「あにめの記憶」リアルタイム視聴4(再放送)

「風の少女エミリー」

・見たことないのに興味の強かった作品
 2007年に「世界名作劇場」作品群に再会し、一部シリーズ作品を見直してこのサイトでその感想や研究考察を当サイトに上げてきた私である。特に2009年からは「世界名作劇場」シリーズ以外にも力を入れ初めていたが、新番組のリアルタイム視聴以外で取り上げたのは「過去に見た作品」に絞ってきた。
 だが今回は、「再放送リアルタイム視聴」という形ではあるが、初の視聴に挑んだ作品を取り上げることにしてみた。これに選んだのが「風の少女エミリー」である。
 このアニメの存在は本放送時は知らなかった。というのも2007年に私が「世界名作劇場」作品群と再会する直前に放映が終わっていたからである。2008年初頭頃から様々な「世界名作劇場」関連サイトを巡っている内に、このアニメの存在を知ったというのが正しいところだ。中でも関連リンクとして紹介している「名作アニメファンサイト そよ風の丘」というサイトを偶然見た時に、ここの管理者さんのある名作ファン様のイラストによりこのアニメの世界観が上手く再現されていたこともあり、強い興味を感じたものだ。また原作者が「赤毛のアン」と同じモンゴメリだと知って、「きっかけがあれば全部視聴してみよう」との思いを強くした。だがこの物語のあらすじが分かるページは何処も見ていない、どうせ見るなら初見の楽しみを味わいながら見たいと思い、ネタバレがありそうなサイトは回避してきた。前述の「そよ風の丘」様についても、「風の少女エミリー」のあらすじコーナーは見るのを避けた。
 そしてその思いが実現するのはこの3月であった。NHK−BS2の昼のアニメ再放送枠で「風の少女エミリー」が再放送されるとの情報が入ったのだ。私としてはこの機会を見逃すわけに行かず、同時に「あにめの記憶」再放送リアルタイム視聴として取り上げることにした。

 このアニメはルーシー・モード・モンゴメリ原作の「エミリー」シリーズ三部作、「可愛いエミリー(Emily of New Moon)」「エミリーはのぼる(Emily Climbs)」「エミリーの求めるもの(Emily's Quest)」をアニメ化した物である。三部作のうち殆どが第一作の「可愛いエミリー」のストーリーであり、他二作分は最後の6話に押し込められている。「エミリー」シリーズは「アン」シリーズがベストセラーとなりつつも、ネタ切れによって新しい物語が必要と感じたモンゴメリが、アンに変わって世に送り出したヒロインである。モンゴメリ自身の体験の中で「赤毛のアン」で書き忘れたことを補完し、「少女の成長物語」という物語の展開は共通でも全く違う方向性の物語を作り出した。
 アンとの違いとしては、主人公が天涯孤独の孤児で赤の他人に引き取られるのでなく、親を失ったばかりで親類に引き取られるという設定としたことだろう。これによって厳しい親類とヒロインの対峙というアンとは違った展開を生むことになる。ちなみにこの展開はエレナ・ホグマン・ポーターの「少女パレアナ(Pollyanna)」と共通点が多く、私はどっちが先に描かれた物語なのかは調べていないが、ほぼ同時期の時代設定であることから互いに影響し合った物語なのは否めないと確信している(どっちがマネしたとかそういう論理ではなくいい意味で、もちろんポリアンナは小説家を目指していないし、エミリーは自動車に轢かれないと相違点も多い)。
 なお本文中でも記すが、世界名作劇場「赤毛のアン」33話の毒入りリンゴ事件はこの「可愛いエミリー」のエピソードを「アン」のキャラに置き換えてアニメ化したものであり、今回の視聴において私が一番楽しみにしていたのはこのエピソードが入る6話だった事を明記しておこう。
 アニメ「風の少女エミリー」は2007年4月から9月まで、毎週土曜日の朝にNHK教育で放映されていた。製作会社は「ルパン三世」や「アンパンマン」でおなじみの東京ムービー新社の流れを汲むトムスエンターテイメント、90年代に名作系アニメを何本か作っていたので、この手の作品はお手の物といった感じだったろう。
 そして前述の通り2010年3月から2ヶ月かけて、NHK−BS2で再放送された。

 本考察は、この再放送が放映されたその日の内に録画を視聴して感想と考察を書いたものである。

・「風の少女エミリー」関連リンク
 「風の少女エミリー」についてもっと知りたい、他の方の考察も見てみたいと思われる方はこちらをどうぞ。

「名作アニメファンサイト そよ風の丘」
ある名作ファン様による名作系アニメのイラストとストーリー紹介のサイト。ここで公開されているイラストはとてもきれいです。
「風の少女エミリー」についてイラストとテキストで紹介しています、私がこのアニメに興味を持ったのはこのサイトと出会ったからです。

・サブタイトルリスト

第1話 「風の少女」 第14話 「海辺のピクニック」
第2話 「マレー家の誇り」 第15話 「幽霊屋敷」
第3話 「変わり者イルゼ」 第16話 「夏の思い出」
第4話 「四人のスケッチ」 第17話 「イルゼの秘密」
第5話 「はじめての舞台」 第18話 「ローダの罠」
第6話 「毒リンゴ事件」 第19話 「エミリーの失敗」
第7話 「大好きな林」 第20話 「青春の階段」
第8話 「お母さんの部屋」 第21話 「それぞれの夢」
第9話 「消えたダイヤモンド」 第22話 「雪の中の告白」
第10話 「夢を織る人々」 第23話 「はなれてゆく心」
第11話 「名誉あるコンテスト」 第24話 「残されたもの」
第12話 「世界にひとつの詩」 第25話 「雪はいま、とけゆく」
第13話 「マレー家のクリスマス」 第26話 「春のおとずれ」


・「風の少女エミリー」主要登場人物

エミリーの家族
エミリー・バード・スター 物語の主人公、両親を失ってニュームーンに来た。周囲の反対をよそに作家になるべく日夜努力する。
 …この娘の武器は「ひらめき」、そのひらめきによって天才的な表現力を発揮するが、詩を作るときは周囲が見えなくなるのが欠点。
ダグラス・スター エミリーの父、エミリーに「愛」を教え、エミリーのことを気にしながら物語序盤で病死する。
 …エミリーが躓くとこの父の台詞が出てくるが、その都度幽霊みたいに現れるのはちょっと怖かった。
ジュリエット・マレー エミリーの母だが、エミリーが赤ん坊の頃に他界。エミリーはこの母の面影をニュームーンで探す。
 …体力はなかったがやたら明るい人だったらしい、エミリーの頑固な性格はこの母からの遺伝のようだ。
ルーシー 物語の最後に登場するエミリーの娘、エリザベスが大好き。
 …なんで最後の最後にポリアンナなんだー!
ソーシー・サール エミリーの飼い猫、エリザベスに連れてくるのを拒否されたにも関わらず、勝手についてきた利口な猫。
 …エリザベスの「猫嫌い」を強調するために用意されたとしか思えない。どちらかというとエミリーの立場を弱くしている存在。
ニュームーンの人々およびマレー家血縁者
エリザベス・マレー エミリーの母方の伯母、両親を失ったエミリーを引き取って育てる。エミリーの母の実家マレー家の当主。
 …最初はエミリーを義務と責任で引き取ったが、徐々にエミリーに対する愛情を表現するようになる。
ジミー・マレー エリザベスの従兄弟に当たり、ニュームーンで庭の手入れをしているおっさん。エミリーにとって最大の理解者。
 …声が組長先生(by「クレヨンしんちゃん」)まんまで笑った。だが彼がいなかったらエミリーは才能を開花させることは無かっただろう。
ローラ・マレー エリザベスの妹でエミリーの伯母の一人、エミリーを理解してはいないが同情はしている。
 …メーテルっ!!!!!!!!! じゃなくて、このキャラの名前は放送を全部見終えるまで覚えられなかった(※1)、それほど影が薄い。
アラン・バーンリ マレー家の血縁者で近所で医師をしている。娘に対して素直に愛情を示せないが、後に改心する。
 …医師というキャラだけに病人があるところには必ずいる便利なキャラ。マレー家の血縁者らしいが関係は分からず。(※2)
イルゼ・バーンリ エミリーの親友、エミリーが書く詩を心から愛し、エミリーのよき理解者となる。
 …この物語の人気ナンバー1は間違いなくこの娘だろう。たまにエミリーより目立っていたり、主役を奪ったりする。
ルースおばさん エリザベスとローラの妹に当たる。エミリーに嫌味を言ったり名前を覚えなかったりするが、それは性格であってエミリーを嫌っているわけではない。
 …最初見た時チョイ役かと思っていたが、エミリーをピンチから救ったりと大活躍なので驚いた。
ナンシー大叔母さん エリザベスの叔母でマレー家からウィザー家に嫁いだ人。エミリーを屋敷に招き、夏の間一緒に暮らす。
 …この人の気まぐれが気に入った。このアニメでは唯一、世界名作劇場版「赤毛のアン」に出ていた声優が担当。
キャロライン ナンシーと一緒に暮らす老齢の女性、ナンシーのお手伝いさんらしい。
 …なんか屋敷を不気味にすることに生命を賭けているようにしか見えなかった。
学校の友人・先生等
テディ・ケント エミリーと相思相愛の少年で、絵を描くのが何よりも好き。絵の才能がずば抜けており、それによってパリへ留学するが…。
 …最初に出てきた時からエミリーと相思相愛、なのに告白を焦ったためにピンチに陥りエミリーを失いかける。パリで女遊び疑惑有り。
ペリー・ミラー 最初はマレー家の下働きとして登場した少年だが、後に学校へ通うようになる。エミリーをものにするために猛勉強して主席にまでなるが…。
 …物語で一番の「努力の人」であることは誰にも否定できない。だがエミリーへの告白はネタ扱いされてしまう運命に…。
ローダ・シュチュアート エミリーのクラスメイトで、エミリーと敵対する銀行頭取のお嬢様。
 …ラビニア(by「小公女セーラ」)以上のいじめっ子、いや、誕生パーティのあれはもう「いじめ」という枠を超えている。
フランシス・カーペンター エミリーが通う学校の教師、エミリーの才能を認めてエミリーが進むべき道を指さす存在。
 …何年も前に卒業したエミリーをよく覚えていたなぁ。その上、愛の個人授業まで…それだけエミリーの才能を気にしていたということだ。
イブリン・ブレイク シュルーズベリーの高校にいた文学大好きの少女、エミリーより年上で何かというとエミリーに突っかかる。
 …そしてエミリーに弱みを握られあっけなく退場という、情けないキャラだ。
その他の人々
ジョン・サリバン
(「のっぽのジョン」)
マレー家の隣の物に住む謎のおっさん、「毒リンゴ事件」の首謀者。
 …この人、子供が大好きなんだろうな。この物語の中で好きな役をやらせてやると言われたら、私はこの人を選ぶ。
キャシディ神父 村に住む神父、「のっぽのジョン」を制御できる唯一の人物らしい。
 …この人もエミリーの才能に惚れた一人で、エミリーを温かい目で見守るおっさんキャラの一人。
ディーン・ブリースト 崖で遭難したエミリーを救助したことでエミリーと仲良くなった男、実はエミリーの父ダグラスの友人。
 …怪しさ満々で出てくるが、なかなかいい男でよかった。だがエミリー救助シーンは科学的にあり得ないぞ。
ジョー・ローズ 有名な女優でローダの誕生パーティに招待されている。自分の声にコンプレックスがあったが、若き日のダグラスに救われた過去がある。
 …誕生パーティに呼ばれておいて、その主賓のプライドをズタズタにするような行為はなかろう…。
その他
ナレーター 物語の要所で的確な解説を入れてくれる。「風のおばさん」の声もこの人らしい。
 …「風のおばさん」は、最初見た時怖かったよ。

※1…この登場人物紹介欄を含む概要は、「風の少女エミリー」再放送の視聴を終えてから記した。
※2…アラン・バーンリとイルゼ・バーンリは、設定上「マレー家の血縁者」という事になっているので「マレー家関係者」の欄に載せた。

・「風の少女エミリー」オープニング
「風の少女」
 作詞・吉元由美 作曲/編曲・宮川彬良 歌・堀江美都子
 「宇宙戦艦ヤマト」の故宮川 泰さんの息子が世に送り出したアニメ主題歌という点がまず目についた。宮川彬良さんは娘が小さい頃によく見ていたNHK教育の「クインテット」に出演し、その面白いキャラを見せてくれたことで印象に残っている音楽家さんだ。自身も父が音楽担当した「宇宙戦艦ヤマトV」の一部楽曲でアニメ音楽にデビューを果たし、当サイト読者に多そうな「世界名作劇場」シリーズファンの方にも「大草原の小さな天使 ブッシュベイビー」(1992年作品)の音楽担当として馴染みのある方は多いと思う。
 そして歌うはポリアンナやおぼっちまん君の声でお馴染みの堀江美都子さん、この組み合わせで「風の少女エミリー」のオープニングを印象深く盛り上げてくれる。曲はあくまでも明るく前向きの曲調で、この歌だけ聞いているとエミリーの「思いつめやすい」という性格が嘘のように感じる。
 そして背景に流れる画像は、前半における物語の世界観を見事に表現している。エミリーがやたら駆け回り、イルゼ・テディ・ペリーといった友人達が効果的に登場し、猫のソーシー・サールはオープニングで毎回その悪戯ぶりを披露してくれるといあものだ。だが最後の方はこの明るいオープニングが浮いてしまうほど本編が暗くなるので、そのギャップに驚く人もあるかも知れない。
 主題歌を歌う堀江美都子さんは、最終回にエミリーの娘ルーシー役として声優としての出演も果たした。

総評はこちら

次ページ「あにめの記憶」トップに戻る