「山賊の娘ローニャ」

「あにめの記憶」リアルタイム視聴6

山賊の娘ローニャ」

・ジブリのようでジブリじゃない
 日本のアニメ映画界は、数々の名作を生み出した宮崎駿監督がアニメ製作から引退したことで大きく動いている時代になっている。安定的に名作を生んでいた宮崎監督の後釜を狙っている訳ではないのだろうけど、長編・シリーズ問わず気合いの入ったアニメ作品が世に送り出され続けているのは間違いない。国際的な権威がある賞でも日本のアニメ作品がノミネートされ、受賞するなど世界的な話題になっているアニメが増えているのは以前からの流れだが、その流れがさらに強くなったようにも思う。
 そんな状況だからこそ話題になっているクリエイターが、宮崎駿監督の息子である宮崎吾朗監督であろう。スタジオジブリが世に放った「ケド戦記」「コクリコ坂から」を手がけ、また三鷹市の「三鷹の森ジブリ美術館」の設立に深く関わり館長を務めるなどの実績を持っている。
 そんな氏がジブリから離れて連続テレビアニメを手がけることになったのが、この「山賊の娘ローニャ」である。これはNHK番組紹介では担当監督先行で宣伝され、いわば親の偉功でもってその存在が誇示された形ととなった。言ってしまえば宮崎吾朗監督の才能が「親の七光り」でしかないのか、それともオリジナルの世界を作って行けるのかを試される状況がNHKによって勝手に作られてしまったかたちだ。だかわこのサイトでの作品紹介も、そこから入って行くことにした。

 そしてこの「山賊の娘ローニャ」は、1981年にアストリッド・リンドグレーンによって書かれたスウェーデンの児童文学書である。この作品は舞台が何処なのかは解らないが、恐らくヨーロッパの山岳地帯の森林を舞台に活躍する山賊の物語である。敵対する山賊の子供達である少女ローニャと少年ビルクが出会い、二人が敵対関係の間で様々な出来事を経て成長してゆく物語である。
 この物語をNHKがアニメ放映することとなり、その世界観のせいか前述の宮崎吾朗監督が制作することとなった。NHKではBSプレミアムでの放送となり、2014年秋の番組としてはトップ扱いでの宣伝のしようであった。地上波でも番組宣伝が入れられたり、放映前に特番が組まれると言った力の入れようである。そんな感じで前述したとおり「話題先行」になった感が否めない状況となった。

 本コーナーは、2014年10月から半年にわたって放映された「山賊の娘ローニャ」を、放送日の当日または翌日(録画の視聴)に視聴してそのまま感想や考察を書いたものである。

・サブタイトルリスト

第1話 かみなりの夜の子 第14話 すばらしい春に
第2話 はじめての森へ 第15話 はてしない争い(前編)
第3話 森と星と小人と 第16話 はてしない争い(後編)
第4話 聞こえる口笛 第17話 ふたりの引っこし
第5話 城にはいった敵 第18話 洞窟にひそむもの
第6話 にらみあう山賊達 第19話 なくなったナイフ
第7話 霧の中の歌声 第20話 野馬たちと
第8話 深まる秋の森 第21話 とどろく滝と鳥女
第9話 ぬけられない雪の穴 第22話 これかぎりの夏
第10話 きょうだいの誓い 第23話 命はむだにできない
第11話 こっそりとやること 第24話 決闘の朝
第12話 地下室の口笛 第25話 ひとつの強い山賊団
第13話 あわれな山賊たち 第26話 春の叫び


・「山賊の娘ローニャ」主要登場人物

マッティス山賊
ローニャ 物語の主人公、山賊娘だけあって野性的で、春をこよなく愛している。
 …よく言えば真っ直ぐ、悪く言えば短気。こうと決めたらてこでも動かないのは父親譲り。ビルクに惚れたな。
マッティス ローニャの父親でマッティス山賊の頭、こいつも短気で娘に輪を掛けて真っ直ぐな男だ。
 …だがボルカとの対立のことになると周囲が見えなくなる、そうして家族を結果的に傷つける父親の成長物語である。
ロヴィス ローニャの母で、豪胆な肝っ玉母ちゃん。常に的確な判断で夫や山賊達をうまく操縦する。
 …この女性がいなかったらマッティス山賊は成り立たないだろう。「男って…」が口癖だが、「悪かったな」と口答えしたいのをこらえるしかない。
スカッレ・ペール マッティス山賊の長老で見守り役でありご意見番。普段は何処まで本気なんだか解らないが、山賊達を正しい方向へ導く。
 …マッティス山賊がピンチになればボルカ山賊との統合をも提案できる頭の柔らかい人物。老齢だからこその名言多し。
フョーソク マッティス山賊の現役最年長、冷静沈着で山賊達の統率役でもある。
 …という役どころの割には目立たないんだよなー、以下に示す山賊達がキャラクターとして「濃い」からだろう。
チョルム よくしゃべる性格の中堅山賊で、城への谷道の見張りに立っていることが多い。
 …山賊のくせにくまのぬいぐるみを愛用している怪しい人。性格が濃いせいか、登場回数の割に印象に残る。
ストゥルカス 山賊が商人を襲うときに積極的に戦うが、そのせいか怪我をする役回りも引き受けた。
 …強い山賊である印象と同時に、怪我をして苦しんでいるところも印象に残るので彼も目立ち役回りだ。
クノータス 山賊の中でも最も身体が大きい巨漢であるが、意味も無くロヴィスに殴られるなど情けない役も多い。。
 …メガネを外さないので独特の外観、食べ物のことになるとうるさいいわゆる「キレンジャー」的なキャラだ。
ペリエ 現役山賊で一番の若手、若いせいかローニャとの絡みが多いため登場頻度も高い。一度代官に捕まる。
 …しかし、赤ん坊へのプレゼントにネズミの死骸はないだろ…。
リル・クリッペン 若手の山賊の一人、ローニャと最も気心が知れている山賊と言っていいだろう。。
 …彼もローニャとの絡みが多いので印象に残る。同時に山賊の中の「いじられ役」である。
ボルカ山賊
ビルク・ボルカソン 本作のもう一人の主人公、マッティスと敵対するボルカの一人息子。現実的な性格の割に現実逃避癖もある。
 …物語の発端はこいつがローニャに惚れたことだろう。森でローニャの前にこいつが現れるのは、全部必然であったのだ。
ボルカ マッティスと敵対するボルカ山賊の頭で、ビルクの父。性格的にはマッティスに似ているが、頭の柔軟さではこっちが上。
 …劇中の回想シーンで「子供の頃のボルカ」が何度が出てくるが、ビルクまんまで笑った。
ウンディス ビルクの母親、ロヴィスと比べると性格が悪そうだが、ある面においてはロヴィスと意気投合する。
 …なんか、一時代前のアニメに出てくる「意地悪なおばさん」を彷彿とさせるキャラだった。
森の住人たち
鳥女 森の中で最も恐れられている存在、身体は鳥だが顔は人間の鳥という意味不明な生物。
 …生き物である以上は雄もいるんだろうけど、最終回まで確認できず。
灰色小人 森の中で団体生活する小人、臆病だからこそ人を襲うという設定のようだ。
 …小声で「灰色小人」と呟きながらローニャを襲ったシーンは、緊迫感があって好きだぞ。
ずんぐり小人 森の中に家族で住んでいる。親切で大人しく、ひどいことなんかしない。
 …だが、「空気が読めない」のが唯一で最大の欠点。森の生き物で最も気に入ったキャラだ。
暗がりトロル 夜になると森に現れ、踊っているだけの生き物。
 …結局、こいつは何のために出てきたんだ?
地下のものたち 霧の日に人に取り憑いてさらって行く影、幽霊みたいなもんなんだろう。
 …らーららー らーらーらー らーらーらーって歌声が耳から取れない。
その他
ナレーター 物語の要所で的確な解説を入れてくれる。
 …印象に残る解説も多く、隠れた名役であることは確か。「前回までのあらすじ」「次回予告」次に流れるBGMとセットで思い出す解説も多し。
※ マッティス山賊の面々は、登場頻度の高いキャラのみ紹介とした。

・「山賊の娘ローニャ」オープニング
「春のさけび」作詞・宮崎 吾郎 作曲・谷山 浩子 編曲・武部 聡志 歌・手嶌 葵
 2014年度後半、土曜日のよる7時代はこの曲で始まったといって良いだろう。軽やかな伴奏とボーカルが入る前にひと山置いた編曲、これはタイトルを見るだけでなく「春」を感じる歌だと思った。そして詩の内容を聞いて行くと、まさに「春!」と言う感じで、春が来た喜びを淡々と歌っているうちに叫びたくなる気持ちへと盛り上がって行く様を上手く歌い上げている。
 背景画像は森の中を走り回るローニャの姿だけだ。だがそのひとつひとつが劇中にも登場するシーンで、ちゃんと物語とリンクしているのはとても良い。このオープニングでもう一人の主人公であるビルクを出さなかったことで、「主人公はローニャ」と明確にしたのもポイントが高い。そして最後はローニャが木の上で叫びを上げる、そんな映像だ。
 そして物語を追って行くと、この背景画像のシーンも歌詞の内容も、ビルクがいないだけで劇中の1シーンを抜き出していることがわかる。13話と26話でこの詩や背景画像の通り、ローニャが春の野山を駆けまわった後に「春の叫び」を挙げる様が描かれる。こうしてローニャというキャラのキャラクター性も視聴者に印象付けられるという寸法だ。その性格が野性的であろうことも一緒に印象尽くから面白い。
 最終回ではこの曲が挿入歌としてかかるが、それは歌詞が日本語ではないのが特徴だ。

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