第25話「島での出来事」 |
名台詞 |
「カトリのこととなると全く夢中なんだから! んもう…それいっ!」
(マリ) |
名台詞度
★★ |
う〜ん、このキャラが名台詞欄に出てくるとは思わなかったなー。
カトリが帰ってきた翌日、登校時にカトリが戻ってきたことを知ったマルティは下校時はもう待ちきれない。ハルマ屋敷とカトリの家への分岐でマリに馬車を停めさせ、荷物を部屋に入れておくよう頼む。マリは「知らないわよ」と素っ気なく返すが、「頼むよ」と言い残して走り去るマルティの背中を眺めながら、マリが叫ぶように馬車を発進させながら語る台詞がこれだ。
この台詞が印象に残ったのは、今話に描かれた「行間」をたったこれだけで演じてしまったように感じたからである。その行間とは、登校時にカトリとマルティが逢ってからこの台詞のシーンまでの間、つまりこの姉弟の登下校中に何が起きていたかという「行間」である。登校時の方はマルティが馬車を乱暴に走らせて姉を困らせるイタズラが描かれるが、下校時は何も描かれていない。だがこのマリの台詞や、その口調を見ていれば何が起きていたか明かだ。そう、マルティは下校の馬車でずっとカトリの今から逢いに行くことを筆頭に、カトリの話ばかりをしていたであろう事がこの台詞から手を取るように解るのだ。
このマリという姉が弟の親友カトリに対してどんな感情を持っているかは定かでない。ただひとつ言えるのは、カトリ本人の人格とは別にカトリの話にはうんざりしているのは確かだ。弟がカトリカトリカトリと五月蠅いからもうその話はいいやっていう姉の感情が、この台詞に込められていて面白いと感じたのだ。
あと気になって仕方が無いのは、この姉がちゃんと弟の学校への荷物を部屋に入れておいたかだ。個人的に予測ではブツブツ言いながらもマルティの荷物を部屋に入れておいたと思う。たぶん、この姉はそういうキャラクターなのだろう。 |
(次点)「おじいちゃん達との再会もつかの間でした、今日はクウセラ屋敷へ出発です。マルティに送っていってもらう途中、あのハンナさん一味に捕まってしまったの。そして、危機一髪のところをアッキさんが助けてくれたんです。次回『牧場の少女カトリ』、『助けてくれた人』お楽しみに!」(カトリの次回予告ナレーション)
…う〜ん、このネタバレが素晴らしすぎる(皮肉)。折角次回のサブタイトルが上手く考えら、次回予告画像にもアッキが登場しないよう考えられているんだから、誰が助けに来るかは言わなくて良いのに…この次回予告で次を見る気なくした人は多いと思う。 |
名場面 |
おじいさん倒れる |
名場面度
★★★ |
昼食時、祖母はカトリに畑にいる祖父を迎えに行くように命じる。これに従って畑へ走ったカトリだが、畑を見ると誰もいない。だが鍬がほったらかしになっているので、祖父がここにいたのは確かだ。「おじいちゃーん」カトリが叫ぶと、遠くからカトリを呼ぶ祖父の細い声が聞こえてきた。声の方を見ると祖父が木の下で苦しそうに座り込んでいたのだ。祖父の元へ走り、「胸が…胸が苦しくて…」と訴える姿を見て、カトリは服のホックを外して祖父を楽にしてやる。カトリは帰った来たときに寝込んでいた事を問い詰め、「お医者様に診せなくては」と訴える。「しばらく静かにしていれば大丈夫」と語る祖父に、カトリは自分の給金があることを告げるが「身体のことは自分が一番よく知っている」として医者を呼ぶことを拒む。「あのお金はお前が稼いだ大事なお金だ。大切に使わんとな」と祖父は優しくカトリに声を掛けると、二人は家へ戻る。その帰り道に祖父はカトリに「さっき畑で休んでいたこと、おばあちゃんに言わんでくれるかな。あれに余計に心配をかけたくないんじゃ」と訴える。「でも…」とカトリが返せば「頼むよ」と祖父は念押し、「それじゃあ、今日は静かに寝ていてね」とカトリが返したことで一件落着かに見える。
前話の祖父が寝込んでいたシーンは何かの伏線だと思っていたが、ここで祖父に劇中での1年前に見られなかった病が襲っていることが明確になる。これの前のシーンでは祖父が畑で一人で発作に苦しむシーンが描かれており、ここのやりとりでカトリに語るように生やさしい病状でないことはもう視聴者には明確だ。だがこのじいさんはそれでも何事もなかったかのように日常生活を回そうとするのだ。
その理由はもちろん、自分たちの貧しさにあるだろう。自分が倒れてしまい祖母とカトリだけになってしまえば、二人の生活が行き詰まることは火を見るより明らかだ。だから自分が頑張るしかないという祖父の思いが上手く描かれている。ならば本来、ここで医者にかかって身体をキチンと治すべきでもあるのだが…いくらカトリが予想以上の給料と共に帰ってきたからと行って、その給料を自分の治療費に使えばあっという間に底をついてしまうことになる。孫を一人働きに出した祖父として、それだけはできないという気持ちも伝わってくる。
だから祖父は、自分の深刻な体調のことを隠そうとすることに説得力がある。
そしてこの一件は、「しばらくは家にいる」とつい先程まで語っていたカトリの気持ちを変えるには十分すぎることであるのも見ていれば解るだろう。マルティに「しばらく家にいる」と言ったその舌の根も乾かぬうちに、カトリに数日内にクウセラ屋敷へと旅立つことを決意したのである。そういう意味でこのシーンは地味ながらも物語が次の展開へと大きく舵を切った瞬間であり、クウセラ屋敷編はここからスタートと言っても過言ではない結果になるはずだ。 |
感想 |
カトリ帰宅後の最初の話、今話はマルティとの釣りが終盤にかかるまではのんびりした話だが、そののんびりの中に名台詞欄シーンのような物語の転換点がある。おじいちゃんが病であることを知ったカトリが、自分がまた稼ぎに出ないとじきに生活が成り立たなくなることを理解するのに十分なシーンだ。今話は本題はここであり、ハンナ再登場は本展開の手前でトラップを仕掛けるための伏線でしかなかったことは、次回予告まで見れば誰もが理解するところだろう。
だから名場面欄前後のカトリの発言が違って当然だ。しばらくは自宅に留まると言っていたカトリが、あのシーンを境に「3日後にはクウセラ屋敷に旅立つ」だからなぁ。その間に何があったかを知っているのはカトリ本人と祖父だけ、その祖父は朝までカトリが「しばらく家にいる」と語っていたのを知らない…という複雑な展開だ。
そして後半、マルティが出てきてもカトリは「何があったか」を語らずに「3日後に旅立つ」ことを告げる。そうだ、言われてみればマルティはカトリがライッコラ屋敷を解雇されたことを知らないんだ。この二人の物語はどうなるんだろう?
そして釣りに出かけ、以前出てきた無人島に立ち上る煙。このシーンだけは当時見たのをなぜか覚えているんだけどなー。そこにいたのがハンナとその仲間達というわけだ。アクション仮面もいたぞ。
でも今回は、カトリがハンナらが潜んでいるのに気付き、あの盗賊が今度はマルティの家であるハルマ屋敷を狙っている事が判明すると言う展開になる。ハンナはそこにいるのがカトリだと気付かない…なぜならそこに、ハンナを敵視しているアベルがいなかったからだ。ハルマ屋敷が狙われていることを知って逃げ帰る二人に、ハンナ達は気付くが追いつくことは出来ず、結局逃げることしか出来なかった。カトリの通報でハルマ屋敷は無人島の捜索をするが、盗賊は逃げた後でもぬけの殻だった…だが盗賊達が潜んでいた証拠を見つけたのは確かだろう。
ハルマ屋敷が盗賊に入られるのを未然に防いだカトリは、ハルマ屋敷からビフテキをプレゼントされるというのは驚いた。実はハルマ屋敷の盗賊捜索隊が「盗賊達が潜んでいた証拠を見つけた」はずの根拠がこれだ。いくら実の息子が訴えることでも、証拠がなきゃハルマ屋敷側も「本当に盗賊に入られる可能性があった」と認めないだろう。カトリの家には豪華なビフテキが送られたと言うことは、一緒にいたマルティにもそれなりの褒美を贈られたはずだ。
で、最後にあの次回予告だもんなー。なんであそこでアッキ再登場を予告しちゃうかなー…アッキの退場にごくありふれたものなら、それで良いんだけど…「逮捕」という特殊事情で物語を退場させられたアッキの再登場は、「最終兵器」でなければならないのだ。恐らくこの次回予告、画面にアッキが出ないことを考えると画を作った段階ではアッキ再登場を示唆しないつもりであったであろう事は容易に想像がつく。でも台詞を決めるときに誰かが判断ミスったんだろうな。前話の今回に対する次回予告でハンナ再登場を示唆するのも、ちょっとネタバレが酷すぎと思った。前回のハンナ登場予告と、今回のアッキ再登場予告は、盛り上がるはずのところが盛り上がらなくなるという悪影響を作るだけで、再登場の意外性などを完全に削いでしまう悪い例だ。おそらく「牧場の少女カトリ」が当時視聴率で苦戦したのも、この次回予告のおけるネタバレにあると思う。 |