第12話 「地下室の口笛」 |
名台詞 |
「とうとう私、ここまで来ちゃった。」
(ローニャ) |
名台詞度
★★★★ |
地下通路が貫通し、ローニャとビルクが地下通路でコッソリと逢うようになるまでを描いた今話の物語。その最後、差し入れられたパンをむさぼり食うビルクを見つめながら、ローニャが最後に口にする台詞がこれだ。
とても短い台詞だが、うまく今話を締めたと思う。今話の物語を一言で片付けるならまさにこの台詞だけで開設可能だからだ。だがこのローニャの「ここまで来た」には様々な意味があるはず。ローニャが地下通路の瓦礫を除去してここまで来たという物理的距離を縮めたという点ももちろん、雪の中で遭難した日からここまで二人の精神的距離を縮めたという意味もあるはずだ。そして何よりも、4話で出会ってから様々なすれ違い等を経て二人の関係がここまで来たという意味合いも込められているはずだ。こうして敵対すると思われていた二人が、少しずつ距離を縮めて今この関係にあるという気の長い話を視聴者に思い起こさせる意味があってとても、ありきたりの言葉だがとても印象に残った。
そしてこの思いは、この台詞を口にするローニャの目の前にいたビルクも同じはずだ。まぁ、今は空腹でそれどころじゃないかも知れないが。 |
(次点)「僕は君の声を聞くのが好きだ。けれど、君を目でも見たいよ。君は前の通りに黒い目をしているかい?」(ビルク)
…地下通路が貫通し、やっとローニャと言葉を交わすことが出来たビルクがローニャに告げた一言である(名場面欄参照)。ハッキリ言えばビルクの愛の告白に聞こえないでもないが、ビルクがローニャが好きになっているという気持ちが痛いほど伝わってくる台詞だ。実はビルク、ローニャのことが最初から(4話での出会いの前から)好きだったんじゃないのか?と想像もさせてくれる。どちらを名台詞シーンに挙げるか、最後まで悩んだ。 |
名場面 |
貫通 |
名場面度
★★★★ |
ローニャが地下室の瓦礫を掘り抜き、ついに地下通路が天井近くの狭い通路で向こう側と繋がる。聞こえる足音、ローニャの緊張は嫌でも高まる。ローニャが息を呑んだ瞬間、足音が止まると同時に聞こえてきたのは口笛だった。しかもそれはローニャに聞き覚えがある音色とメロディ…ローニャはその口笛の音に、雪の中で遭難しビルクに助けられたあの時を思い出していた。そう、ビルクの口笛と同じ音色とメロディなのだ。目を閉じて心を落ち着けたローニャは、その口笛の音に合わせて自分も口笛を鳴らす。そして瓦礫の向こう側の口笛が不意に止まったことにローニャはすぐに気付く。代わりに瓦礫を登る物音が向こう側から近づいてくる。ローニャがボルカ山賊のだけかだった場合に備えて逃げようとした瞬間に、「ローニャ?」と少年の声が響く。振り返って笑顔で「ビルク?」と問い返すローニャ。「ビルク?
本当にビルクなのね?」とローニャが問うが、返事はない。「あなたが私のきょうだいになりたいっていうのは、本当?」とさらにローニャが問うと、ビルクの笑い声が響いてきた。「僕のきょうだい」…力強くビルクが答えると、ローニャは笑顔になる。「(名台詞欄次点の台詞)」ビルクの声にローニャは微笑み、「だったらこっちへ来て見てみなさいよ!」と返す。だが二人の感動の再会を、マッティスの山城側から響いてくる扉が開く音と足音が消してしまう。ローニャは「誰かが来ている」ことを理解し、「明日ね!」とだけ言い残してそこから走り去る。
前回のラストシーン(前回名場面欄)の続きで、ローニャとビルクの再会がまた描かれることになる。だが今回ばかりは違う、二人とも互いに会いたくて行動を起こした結果で再会をするのだ。だから視聴者もその再会を感動的に見るし、今話の注目どころでもあったはずだ。
そしてこのシーンのスパイスは、なんと言っても二人がまだ互いに顔を合わせていないことと、マッティス城側から何者かが近づいてきて中止させられることだ。このもどかしさが「やっと出会えた二人の物語」を盛り上げたのは確かだろう。ここで瓦礫の向こうからビルクがヒョイと顔を出したら感動半減と思うし、ピンチもなくそのまま二人の会話へと進めば物語に緩急が付かなくなってつまらなくなるばかりでなく、後半の二人の会話シーンへの盛り上げも伏線も生じない、さらに言えば「やっと会えた」という二人の気持ちを盛り上げることもなく、平坦でつまらないシーンとなって白けたことだろう。だからここで二人が顔を合わせないまま邪魔が入るのは、物語を大いに盛り上げたと思う。 |
感想 |
いよいよ穴を掘り続けたローニャは、その果てにビルクとの再会を果たす。そしてその再会までの間に、二人にあった「精神的距離」が上手く描かれたことが作用し、今話では再開後の二人が他人には言えないようなことまで語り合うという展開に無理がなかったと言い切って良いだろう。二人が思い合って苦労した末の再会だから、放したいことはお互いに山ほどあったはずだ。
だから、名場面欄シーンもそうだが、二人はとにかく「会話がしたい」という方向に突き進んでいたのは感心。これが抱き合っていたりしたら思いっきり白けるところだったぞ。
ローニャが地下室の瓦礫を掘り抜いたとき、その瓦礫の向こうにビルクがいたのは偶然ではないと私は解釈している。私はビルクもローニャと同じように、コッソリと山賊達のもとを抜け出しては山城の地下室にこもって瓦礫を掘っていたと解釈している。ビルクも前々話で「きょうだい」になってからは、ローニャに逢いたいという気持ちを強くしていたのだろう。そして彼もローニャと同じように、何者かに引かれるように地下室へ向かって瓦礫を掘っていたのだ。
その相思相愛がしっかりと読み取れるように名場面欄シーンを描いたからこそ、その後の二人のに会話が生きてくるのだ。好きな女の子を目の前にして「自分は泥臭い」とか「自分の頭にシラミがいる」とか言えるか? でもローニャがそれを受け止めてくれると信じていたのは凄いなぁ。
そしてビルクの口から語られるボルカ山賊の悲惨な実情。冬の蓄えが底をつきかけており食べる物に不自由している現実と、城に家畜を飼える場所がないから山羊や羊は処分して馬は近くの百姓に預けているという現実。ビルクは当然のように腹を空かせており、ローニャが差し入れたパンを遠慮もなくむさぼり食うだけだ。そして全部食べた後に同じように空腹に苦しむ母を気遣うが、その際も冷静で「自分がパンを持ち帰れば入手先が詮索され、結果二人がきょうだいの誓いを交わしたこともバレて会えなくなる」と判断している。ビルクは大人だ、うん。
しかし、ローニャやマッティスの髪は確かに櫛通したら痛そうだなぁ。マッティスはあんなでかい図体で髪に櫛を通されるのが嫌いと…それより、今話ではついにローニャのフルヌードでの入浴シーンが描かれたが、色気ゼロでとても安心した。でもあんなシーンでも「萌え〜」とか言い出すバカロリがいるんだろうな。
ヌードついでに言えば、次回予告でマッティス山賊全員がヌードになっていたぞー、オエーッ…次話ではなにが起きるんだ? いったい? |