていたハンカチに包む。そして二人は手を取り合う、「いざさらば、我が愛しき友よ…(以下略)」…見つめ合うアンとダイアナ、このときの二人はしばらく時間が止まっていたことだろう。「私、行かなきゃ」ダイアナが時間切れを告げ、アンが頷く。何度も振り返りながら走るダイアナ、遠ざかるアンの姿とグリーン・ゲイブルズ…。
冷めた言い方をすれば、「もう二度と会えなくなる訳じゃないのに大げさなんだよ」ってところなのだが、その大げさなのが「赤毛のアン」のいいところであって、このシーンはその典型的なシーンだ。ちょっとした間違いから会う事を許されなくなった二人、しかも隣同士なのだから本人達に言わせればロミオとジュリエットより状況は酷いかも知れない。それにこの時点ではアンの登校拒否は続行中だったから、二人は本当に会う接点を失ってしまったのであるのだから大げさでも過ぎるって程ではないだろう。
このシーン、「世界名作劇場シリーズで色んな「別れ」が描かれてきたが、その中のどんな別れよりも感動的に描かれていると思う。無言の時間が多く、そこに二人の口では言い表すことの出来ない「思い」がキチンと描かれている。そう、本当の別れというのは言葉の少ない静かなシーンであるはずなのだ。
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今回の命名 |
新たな命名無し |
感想 |
また「事件」と「事件」の間に挟まる話だが、この回では今までの仲良く付き合っていた頃以上にアンとダイアナの友情が強く描かれた。こうして距離を置いたことで、お互い相手がどれだけ大事な存在かを思い知り、相手がどれだけかけがえのない存在であったかを思い知る。これを強く視聴者に見せることが、いつの日かアンの汚名が晴れて二人が元の友人同士、いやそれ以上の仲の良い親友として結ばれるであろう事を強く示唆しているとも受け取ることが出来る。アンとダイアナのこの関係こそが、次回の話になるのだが次の「事件」が起きてダイアナがピンチに陥ったときに、母に付き合いを禁止されているアンに頼るきっかけとなるのだ。
しかし、アンとダイアナという本筋以外では、男の子からのアンへのプレゼントのエピソードが気に入った。どんなに美味しそうなりんごでも、それを置いていったのがギルバートと知ればそこいらに放り投げ、それを触った手まで拭くという徹底のしよう。だがそれを見たギルバートもアンに対して激高するのでなく、黙って教室を出て行く辺り「大人」だと思うのだ。対してチャーリー・スローンの石筆は大事に取っておくと宣言、アンに気があるチャーリーの喜びようはこれまた見ていて楽しかったし、その後のオチもよかった。チャーリー・スローンの中の人って、「わたしのアンネット」でジャンをやってた人だよね?
こうやってアンとダイアナが引き裂かれ、引き裂かれつつも心が通じているという1話を上手く入れた。原作を知らず初めて見る視聴者の興味は「アンの汚名がどのように返上されるのか?」という方へ移り出す頃かも知れない。その答えは意外に早くもう次で出てきてしまう、これまでと違って洒落にならない事件を通じて…。 |