第48話「ああ入学」 |
名台詞 |
「おじいちゃん、おばあちゃん、私はとうとう学校へ通うことになりました。今日、試験に合格しました。まだ夢のような気持ちです。髪の毛を引っ張ってみました、やっぱり夢ではありません。カトリ・ウコンネミは自由学院初等部の6年生です。そして、なんと特待生になったんです。」
(カトリ) |
名台詞度
★★★★ |
屋敷を訪れたカトリがマルティに試験結果を語る。「ダメだったの、試験に落ちたのよ」…これを聞いたマルティは「学校はカトリを解ってない」と憤慨するが、カトリはマルティに顔を寄せて「受かったわ、私」「特待生になったわ」と本当の結果を語る。二人は踊りながら喜び、カトリは「おじいちゃん達に手紙を書くから届けて」「私、先に手紙書いちゃうわ、それからゆっくりおしゃべりしましょう」と言って、自室への階段を上り手紙を書くシーンへと流れる。そのシーンを背景にカトリが祖父母に宛てた手紙の内容として語られるのがこの台詞だ。
ここに「カトリ勉学への道」という物語の一つの結果が示され、この展開においては無事に本話で語り終えたと言って良いだろう。カトリの勉強をしたいという気持ちは物語の始まりから一貫していて、そのためにカトリが学校で行けるようになることが主人公の目的の一つであったと言って良い。その「ひとつの物語の完結」として、手紙設定ではあるがとても優れた台詞だと感じた。そこにはカトリがずっと持ち続けた「願い」が叶い、それによる喜びがキチンと表現されていることがちゃんと詰め込まれているからだ。
同時に、この台詞を語るカトリを演じる及川ひとみさんの演技もとても良い。嬉しさを隠しきれないうわずった声をキッチリと演じていて、ひとつの「目標達成」を視聴者に上手く印象付けているからだ。これもこの台詞が「物語の内の一つが終わった」ことを上手く示唆していると思う。
そしてこの台詞を印象付けるのが、この台詞が語られている間の画面だ。カトリが跳ねるように階段を駆け上がって部屋に飛び込み、手紙を書きながら…手紙に書いたように髪の毛を引っ張るシーンはとても印象的だ。ここのもカトリの喜びがキチンと込められているだけでなく、これまでの名かでカトリが最も可愛く描かれているとも感じた。 |
名場面 |
試験直後 |
名場面度
★★★ |
カトリの自由学院入学試験は、面接・国語・算数の3科目であった。うち面接と国語のシーンのみが劇中で演じられると、画面は控え室で待つロッタが不安な表情で部屋を歩き回るシーンとなる。そこへ控え室の扉が開き、まだ緊張した表情のままのカトリが入ってくる。背中で扉を閉めるカトリに、ロッタが「どうだった?」と駆け寄ると、カトリは「わかりません、あと10分ほどしたら奥様に来て頂きたいそうです」と相変わらず緊張した声で答える。「出来たの? 問題は?」と矢継ぎ早に質問を浴びせるロッタに、カトリは「算数はだいたいできたと思います」と答える。さらにロッタが「じゃあ…じゃあ、国語の方は?」と緊張した声で聞くが、ここでシーンはマルティが屋敷を訪れるシーンに変わる。
もどかしい展開とはこういうのを言うのだろう。恐らく、カトリとしては国語の朗読などもある程度で来たいたと自覚していたはずだ。だがまだ合格と決まったわけ出ないので敢えて自分の感情を殺している、カトリはそういうことが出来る賢い少女であることはここまで散々描かれてきたのでそう解釈することは無理もない。
だがここで印象的なのはロッタだ。このシーンではカトリよりロッタの方が明らかに取り乱していて、緊張していて不安も大きく感じている。ロッタがここまで不安がることで、ロッタの「カトリを娘だと思っている」という思いに説得力が生まれるだろう。本当に愛しているからこそ、カトリの進路が気になって仕方が無い。イーネスを学力で言い負かした実績があるとは言え、やはり専門家がどう判断を下すかはロッタも不安だったのだ。ロッタの不安は語りに対する不信ではなく心配であり、かつその前段でのカトリの入学手続きにおいてカトリを自信たっぷりに紹介したこともあったのだろう。
そしてここでロッタが大袈裟に不安がり、そのロッタが聞いた質問を敢えて流さないことで、次のシーンが活きてくる。カトリが「ダメだったの、試験に落ちたのよ」とマルティを一度騙して驚かせるシーンだが、このカトリのウソに視聴者までもが一度騙されるのは、その直前のこのシーンがあったからだ。 |
感想 |
今話は「最終回ひとつ前」、「世界名作劇場」の各作品では「物語の結論」が出るところである。もちろん「トムソーヤーの冒険」「愛の若草物語」「ポルフィの長い旅」など例外は一部に存在する。だが基本的に本話で物語はひとつの決着を見るはずだ。それが名場面欄や名台詞欄に書いた、「香取が学校へ通えるようになる」という結論だが、それは本作で仕掛けられた二つの物語のうちの一つでしかないことは物語をずっと追ってきた者にとっては説明するまでもない話であろう。
まず今話では、カトリが入学する学校名が明白になるところから始まる。「自由学院」という学校名は既にレオの口から出ていて、カトリもここに入学の方向で話が進んでいることが解る。もちろんこれにレオが喜ぶシーンが差し込まれるわけだが…なんかレオってこれだけのために出てきたのかと思わざるを得ない内容になっちゃったなぁ。だがこの裏で、カトリが急遽受験をすることになるという物語が派生し、「カトリの受験」で物語は突然盛り上がる。別に受験は急遽設定するのでなく、最初からありきで物語を作っても良いと思うけどなー。その行間で、やっと病に倒れたイーネスが入院して手術を受けたことが判明する。今話のイーネスを見て、「ポリアンナ物語」のスノー夫人を思い出したぞって、良く考えたら声が同じだ。
続いてカトリがアッキに夕食に招待されるが…このシーンは何のために差し込まれたの? 確かにアッキはエミリアと恋仲になり晴れて婚約したのだが、二人を引き合わせたのはカトリであり、これに感謝してアッキがカトリを夕食に招待するのは不思議な展開ではない。だけどこのシーンって、大団円の一つとして物語に決着がついた後にやって欲しかったなぁ。先にカトリの受験や名台詞シーンなどを演じてから、本話のオチをこっちにしても良かったんじゃないの?と正直感じた。
後は受験とその結果だ。「世界名作劇場」で受験と言えばなんてったって「赤毛のアン」だが、印象に残る受験であったがあそこまでは盛り上がらなかったなー。しかも受験は面接ベースで進んでいるから、カトリの緊迫感がどうも薄いし。だからこそロッタの大袈裟な不安が印象に残るという構造が出来たのもあると思う。そして名台詞欄に書いた通り、「カトリが学校へ」という物語の結論の内の一つが印象的に鳴ったのは事実だから。
後は残り一話。カトリが母と再会するのは既定路線だが…カトリの母がどうやって突然現れるのか覚えていない。だって今からカトリが故郷へ帰るのはおかしいし、時間的にももう難しいだろう。何らかの理由でカトリの母がトゥールクに来る展開だったかなー、覚えてないなー。 |