第25回「はじめてのキス」 |
名台詞 |
「ねぇ、ジャン…私、夢の中で見たの。人間はみんな一人では生きてゆけないのね。今まで私、そんな事一度も考えた事がなかったわ。世の中は一人で生きていけるって、昔からずっと信じていたし…今まで生きてくるのに、誰も力も借りたりしなかったって信じていたの。でも、誰もいないこの島で生活してきて、初めてわかったの。一人はみんなのために、みんなは一人のためにっていう言葉の意味が。私は今までみんなに支えられて生きてきたのに、自分の知らないところでいつも誰かが私の事を考えていたし、誰かがいつも私の事を思っている事を…いつか、きっとアフリカに連れて行ってくれるのね?
もう何も言わないで、ジャン……メガネ外して……ずっと、一緒にいてね。」
(ナディア) |
名台詞度
★★★★ |
名台詞欄シーンで変なキノコを食べたジャンは、マリーに引きずられてテントに戻ってくる。意識を失った上にうわごとのようにつまらないダジャレを繰り返すジャンを見て、ナディアはジャンが自分のためを思って行動した結果こうなってしまった事を知り泣き崩れる。
その夜、マリーが就寝した後もナディアはジャンの看病を続ける。その時にジャンに語りかけた台詞がこれである。
無人島に上陸してからナディアの我が儘は留まるところを知らなかった。前回ではナディアとジャンが仲直りしたが、今回は食事のシーンでジャンが肉を出したためにナディアの怒りが再燃。引っ込みがつかなくなったナディアは、食べ物も水もいらないと高らかに宣言。もちろんジャンの食べ物を拒否すれば腹が減る訳で、マリーが拾ってきたガーゴイルの缶詰に手を出して倒れる。それでも意地を張っていたナディアのために薬草を探しに行ったジャンが、あんな姿になって帰ってきてしまったのだ。
この一件を通じて、ナディアは「共同生活」というものの重要性を知るのである。誰かが自分を支えるからこそ生きていけるのだし、自分が誰かを支えるからこそみんなが生きられる。そしてこれがこの島の事だけでなく、人間社会そのものだと言う事に気付くのだ。病に倒れたナディアが見た古い記憶の夢が、うまくこれを補強している。酷い目に遭わされたサーカスでの体験も、その中で誰かが自分を支えていたという事に気付くのだ。
この島の生活でもジャンが自分を支えていた。だけどそれに対し、自分は我が儘言うだけだったという現実にナディアは気付かされただけではない。ジャンはその我が儘があってもなお自分を支えようとしてくれたのだ。本来なら「出て行け!」と怒鳴られても仕方の無いところだし、その上で自業自得の病にかかった事で見捨てられてもおかしくないところだが、それでもジャンが支えてくれた事実に、ナディアはやっと素直な気持ちを表す事が出来た重要な台詞でとても印象深い。
この台詞を言い切ったナディアは、そっと目を閉じて寝ているジャンの口づけする。その瞬間は画面の外だが、キングだけがその様子をしっかり見ている点は面白い。一時はどうなるかと思った今回の展開だが、サブタイトル通りに上手くオチを付けたという点でも印象的な台詞だ。 |
(次点)「あたしは幼児体型だもん、デブじゃないわ! ベーッ!」(マリー)
…名場面欄シーンで、マリーが百科事典でジャンを殴った直後の台詞。この一連の流れでマリーにとって何がショックだったのかが良く現れている。「太っている」と言われた事に対する反論が、幼児が使う台詞ではないというギャップは、あの瞬間に場がギャグシーンになったからこそ許されるものだ。この台詞がなければ名場面欄シーンはあそこまで面白くはならなかっただろう。 |
名場面 |
洞窟にて |
名場面度
★★★★ |
倒れたナディアのため、雨の中一人で薬草探しに出かけたジャンだが、なんだかんだでマリーもついてきてしまう。そして二人が見つけたのは洞窟、「こういうところに薬草があるはずだ」とジャンはマリーに入り口で待っているように言って洞窟に入る。「なんだか嫌な予感がする」と呟くマリーは、やがて雨が上がった事に気付いて洞窟の中のジャンに向けてこれを伝える。だが返事はなく、不気味なBGMが流れている。その頃ジャンは、洞窟内で光るキノコをみつけてその正体を百科事典で調べていたが…「おなかすいたから、早く帰ろうよ」と叫ぶマリー、これに対し洞窟の中から「マリー、おいしいよ。マリーも早くおいでよ」とジャンの声が聞こえてくる。次のシーンではジャンがキノコをむさぼり食っている、だんだん顔色が悪くなり目つきが狂ったようになってゆくジャンの目には、そのキノコが豪華な食事に見えていたのだ。そこへ心配になって洞窟へ入ってきたマリーが現れる、だがジャンにはマリーが大きな七面鳥の丸焼きに見えてしまい「これがメインディッシュか…ころころ太ってて美味しそうだな…」と呟いてマリーに襲いかかる。「ジャンのバカーっ!」怒ったマリーは落ちていた百科事典でジャンの頭を殴る。倒れるジャンに名台詞欄次点の台詞を吐き、ジャンをテントまで引きずって連れて帰る。
ホラーのギャグの融合、と言ってしまえばそれまでのシーンだが、このシーンではちゃんとそれぞれが感じて空気や感情という物が上手く込められている。不気味な同口の入り口で一人待たされているマリーの恐怖感はもちろん、薬草探しに夢中なジャンにも「空腹」という現実があるからこそ、何かに取り憑かれたようにキノコを食べ始めるまでの感情変化。そのそれぞれの思いと行動がキチンと表現されていて、特にマリーのシーンではBGMまでがホラームードにしてあって、視る者を不安に陥れる。
そしてキノコを食べているジャンのところにマリーが現れれば、一気にシーンはホラーからギャグに転換だ。マリーが七面鳥の丸焼きに見えたジャンの台詞に、マリーは「太っていると言われた」と反応。その瞬間にこれまでの緊張感は消え、マリーの大立ち回りと面白い台詞でシーンにオチがつく。こうして「ナディアを助けるために洞窟に入ったはずのジャンが倒れてしまう」というシーンを上手く印象付けている。もちろん、マリーの大立ち回りをきっかけにジャンは空腹モードからつまらないダジャレをうわごとのように繰り返す病人モードにシフトするのも面白い。
様々な要素が物語を盛り上げ、ギャグで落としてこのシーンは今回で最も印象的なところだ、この無人島シーンで一番面白かった瞬間かも知れない。 |
感想 |
無人島での新展開3回目、いよいよ視聴者はこの3人と1匹だけの展開に飽きてくる頃だ。だけどサブタイトルがサブタイトルなだけに、色々と期待を持ってみる人も多い事だろう。
なのに冒頭は「食べ物に肉を入れた」という我が儘な理由でナディアとジャンが言い争っているシーンを数分間に渡って見せられる。もちろん、ジャンの言い分の方に理があるのは誰が見ても当然だろう。この毎度毎度の言い争いは、多くの視聴者にサブタイトルを忘れさせる役割があったと思う。現に私もサブタイトルをこのシーンで忘れた。
そして言い争いに決着がつかないまま、何の脈略もなくグランディス一味が画面に再登場。だがここでは彼らもまた海上を漂流している事が示唆されるだけだ。ナディア達の現状と照らし合わせれば、グランディス一味とナディア達の合流はそんな遠い話でない事も理解できるだろう。そして次に現れるは、ガーゴイルが再登場してネオアトランティスによるネモの葬式が描かれる。こうして単調になりつつあった「無人島での物語」に変化を持たせ、視聴者を飽きさせないよう上手く作ってきた。もうここまで来たらサブタイトルなんかどうでもいい。
そして前々回で伏線が張られた「ガーゴイルの缶詰」に手を出すナディア、もちろん彼女は腹を壊して倒れる事となる。そのナディアの夢を通じて、ナディアが過去にどんな生活を送っていたかが流されるが、これはラストシーンに上手く繋げるためのシーンでありナディアの謎が明かされる訳ではない。そして名場面欄シーン、名台詞欄シーンと流れて、最後の最後に視聴者が今回のサブタイトルを唐突に思い出すという、うまいつくりに感心した。
しかし、あの状況でガーゴイルはネモの葬儀をやっちゃうかな…だってとどめを刺していない事で部下を叱咤していたから、ガーゴイルはネモが死んでいないと踏んでいたはずだけどなぁ。まぁ、そういう細かい事は考えない方がいいか。しかし、あの空中戦艦には何人の人が乗っているんだろう? 謎だ。
どうでも良いけど、前回と今回の「前回までのあらすじ」のナレーションは誰の声? いつものナレーターじゃないんだけど。 |
研究 |
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