第12話 「手紙」 |
名台詞 |
「あいつは良い奴なんだ。この間ここで、お父さんの前で、僕のこと褒めてくれたんだ。根性があるって。殴り合いの喧嘩をしたすぐ後だっていうのに。お父さんがカトリのところへ遊びに行っても良いって言ってくれたのも、ペッカのおかげだと思う。」
(マルティ) |
名台詞度
★★★★ |
名台詞シーンの喧嘩の後、そろそろ牛たちが心配だとペッカが帰って行く。その後ろ姿を見ながら、マルティがカトリに語った台詞がこれだ。
ペッカと喧嘩をしようとして、カトリに止められて仲直りの握手までさせられたマルティがカトリに語ったのは、彼が持つペッカへの感謝の念だ。ペッカが自分の働きを見て、キチンとそれを父親に伝えてくれたからこそ今こうしてカトリに会えるという事実。これは友と語る時間が持てるカトリにとっても嬉しい出来事だ。
だがペッカに対してこのような想いがあるのに、マルティがどうしてもペッカに悪態をついてしまう点は男の子なら誰でも解る事だろう。マルティとカトリという大好きな女の子と二人の時間が欲しいのに、ペッカがそこへ割り込んでくるのだから…もちろん、これはペッカが持つ想いなのも確かだ。そしてマルティもペッカも、相手が良い奴であればあるほど、そこにいて欲しくないという気持ちがわいてくる…今話ではそんなマルティとペッカの関係を上手く突きつけてくるが、このマルティの台詞は彼がペッカを「良い奴」として認めていることがよく分かるとても印象的な台詞であり、この台詞があるからこそ彼がペッカと喧嘩するシーンも、カトリによって仲直りと握手までさせられるシーンも活きてくるのだ。 |
(次点)「実は、わかってる…」(マルティ)
…名台詞を受けて、カトリが「だったらどうしてあんな態度を取ったの? ペッカをわざと怒らせるような…」と問うと、マルティは一度は「どうしてかな?」とするが、「自分でも解らないの?」と付け加えて問うカトリに対してこう答える。この一言でマルティは口に出さずも「カトリが好きだから」と認めたのだろう。そしてその思いがペッカも同じであることを…。 |
名場面 |
喧嘩 |
名場面度
★★★ |
魚を釣ってきたマルティがカトリがいる牧場へやってくる。魚は3匹、その場にいるのはカトリとマルティとペッカとアベル。魚を焼きながら「美味そうだ」と語るペッカに、マルティは「悪かったな、お前の分はないよ」と告げる。「3匹あるじゃないか」「カトリと僕とアベルの分さ」…「わかった、要らないよこんな魚」とペッカが立ち上がる。カトリが意地悪だとマルティを窘めるが、ペッカは前話の喧嘩で自分がマルティをやっつけたと語る。マルティがこれに逆上して「いつ僕がお前にやられた? あれは途中でやめたんじゃないか」と反論。「続けていれば俺が勝っていた」と続けるペッカにマルティは「僕は絶対に負けはしないぞ」と必死だ。「口ばかり達者なお坊ちゃん」とペッカがマルティの火に油を注ぐと、「それじゃやるか?」とマルティの声で二人は向かい合う。「やめなさいよ」のカトリの声にも構わず、二人は言い争いを続け、マルティは上着を脱いで帽子まで取って戦闘モード全開だ。だが「そう、わかったわ。二人ともそんなに喧嘩がやりたかったらやったらいいわ。でもいい? もう二人とは友達じゃないわ。今から口も聞きたくない。顔を見たくないわ!」とカトリが叫んでそっぽを向く。7秒の沈黙を置いてペッカが「なあ、カトリ…」と声を掛けるが「どうしてもやりたいんなら、あっちでやってちょうだい! 牛たちを驚かせたくないわ!」と叫び返す。これにマルティとペッカは顔を見合わせて「喧嘩をやめて良い」と意見が合う。そして魚が焦げたこともあって、二人の喧嘩は収まる。
「喧嘩」ってサブタイトルは前話だったが、「喧嘩」が印象に残るのはむしろ今話の方だ。前話に引き続き勃発するマルティとペッカの喧嘩、前話では決着がつかなかったが今話ではいよいよどっちが強いのかハッキリする…と思って視聴者は見ることだろう。そしていざ決着がついてみると…一番強いのはカトリだったという展開だ。しかも暴力は無し、口だけでカトリは二人に勝ったのだ。
この構図をみれば、二人が何で喧嘩をしなきゃならないかも説明しなくてもわかってくるだろう。そう、二人とも妬いているのだ。お互いにカトリを独り占めしたいのだ。だからお互いに相手がそこにいることが気に入らないのだ。だからカトリが「喧嘩したらもう二人とも友達ではない」と言えば、二人にとってそれが最大の敗北であることがよく分かっている。その関係をこの喧嘩が上手く描きだしている。カトリはモテモテじゃん。
また、このシーンでのカトリの叫びがとても可愛く演じられているのもポイントだ。ちょっと舌が追いついていないようなしゃべり方をするからこそ、このシーンを見ている男子は全員「喧嘩している場合じゃねぇぞ」と画面の二人に向かって言いたくなる。もちろんこの演技があるからこそ、劇中の二人にもそれは伝わる。この喧嘩はもうカトリの可愛さの一本勝ち、担当する役者さんの力量の勝利だ。 |
感想 |
♪けんかをやめてー ふたりをとめてー わたしーのためーにー あらそーわないでー…って曲が聞こえてきそうな内容だったなぁ。名台詞欄・名場面欄からはマルティとペッカがお互いを認め合った上で、お互いにカトリが好きで嫉妬し合っていることを本当に上手く描いている。こういう三角関係は見ていて面白いかつまんないかに二分されるが、本作ではここを面白く盛り上がるように上手く描いている。
だが本話の主題はそこではない、マルティとペッカのやり合いが強烈で主題が目立たないという何とも悲惨な話だ。今回はなんと、ずっと途絶えていたカトリの母からの手紙が届くという大事な展開なのだから…だがその手紙の内容はカトリを泣かせるには十分であったが、物語の進展には影響を及ぼさないので見ている方は拍子抜けしてしまった。たとえば母が病気とか、もっと遠いところへ行ってしまうとか、そういう悲惨な展開は一切ない。かといって母の帰りが明確になるような明るい要素もない。長期的な物語展開的には母からの便りが来たからといって、何も起きないのだ。
むしろカトリがマルティに本を持ってきてくれって頼む方が次話以降に向けての主展開なのかも知れない。少しでも勉強がしたいというカトリの姿を描き出すのは、中盤からラストに向けての何かの伏線だと考えられる。そういえば次回予告でくまた新キャラが出るらしい。次回予告見て唐突に思い出した「こいついた!」って、声が井上和彦さんだった記憶が…。 |