第10話「ふたりの冒険旅行」 |
名台詞 |
「アンネットは汽車に乗ってないと思うな、僕。だってそんな事考えられないよ、アンネットが汽車に乗るなんて…ハハハ。僕だってまだ乗ってないのに。」
(ルシエン) |
名台詞度
★★★★ |
当時も今も、自分がその時のルシエンだったらそう言ったであろうと感じた台詞。汽車に乗りたくて乗りたくて乗りたくて乗りたくて乗りたくて乗りたくてたまらないルシエンの感心は、アンネットが本当に間違って汽車に乗ってしまったという事実でなく、アンネットが自分より先に汽車に乗っている筈はないという願望だ。ルシエンの「汽車に乗りたくてたまらない」という感情が上手に表現された台詞だと思う。
無論、娘と息子が行方不明になって心より心配しているピエールでもこの台詞には良い反応はしない。一緒に娘のことを心配してくれると思ったらどちらが汽車に先に乗るかという心配ばかりのルシエンに対し、冷たくかつ感情を表に出さず「お使いの途中じゃないのか?」と言って自然にルシエンを立ち去らせるのだ。良くできた男である。
そしてもし自分がこの物語の世界に入っていて、このルシエンの立場だったらやはり同じ事を考えたはずだ。カッコよくて力強い汽車という存在にひたすら憧れ、誰よりも早く乗りたいと思うのは男の子として当然だ。特にルシエンは肉親である姉に先に越された焦りもある、これで親友のアンネットにまで先を越されたら男としての面目は丸つぶれなのだ。ルシエンが「男の子らしさ」(「男らしさ」ではない)を最も強く見せる台詞であるかも知れない。 |
(次点)「おじさん…ぼく…ぼく…きっぷもってない。ぼくきっぷもってない、おねえちゃんももってない。」(ダニー)
…車掌が検札に来た時のダニーの第一声、この時の震えた声と表情が秀逸である。年相応の子供を上手に描いていて感心した。
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名場面 |
木の上から汽車を見るダニー |
名場面度
★★★★ |
物語の最後、またクロードがダニーの姿が見えないと探し回る。ダニーはまたいつもの木に登って駅を見下ろしているのだ。その表情には長い小説を読み終えた人のようなさわやかな表情があった。ダニーにとって姉と二人だけの冒険旅行が幼き日の良い思い出になったことを印象付けるシーンだ。
いま、万感の思いを込めて汽笛が鳴る。いま、万感の思いを込めて汽車が行く、一つの旅は終わり、また新しい旅立ちが始まる。さらば冒険の日(城達也の声で読もう)…ってダニーの頭の中はまさに劇場版「銀河鉄道999」のラスト状態なんだろうな。
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今回の
アンネット
VS
ルシエン |
「怒られたっていいよ、僕も汽車に乗ってモントルーへ行ってみたいや。ずるいよアンネットは、僕より先に汽車に乗るんだもの」「まぁ呆れた、あんたよっぽど汽車に乗りたいのね」「もちろんさ、ねぇ教えてくれよ。どうやってモントルーまで行ったんだい?」「それはね…最初はね…やっぱりやめた。あんな事もうこりごり」「あ〜酷いなぁ、酷いなぁ、もう少しで言うとこだったのに…ねぇアンネット、教えてくれよ」…汽車に間違って乗ってしまったアンネットから汽車のことを聞き出そうとするルシエン。だけどアンネットは…疲れ果ててしまいましたとさ。 |
感想 |
前回に続き鉄道が主の物語。間違って汽車に乗り込んでしまったアンネットとダニーの珍道中。ハッキリ言って「わたしのアンネット」全話を通じて一番好きな話だ。鉄道が出てくるからではない、この二人の旅が面白おかしくて何度見ても笑えるし、何度見ても二人と一緒にハラハラ出来るのだ。48話全部見終えたらこの話か6話はもう一度見たいと感じるだろう。いや、一度のみならず何度見ても飽きないと思う。「南の虹のルーシー」「小公女セーラ」「愛の若草物語」それぞれにやっぱそういう話は存在する。
特に名場面を選ぶのに苦労した。デッキ扉の開け方がやっと分かった瞬間のアンネットの表情は最高だし、トンネルに入って真っ暗になった時を狙っておばさんのリンゴを盗むアンネットもドリフのコントみたいで最高だ。特におばさんがもう一個のリンゴを探しているときにアンネットのふところからリンゴが出てくる辺り、ギャグとして計算され尽くされているとしか思えない。
原作には無い話だが、こうも遊んでくれると見ている方も楽しいし作っている方も楽しかったに違いない。それは「愛の若草物語」34話にも言えることだ(あれはやり過ぎの感もあるが)。原作をなぞるのも良いが、たまに原作から思い切り離れてこんな楽しい話を入れるのも「世界名作劇場」シリーズのいいところだと私は思う。
だが、「わたしのアンネット」の場合はこう言う話は序盤に入れざるを得ないのは仕方がない。中盤のあの展開でこれは無理だろうから…。 |
研究 |
・ロシニエール村の鉄道
ロシニエール村に鉄道が開通する話である。これで村の人々も便利になったのだろう…ではこのサイトらしくこの鉄道を徹底的に調べてみることにしよう。
この鉄道はモントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道(Montreux-Oberland Bernois Railway)という現在も実在するスイスでも有名な鉄道路線の一つである。総延長75.2km、軌間(レールの間隔、日本の在来線は1067mm)1000mm、最高急勾配73‰(1000m進んで73m登る、日本のJRでは長野県の飯田線にある40‰が最高)、鉄橋は63カ所、トンネルは18本、架線電圧900Vという諸元を持つ山岳路線である。
この鉄道の歴史を調べてみよう、1901年12月にモントレーから劇中に出てくる峠の近くのアバンツまで開通、その後徐々に路線を延ばし、ロシニエール駅を経てシャトー・デイまで開通したのは1904年8月19日である…あれ、もう劇中の設定と話が合わなくなってる。設定では1901年春から5年の月日が流れたんだから1906年の秋だったはずだ。
しかもこの鉄道の特徴は、開通時から電化されており、蒸気機関車に頼らず電気機関車で営業を続けてきたことである。あれ〜、劇中では蒸気機関車が派手に煙を吐いて走っていたぞ。また前述したが原作に出てくる「アンネットが住む村を通る鉄道」も電化されており、原作クロードは電気機関車で来たという設定である。
歴史はやめとこう、ツッコミどころが多すぎる。ロシニエール駅はネットで画像を探してみたら、駅舎はアニメに出てきているのと全く同じ。これに感心したのだが…どう見ても現実のロシニエール駅は線路が4本(うち1本は貨物ホーム)ある。ありがとうございます(意味不明)。
これ以上書くと鉄ヲタによる単なる揚げ足取りになってしまうのでやめとく。もうちょっと考証をしっかりとしろよ、日本アニメーション。 |