第49話「幸せの涙が流れる時」 |
名台詞 |
「さあ、早く行っておあげなさい。もう我慢なさる必要は無いんですよ。」
(フィリップ) |
名台詞度
★★★★★ |
名場面欄シーンで、「オーレリィ」の正体を知ったビルフランが腕を拡げ「おいで」と言う。だがペリーヌは正体がバレたショックと、その自分の正体を知って受け入れてくれるビルフランを見た喜びが入り交じり、フリーズしてしまう。そのペリーヌを再起動させたのがフィリップのこの台詞だ。ペリーヌはこの台詞に背中を押されるように、祖父の胸へ飛び込む。
正直言って、文句無しで脇役による最高の名台詞だと思う。これまでのペリーヌの心境と、ビルフランの「孫への思い」を全て知っているという設定を考慮した上で、上手く言葉が選ばれていると思う。特にペリーヌがどれだけ祖父に甘えたいのを「我慢」していたか、彼が「調査」を通じて理解したという点が上手く示唆されていると思う。
正体が割れたときのペリーヌの気持ちは、まだ「祖父が自分の事をどう思っているのだろう?」というものが主であっただろう。もちろんビルフランが腕を拡げて「おいで」と孫が胸に飛び込むのを待っているのは見えていたはずだ。だがその光景が信じられず、本当に胸に飛び込んで良いのだろうか?という疑問があったはずだ。だからこそフリーズしたのだし、誰かが的か的確な言葉で再起動させてやる必要があった。この構図まで上手く描いた台詞だと思う。
だから、フィリップが選んだ言葉は「我慢しなくていい」という言葉は、まだ我慢しているペリーヌの背中を押すのに最も適した言葉だ。この言葉選びの成功でペリーヌが再起動する説得力が生まれた。そしてこの感動シーンを、大いに盛り上げたのだ。
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(次点)「叔父さん、お願いです。僕は心から叔父さんのことを心配して言うのですから、怒らないで聞いて下さい。あの娘と別れなさい、あの娘は叔父さんに悪い影響を与えすぎます。さっきの叔父さんの話も、僕はあの娘の影響だと睨んでいます。…ああ、やっぱり。エドモンを亡くした寂しさからあの娘を可愛がる気持ちは分かりますが、あの娘は危険です。そうです。まあ保育園くらいはいいとして、アパートだのクラブだのを作っていたら、会社がいくつあっても足りません。」(テオドール)
……でた、「銀河万丈節」。今になって見ると、この台詞を聞くとギレン・ザビの名演説が思い浮かぶだけの要素がある。「僕はパンダボアヌ工場の跡取りになれない!何故だ!」と言い出しそうだ(もちろん池田秀一さんの声で「坊やだからさ」とツッコミを入れるのを忘れずに)。考えて見ればギレン・ザビはペリーヌ物語の翌年だから、今話が放映されたちょっと後なんだよね。 |
名場面 |
フィリップの「最後の調査」 |
名場面度
★★★★★ |
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…もう何度見ても泣ける。ペリーヌと一緒に1話から耐えて来たなら、何度見ても涙が出る感動の名場面だ。「世界名作劇場」シリーズで指折りの印象的なシーンだ。
フィリップが「ペリーヌ様」と名前を告げた瞬間に、これまでずっと背景にあった暖炉の火の音が止まるのは、ペリーヌの「知られてはいけないことが知られてしまった」というショックが上手く描き出されている。そして「オーレリィ」の正体を知ったビルフランの反応が泣かせる。腕を拡げて「おいで」だけでなく、ペリーヌの名を口の中で繰り返して感慨に耽ったり、ペリーヌが腕の中で「おじい様」と言うと「もう一度」と何度もペリーヌにそう呼ばせる点、そしてこのシーンの直前に「神は私の願いを叶えて下さる」と言った事に対応して神に対して感謝の言葉を忘れない点。そういう細かい言動の中で、ちゃんとビルフランが「目が不自由な人」としての動きを忘れずに描いているところは、感動で多くの人の目には映ってないかも知れないが、とても細かい。
とにかく、本物語最高のシーンだ。
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今回の
迷犬
バロン |
バロン一世一代の大技、「死んだふり」。簡単に騙されるペリーヌもどうかしているが、これがバロン最大の大技であることは確かだろう。 |
気まぐれ度
★★★★★ |
感想 |
「ペリーヌ物語」最大のヤマ場、ビルフランが「オーレリィ」の正体を知り、ペリーヌと共に感動の涙と抱擁シーンが描かれることで多くの人の印象に残っている回だろう。
だが今話はそんな感動シーンが待ち受けているのに、前半は全くそれを感じさせない作りになっているのも特徴だ。前話の流れを引き継いで、サブ展開である「工場の変化」という物語だけで駒を進めて行くのである。ペリーヌが深夜にビルフランを連れだし、一般的な女工達の下宿を視察させることで、ビルフランが工員達の「実態」を知り、工場の福利厚生施設を拡充させる展開へと話が広がるのは、「うちの会社もこうならないかな?」と思って見た大人の視聴者もあることだろう。
そしてこの展開が自然に今話のメインである、「感動の抱擁」へと突き進む突破口になる。テオドールがビルフランに反対論を演説ぶる名場面次点欄シーンへと流れ、ここから「フィリップ弁護士からの電報」に話が繋がって、テオドールがフィリップにもれなくついてくるという展開へと流れる。その間にビルフラン邸での庭でのシーンが挟まることで、フィリップ弁護士が「こちらへ向かっている」という時間をさりげなく演出しているのは、ビルフランの「結果が待ち遠しい」という思いを浮き彫りにして、さらに感動シーンを盛り上げることになる。
そして感動シーンはもうあまりいうことが無いだろう。特に名台詞欄に挙げたフィリップの台詞はうまくできすぎている。
こうしてペリーヌが祖父からの愛を勝ち取り、孫として受け入れられるという物語の結論が出た「ペリーヌ物語」だが、ここで感動シーンで盛り上げておいてまだ4話も残っている。凄いのは残り4話は決して蛇足ではなく、最終話の大団円へ向けて色んな話をまとめに掛かることである。ここからは「工場の変化」という物語も進展し、「ビルフランの目」という新しい要素を交えながらラストへと突き進むのだ。 |
研究 |
・フィリップの「調査」
やはり今回考えてみたいのは、フィリップ弁護士が行ったエドモンの妻子に関する「調査」についてだろう。彼はこの「調査」を通じて、ペリーヌとマリの足取りを掴んだ上で「オーレリィ」こそがペリーヌ・パンダボワヌでありビルフランの孫だという事を突き止めた。
47話の研究欄に記した通り、フィリップはペリーヌの名前を知っていると考えた方が自然だ。だがビルフランに対しては、恐らく「オーレリィが自分の孫である」という思いを一人歩きさせないために名前は伏せたのだろう。名前を知ってしまえばビルフランの中でそれがどのように広まるか解らないのである。
また、47話シーンではビルフランは「オーレリィ」がパリにいた経験を語っていたことから、もしエドモンの孫であればパリにその足跡があるはずだと判断したのだろう。また、「オーレリィ」がパリで8月に母親を亡くしたことも語っていたことから、フィリップにパリに行くよう命じる。こうして彼の調査の舞台は「パリ」になったのだ。もちろんこの辺りは劇中に描かれていないだけで、ビルフランはフィリップに語ったはずだ。
47話研究欄で語った通り、フィリップが持つ「エドモンの妻子」の情報は「エドモンの妻子の名前」と「二人がフランスへ向かった」という事実だけである。これだけでパリへおっぽり出すのは無謀だと思うが、とにかくフィリップは手がかりを見つけてしまったのは確かだから仕方が無い。
フィリップはもし「オーレリィ」がエドモンの娘だった場合、ビルフラン経由で聞いた「オーレリィ」の経験談からマリが8月にパリで死去したという推論を立てるのは難しくなかったはずだ。そこでかれがまず行ったのは、パリの役所を当たって8月の死亡者について調べたことだろう。もちろん東京23区のようにパリには複数の役所があると考えられ、これをひとつひとつ丹念に調べたことだろう。こう考えれば「パリの隅から隅まで」というフィリップの台詞は、間違いではないと解釈することはできる。
そしていくつか目の役所で、「マリ・パンダボアヌ」の死亡届を発見したことだろう。もちろん死亡届には死亡場所の住所等も書かれている。死亡届さえ見つかればフィリップがシモン荘にたどり着くのは訳ないはずだ。
シモン荘へ行けばペリーヌも一緒だったことはすぐに解る。つまりパリで「エドモンの娘」の足取りを掴むと共に、「オーレリィ」がビルフランに語った事と話が一致してくることも理解する。さらにシモンはペリーヌが「へんてこな顔の犬」を連れていたことも語るだろうし、パリを発ってマロクールに向かったことも語るだろう。だがここではまだペリーヌがマロクールに辿り付いたかどうかは解らず、あくまでも「ペリーヌはパリにいてそこで母を喪った」という事実が確定したに過ぎない。そこでさらなる手がかりをシモンに求めると、取りあえずパリでのもう一人の関係者ということでルクリが紹介されたという事だろう。
ただ、ここでは一つ条件がある。シモンがルクリを紹介した際、旅から旅の生活をしているルクリがパリにいることである。だからこれは「偶然ルクリは家にいた」または「留守だったがすぐ帰ってきた」と解釈せざるを得ない。いずれにしてもルクリと会ったことで、フィリップはパリを発った後のペリーヌの足取りを知ることになる。そして恐らく、ペリーヌが「オーレリィ」が連れている犬と同じ特徴で同じ「バロン」という名前の犬を連れていたことを掴んだ事だろう。バロンの存在でペリーヌと「オーレリィ」が同一人物の可能性が高まったことで、彼はマロクールに帰り後は直接「オーレリィ」と話をしてこの件について確定させようとしたのだろう。
そして名場面欄シーンでのフィリップの「最後の調査」となる。彼はペリーヌが愛していたというロバの名を出し、彼女を油断させたところでルクリの名をわざと忘れてみせる。それでルクリの名が出てくれば、「オーレリィ」こそがペリーヌ・パンダボワヌでありビルフランの孫と確定…という訳だったのだ。
こうして見ると、「オーレリィ」=ペリーヌとフィリップに確定させたのは、バロンの存在だと言うことになる。ここは直接的活躍ではないがバロンの存在がとても大きくなった点であるのは言うまでもないだろう。47話のラストでフィリップがバロンの名を確認したシーンは、伏線としてとても上手く活用されているだけでなく、視聴者にこのような点を想像させる点にもなっているのだ。 |