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第41話 「お城のような家」
名台詞 「あれがカボチャの馬車なら、まるっきりシンデレラだ。」
(下宿屋主人)
名台詞度
★★★
 この日の仕事の途中で、ビルフランはペリーヌを自宅に住まわせることに決めた。そしてペリーヌの荷物とバロンを引き取りに、ペリーヌのそれまでの住まいであった下宿屋に立ち寄る。下宿屋の主人は「本当にビルフラン様のお屋敷に引っ越しするのかい?」とペリーヌに聞き、「そうらしいわ」と返答されてもまだ信じられない。そして信じられないという面持ちのままペリーヌとビルフランを乗せて屋敷に向かう馬車を見送り、最後にこう呟く。
 この台詞はペリーヌの新たなる出世を一言で表していると言って良いだろう。ついこないだまで池のほとりの小屋に勝手に住み着いていたホームレス少女が、ビルフランの秘書という役職に就くや高級の下宿屋に住むようになり、と思ったらその下宿屋も僅か数日で引き払って今度は社長が住む豪邸に住むという。このペリーヌの立場と住環境の変化を見て、視聴者の多くは「まるでシンデレラのようだ」と思っただろう。その思いを代弁したのがこの下宿屋の主人だ。
 さらにこの台詞が語られると、ペリーヌが繰る馬車は軽快な音を立ててビルフランの屋敷に向かうシーンに変わる。大袈裟な挿入歌が掛かるが、それがかえって良いBGMとなっていて、まさにカボチャの馬車がシンデレラ城に向かうシーンを連想させる。この台詞は直後のシーンとの組み合わせでとても印象に残るよう、上手く出来ているのだ。
名場面 ペリーヌとタルエル 名場面度
★★★
 ビルフランにインドへ電報を打つように命じられたペリーヌは、電文を作成し、総務からお金をもらってから電報局へ向かう。その途中でペリーヌは自分を追う足音があるのに気付く、タルエルだ。ペリーヌはタルエルが電報の内容を知るべく、後を付けてきたと判断して逃げる。この電報の内容は誰にも知られてはならない、ペリーヌはビルフランに強くいわれていたからだ。
 路地に逃げ込んだペリーヌを追って、タルエルも路地へ飛び込んで行く。迷路のような路地でしばらく「鬼ごっこ」が演じられると、ペリーヌは袋小路に行き当たってしまう。そして背後から聞こえる不気味な笑い声、タルエルがペリーヌを袋小路に追い詰めたことで高笑いしているのだ。
 「何故逃げる?…隠したって無駄だ、72フランもの大金を払って電報を打つからには、宛先はインドに決まってる」とペリーヌを問い詰めるタルエル。「違います!」と否定するがタルエルは続ける、「エドモン様はやはり生きておるのか? 何か情報があったからこそ電報など打つのだ…そうだろう!?」。「私は何も知りません」と返すペリーヌに、タルエルはついに手が出る。ペリーヌが持っていたハンドバッグを無理に取り上げようとするが、ペリーヌはそのタルエルの手を避けた拍子に転倒してしまい、タルエルにバッグを奪われる。「いけません!」と叫ぶペリーヌに構わず中を物色し、電文を見つけるが英語で書かれていてタルエルには読めなかった。「ちくしょう、英語か」と言って電文を投げ捨てるタルエルは、「そこに何が書いてあるかは後でゆっくり聞かせてもらおう。私の言いつけに背く奴はクビにする。仕事が終わり次第わしのところへ来い!」と鋭い声でペリーヌに命じる。そう言い終えて立ち去るタルエルを睨み付けるペリーヌ。
 いよいよ起きるべき事件が起きたと言って良いだろう。ペリーヌは秘書になったことで「ビルフランの個人的な事情」を握る事になってしまった。平時ならこれは問題にならないが、社内に後継者争いがあれば大問題である。しかもその秘密を握っているのが「小娘」となれば、ビルフランの手が届かないところでこのような事件が起きるのは時間の問題だったはずだ。
 そしてタルエルは力でペリーヌをねじ伏せようとする。彼の「工場内は自分が掌握している」という絶対的な自信に、ペリーヌも怯むことなく対抗する。電文を英語で書いて持ち歩くという策も、タルエルやテオドールに対する対策だっただろう。それが功を奏してこの場で秘密を知られることはなかったが、続くタルエルのペリーヌに対する脅迫をみれば、長期戦になればペリーヌに勝ち目がないのは明白だろう。組織的にタルエルにペリーヌをクビにする権利がないにしても、前上司という立場で屈服させることは可能だからだ。
 こうして緊張感たっぷりにペリーヌの絶体絶命のピンチを描くことで、今話の本筋が説得力を持って描かれる。ペリーヌが身体を張ったからこそ、次のステップアップに繋がるし説得力も出るのだ。
  

 
今回の
迷犬バロン
 
 散弾銃で撃たれたにしては、快復するの早すぎないか?
 手術の翌日だぞ? これ。
気まぐれ度
感想  ペリーヌがビルフランの「恨み」を聞いたことで、サクセスストーリーが一度リセットされたのは前々話。だがペリーヌの社会的地位はリセットされておらず、彼女の心境とは別に出世の階段を着実に登らされて行く。そんな構図が今話ではものすごくハッキリしている。
 今話は物語冒頭でタルエルとテオドールの印象を悪くしておいたのは正解だ。そこへペリーヌが大事な電文を持って一人で使いに出されるとなれば、二人が何か「事件」を起こすのは自然な流れとして受け取れる。そしてタルエルが名台詞欄の通り事件を起こす。幸いタルエルが「英語が読めない」という設定と、それに備えて電文を英語で持ち歩いたために事なきを得たが、タルエルの脅迫はペリーヌと視聴者に大きな不安を与えただろう。ペリーヌの性格から言って、ペリーヌがこれをビルフランに語るとも思えないし。
 だがビルフランはこれを「見抜く」、そしてペリーヌがタルエルに脅迫されていることも見抜くことになる。ビルフランは大事な秘書を守ることだけでなく、自分に関する秘密も守るためにペリーヌを「自宅に匿う」という対策を取る。そうすればペリーヌは会社では必ずビルフランの監視下となり、タルエルもテオドールも手を出せないという訳だ。そしてこれを知ったタルエルの落胆を描き忘れなかったのはポイントが高い。「ペリーヌは守られた」という事が強く印象に残る。
 それと今話の見どころは名台詞欄前後シーンもそうだが、屋敷に着いたペリーヌの行動が非常に細かく描かれていること。ペリーヌが始めて「電灯」というものを目にし、このスイッチを何度も入れたり切ったりしてしまうのは全く余計なシーンだが、見ていて面白いし好感度も高い。そして前話で怪我をしたバロンを忘れずに描いたことも印象がよい。
 それともうひとつ、今話は台詞がいちいち面白いというシーンが多いことだ。印象的な台詞が多く、名台詞欄に挙げる台詞はかなり悩んだ。時点も挙げようと思ったけど、決まらないのでやめた。しかも面白い台詞を言うのはレギュラーキャラではなく、下宿屋主人や屋敷の召使いなど、普段出番が少ない人ばかりだ。そのようなキャラの存在感が強いという意味でも、今話はとても印象に残りやすいだろう。

いよ〜っと
研究 ・ 
 ペリーヌがビルフラン邸住み込みで秘書の仕事をするようになったが、これこそペリーヌの立場がビルフランの「個人秘書」であり、会社にではなくビルフランに雇われているという証拠だろう。
 それと、電報を打ちに行くときは会社の金で電報を打ったようだが…これって「公私混同」じゃないの? エドモンの消息はあくまでも「ビルフラン個人のこと」であり、劇中でもそう話が進んでいるのだから、ここはビルフランがポケットマネーで…あ、大金だから会社が建て替えているんだ。そうだ、そうに違いない。

第42話 「ロザリーの悲しみ」
名台詞 「不思議だなぁ。自分の甥より、他人のお前の方がずっっと親しみを感じるなんて…。」
(ビルフラン)
名台詞度
★★★
 午前中の仕事の終わり頃だろうか、ビルフランは「オーレリィ」に昼食も一緒に取るように命じる。ペリーヌはそれを一度断りかけるが、「嫌なのか?」とビルフランに遮られたこともあって承諾する。そのやり取りの後にほぼ間を置かずに、ビルフランはこう独り言を言う。
 この台詞にはビルフランのペリーヌへの思いが込められているのは言うまでもないが、このシーンの直前にテオドールとタルエルの会話シーンを挟んでいる点が重要である。その内容はテオドールが「オーレリィがビルフランと暮らすようになった」と聞いて驚愕し、さらにタルエルがビルフランは「忠実で信頼出来る人間をそばに置きたかった」と言っていたとした上で、テオドールに「あなたはビルフラン様に信頼されていない」と突き付ける。それにテオドールが「僕は甥だぞ」と定型句と言える反論をすることだ。
 だがこの台詞とそのシーンを対比させると、タルエルの指摘は少し間違っていてビルフランがテオドールを信頼していないのではなく「親しみ」自体が無いという事がハッキリしてくる。ビルフランはテオドールに対し、タルエルと横並び…つまり血のつながりのない他人と同程度の親しみしか持っておらず、彼が甥だと言うことが実感出来ていないのだ。
 そしてその理由は、テオドールの姿勢から見いだすことができる。それはテオドールがビルフランを叔父として愛していないということだ。テオドールはビルフランの事を「叔父さん」と呼んでいるが、彼のやっていることは他人であるタルエルと同じ…ビルフラン亡き後の社長の座を狙っているのであって、事によってはビルフランが邪魔と思ったり、引退を願っているかも知れない。またビルフランの「願い」であるエドモンの帰還についても懐疑的であり、それを望んでいない。つまりビルフランと見ている方向が全く違う、単刀直入に言えばテオドールには叔父に対する「情」の欠片もないのである。
 対して「オーレリィ」はどうであるか、これは言うまでもないだろう。他人を装っても唯一の身内である祖父への情が溢れて出てしまっていて、ビルフランはそれを感じ取っているのは確かだ。ただビルフランが知らないのはその「情」の理由であるが。
 だから、ビルフランはテオドールを可愛いと感じもしないし、親しみも感じない。こんな構図が見えてくる印象的な台詞なのだ。
(次点)「あなたはまだオーレリィ、ペリーヌじゃないのよ。おじい様の孫ではなくて、忠実な秘書なのよ。わかったわね? オーレリィ。」(ペリーヌ)
…ビルフラン邸にやってきて最初の夜、夕食を前にペリーヌは鏡に映った自分の顔に向かってこう呟く。これはペリーヌの現状を上手く言い当てていると思う。自分がオーレリィである以上は、自分の感情を殺してでもビルフランに尽くして信頼されるのが役目であると。だが現時点では、その信頼の先に自分が正体を名乗れる日が来るかどうかも見えないという不安もうまく表現している。
名場面 ペリーヌとロザリーの喧嘩 名場面度
★★★★
 ビルフランと一緒に工場内を巡回するペリーヌは、ロザリーが働く建屋にやってきた。ビルフランとオヌーが機械について語り合っている間、ペリーヌは働いているロザリーに手を振って微笑むが、ロザリーはこれを無視。ペリーヌはロザリーとの友情が聞きにあることに気付き、ビルフランに頼んでロザリーに事情を話す時間をくれるよう頼み、承諾される。
 「ロザリー!」ペリーヌが呼ぶと、冷たい態度を取ってしまった後悔で座り込んでいたロザリーが驚いて座っていた椅子から落ちそうになる。だがロザリーは「あら、大丈夫?」と気を遣うペリーヌを無視して持ち場に戻り、ペリーヌを気にしていないような顔して仕事を再開する。「ロザリー、あなた何怒っているの?」ペリーヌが問えば、「怒ってなんかいないわ」と素っ気なく返答する。「私のこと聞いているでしょ?」ペリーヌが確認すると、「ええ、人の噂で」とやはり素っ気ない。ペリーヌは事情を直接話したかったけど時間がなかったことを言うと、ロザリーは「今朝、私が手を振ったのに知らんぷりしてたわ」と怒りのきっかけを語り出す。ペリーヌはそれを聞いて驚くと、馬車の運転に気を取られて気付かなかったことと、昼食もビルフランと取ることになって一緒にできなくなってしまったことを詫びる。だがロザリーはまだ納得がいかず、「でも、ちゃぁんと二人でお話しする暇があるじゃない?」とペリーヌに突っ込む。ペリーヌが「今はビルフラン様に待って頂いているの」と現状を言うとロザリーは驚きの声を上げて振り返る。「あなたとお話しするために待って頂いているのよ」とペリーヌが続けると、「ま、ま…ビルフラン様を待たせるなんて!?」ロザリーは絶叫する。「あなたに是非話しておきたいと思って…」と言いかけたペリーヌを、ロザリーは無理矢理回れ右さながら言う「わかったわ、わかったから早く行って」…その声からはその素っ気なさが消えていた。「日曜日は多分お休みがもらえるから、あなたの家へ行くわ」と語るペリーヌを、ロザリーは「うん、待ってる。さぁ、早く行って。ビルフランを待たせるなんてとんでもないことだわ」と追い立てる。走り去るペリーヌを「早く早く」と追い立てる。
 今話後半では、ロザリーを主役にペリーヌとの友情の危機が描かれる。二人はペリーヌの仕事上の都合で顔を合わせることが無くなり、すれ違いが増え、これにロザリーが笑顔で笑いかけてもペリーヌが気付かないという「とどめの一撃」まで演じられる。その危機にペリーヌは気付かず、ロザリーは徹底無視という形で反応したため余計に話がこじれてしまう。
 こうなると視聴者が気になるのは、二人がどのように仲直りするかという問題だ。上記のやり取りを見ていると、利用されたのは「ビルフランのキャラクター性」であった。ビルフランというのはロザリーを含めて工員達から恐れられている点がこれまでもさんざん描かれている。そんなビルフランでも大事な事は筋を通して「お願い」すれば聞き入れてもらえるというのは、ペリーヌしか気付いていない事実だ。ペリーヌはこの事実を利用してロザリーに逢いに行っただけだが…ロザリーはあのビルフランが自分達の友情のために待っていると受け取る。それは恐れ多いことでもあり、または嬉しいことでもあり、いずれにしても彼女にとってペリーヌが百言葉を並べるより説得力のある事実だった。
 そのビルフランが仕事の手を休めてまで自分と「オーレリィ」の友情が壊れないよう協力しているとなれば、いつまでも意地を張っているわけに行かないのである。ロザリーはペリーヌが最初に手を振った時点で「ペリーヌはまだ自分を友として扱っている」と気付き、それ以降は意地を張ってしまって「それをとめてくれるきっかけ」が欲しかった、それがビルフランがまっているという事実だった。
 そんな二人の喧嘩にビルフランが絡まってきた構図がよくわかる。殴り合いも言い争いもないが、「世界名作劇場」シリーズで印象に残る「喧嘩」のひとつだ。
 

 
今回の
迷犬バロン
(出番無し) 気まぐれ度
 
感想  まず、42話路にして始めてバロンが全く画面に出てこない回となった。従って「今回のバロン」欄は空白、他の面白いキャラの動きがあればそれにしたんだけど…「今回のダメ重役 テオドール」とかでも良かったかな?
 今話では、前半は前話のペリーヌがビルフラン邸に住まわされることになった物語の続きが描かれる。前話で示唆されたビルフランとの食事が描かれ、その過程を通じてペリーヌが屋敷の中でも「オーレリィ」を演じきるという展開が描かれる。その主たる物は名台詞欄次点だろう。そしてビルフラン側からは「オーレリィ」とテオドールを比較して、どちらが親しみを持てるかという名台詞欄の展開へと自然に流れて行く。これによってテオドールに足りない物が何かを上手く描き出したのは、名台詞欄で語った通り。テオドールもビルフランに対して「叔父」への
「情」を見せれば、ダメ人間でももっと信頼されたはずだ。だがここにもう一つ足りない物がある。なぜテオドールがビルフランに「情」を見せないかという理由だ。それは「ペリーヌ物語」自体のテーマに深く関わる部分で、ビルフランがテオドールを愛していないからだ。ビルフランがテオドールを愛さないから、テオドールもビルフランを愛せないのだ。
 そして後半は、ロザリーが主役を取る。ペリーヌとロザリーの友情の危機を描くことで、ロザリーは存在感をアピールすると共に、ビルフランのキャラクター性というものをキチンと印象付ける。ここにもロザリーとビルフランの関係について、ひとつの関係が見えてくる。それはもちろん、ビルフランはロザリーを部下として愛さないからロザリーはビルフランを怖がるし、ロザリーはビルフランを社長として慕うことができないのである。こういう構図は今話で徹底的に印象付けられる形で、これは物語が落ちるべき場所というのを明確に示唆しているところでもあろう。
 勿論、こういう見方ができたのは昨年のBSでの再放送時だ。子供の頃は単に登場人物達の日常生活が描かれ、ペリーヌとロザリーの仲違いが描かれたに過ぎず、ここまで深いテーマの1話だとは感じる事は出来なかった。
研究 ・ 
 

第43話「日曜日。ペリーヌは…」
名台詞 「ファブリさん、私はあんな工場なんかどうでもいいんです。私が欲しいのはおじい様の心からの愛情です。」
(ペリーヌ)
名台詞度
★★★
 名場面欄シーンの最後、父の死を告げることで祖父を悲しませたくないから孫だと名乗り出られなくても良いと訴えるペリーヌに、ファブリはビルフランの後継者になればあの工場が自分のものになるのだと強く言い聞かせる。それに対するペリーヌの返答がこの台詞だ。
 ここにペリーヌのゴールであり、この物語のゴールが明確にされた。そう、ペリーヌが祖父を求めてこの町に来たのは、祖父の後継者となって大金持ちになることではなく、自分にとって唯一残った肉親である祖父からの愛情を受けた平凡な生活を求めてきたというゴールだ。
 そしてペリーヌのにとって、この目的が揺るぎないものであることも明確になっている点でもある。ペリーヌはビルフランの秘書として、自分の祖父に財力を含めてどれだけ力があるかを見てきたはずだ。そしてビルフランと同居することになって、大きな屋敷での贅沢住まいというものまで経験している。こんな財力や贅沢を見ればこの世代の少女に限らず、「欲」が出てくるだろう。しかもその財力や贅沢を自分の者にできる術を持っているにのだから、それを使ってしまいそうなところだろう。だがペリーヌは全くぶれていない、それはこの台詞を「キッパリと言い切る」点にある。
 そんな彼女の気持ちをストレートに表現する事で、物語のゴールを1つに絞ったことで、いよいよこの物語がどのように終わるのかを示唆するのが、この台詞なのだ。
(次点)「それに何よりも、わしを裏切らん。わしは心からあの娘を信頼しているのじゃ。」(ビルフラン)
…ペリーヌ達が公園へピクニックに行っている頃、ビルフランとフィリップ弁護士は「オーレリィ」の話題になる。フィリップが「相当利口な娘さんのようですな」と言った時に、ビルフランが返した台詞だ。ここにビルフランがペリーヌを信頼する理由が短く明確にされる。「自分を裏切らないから」…単純だけどこれは重大だ。特に36話名台詞欄で「裏切った者は許さない」と明言した後だけに、逆に「決して裏切らない」ということがどれだけ信頼を得られる行為か、説得力があるというものだ。
名場面 告白 名場面度
★★★★
 ペリーヌとロザリーはファブリに連れられて、公園の池でボート遊びに出かける。その前にファブリが「今日こそは本当のことを全て教えて欲しい」とペリーヌに突き付け、ペリーヌが語りかけたところで「君はビルフラン様の…」と答えを出しかけたところで、空気を読まないロザリーに遮られるという伏線が描かれている。
 そして公園での午後、ボート漕ぎが上手く出来ず一人で意地になって練習しているロザリーを横目に、ペリーヌとファブリは語り合う。「やっぱり君は、ビルフラン様の孫だったのか…」とファブリが切り出すと、お決まりのようにペリーヌが口止めする。「でも何故なんだい? 何故黙っているんだい?」ファブリが問いただすと、ペリーヌはビルフランの母への恨みと、孫への無関心を本人の口から聞いた事を語る。だがファブリはビルフランがペリーヌを気に入っているに違いないという現状を語り「君が孫だと解れば、いっそう君のことが好きになるよ」とペリーヌに言い聞かせる。ペリーヌは立ち上がり「本当にそうなるかしら?」と問いかけしたあとで、「私が孫だと名乗り出るには、私の父が死んだことを教えなければならないのよ」と告げてビルフランがどれだけエドモンの帰りを待ち望んでいるのかを語る。ファブリは「でもそれは、遅かれ早かれ分かる事じゃないかな」と反論するが、「そうかもしれないわ、だけどあんなに父の帰りを待ち望んでいるおじい様に、今私は父が死んだことを告げる勇気がないの」と心に秘めていて心境を吐露する。「それじゃ君は、永遠に孫であることを知らせないつもりなの?」ファブリが立ち上がって問うと、「ええ、それでもいいと思っているわ。おじい様を悲しませなくて済むんだったら…」とペリーヌは力無く返す。それに対し「君は変わってるなぁ、いいかい? 君がビルフラン様の唯一の後継者だとすると、あのフランスでも1・2を争う工場は君のものになるんだよ」と力説するファブリに、名台詞欄の台詞をキッパリというペリーヌ。「二人とも何話しているのよ、ちょっと私の方見てよ!」と空気を読まずに割り込むロザリーの声に、「ロザリー上手いわよ、乗せて!」と返すペリーヌ。ボートに乗るため走り出すペリーヌを呼び止めようとするファブリだが、「君は一体これからどうするつもりなんだ?」と呟くだけだった。
 ペリーヌがファブリに全てを告白する、という形式でハッキリするのはペリーヌが胸に秘めている悩みと、それから出た決意だ。サクセスストーリーに入ってからここまでのペリーヌの行動理念も、ここに語られていると言っていいだろう。
 ペリーヌの困ったところは、自分がビルフランの孫だと名乗り出るためには父エドモンの死を告げねばならないこと。ビルフランは息子の帰りを心待ちにしている、だから自分は名乗ることができないという現況だ。だがこれはファブリの言う通り、ビルフランがエドモンについて調査している以上はいつかは必ず解ってしまうことで、ペリーヌもそれは理解している。ペリーヌが言いたいのは「自分の手で祖父を悲しませたくない」という事なのだろう。
 そして、その上でのペリーヌの決意は、祖父の財力や金力が目当てではなく、祖父からの本当の愛情を受けられれば他はどうでもいいという事。ペリーヌは今の生活で十分に祖父からの愛を感じていて、ある意味幸せと感じ取っているかも知れない。そのささやかな幸せが、自分が正体を名乗ったことで壊れるかも知れないことを誰よりも知っているのだ。ビルフランのマリへの恨みが再燃すれば叩きだされるかも知れない、そうでなくてもビルフランがエドモンの死を知れば…そんな障害を越えて自分が愛されるときを。ペリーヌは自分で作ろうとしているのだ。
 このやり取りを見ていれば、ペリーヌは現状で辛いけど最良の選択をしていることもよくわかるだろう。そしてその上で、今後の展開…ビルフランが自力でエドモンの死を知った後にこそ、ペリーヌが孫だと名乗れる道が開けるという展開をも示唆されているのである。このファブリとペリーヌの会話は、そういう点でも重要なシーンなのだ。
  
今回の
迷犬バロン
 
 自分の住まいを作ってもらっているというのに、全く関心がない様子。フェリックスとルイが犬小屋作りで張り合っていても、知らん顔。
気まぐれ度
★★
感想  サブタイトルだけを見ていると「ペリーヌの休日」が描かれるだけの平凡な話が描かれるように見える。確かに途中まではその方向で話が進む、犬小屋作りがあったり、ペリーヌがビルフランに外出許可を乞うたり、許されればロザリーのところへ遊びに行くと、平凡な休日が描かれているだけに見える。
 画面が「シャモニー」に店内に変わったところから話は様相を変える。ファブリが何かを考えていてロザリーの声が耳に届いていないように描かれる。40話名台詞欄でファブリはまだ確証がないとは言え、ペリーヌの正体について回頭を出してしまっている。ファブリがそれについて悩んでいるのは、しっかりと物語を追っている者にとっては言うまでもないだろう。そしてペリーヌが「シャモニー」に現れ、ロザリーが席を外して二人だけになったところでファブリはペリーヌの正体について問いただす。ペリーヌが語りかけたところでファブリが「回答」を言ってみるというのは上手い描き方だと思う。さらにそこにロザリーが空気を読まずに割り込み、話が後回しにされた時点でこのシーンは完成したと言える。
 後は名場面欄・名台詞欄に書いた通り、ペリーヌがファブリに全てを告白するという形でこれまでのペリーヌの気持ちや行動理由が整理され、同時にペリーヌの目的や決意という今後の考えが描かれる事で「物語の行き先」が定まる。これと並行してビルフランによるエドモン捜索計画の方針変更が描かれ、捜索の対象をインドからヨーロッパに変えるという「ビルフランも真実に近付きつつある」という要素が同時に描かれる。これらによってここまでサクセスストーリーとしてペリーヌの出世が描かれてきた物語が、また新たな方向へ舵を切ることが明確化されるのだ。ペリーヌのサクセスストーリーはまだ続くが、今後は社会的地位の向上という点ではなく、ビルフランの心にこれ以上に接近して絶対的信頼を勝ち得て目標を達するサクセスストーリーに変化する。終わってみると重要な物語であることが解るだろう。
 しかし、今話のロザリーは少し可哀想だったなー。今話はペリーヌとファブリで話を進めてしまい、ロザリーは二人の会話を切ることで話を進める訳に徹することに。つまり徹底的に「空気を読まない人」として描かれてしまった。このロザリーの「空気の読まなさ」は見事すぎて、ロザリーについて「空気が読めないキャラ」と印象付いてしまった人は多いことだろう。それほど見事に「空気の読まない」に徹し、それを演じてくれた。
研究 ・ 
 

第44話「いじわるな夫人」
名台詞 「ヨーロッパ中に出した新聞広告のおかげで、とうとうエドモンの消息がわかる日が近付いたのです。もし、賞金の300フランが支払われて詳しい情報が入れば、きっとエドモンが死んだという事が分かるでしょう。ビルフランはそれを知らなかったのです。でも、ペリーヌは知っていました。次の詳しい知らせが入ったときは、ビルフランが悲しみのどん底に突き落とされることを…。」
(ナレーター)
名台詞度
★★
 ブルトヌー夫人を招いての晩餐の途中で、ビルフランの元に一通の手紙が来る。その内容はエドモンがボスニアで発見された事を示す内容であった。そして使用斤を支払えば詳細を知らせるという内容でもあったのだろう。この内容をビルフランは晩餐会で発表し、多くの人の祝福を受ける。だがペリーヌだけは悲しそうな表情で部屋に戻る、そのペリーヌの姿を映しながらの解説がこれだ。
 この解説はいよいよビルフランの元に「エドモンの死」が伝わる直前であり、次話へうまく話を繋げる役割がある。同時に先回りして結果を知っているペリーヌの心境が上手く視聴者に伝わってくる。それを敢えてペリーヌに語らせず、ナレーターに解説させることでペリーヌが悩み苦しんでいるという点が上手く再現されているところでもあるだろう。来ることが解っていて避けられない悲しみを前に、悩み苦しむ人間というのは無口だからだ。
 また、この台詞の前でペリーヌがその手紙の内容を読み上げるシーンをあえて描かず、その後のビルフランの台詞とこの解説で手紙の内容をフォローした点も、次話の悲しみに向けて盛り上げる要素のひとつだろう。ペリーヌが悲しみを隠して手紙を読み上げるよりは、ペリーヌが悩み苦しんでいる方を想像した方が説得力は上がり「どうなっちゃうんだろう」感が強くなる。この解説の背景で悩み苦しむペリーヌが無言で部屋に帰るだけという点も、同じ効果があるだろう。
 こうして今話での盛り上がりを切らないまま、一気に次回予告まで行く。この次回予告ではハッキリとビルフランに「エドモンの死」が伝えられると語られており、この解説とセットで視聴者にヤマ場が近いことを上手く印象付けるのだ。
名場面 タルエルVSテオドール 名場面度
★★★
 今話は、勤務が終わり帰宅するビルフランを見送るタルエルとテオドールのシーンから始まる。ビルフランの馬車が見えなくなると、「どうやらオーレリィは、あの気難しいお方を、すっかりてなづけてしまったようですな」とタルエルが語り出す。だがテオドールはその真実が気に入らず顔を背ける。「お屋敷でもまるで身内の者のように扱われているようですな」とタルエルが続けると、「ちくちょう、あの小娘…」とテオドールの口から本音が出る。「近頃は秘書ぶりも板について、ちょっとした威厳さえ感じるほどですよ…」とタルエルが続ければテオドールも黙って無い、「君はみっともないぞ、何だい? オーレリィにおべっかなんか使ったりして」と返す。だがタルエルは「私はただ、ビルフラン様に忠実なだけですよ。ビルフラン様が気に入っている娘さんだから、私も気に入っているのですよ」と心にもないことを言い出す。ここでテオドールが話題を変え「ところで少しはエドモンに関する情報でも聞き出せたのか?」と問うと、「それがサッパリ」「なにしろ、あれだけ忠実な娘も珍しい。ビルフラン様がお気いりなさるのも無理はないですな」とタルエルと言い残してタルエルはその場を去る。テオドールは一言「ちくしょう!」と言うのが精一杯、そのテオドールを背にタルエルが歩き去る。
 このシーンは今話の取っかかりで、「後継者争いのその後」と「テオドールの焦り」というものを上手く描いている。
 まず後継者争いだが、この様子から見ればタルエルとテオドールによる会社の分割構想は、二人の意見の不一致から破綻していると見て良いだろう。その上で膠着状態に陥っているのは確かだ。二人の争いはビルフランの個人的な情報、特にエドモンの情報が漏れ聞こえてくるからこそ進んでいたのである。タルエルが漏れ聞こえた情報によってビルフランへの声掛けを考えて上手く取り入り、これを見たテオドールが焦るという構図だ。だがペリーヌが秘書になってビルフランの個人情報を管理するようになると、そのような情報は一切漏れぬようになったのだろう。恐らくタルエルは41話のようにペリーヌを脅しただけでなく、買収しようとするなどいろいろと情報を漏らすよう工作をしたのだと思う。だがペリーヌは口を割らないばかりか、それを察したビルフランに守られてしまう…タルエルがペリーヌに対して「ビルフランに忠実」という評価を下した理由も見えてきたぞ。たにかくタルエルがビルフランの情報を効く事が出来なくなったため、タルエルですら事態の進展を見守ることしかできなくなってしまったのだ。
 そしてもう一点は、テオドールの「焦り」である。タルエルはペリーヌがビルフランに忠実で動じないと見るや、ペリーヌも機嫌を損ねてはいけない対象とした。この辺りがタルエルの世渡りが上手い点であるが、テオドールはビルフランの心の中に入って行くペリーヌが脅威に写った。もちろん甥であるテオドールは、ペリーヌへの待遇が破格のものであり前例が無いことも知っているからこそという点もあるのだが…テオドールが感じたのは、「オーレリィ」という少女に「甥」としての自分の立場を持って行かれてしまい、ゆくゆくは工場の後継者の座まで奪われるという危機感を感じているのだ。恐らくテオドールはペリーヌが「赤の他人」でないと潜在的に気付いているのかも知れない、「親戚」の匂いというものを鈍い男ながらも感じ取っていると思われる。
 特に後者のテオドールの要素は、今話の物語を組み立てる上で重要だ。彼が「かーちゃんに言いつけてやる」という行動にに出て、珍しく自らが後継者争いのコマを進めるのだ。こうして今話がブルトヌー夫人→エドモン発見とうまく話が流れるのだ。
  
今回の
迷犬バロン
 
 初対面のブルトヌー夫人に吠えるバロン。見るからに怪しいおばさんだから仕方ないけど…でも今話はビルフランやブルトヌー夫人、それにペリーヌにまで「奇妙な顔」「おかしな顔」「おかしな犬」と言われてしまう始末。
気まぐれ度
★★★★
感想  実は今話ではサブタイトルになっている、テオドールの「かーちゃん言いつけるぞ」的な行動の果てにブルトヌーがやってくる事なんかどうでもいい。前話の流れを受けて次話へ向けて、息子の帰還を待ちわびるビルフランに「真実」が一歩一歩近付いているという点が描ければそれで良い話だ。ブルトヌー夫人がペリーヌに直接意地悪をするわけでもないし、せいぜい晩餐会で服装について注意する程度。あんなのは意地悪ではなく、ああいうことにうるさいおばさんは一人や二人いるから普通のこととして見るべきだ。
 今話は名場面欄に書いた「後継者争いのその後」と「テオドールの焦り」、そして名台詞欄に書いた「真実がビルフランに確実に忍び寄っている」という点の他にもうひとつの要素がある。これは今話で強くいうようになったのだが、ビルフランがエドモンの帰りをどれだけ待ち望んでいるかという印象付けである。そのような台詞はこれまでいくつが描かれているが、今回はより明白になった。何よりもテオドールが後継者としては不的確で、工場を継ぐのはエドモンしかいないとハッキリさせた点である。こうして次話で描かれる「ビルフランが真実を知る」という展開に向け、大きく盛り上げて行くと言ったところだ。
 しかし本当にタルエルって奴は世渡りがうまいよなぁ。41話でペリーヌを従わせようと脅迫したかと思えば、ペリーヌがビルフランに忠実だから無理となれば逆におべっかを使って「王」であるビルフランの反感を買わぬようにすると。彼は敵に回しいてて人間と、そうでない人間を見分けるのが上手いのだろう。もちろん今はペリーヌは「敵に回しては行けない側」だし、テオドールもそうだ。タルエルの動きを見ていれば、あの会社の中で誰が力を持っているかよくわかるぞ。
研究 ・ 
 

第45話「ボスニアからの知らせ」
名台詞 「どうやら悪い報せと見たが…。つまり俺には、良い報せということかな…。」
(タルエル)
名台詞度
★★★★
 ある日、フィリップ弁護士が予告無しに工場へビルフランを訪ねてやってくる。事務所の入り口でフィリップを出迎えたタルエルは、フィリップから「情報」を聞き出そうとするが、フィリップは「まずビルフラン様に報告しなければならない」とだけ言い残して去っていく。その後ろ姿をみて、何が起きているのか悟ったのだろう。タルエルはこう呟く。
 フィリップが「予告無し」でビルフランを訪ねてきただけで緊急事態だということが誰にでも解るが、この台詞はその「場」をさらに盛り上げる。
 何よりも言葉を上手く選んで、タルエルを「悪役」として完成させたのは凄い。これまでのタルエルのキャラクター性である「敵に回してはいけない人物に媚びを売り」「目下の人間には徹底的に威張る態度を取り」「言葉選びが上手くて世渡りが上手」という面を上手く活かした上で、ここだけはタルエルがこれまで使ったことがない一人称「俺」を使わせることで彼の腹黒さや企みといったものがうまく表現されて「悪役」として完成した。タルエルの台詞でこれほどまで上手くできていて、印象的な台詞は他にないと言いきれる。
 ここでタルエルが「悪役」として存在感たっぷりの台詞を吐いた事で、視聴者はフィリップが持っている「エドモンの死」という情報がビルフラン個人の問題では済まされない事を思い出し、不安を煽られることで場が盛り上がるのだ。
名場面 「エドモンの死」 名場面度
★★★★★
 遂にエドモンの死がフィリップによって伝えられた。ビルフランはエドモンの死亡証明書の件を聞かされた時のままフリーズし、ペリーヌも話を聞かされたときのままで固まっている。そこへタルエルとテオドールが部屋には入って来る。23秒の沈黙。ビルフランが絞り出すようにテオドールとタルエルの名を呼ぶと、エドモンの死を告げて翌日までの全工場の操業停止とエドモンの葬儀を行うことを告げて、これを工場に通達するよう命じる。「叔父さん、お悔やみを…」とテオドールが言いかけると、「二人とも出て行ってくれ」とビルフランは強く命じる。そしてフィリップにも「どうかわしを一人にして下さい」と告げて退室を促す。3人が出て行くと「オーレリィ、そこにいるか?」と問う、ペリーヌは「はい」と答えるがこの返答は嗚咽混じりであった。「お前も泣いてくれているのか?」ビルフランが言うと、ペリーヌは星飛雄馬ばりの涙を流しながら「はい」と答える。「わしは屋敷へ帰りたい」と言って立ち上がるビルフランに、ペリーヌは泣きながら肩を貸す。
 「エドモンの死」という情報を聞いたビルフランの落胆と悲しみが非常に上手く描かれている。それもこれをほぼBGM無し、そしてビルフランの台詞だけで描いていると言っても良いだろう。テオドールが空気を読まずに「お悔やみ」を言いかけるが、これを遮るからこそビルフランが悲しみを遠慮無く表現していることが理解出来る。
 そしてここでは、ペリーヌはビルフランの信用を得ていることが上手く使われる。本来ならここではペリーヌも退室させられるところだろう、だがペリーヌが泣いていることでビルフランは彼女を退室させず、屋敷へ帰る供として活用する事になる。恐らくここまでビルフランの心を掴んでなければ、もっと違う展開だったはずで今話までの流れを上手く使っている。
 他にもこれをみての言いたいことは沢山あるが、私の稚拙な文章ではこのシーンの感想や考察を語ることは不可能だ。このシーンに流れている悲しい空気、ビルフランの哀愁は是非ともDVDを買うなり借りるなりするか、再放送の機会などで見て確認して欲しいものだ。残念ながらこのシーンは完結版には収録されていない。


  
今回の
迷犬バロン
(出番無し) 気まぐれ度
 
感想  「エドモンの死」がビルフランに伝わる日、前々話辺りからこのXデーに向けて話を複数を掛けて盛り上げてきた。前話だけでなく今話前半もそうである。正直言って今話は見どころが多く、名場面になりそうなところが沢山ある。だが名場面欄に挙げたシーンは特に秀逸で、考察を書く上では余り悩まなかった。
 例えば前半での「シャモニー」のやり取り、特にファブリとフランソワーズの会話はその筆頭格である。ロザリーとフランソワーズから「エドモンが帰ってくる」という噂が広まっていることを聞いたファブリが、「エドモンは死んでいる」という可能性を語ってしまうこと。これでファブリはフランソワーズを怒らせてしまうのだが、このシーンではファブリが先回りして結果を知っているという前提でキチンと台詞が選ばれ、またそれをロザリーが見抜いて「エドモン様のことについて本当はもっと知っているんじゃないの?」と疑わせる展開は実に面白かった。ここでファブリはペリーヌから真実を聞かされているという点が上手く活かされている。
 またその直後のシーン、ビルフラン邸での夕食シーンもなかなか良い。ビルフランはエドモンの帰還に期待する余り、ブルトヌーが言うまでもなく自分にとって都合が良い方向へ物事を解釈し、ブルトヌーがこれにツッコミを入れるという構図はなかなか良い。そしてこの会話にペリーヌを深く傷つける内容があり、またペリーヌが結果を先回りして知っているからこその苦しみをキチンと描いている。特にブルトヌーが「エドモンが奥さんや子供と一緒だったらどうするつもり?」とビルフランに問いただしたとき、ペリーヌが緊張した表情でビルフランの方を見るという細かい演出もされている。このシーンはペリーヌの台詞無しでペリーヌの心境が上手く描き出されていて、印象深い。
 さらに工場からの帰りにビルフランが馬車を飛ばすようにペリーヌに命じるシーンや、出勤シーンでは元気のないペリーヌをビルフランが気遣うシーンなど、見どころは多い。どれもこれも「何も知らないビルフランの希望」と「先回りして結果を知っているペリーヌの苦悩」というのが上手く描かれている。まさに、全編名場面と言っていいだろう。
 しかし、今話のペリーヌはやけに髪がサラサラしているなー。何があったんだ?
 それと小屋での生活以来、久々に下着姿で登場もあるし…。

研究 ・ 
 

第46話「ビルフランの悲しみ」
名台詞 「見てごらん、今でも畑が少し残っているけど昔はこの辺は貧しい農村地帯だったんだ。だけど今はパンダボアヌ工場がある。君の偉大なおじいさん、ビルフラン様が自分一人の力で作り上げた、この国でも1・2を争う織物工場だ。この辺りの人達は、みんな畑を捨てて工場に勤めるようになった。人が集まってきて、村の人口も増えた。だけど、朝早くから工場で働いてもらう賃金は決して多くはない。それは、君もトロッコ押しでもらった賃金がいくらだったかを思い出せば、解るだろう? 確かに、ビルフラン様は偉い人だ。だけど、工場で働いている人たちの生活がどんなだかを考えてはいらっしゃらない。いや、きっと今までは工場を大きくすることばかりだけを考えていて、その他のことを考えるゆとりが無かったのかも知れない。それに、目がお見えにならなくなってからだいぶ長い。工場で働く人たちの生活状態を知るチャンスもなくなった。ほら、工場を囲むようにゴチャゴチャと軒を並べている家。そして今、君の住む宮殿のようなビルフラン様のお屋敷。工場で働く人たちが今日の葬式に少ししか出なかったのは、恐らくその人達が仕事をしているからと言って、別段ビルフラン様に感謝する気持ちは持っていないという事じゃないのかな。入院出来る病院もない、子供を安心して預けられる託児所もない、酒場は多いけど清潔なレストランは少ない。まあ、ロザリーの店は上等な方だけど、女工達の泊まっている下宿屋の酷い事は、君だって知ってるだろう?」
(ファブリ)
名台詞度
★★★★
 長いけど、今回最も好印象な台詞はこの台詞だ。
 エドモンの葬式が終わり、ロザリーやフランソワーズが帰ってしまうとペリーヌは一人になってしまう。そんなペリーヌをファブリが捕まえる。ペリーヌは父の葬儀にもっと人が一杯集まると思った旨を言うと、ファブリはペリーヌを村と工場が見渡せる丘の上に連れて行って、こう語るのだ。
 ファブリが語るのはマロクールの現状だ。この村に工場ができてからの変化と、それによって発生した現状。それはペリーヌに「ビルフランが工員達からどう思われているのか」という点を鋭く突きつける事になり、この台詞に対してペリーヌは「おじい様は働いている人達にあまり愛されていないのね」との回答を出す。それに対してファブリは「もしビルフラン様がみんなに愛されているのなら、恐らくその息子さんの葬式にはあの教会に入りきらない程の人がやってきただろうね」と返す。このやり取りでもってペリーヌは自分の祖父が誰からも愛されていないという事実を知ることになる。
 そしてこの台詞でペリーヌが「祖父は誰にも愛されていない」と知ることは、終盤にサブ展開で進み物語の大団円を彩る要素のひとつになるもう一つの物語、パンダボアヌ工場の変化という物語の出発点である。祖父が自分からだけでなく、誰からも愛される人になって欲しいという思いをペリーヌがしっかりと持ち、祖父に「人に愛されるにはまず自分が人を愛さねばならない」という母の教えを告げてこれを実行させる。前半の「旅」の物語と「マリの死」という伏線が活きてくる、ここまでの展開からは想像出来なかった物語が始まる出発点だ。そういう意味でこの台詞は印象深く、またファブリの台詞でもっとも印象に残るものとなった。
名場面 ビルフランVSペリーヌ 名場面度
★★★★
 エドモンの葬儀が行われた夜、やはりビルフランは食事に降りてこない。さすがのセバスチャンも困り果てると、ペリーヌがビルフランに食事するよう頼みに行くと言い出した。部屋に引きこもって泣いているビルフランは、ドアのノックの音がするとセバスチャンが来たと思って反応する。「オーレリィです、ビルフラン様」とドアを開けるペリーヌに「お前にも用はない」と鋭く返す。「私、どうしても聞いて頂きたいことがあるんです」ペリーヌは言うが、「わしは今、思うの話など聞く気持ちになれない」と返される。「どうしても聞いて頂きたいことがあるんです」「帰れ」「いいえ、帰りません」…いつもは素直なペリーヌも今回は強情だ。「わしに向かってそんな口をきくと許さんぞ!」ビルフランの口調が鋭くなるが、「どんなお叱りを受けても構いません、入らせて頂きます」と語るペリーヌの口調には明かな決意を感じる。「入ったらお前をクビにする」という宣告にも負けず、「結構です」と返してビルフランの元に進むペリーヌ。「お前は…けしからん!」ビルフランの顔が怒りに震え、ペリーヌを殴ろうとステッキを振り上げる。だがペリーヌも負けない、彼女は跪いてビルフランにすがり「お食事をして下さい」と強く言う。「手を離せ」ビルフランは絶叫するが、「お食事をしないとお体をこわします。どうか…たとえスープだけでもお口に入れて下さい」ペリーヌも力強く返して涙で潤んだ目でビルフランを見つめる。その声でビルフランにペリーヌの心が伝わり、力無く振り上げたステッキを下ろす。そして椅子に腰掛け「食べたくないのじゃ、オーレリィ」と力無く言う。だがペリーヌは「食べなくては身体に毒です、私はビルフラン様に病気になって欲しくないのです」と涙ながらに語る。その涙声にビルフランは反応し、「お前はわしのことを本気で心配してくれるのか?」と問う。「はい、心から」ペリーヌは一点の曇りもなく返答すると、「そうか、お前はわしのことをそんなに…」とビルフランは呟く。「ビルフラン様の悲しいお気持ちは、私は誰よりも解っているつもりです。私は父も母も亡くしています。その時の悲しみは今のビルフラン様と全く同じです」「わしは年の若い息子を亡くしてしまったのだぞ」「私の父も年は若かったんです、そして母も…」「そうだったな…」「どうか無理してでも、何かお口に入れて下さい。ビルフラン様」…。
 このシーンはビルフランとペリーヌの絆がさらに強くなったことを上手く描いている。いや、その要素を描き出すためにどうしても避けて通れないシーンだろう。息子を喪ったビルフランと、両親を喪ったペリーヌが、「悲しみを共有する者」として認め合って共感した瞬間だ。このシーンがあるからこそ、今後のペリーヌによる看病や、ペリーヌの正体が明らかになっていく部分でのビルフランの心境の変化に説得力が出るのであり、またビルフランが「オーレリィが身内なら良いのに…」と潜在的に感じたであろう事もこのシーンがあるからこそ想像出来る。
 だがさすがのビルフランも、「オーレリィ」が喪った「父」もエドモンであるとはこの時点では想像すらしていない。だがこのシーンではペリーヌが持つ悲しみがビルフランが持つ悲しみをわしづかみにしたのは言うまでもない。これは喪った人物が同一だからこその悲しみの共有であることは、ビルフランはまだ気付かない。この「ペリーヌの正体がばれる瀬戸際」をこんな感じでさりげなく、上手く描いているシーンでもあるのだ。
 いずれにしても、これでビルフランにとって「オーレリィ」は単なる娘ではなくなった。自分を愛する大事な娘であり、また愛さねばならない娘であることも理解したのは確かだ。
  

  
今回の
迷犬バロン
 
 バロンの忠犬たる部分が光る。今話序盤、エドモンの葬式にあたって多くの来客があったためにペリーヌが忘れ去られる。ビルフランが引きこもっているからフォローもない。そんなときの慰めは…バロンだ。
気まぐれ度
★★
感想  前話で「真実」を知ってしまったビルフランに続き、今話ではその反応が描かれる。だが今話はもう「ビルフランがエドモンの死を知る」という展開から新しい展開に入っている。そして今話から始まる新しい展開は、なんと二本立てだ。
 サブ展開の方は名台詞欄に詳細を書いた通りだ。ペリーヌが「ビルフランは工場の人達から愛されていない」と言うことを、エドモンの「二度目の葬儀」を通じて思い知る。そしてファブリによって村の現状を知ることで、ペリーヌによってビルフランが操られて、工場や村が作り変えられていく物語である。これは大団円に向けてひとつの重要なテーマだし、何よりも「ペリーヌの愛」を通じてビルフランが変わる事を描くという意味で「物語のテーマ」に迫る物語だ。
 そして本展開はいよいよビルフランが「オーレリィの正体」を知る話である。このきっかけとして名場面欄シーンは重要で、ビルフランがペリーヌと悲しみを共有すると共に、ペリーヌからの「愛」を明確に受け止めて自分もそれに応えようとするのである。そしてこの部分があるから、サブ展開も上手く回るという寸法だ。
 さらに言えば、ここでビルフランがペリーヌの愛情を見たことで、「この娘は他人とは思えない」と感じたところだろう。だからこそ次話でフランソワーズから「オーレリィ」についてのある情報がもたらされると、「オーレリィはエドモンの娘ではないか」という疑念が無理なく生じるのである。ここでペリーヌが見せた「愛」は、もう正体を知らなくても「とても赤の他人にはできない」と感じるようにできているのは、上手くやったと感心する。
 後は次話に向けて盛り上げるために、ビルフランが倒れるという要素だ。これもビルフランが「オーレリィの正体」に迫るために避けて通れない点だ。その辺りについては次話でじっくり書くことになろう。
研究 ・ 
 

第47話「オーレリィの顔」
名台詞 「セバスチャン、良い報せを持ってこれるといいがな。」
(フィリップ)
名台詞度
★★★★
 ビルフランに急に呼び出され、新たな「調査」のためにパリに旅立つフィリップは、ビルフラン邸を後にするときに調査対象である「オーレリィ」に声を掛ける。その後出発となるわけだが、見送りに出た執事のセバスチャンにこのように声を掛ける。
 これはフィリップの台詞だが、この台詞から浮かんでくるのはセバスチャンの主人への「思い」である。劇中で屋敷の召使い代表とも言えるセバスチャンがビルフランに対し忠実な働きぶりを見せているシーンは何度も描かれている。そして前話ではペリーヌがビルフランに食事をするよう説得に成功すると、それに心から感謝すると共にペリーヌにビルフランの本心を伝える役をもこなす。ペリーヌがいかにビルフランの信頼を得ようとも、ビルフランが最も信頼している人間はセバスチャンであり、ビルフランが他人に言えないようなことも知っているのは彼なのだろう。
 だからセバスチャンも、今のビルフランが何を欲しているかはよく知っているはずだ。エドモンの死がハッキリした以上は、ビルフランに必要なのは「信頼出来る跡継ぎ」である。この存在がない限りはビルフランの心が満たされないのは、セバスチャンは誰よりも理解していたのだろう。
 そしてそれを理解するもう一人の人間がフィリップだったわけである。ビルフランはペリーヌに話が漏れるのを恐れ、セバスチャンにはフィリップの調査内容を伝えていないしフィリップにも口止めしていることだろう。フィリップが去り際にこの台詞をセバスチャンに言い残したのは、次の自分の使命が「信頼出来る跡継ぎ」に関わるものであることをセバスチャンに伝えたのだと思う。セバスチャンはこの台詞でフィリップの調査内容がビルフランの「心の傷」を除去し、彼の長年の悩みである信頼出来る家族の不在や跡継ぎの問題についての調査だと、瞬時に理解したはずである。
 だが、セバスチャンもまさか「オーレリィ」がその調査対象であり、彼女がビルフランの血縁者である可能性は考えていなかっただろう。ビルフラン同様に「あれほどの愛情は赤の他人のものとは思えない」と思っていたとは思うが。
名場面 フランソワーズの見舞い 名場面度
★★★★
 日曜日、ビルフランは「エドモン様の小さいときの話でもして慰めよう」との考えで屋敷に来たフランソワーズの見舞いを受ける。部屋で二人だけでの対面となり、まずフランソワーズが茶を飲みながら「思ったより元気そうなので安心しました」と言ってこの会話シーンが始まる。「それは見かけだよ、わしの心はもうぽっかりと大きな穴が開いている。そこを冷たい風がひゅうひゅう音を立てて吹きまくっている」と力無く返答するビルフラン。「そんな悲しい事は仰らないで下さい」と返すフランソワーズにビルフランは続ける「でもな、時には穏やかな春風が吹くときがある。オーレリィじゃ、あの娘がいなかったらわしは間違いなく悲しみのために死んでいたよ…」「まぁ、そんな」「本当だよ。どういう訳かあの娘はわしのことを心から心配してくれる。いや、愛してくれると言ってもいい。わしはな、久しくこんな経験をしたことがなかった…」。ビルフランが語り終えるとフランソワーズは大きく頷いて、「きっと神様があの娘をおつかわしになったのでございますよ」と言う。「そうかも知れんな」と頷くビルフランに「わたしもあの娘と始めて会ったときビックリしたんですよ。前から知っているような気がして」と続ける。ここでBGMが止まり「どうしてだ?」ビルフランが問うと、フランソワーズは紅茶に砂糖を入れながら「それが自分でもよくわからなかったんでございます。でもこの間のお葬式の時にわかりました。オーレリィさんはエドモン様のお小さいときのお顔に、よーく似ているんでございますよ。それはもうソックリ」と答える。この台詞にビルフランが反応する、身を少し起こして「オーレリィが…エドモンと似ている?」と呟く。だがフランソワーズはその呟きが聞こえないかのように茶を入れながら、「私も歳のせいでエドモン様のお小さいときのお顔を忘れておりました。でも、お亡くなりになったと聞いた日は一晩中泣き明かしました」と続けるが、ビルフランはそれが聞こえないかのように「オーレリィがエドモンと似ている?」とまた呟く。「そして、エドモン様の思い出が次々によみがえってまいりました。ええ、赤ちゃんの時からのことが…エドモン様のお小さい頃の顔もハッキリと…」茶を飲みながら続けるフランソワーズを無視して、ビルフランは「オーレリィの顔がエドモンに…」と呟いて思考に落ちる。「きっと神様が、エドモン様の代わりにあの娘をおそばに置くようになさったのでしょう…」フランソワーズの言葉が聞こえたのか聞こえないのか、ビルフランは突然立ち上がる。ステッキが乾いた音を立てて転がる、驚くフランソワーズは気にせずに「そうか! …あ、いや、そうかも知れん。そうだ!」と歩いて廊下に出て、セバスチャンを呼ぶビルフラン。ビルフランはフィリップに至急来るよう電報を打てと、セバスチャンに命じる。そして驚いて追ってきたフランソワーズに来てくれたおかげで元気になった旨感謝の言葉を伝える。
 長くなったが、このシーンではついに目の見えないビルフランが、目が見えないがためにそれまで自分が知らなかった「オーレリィ」と名乗る少女についての情報を知る。それは「オーレリィの顔がエドモンの顔とに似ている」という重大な情報であった。この情報にビルフランは瞬時に反応し、思考に落ちる。彼の頭の中にあった謎…「なぜオーレリィは他人のはずの自分に他人とは思えない愛情を注ぐのか?」という謎の回答が、このフランソワーズからの情報にあるのではないかと感じたのだ。その内容は「オーレリィはエドモンの娘である」…ビルフランはこの回答を、これまでの「オーレリィ」の言動に当てはめたのだろう。彼女が自分に注ぐ他人とは思えない愛情についてこの回答を当てはめれば解決するのはもちろん、「オーレリィ」が父を喪っていること、母は「マロクールにいる親類」に恨まれていること、そして何よりも「オーレリィ」が父を喪ったのは、エドモンがボスニアで死去したのと同じ「3月」であること…「オーレリィはエドモンの娘である」という回答は、自分とオーレリィの間にある全てを埋めてしまうことにビルフランは気付いたのだ。
 ここで27の名場面欄シーンが伏線として上手く活用されている。フランソワーズはペリーヌとの初対面で驚き、「あんたとは何処かで会った」としていた。そして「エドモン死去の報せ」という「きっかけ」を経てその理由を思い出し、このように重要なシーンで活用する事で見事な伏線回収となる。どっかの某長い旅に見習って欲しいシーンでもある。
 そして物語はいよいよ、ビルフランが「オーレリィ」の正体を知る日へ向けて大きく舵を切る。その接点は誰がなんと言ってもこのシーンであろう。
  

 
今回の
迷犬バロン

 名台詞欄シーンの直前、ペリーヌはバロンを連れて調査に旅立つフィリップを見送る。その際、フィリップはペリーヌが連れているバロンに声を掛け、名前を聞くと共に「パリでも一緒だったか」の確認を取る。このシーンから、フィリップの調査に置いて、バロンの存在は重要な役割を占めていたことが容易に想像出来るシーンとなった。バロンの存在が最も役立ったシーンである。
気まぐれ度
★★★★
感想  今回は重大な話だ。見どころが沢山あって、語りどころが多い1話でもある。
 序盤では「ビルフランが倒れる」という重大事の影響を描くことで話が進む。跡継ぎであるエドモンを喪ったことで仕事に情熱が持てないビルフランは、遂に一時的とは言え社長代行を任ずるときが来たのである。そして社長代行に指名されたのはタルエルという形で、「後継者争い」に一旦は回答を出すという「影響」が描かれている。同時にビルフランがペリーヌの深い愛情を受け、ペリーヌを心から信頼している様も描かれる。ビルフランがペリーヌに語った「夢」のエピソードはその最たるものだ。
 そして中盤の入り口で「シャモニー」にシーンが代わり、フランソワーズがビルフランを見舞う話へと流れる。見舞いそのものは名場面欄に書いたが、その前の「シャモニー」でのシーンは無くても良かったと思う。ここは余計なシーンを入れずに、じっくりとビルフランの変化とペリーヌの反応を描いて欲しかったと思う。おかげでペリーヌが、主人公でありながら積極的に物語に関わらない展開となってしまった。
 そして名場面欄を受けてフィリップが来訪し、ビルフランがエドモンの娘の所在を調査するよう命じる。このシーンも台詞が上手く選ばれ、とても印象的にできているところだろう。特にフィリップがビルフランの話を端から信用せず、あくまでも慎重なのがこれまた良い。確かに、あれほどの大金持ちの孫であれば財産に目が眩んで名乗り出るのが普通で、そうでないと言うことはビルフランがどれだけ盛り上がっても疑いの対象として見るのは正解だ。
 そして今話は最後のオチまで目が離せない。「今回の迷犬バロン」欄シーンと名台詞欄シーンも重要だ。前者はフィリップがどんな調査をしたのか視聴者に想像させるために重要であるし、後者はセバスチャンやフィリップのビルフランに対する忠誠や信頼を描く要素として重要だ。
 今話の謎は、フランソワーズがビルフラン邸に迎うシーンだ。この時、ペリーヌは屋敷の馬車に乗って出かけているが、これが何の用事で何処へ出かけるのかが全く説明されていない。私としては、「フランソワーズに会いたい、話をしたい」と言い出したビルフランのために、ペリーヌが「シャモニー」へフランソワーズを呼びに行ったと思っている。ペリーヌは馬車にフランソワーズを乗せ、屋敷に戻ったのだろう。そしてビルフランからフランソワーズと二人で話がしたいから席を外すよう命じられ…その後どうなったんだろう?
 いよいよビルフランがペリーヌの正体を知るのか、その反応は…と思ったら、次話は「サブ展開」の話なんだよなー。
研究 ・ビルフランとフィリップの会話
 今話後半、名場面欄シーンを受けてフィリップがビルフランに呼び出され、翌日に二人がエドモンの妻子について語り合う。劇中ではビルフランがフィリップにエドモンの妻子の行方を尋ね、解らないと言われるとそれを調べるように命じる。それに対してフィリップは、ビルフランがエドモンの妻子について関心がなかったことを指摘し、エドモンの妻子が苦労しているであろう事に心を痛めていてた事を告白してなぜエドモンの妻子を気に掛けるようになったか理由を問う。そこでビルフランは「オーレリィ」がエドモンの娘で自分の孫ではないかという持論を展開し、そこでペリーヌがバロンと遊ぶシーンとなって二人の会話は飛ばされる。
 ここではビルフランが、「オーレリィ」が自分の孫でないかと思うようになったきっかけが語られたことだろう。そして、そのきっかけから思考が回り、「オーレリィ」の自分に対する言動は「オーレリィが孫である」という解を入れると納得出来ると気付いたことを、詳しく説明したに違いない。
 これに対し、フィリップも「オーレリィ」がエドモンの娘であろう事は間違いないと踏んだことだろう。だが彼は慎重にに事を運んだ。ペリーヌとバロンのシーンから場面が戻って来ると、「なるほど、ビルフラン様のお話はよくわかりました」というフィリップの反応から始まる。そして「どうしてオーレリィさんは自分が孫だと名乗らないのでしょう」という誰でも考えつく疑問を言う。ビルフランは自分がエドモンの嫁を嫌っていることを知っているだけでなく、さんざん悪口を言い「孫など要らぬ」と言った記憶もあるとする。だがフィリップはあくまでも慎重で、「あるいは、オーレリィさんがお孫さんじゃないかも知れない」と突き付ける。ビルフランは頭を抱え、「だから調べて欲しい」と言う。
 問題はここからだ。フィリップは「実は少し調べてある」と言って鞄から書類を出す。そして「二人がボスニアからフランスに向かったのは確かだ」と語る。ここでフィリップがエドモン死去後のペリーヌとマリの行動についてどれくらい知っていたかだ。
 ペリーヌとマリが明確な足跡を残している話があった、二人がイタリアのトリエステに到達した第6話だ。ここではペリーヌとマリが警察の尋問を受けており、この歳にマリは自分の身分証明としてエドモンとの結婚証明書を提示しているし、フランスへ向かう道中という事も語っている。つまり「エドモンの妻子」が確実にこの地を通ったという明かな証拠を明確に残しているのだ。
 フィリップは「ヨーロッパ中の新聞」にエドモン捜索の記事を出している。その記事はトリエステの新聞にも出ているはずだ。つまりトリエステの警察署がこの記事に反応してフィリップに連絡を入れた可能性は高いのだ。その連絡がボスニアから「エドモン死去」の情報と同時か少し後に来ていたら…彼はトリエステの警察からの情報でエドモンの妻子が「フランスへ向かった」と知った可能性は高い。ついでに言うと、エドモンの妻が「マリ」で娘が「ペリーヌ」であるという情報も知っていただろう、だからビルフランの「オーレリィはエドモンの娘」という推論は当たっていると思いながらも、「名前が違う」から慎重だったのだろう。
 ここからは私の推測だが、この後フィリップはビルフランに「もしオーレリィが本当に孫だったらどうするか?」「孫でなかったらどう扱うか?」を問うていると思う。ビルフランは前者については「償いとして幸せにしてやる」というような事を言っただろう、だがもし孫でなかった場合、ビルフランが「オーレリィ」をどのように扱うつもりだったかは興味がある。養子にするなど自分の庇護の元に置くことを考えたであろう。ただビルフランはもう「オーレリィは孫である」以外の結論は考えていなかったであろう。その「孫」を幸せにしてやると言う意思が、次話で描かれる彼の新たな「情熱」になったことであろう。

第48話「火事」
名台詞 「うん、このロコモービルのおかげでわしはオーレリィと知り合えたと思うと、何だか、妙な愛着を感じてな。そうか…そんなに順調に動いているのか…。なかなかいい音をしている…。」
(ビルフラン)
名台詞度
★★★
 ビルフランは仕事に復帰し、ペリーヌとファブリを伴ってサン・ピポア工場へ視察に行く。工場内の蒸気機関(ロコモービル)の見て、ビルフランは「オーレリィ」を始めて通訳として呼んだ日を思い出し、「運命だな」と語る。ファブリが出張へ行ってなければ、「オーレリィ」をここへ呼び通訳として使い、知り合うこともなかったことを「運命」だとするのだ。そしてファブリが蒸気機関が順調であることを報告すると、ビルフランはこう語るのだ。
 ビルフランの「思い」が見え隠れしているのはこの台詞だろう。彼には「オーレリィ」と親密になるきっかけを得たサン・ピポア工場の蒸気機関に特別な愛着を持っている。恐らく今までのビルフランは機械は機械としてみており、機械に愛着を感じる事など無かったであろう。だがこの機械だけは別なのは、自分を他人とは思えない愛情で包んでくれ、ことによると自分の孫かも知れぬ少女と出会うきっかけをくれたからだ。この台詞には「この機械が巡り合わせてくれた」というビルフランの感慨と喜びが伝わってくる。
 そしてこの台詞を端で聞き、照れくさい顔をするペリーヌも同じ思いであるだろう。自分と祖父を接近させてくれたこの機械に、彼女もビルフランに負けず劣らない愛着を感じているはずだ。やっと祖父からここまで思ってもらえる日が来たのだと、彼女もまた感慨があったはずだ。
 そしてその台詞を耳にしたファブリも、「オーレリィ」の正体を知っているだけにまた別の感慨があったことだろう。彼は彼でビルフランのこの台詞を聞いて「ペリーヌが正体を名乗れる日は近いかも知れない」と安堵したことだろう。
 その3者の感慨の入り乱れ、そのきっかけとなったこのビルフランの台詞は、とても印象深いものだ。
名場面 火事の後の社長室 名場面度
★★★
 サン・ピポア工場工場からの帰り道、一行は悲惨な火災現場に遭遇。特にペリーヌにはショックが大きく、ペリーヌとビルフランは早々に社長室へ帰ってくる。
 タルエルが火事の詳細と翌日に犠牲者の葬式があることを報告すると、「今日はさすがわしも疲れた。帰るとしようか」とビルフランは「オーレリィ」に就業を告げる。だがペリーヌは「あのう…」と声を上げる。「明日のお葬式にはお出になるのでしょうか?」と続けたペリーヌに、「わしがか? わしがどうして出なければならないのだ?」とビルフランは返す。「亡くなった子供の母親たちは、この工場で働いている最中に不幸に遭ったのですから…」とペリーヌは訴えるが、「子供を亡くした悲しみならわしだって知っている。息子の葬式の時、あの女たちは来てくれたかね?」ビルフランは厳しい声でペリーヌに問う。ペリーヌが「…たぶん、来なかったと思います。あの人達だけではなく、働いている人の大部分は来ませんでした」と返すと間髪入れずに「それ見ろ、わしが明日の葬式に出る必要など何処にもない。工員共は恩知らずだ!」吐き捨てるビルフラン。「いいえ、それは違います」ペリーヌが珍しく言葉を返す、「あの人達は、朝から晩まで働いても、ほんの少しの賃金しかもらってないので、別にビルフラン様に恩など感じていないのです」と一気に続ける。「何だと? お前はそんな風に考えているのか?」ビルフランが驚いて聞き返すと、ペリーヌは立ち上がり「はい、ビルフラン様は今まで工場を大きくすることだけを考えていたのではないでしょうか? ですから、これからは働いている人たちの事を、もっともっとお考えになって頂きたいのです」と語る。「お前はわしが人の事など考えない自分勝手な人間だというのだな?」ビルフランは爆発寸前である。「本当はそんな方ではないことを、私はよく知っています」ペリーヌは強く言うがその先の言葉が出ない、と思うとペリーヌはビルフランのところへ走り「亡くなった母が私に教えてくれました。人に愛されたかったらまず自分が愛さねばダメだと。ビルフラン様が工場の人達から愛されるには、まずご自分があの人達を愛さねば…」と訴える。だがビルフランはペリーヌの言葉を「もういい」と遮り、しばらく窓辺に立ち尽くす。そして屋敷に帰ると言う。
 いよいよ物語終盤のサブ展開、ペリーヌによる工場の改造が始まる。46話と21話の名台詞欄の要素を上手く使い、本話中盤の「火事」という要素をきっかけにペリーヌがこの工場やビルフラン自身に足りないものが何かを訴える。
 恐らく、それはビルフランが思いも及ばないことであっただろう。上から見下ろす感じで働き場所を提供してやれば工員は自然に付いてくる、そういう方針だったに違いない。だがそんな「上から目線」が生んだのは、自分が工員達に愛されていないという現実。これでは会社のナンバー2と3である、タルエルやテオドールが自分の心を傷つけてまで後継者争いに没頭するのも無理はない、そう思ったことだろう。
 だが、「オーレリィ」の訴えをそのまま認めるのは、彼のプライドが許さなかった点もあるだろう。だから少女の訴えに即答出来なかった、自分のこれまでの工場そのものや工員達に愛情のない態度を密かに反省した上で「オーレリィ」に心境を打ち明けるきっかけを待っていたのだろう。
 このペリーヌの叫びは、ペリーヌが「理想の祖父」としてビルフランが皆に愛されて欲しいと願う気持ちだけではない。恐らく劇中で描かれた火事で犠牲になった子供達の恨みが、彼女の世界を押していたのだろう。そしてこのペリーヌの声は、普段のビルフランなら聞き入れなかったに違いない。だがビルフランはもうこの「オーレリィ」という娘を裏切れなくなっていた。この娘が本当に孫であったらなおさらだし、そうでなくてもこれまでの見せてくれた愛情を思えば決して裏切れないのだ。そんなビルフランの「オーレリィ」への思いと、プライドが見えてくる凄いシーンだと思った。
  
今回の
迷犬バロン
 
 ビルフランが病気の間、ずっと屋敷にいたペリーヌが仕事の再開でまた留守になると聞いて甘えるバロン。今回は甘えん坊モード全開だ。
気まぐれ度
★★★★
感想  「世界名作劇場」シリーズの華と言えば、「主人公とその親の盛大な別れ」「主人公や準主役の病気」そして「火事」である。この「ペリーヌ物語」ではここまで「火事」だけ出てこなかったが、ここで満を持して出てきたという感じだろう。「ペリーヌ物語」も「華」が全部揃ったぞ。
 だがその「火事」によって、主人公達が焼け出されて生活が一変するようなものではない。物語の様相をひとつ変えるというのがその使命だ。これまで物語はペリーヌのサクセスストーリーを通じたビルフランとの物語を主軸に描かれ、その他の要素は無かったと言っても良い。だがこの「火事」は、ペリーヌの存在がきっかけに「愛」に目覚めたビルフランが、それが工場経営に真に必要なものと理解して、ペリーヌと共に工場を造り替えるというサブ展開の本格的な始動のきっかけとして物語の様相をガラリと変えてしまうのだ。
 今話も見ていてなかなか面白い。前にもそういう話はあったが、通りすがり以外のキャラクター全員にその存在理由が明確に与えられているのだ。例えば前半に出てくる「オーレリィ」に賃上げを要求する女工も、ビルフランを恐れ本音が言えないパンダボアヌ工場の平均的な女工の姿を印象付ける役割がある。そして後になって、結果的にはこの女工の願いは叶っていることが解るというものだ。さらに子供を失った母も上手く台詞を選んでいて、名もないキャラなのに視聴者に強い印象を与える。
 それら一つ一つがペリーヌの言動(特に名場面欄シーン)と、ビルフランの心境変化に説得力を与える要素になっているから面白い。話に「筋」がひとつ通っているのだ。
 ただその「筋」から外れる展開が今話に一つだけある。それは序盤、タルエルが社長室の椅子に腰掛けて「気分」を味わっているシーンだ。このシーンは今話の本筋には絡まないが、一連の「後継者争い」を上手く描くと共に、ビルフランが予告無しで出社したときのタルエルとテオドールの反応、「社長気分も今日まで」と落胆するタルエルの様子が面白く描かれている。
 そして何よりも、ビルフランの前話以降の変化を描き忘れていないのがこんわの特徴でもある。忠実な秘書「オーレリィ」が自分の孫かも知れぬ…跡取りを喪ったと思って落胆したが、やはり喪っていなかったという喜びと、何よりもこの娘が本当に孫なら倒れている場合ではないという「張り」というものが、今話のビルフランに一貫して描かれている点は秀逸だ。
 それと今話のペリーヌは、なんだかよくわからないけどとても美しく描かれている。光線や出し方を上手く考えているというか…その辺りに気を使って描けば、「へのへのもへじ」顔もちゃんと引き立って美しく見えるという恒例だと思う。



 そして、いよいよ次話が本物語最高のヤマ場だ。
研究 ・ 
 

第49話「幸せの涙が流れる時」
名台詞 「さあ、早く行っておあげなさい。もう我慢なさる必要は無いんですよ。」
(フィリップ)
名台詞度
★★★★★
 名場面欄シーンで、「オーレリィ」の正体を知ったビルフランが腕を拡げ「おいで」と言う。だがペリーヌは正体がバレたショックと、その自分の正体を知って受け入れてくれるビルフランを見た喜びが入り交じり、フリーズしてしまう。そのペリーヌを再起動させたのがフィリップのこの台詞だ。ペリーヌはこの台詞に背中を押されるように、祖父の胸へ飛び込む。
 正直言って、文句無しで脇役による最高の名台詞だと思う。これまでのペリーヌの心境と、ビルフランの「孫への思い」を全て知っているという設定を考慮した上で、上手く言葉が選ばれていると思う。特にペリーヌがどれだけ祖父に甘えたいのを「我慢」していたか、彼が「調査」を通じて理解したという点が上手く示唆されていると思う。
 正体が割れたときのペリーヌの気持ちは、まだ「祖父が自分の事をどう思っているのだろう?」というものが主であっただろう。もちろんビルフランが腕を拡げて「おいで」と孫が胸に飛び込むのを待っているのは見えていたはずだ。だがその光景が信じられず、本当に胸に飛び込んで良いのだろうか?という疑問があったはずだ。だからこそフリーズしたのだし、誰かが的か的確な言葉で再起動させてやる必要があった。この構図まで上手く描いた台詞だと思う。
 だから、フィリップが選んだ言葉は「我慢しなくていい」という言葉は、まだ我慢しているペリーヌの背中を押すのに最も適した言葉だ。この言葉選びの成功でペリーヌが再起動する説得力が生まれた。そしてこの感動シーンを、大いに盛り上げたのだ。
(次点)「叔父さん、お願いです。僕は心から叔父さんのことを心配して言うのですから、怒らないで聞いて下さい。あの娘と別れなさい、あの娘は叔父さんに悪い影響を与えすぎます。さっきの叔父さんの話も、僕はあの娘の影響だと睨んでいます。…ああ、やっぱり。エドモンを亡くした寂しさからあの娘を可愛がる気持ちは分かりますが、あの娘は危険です。そうです。まあ保育園くらいはいいとして、アパートだのクラブだのを作っていたら、会社がいくつあっても足りません。」(テオドール)
……でた、「銀河万丈節」。今になって見ると、この台詞を聞くとギレン・ザビの名演説が思い浮かぶだけの要素がある。「僕はパンダボアヌ工場の跡取りになれない!何故だ!」と言い出しそうだ(もちろん池田秀一さんの声で「坊やだからさ」とツッコミを入れるのを忘れずに)。考えて見ればギレン・ザビはペリーヌ物語の翌年だから、今話が放映されたちょっと後なんだよね。
名場面 フィリップの「最後の調査」 名場面度
★★★★★
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…もう何度見ても泣ける。ペリーヌと一緒に1話から耐えて来たなら、何度見ても涙が出る感動の名場面だ。「世界名作劇場」シリーズで指折りの印象的なシーンだ。
 フィリップが「ペリーヌ様」と名前を告げた瞬間に、これまでずっと背景にあった暖炉の火の音が止まるのは、ペリーヌの「知られてはいけないことが知られてしまった」というショックが上手く描き出されている。そして「オーレリィ」の正体を知ったビルフランの反応が泣かせる。腕を拡げて「おいで」だけでなく、ペリーヌの名を口の中で繰り返して感慨に耽ったり、ペリーヌが腕の中で「おじい様」と言うと「もう一度」と何度もペリーヌにそう呼ばせる点、そしてこのシーンの直前に「神は私の願いを叶えて下さる」と言った事に対応して神に対して感謝の言葉を忘れない点。そういう細かい言動の中で、ちゃんとビルフランが「目が不自由な人」としての動きを忘れずに描いているところは、感動で多くの人の目には映ってないかも知れないが、とても細かい。
 とにかく、本物語最高のシーンだ。

  

  
今回の
迷犬
バロン
  
 バロン一世一代の大技、「死んだふり」。簡単に騙されるペリーヌもどうかしているが、これがバロン最大の大技であることは確かだろう。
気まぐれ度
★★★★★
感想  「ペリーヌ物語」最大のヤマ場、ビルフランが「オーレリィ」の正体を知り、ペリーヌと共に感動の涙と抱擁シーンが描かれることで多くの人の印象に残っている回だろう。
 だが今話はそんな感動シーンが待ち受けているのに、前半は全くそれを感じさせない作りになっているのも特徴だ。前話の流れを引き継いで、サブ展開である「工場の変化」という物語だけで駒を進めて行くのである。ペリーヌが深夜にビルフランを連れだし、一般的な女工達の下宿を視察させることで、ビルフランが工員達の「実態」を知り、工場の福利厚生施設を拡充させる展開へと話が広がるのは、「うちの会社もこうならないかな?」と思って見た大人の視聴者もあることだろう。
 そしてこの展開が自然に今話のメインである、「感動の抱擁」へと突き進む突破口になる。テオドールがビルフランに反対論を演説ぶる名場面次点欄シーンへと流れ、ここから「フィリップ弁護士からの電報」に話が繋がって、テオドールがフィリップにもれなくついてくるという展開へと流れる。その間にビルフラン邸での庭でのシーンが挟まることで、フィリップ弁護士が「こちらへ向かっている」という時間をさりげなく演出しているのは、ビルフランの「結果が待ち遠しい」という思いを浮き彫りにして、さらに感動シーンを盛り上げることになる。
 そして感動シーンはもうあまりいうことが無いだろう。特に名台詞欄に挙げたフィリップの台詞はうまくできすぎている。
 こうしてペリーヌが祖父からの愛を勝ち取り、孫として受け入れられるという物語の結論が出た「ペリーヌ物語」だが、ここで感動シーンで盛り上げておいてまだ4話も残っている。凄いのは残り4話は決して蛇足ではなく、最終話の大団円へ向けて色んな話をまとめに掛かることである。ここからは「工場の変化」という物語も進展し、「ビルフランの目」という新しい要素を交えながらラストへと突き進むのだ。
研究 ・フィリップの「調査」
 やはり今回考えてみたいのは、フィリップ弁護士が行ったエドモンの妻子に関する「調査」についてだろう。彼はこの「調査」を通じて、ペリーヌとマリの足取りを掴んだ上で「オーレリィ」こそがペリーヌ・パンダボワヌでありビルフランの孫だという事を突き止めた。
 47話の研究欄に記した通り、フィリップはペリーヌの名前を知っていると考えた方が自然だ。だがビルフランに対しては、恐らく「オーレリィが自分の孫である」という思いを一人歩きさせないために名前は伏せたのだろう。名前を知ってしまえばビルフランの中でそれがどのように広まるか解らないのである。
 また、47話シーンではビルフランは「オーレリィ」がパリにいた経験を語っていたことから、もしエドモンの孫であればパリにその足跡があるはずだと判断したのだろう。また、「オーレリィ」がパリで8月に母親を亡くしたことも語っていたことから、フィリップにパリに行くよう命じる。こうして彼の調査の舞台は「パリ」になったのだ。もちろんこの辺りは劇中に描かれていないだけで、ビルフランはフィリップに語ったはずだ。
 47話研究欄で語った通り、フィリップが持つ「エドモンの妻子」の情報は「エドモンの妻子の名前」と「二人がフランスへ向かった」という事実だけである。これだけでパリへおっぽり出すのは無謀だと思うが、とにかくフィリップは手がかりを見つけてしまったのは確かだから仕方が無い。
 フィリップはもし「オーレリィ」がエドモンの娘だった場合、ビルフラン経由で聞いた「オーレリィ」の経験談からマリが8月にパリで死去したという推論を立てるのは難しくなかったはずだ。そこでかれがまず行ったのは、パリの役所を当たって8月の死亡者について調べたことだろう。もちろん東京23区のようにパリには複数の役所があると考えられ、これをひとつひとつ丹念に調べたことだろう。こう考えれば「パリの隅から隅まで」というフィリップの台詞は、間違いではないと解釈することはできる。
 そしていくつか目の役所で、「マリ・パンダボアヌ」の死亡届を発見したことだろう。もちろん死亡届には死亡場所の住所等も書かれている。死亡届さえ見つかればフィリップがシモン荘にたどり着くのは訳ないはずだ。
 シモン荘へ行けばペリーヌも一緒だったことはすぐに解る。つまりパリで「エドモンの娘」の足取りを掴むと共に、「オーレリィ」がビルフランに語った事と話が一致してくることも理解する。さらにシモンはペリーヌが「へんてこな顔の犬」を連れていたことも語るだろうし、パリを発ってマロクールに向かったことも語るだろう。だがここではまだペリーヌがマロクールに辿り付いたかどうかは解らず、あくまでも「ペリーヌはパリにいてそこで母を喪った」という事実が確定したに過ぎない。そこでさらなる手がかりをシモンに求めると、取りあえずパリでのもう一人の関係者ということでルクリが紹介されたという事だろう。
 ただ、ここでは一つ条件がある。シモンがルクリを紹介した際、旅から旅の生活をしているルクリがパリにいることである。だからこれは「偶然ルクリは家にいた」または「留守だったがすぐ帰ってきた」と解釈せざるを得ない。いずれにしてもルクリと会ったことで、フィリップはパリを発った後のペリーヌの足取りを知ることになる。そして恐らく、ペリーヌが「オーレリィ」が連れている犬と同じ特徴で同じ「バロン」という名前の犬を連れていたことを掴んだ事だろう。バロンの存在でペリーヌと「オーレリィ」が同一人物の可能性が高まったことで、彼はマロクールに帰り後は直接「オーレリィ」と話をしてこの件について確定させようとしたのだろう。
 そして名場面欄シーンでのフィリップの「最後の調査」となる。彼はペリーヌが愛していたというロバの名を出し、彼女を油断させたところでルクリの名をわざと忘れてみせる。それでルクリの名が出てくれば、「オーレリィ」こそがペリーヌ・パンダボワヌでありビルフランの孫と確定…という訳だったのだ。
 こうして見ると、「オーレリィ」=ペリーヌとフィリップに確定させたのは、バロンの存在だと言うことになる。ここは直接的活躍ではないがバロンの存在がとても大きくなった点であるのは言うまでもないだろう。47話のラストでフィリップがバロンの名を確認したシーンは、伏線としてとても上手く活用されているだけでなく、視聴者にこのような点を想像させる点にもなっているのだ。

第50話「初雪の降った日」
名台詞 「タルエル君、人間というものは人を愛する気持ちをなくしたら、ダメのようだな。」
(ビルフラン)
名台詞度
★★★★★
 名台詞欄で「オーレリィ」の正体を知ったタルエルは、「工場の跡継ぎにはなれない」とショックで肩を落としながらもビルフランにペリーヌのことでお祝いを言いに駆けつける。ビルフランはそんなタルエルに「誰に聞いたか知らないが一番に駆けつけてくれた」ことに感謝するが、それだけ伝えると素っ気なく歩き去ってしまう。「ペリーヌにもお祝いの言葉を…」と言いかけたタルエルに、「そんなわざとらしいことをせんでもいい」と突き付けてタルエルがペリーヌをいじめたことを突く。「ビルフラン様のお孫さんだとは夢にも思わなかった」と言い訳するタルエルに、「あの娘がわしの孫だと知らなくても親切にしてくれた人が何人もいて、その人達にお礼を言いに行く」と言った上で、たじろいでいるタルエルにとどめの一言としてこう言うのだ。
 この台詞にビルフランとタルエルのこの物語における「役どころ」が上手く現れている。正直言うと二人とも、出てきた頃は「人を愛する」ということをしなかった。そして物語が進むに連れてビルフランは「オーレリィ」から他人とは思えない愛情で接されたこともあり、「愛情」がいかに大事かという事を知りこれを実行し始めている。
 ところがタルエルは未だそれに目覚めていない。彼がビルフランとペリーヌに挨拶に来たのは二人と共に幸せを喜ぶためでなく、世渡りが上手く抜け目のない重役がビルフランに改めて取り入ると同時に、ペリーヌに取り入って自分の立場を盤石なものにするためである。
 だがビルフランはそれをお見通しで、かつてのビルフランなら自分もそうして生きていたと言うことで何とも思わなかっただろうが、今のビルフランにはこんなテオドールが滑稽に見えてしまうのである。だから皮肉の一つや二つを言いたくなったというところだろう。
 つまりこの構図から、マロクール編が始まったときは同じスタートラインに立っていた二人が、物語の展開でどれだけ差が付いたかという事を明確にするシーンのとどめの台詞であるのだ。
 そして上記の要素を見せるため、ビルフランが実にあっさりとこの物語のテーマを語っている。人が生きていくために必要なのは人を愛することであり、人に愛されるためにはまず自分が人を愛さねばならないという物語が訴えるテーマを、ビルフラン流にサラリと言う。この台詞はタルエルに対する皮肉だがタルエルを批判しているのでなく、タルエルに「人を愛する」という生き方をすることを勧めているのだ。同時にこれは視聴者にも向けられた台詞であるのは確かだろう。
 こんな物語のテーマを示唆する重大な台詞を、あまりにもサラリと言った点において印象深く、私にとってビルフランの台詞の中で最も印象深いものとなった。
名場面 テオドールとタルエル 名場面度
★★★★★
 「オーレリィ」の正体を知り傷心のテオドールは、雪の中を一人歩きタルエルの自宅を訪れる。扉を開けて驚いた顔で「一体どうしたんです?」と問うタルエルに、「君に知らせたいことがあってね」と力無く語る。タルエルはテオドールを部屋に通してテオドールに椅子に腰掛けるように勧め、「だいぶ顔色が悪いが、お体の加減でもよくないんですか?」と言いながら酒を用意すがテオドールは無言でただ立ち尽くすだけだ。
 そしてタルエルがテーブルにグラスを置くと、やっとテオドールが口を開く。「タルエル、パンダボアヌ工場は絶対に君のものにはならないぞ」と少し棘のある口調で言い切ると、タルエルは「するとビルフラン様はあなたを跡継ぎにするとでも仰ったんですか? だがそんなこと考えられませんな」と余裕たっぷりに返答する。だが次のテオドールの一言がタルエルを打ちのめす「エドモンの子供が見つかったんだ」…タルエルは「え!?…なんですって?」と驚いて表情を変える。「たいぶ驚いたようだな」テオドールはすまして言うと、タルエルは「そのお子さんは今何処に?」と重要な事を訊く。するとテオドールは力を落としたように椅子に腰掛け「マロクールにいる」と呟くように言う。「もうここに? この村に来ているのですか?」「ビルフラン様はそのことをもうご存じなんですか?」タルエルは落ち着かずに聞き返すと、「知ってるよ」というだけでテオドールは核心を言おうとしない。「焦らさないでハッキリ教えて下さい、エドモン様のお子さんっていったいどんな子供なんです?」タルエルがだんだんイライラしてくるが、テオドールは「とにかく、パンダボアヌ工場の跡取りは見つかったんだ」とわざと論点をずらす。「しかし、ビルフラン様はエドモン様の奥様を嫌っていたはずですから、そうあっさり自分の跡継ぎになさるとは考えられませんよ」とタルエルが冷静な分析を下せば、テオドールは「それが、そうじゃないんだな」と勿体ぶる様子を見せる。この返答にタルエルは顔を振るわせながら「いい加減にして下さい、どうしてそう焦らすんです?」と問うと、テオドール「せめて君の驚く顔を見て自分を慰めたいのでね」と皮肉を込めて言う。これに我慢の限界が来たタルエルは「もういいです、お帰り下さい。私はこれから自分で調べに行きますから」と言うと、「そうだな、この辺にしておくか」とテオドールは覚悟を決める。そして頭を抱えて「孫の名は、ペリーヌと言うんだ」と言うと、タルエルは疑問の表情を浮かべるが「君のよく知っている娘だよ」タルエルは続ける。「私が知ってるですって?」「そう、三ヶ月も前から、我々の目の前にいたんだ」「あっ!」「そうなんだ、オーレリィだよ、オーレリィがペリーヌ・パンダボワヌだったんだ」テオドールが「オーレリィ」の正体を明かすと、タルエルは唸り声を上げながらがっくりと腰を落とす。「解っただろう? もう僕も君も、パンダボアヌ工場の後継者にはなれっこないのだよ」とテオドールがとどめの一言を言う。
 このシーンは今話で最も好きなシーンだ。「水戸黄門」で言えば、悪代官が印籠を見せられて「田舎爺」の正体を知って愕然とするあのシーンに相当する。つまり視聴者が「ざまー見ろ」と思いスカッとするところだ。ここにペリーヌやビルフランが存在せず、タルエルとテオドールの二人だけでシーンが進む事もポイントが高いところのひとつだ。
 とにかく、41話でペリーヌにあれだけ酷い事をしたタルエルが「オーレリィ」の正体を知って腰を落とした瞬間は、多くの視聴者に印象に残ったと思う。今話は名場面と呼べるシーンがとても多かったが、このシーンで悪役が懲らしめられない限りは今話は成立しなかったであろう。
  
今回の
迷犬バロン
  
 今話ではペリーヌと雪合戦、もちろん4本足のバロンに勝ち目があるはずもなく一方的にやられてばかりだ。しかもその後はペリーヌに「死んだふり」(前話)の仕返しをされているし…どう見てもペリーヌと遊んでいるんじゃなくて、ペリーヌに遊ばれているだけだ。
気まぐれ度
★★★★
感想  前話が感動のメインイベントなら、今話は徹底的にその「余韻」を見せつける話だ。ちょうど「小公女セーラ」の44話と45話の関係と同じだ。私としては感動のメインイベントの話も好きだが、今話のような話も大好きだ。メインイベントによって得られた主人公の幸せが広まって行く過程で、悪役が懲らしめられ、主人公を助けていた準主役級のキャラが主人公を助けたことで報われる。特に名場面シーンの悪役(ミンチン)が懲らしめられる要素があるのが今話の良いところだ、これも「小公女セーラ」の45話との共通点だ。
 冒頭シーンは前話の続きから始まる、前話で描かれなかった「オーレリィ」の正体を知ったテオドールの反応から始まり、そしてセバスチャンがフィリップから話を聞かされることで屋敷に「新事実」が広まるきっかけを描いている。そして抱擁の後のペリーヌとビルフランの会話で、ビルフランの本心(…ペリーヌの愛によってマリへの憎しみが消えた点)が明らかにされるなどの余韻を徹底的に印象付ける。そしてビルフランが屋敷の召使いから祝福を受けるなど、ビルフランの喜びがしっかりと描かれる。
 そこから名場面シーンで悪役が懲らしめられる展開に入るが、ここではテオドールの反応をここまで大々的に描かなかった事が活きてくる。「工場の跡取りになれない」という彼のショックが前面に押し出され、その面では「仲間」となったテオドールの元に足を運ぶことに説得力を持たせている。
 悪役が懲らしめられるのはこれで終わらない。名台詞欄シーンもその一環だが、こちらではそれよりも名台詞欄に書いた通り本物語のテーマに迫る要素の方が大きい。こうして物語が落ち着くべき場所というのも見えてきているシーンでもあるだろう。
 そして今話のラストでは「シャモニー」がでてくる。「ペリーヌに優しくしてくれた人に礼を言いたい」とするビルフランが「シャモニー」を訪れ、ロザリーの一家やファブリに礼を言うシーンだ。同時にロザリーやフランソワーズが「オーレリィ」の正体を知り、ファブリが前もって事実を知っていたことも判明し、それによる彼女たちの反応が見たい視聴者の思いも満たされたことだろう。このシーンも名場面欄に★×4で紹介したいシーンだったが…最大にして唯一の欠点はポールの存在が完全に忘れ去られ、描き忘れられているどころか存在そのものが無くなっていることである。こういう準感動シーンで存在を忘れ去られるとは、本当にポールは可哀想なキャラである。今まで色んなアニメやドラマや映画を見てきたが、これほど可哀想なキャラは他に見たことがない。
 後は大団円だが、まだ3話も残っている。3話の間にどうしても解決しなければならない物語…ビルフランの目について描かれる事になるのだ。
研究 ・ 
 

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