「あにめの記憶」リアルタイム視聴8

世界名作劇場「牧場の少女カトリ」

・「世界名作劇場」低印象作
 「あにめの記憶」過去作品考察は、1970年代後半から1980年代に掛けての「世界名作劇場」の各作品を紹介してきた。特に1980年代前半の作品については1981年作品の「ふしぎな島のフローネ」から1987年作品の「愛の若草物語」まではほぼ取り上げているが、一作だけ飛んでいるのに本サイトの読者の方は既にお気づきと思う。
 それが今回紹介する1984年作品「牧場の少女カトリ」である。実は私にとって、本作は1986年作品の「愛少女ポリアンナ物語」と並んで私にとって印象が薄かった作品の一つである。この2作は私にとって最も印象に残った「小公女セーラ」を挟む形だったので個人的に印象に残らなかったというのが主な理由と思う。特に本作はもうひとつ印象に残っている「わたしのアンネット」と挟まれる形となっているので、印象がよりいっそう薄くなってしまったと思う。その上で印象に残っている多作とは違い、主人公の年齢と私の年齢が合致しなかったことや、アーメンガードのように個人的に大好きなキャラがいなかったのも大きな理由だろう。
 だが本放映当時に毎週欠かさず見ていたのは間違いない。だけど印象に残らず大まかなストーリーや登場人物なども記憶に残っていなかった。ただ不思議なことにオープニングテーマ曲だけは空で歌えるほど覚えていた、その背景に出てくる糸を紡ぐカトリの姿と共に。
 2015年初冬、この「牧場の少女カトリ」の再放送が東京MXテレビでの再放送が始まった。当サイトではこれを機に、「牧場の少女カトリ」の考察を行うことにした。本作のストーリーやキャラクターについて当サイトの標準的なフォーマットで考察し、最終的にはなぜ本作が私の記憶から落ちたのかをキチンと考えてみたい。

 「牧場の少女カトリ」は、前述したように「世界名作劇場」シリーズの1984年作品で、1984年1月から12月に掛けて放映された。原作はフィンランドのアウニ・ヌオリワーラ著「牧場の少女」(Paimen, piika ja emanta)で、フィンランドの農村で働く少女の物語である。原作は1850年頃のフィンランドを舞台としていたが、アニメ化に当たり1910年代の第一次世界大戦の時代に設定を変更し、物語そのものも第一次世界大戦期に合わせて設定や物語を大きく変えている。特に本作後半の「クウセラ屋敷」以降の物語は、完全なアニメオリジナルの書き下ろしである。BGMにはフィンランドの音楽家、シベリウスの楽曲が一部に使用されている。
 なお原作本は1950年代に日本で紹介されているが、本作放映時にはそれほど知名度が高くなかった。したがって当時、視聴率で苦戦したとの記録も残っていて、「世界名作劇場」シリーズ存続自体が危ぶまれたという。本作の次である「小公女セーラ」がシリーズ復活を賭けたもので、物語を面白くする様々な工夫が凝らされているのは言うまでもない。ともかく「世界名作劇場」シリーズが視聴率で苦戦した「南の虹のルーシー」「わたしのアンネット」「牧場の少女カトリ」の三作は、現在も一部のファンから「視聴率低迷三部作」と揶揄されることがある。
 視聴率で苦戦とはいうが、この3作が放映されていた時期は、NHKの名バラエティ番組である「面白ゼミナール」が日曜19時20分放映だった時代に合致している。これらが視聴率で苦戦したのは物語がつまらなかったからではなく、優れた裏番組があったことが主要因のような気がする。当時は子供がいない家庭は、アニメを積極的に見るような事はなかっただろう。

・サブタイトルリスト

第1話 別れ 第26話 助けてくれた人
第2話 友だち 第27話 都会育ち
第3話 春のあらし 第28話 新しい生活
第4話 決意 第29話 夢を見ていた
第5話 出発 第30話 美しい白鳥のように
第6話 主人 第31話 本が送られて来た
第7話 奥様 第32話 魔法の本と悪魔
第8話 災難 第33話 喜びと悲しみ
第9話 愛情 第34話 ヘルシンキ行き
第10話 約束 第35話 父と娘
第11話 喧嘩 第36話 奥様の決意
第12話 手紙 第37話 迷子のアベル
第13話 素敵な贈物 第38話 それぞれの道
第14話 はじめての招待 第39話 ハルマ屋敷のパーティ
第15話 おもいがけないお給料 第40話 道づれ
第16話 迷子になった羊 第41話 トゥルクの人々
第17話 狼を退治する日 第42話 絵のない絵本
第18話 二つの火事 第43話 自動車に乗った!
第19話 隣どうし 第44話 にくらしい娘
第20話 来た人と去る人 第45話 疲れた一日
第21話 アベルが狙われた 第46話 美しいもの
第22話 春を待ちながら 第47話 お土産のランドセル
第23話 熊と牛はどちらが強いか 第48話 ああ入学
第24話 出会いと別れ 第49話 お母さんの帰国
第25話 島での出来事  

・「牧場の少女カトリ」の主な登場人物

カトリの家族および友人とその関係者
カトリ・ウコンネミ 物語の主人公、勤勉で頑固という「世界名作劇場」他作には見られないタイプの少女。半分は運だったが…。
 …そして「世界名作劇場」主人公で最も可愛い主人公とも言われる。いるだけで人に慕われる不思議な少女。
サラ・ウコンネミ 主人公の母、初回と最終回にしか出てこないシリーズで最も印象の薄い母親。
 …でも主人公がこの母親に会えないことが物語を盛り上げたのも事実。
ユリス・ウコンネミ 主人公の祖父、頑固で医者嫌いで孫思いという「世界名作劇場」シリーズで典型的な祖父。イルダと良いコンビだ。
 …熊に襲われて怪我をしたり、心臓発作で倒れたりと、身体を張って物語を盛り上げた。
イルダ・ウコンネミ 主人公の祖母、夫と共にカトリを優しく見守る。神経痛を患っているという設定だが…。
 …神経痛に苦しむシーンは皆無で、ユリスよりピンピンしていたように見えたのは気のせいだろうか?。
アベル 主人公の飼い犬のダックスフント、カトリが6歳の時に母がプレゼントしてくれた犬。
 …クウセラ屋敷にいた頃までは賢くて頭の良い犬だったが、トゥールクへ行ったら明らかに「お荷物」になった可哀想な犬。
ユーラ ウコンネミ家に唯一残された仔牛、物語の進行と共に成長するが、主人公のことを忘れる。
 …最初は存在感強かったけどなー、カトリが仕事に出てしまうととたんに忘れ去られた可哀想な牛。
マルティ・ハルマ カトリの親友でカトリに惚れている、家畜番から本の手配まで、あらゆる形でカトリの役に立とうと奔走する。
 …カトリの影響を最も強く受けたのがこのキャラ、男の子としての下心が原動力とはいえ、大きく成長したキャラだ。
ベイネ・ハルマ マルティの父親で、ウコンネミ家の遠戚に当たる。ユリスには厳しいがカトリやマルティやペッカには優しい。
 …最初は怖い人かと思ったけど、徐々に良いおっさんになるキャラ。息子がやる気を出した理由が解ってるんだろうな。
マリ・ハルマ マルティの姉で多分お転婆、弟には厳しいがカトリにはとても優しく、カトリに本を提供する一人。
 …マルティと良いコンビの兄妹だ、馬車で走り回るのが似合うタイプに書いておきながら本の虫というのは面白い。
ヘレナ マルティの従姉妹で、何かというとカトリに突っかかる。
 …そしてカトリにコテンパンにやられて、物語から退場する。
ペッカ カトリの親友でカトリに惚れている。元々はカトリか勤務する農家の隣家の家畜番であったが…。
 …カトリの影響を受けつつもそれによって変わりきれない不器用な少年。だが本当は頭が良いし、人も良い。
アッキ・ランタ カトリを優しく見守る青年、フィンランド独立運動に手を染めて一度は警察に捕まるが、その後新聞記者として再登場。
 …同時にカトリのピンチにどこからとも現れるいい男、そしてカトリによって嫁を娶った「当たり役」の一人だ。
ライッコラ屋敷の人々
テーム・ライッコラ ライッコラ屋敷の主人、仕事には厳しいが、カトリとアベルが使えると解ると優しい男となる。
 …そして主人公に鞭打ちするという極悪シーンを演じた人、だが基本的には良いおっさんだ。
ウッラ・ライッコラ ライッコラ屋敷の奥様、幼い娘を失ったショックで精神病に罹っていたが、カトリが現れた事で完治する。
 …クレープ好きのメンヘルから、屋敷を仕切る「出来た奥様」への変身は忘れられない。
ビヒトリ ライッコラ屋敷に雇われている男で、牛や羊の管理を担当している。やはりカトリとアベルが使えると解ると優しい男となる。
 …登場回数が少ないのにとても印象に残るのは、キャラがしっかりしているからだろう。
アンネリ ライッコラ屋敷の使用人の年配女性で、主に台所関係を担当。奥様が精神病の間は台所を完全に仕切っていた。
 …屋敷でカトリを最も信用していたのは彼女かも知れない、カトリが凄いことをやると期待している。
エスコ テームの叔父で、ライッコラ屋敷や農場で大工仕事をしているようだ。カトリを優しく見守る。
 …ライッコラ屋敷の中ではカトリのピンチを何度か救う、テームを制御できる唯一の人物としてうまく機能した。
ハンナ ライッコラ屋敷に雇われている若い女性で台所担当、だが彼女がライッコラ屋敷に潜り込んだ真相は…。
 …本作唯一の悪役と言って差し支えないだろう、手下にアクション仮面がいる。
グニンラ ライッコラ屋敷に冬の間だけ雇われる老女で、糸紡ぎなどの軽作業を行う。おとぎ話を沢山知っている。
 …実はライッコラ屋敷をハンナ一味から救った真の功労者、だが劇中で他界するとは思わなかった…。
ルンストッカ ライッコラ屋敷の牛、いつも大人しい。
 …大人しいだけに印象に残らないが、最も名前が呼ばれる回数が多い。
ビークナ ライッコラ屋敷の牛、言うことを聞かず勝手に歩き回るのでカトリを手こずらせる。
 …カトリをピンチに陥れるオーラが最初から漂っていた、そしてその通り北の牧場の崖から落ちるという事故を起こす。
クロ ライッコラ屋敷の牛、身体は大きいが優しくて頭が良い。カトリが好きなようだ。
 …この牛がいなかったら、カトリは23話で享年11歳で人生を終えていただろう。
シロ ライッコラ屋敷の牧場に迷い込んだ羊で、拾ったカトリのものとなる。後にテームがカトリから買い取る。
 …シロって名前のせいで、今回の視聴では笑わなくて良いところで笑ってしまった。
クウセラ屋敷の人々
ロッタ・クウセラ クウセラ屋敷の奥様、牧畜についての知識はなく全て使用人に任せきりにしている。カトリを子守として雇う。
 …正直言って、トゥールク編では主人公より目立ったいたぞ。カトリの母親代わりとして強烈に母性を見せてくれる。
クラウス・クウセラ ロッタの息子で幼児、母親だけに育てられたこともあって我が儘ではないが強くもない。
 …だが父親の死や母親の長期不在を乗り越えて立派に成長する。声だけ聞いているとフローネを見ていると錯覚する。
カルロ・クウセラ クウセラ屋敷の主人で軍人、初登場では家族に見送られて戦地へ行ってしまう。
 …そして二度目の登場では既にこの世の人ではなかった。「軍人」という設定通りの運命を辿ってしまう。
ビリヤミ ペッカの兄でクウセラ屋敷の使用人の長、ロッタに依頼されてクウセラ屋敷の農場や牧場を任されている。
 …本作で嫁を娶った上、20年ローンであの屋敷を手に入れた本作最大の「当たり役」。
アリーナ クウセラ屋敷の使用人で農作業担当、ビリヤミと恋仲にありやがて結婚する。
 …20年ローンとは言えクウセラ屋敷の奥様となり、「奥様」呼ばわりに興奮する姿が可愛かった。
ヘンリッカ クウセラ屋敷の使用人で台所担当、仕事上の立場の違いでカトリと対立するが…。
 …何もかも中途半端なキャラ、カトリとの対立もいつの間にかなかったことになっているし…。
トゥールクの人々
エリアス・リラク ロッタの父、カルロが戦死したときに偶然カトリの前に現れ、機転が利くカトリをすぐに気に入る。
 …そして自分の屋敷で孤立するカトリに手を貸す「良いおっさん」の一人、登場回数は少なくても印象的なキャラだ。
イーネス エリアスの妹でリラク邸の支配者、カトリを信用せずカトリを徹底的にこき使う。
 …最終的にはカトリを理解するのだが、素直でないのが良い。この役をミンチン院長がやっていたとはなぁ。
セルマ リラク邸の使用人で小間使い全般を担当、最初はイーネスと共にカトリに辛く当たるが…。
 …すぐにカトリが「仕える奴」とわかり、あっという間にカトリの側に落ちる。
ノーラ リラク邸の使用人で台所担当、歌いながら料理をするなど明るい性格だ。
 …この人、イーネスが嫌いなんだろーな。
サロモン リラク邸の使用人で庭師、カトリにそっと「強さ」を訴える。
 …クラウスとの自動車ごっこに笑った。最新の機械とか好きなんだろうな。
ソフィア・ニーラネン クウセラ屋敷近傍の村にある開業医の娘、トゥールクの総合病院でインターン→医者である。「世界名作劇場」の暴走娘。
 …この人が自動車を運転すると、「牧場の少女カトリ」が持つ物語の空気が一瞬で変わるから面白い。
エミリア ふとしたことでカトリと知り合ったトゥールクの看護師の女性、女性が社会の役に立っている事をカトリに教える。
 …そしてカトリと出会ったことで、将来夫になる男と出会うことに…。
レオ カトリがトゥールクで出会った少年で、後にカトリの同級生となって一緒に登校する仲となる。
 …カトリがどこかの国の王女様だと信じているのは笑った、結局そこが目的のキャラだったのね。
その他
ナレーター 物語の要所で的確な解説を入れてくれる。登場人物の思いや考えも上手く解説してくれる。
 …何よりもその口調が本作の空気に合っていた、同時に劇中の端役を何役かやっていた。

・「牧場の少女カトリ」のオープニング

「Love with You〜愛のプレゼント〜
 作詞・伊藤 薫 作曲・三木 たかし 編曲・鷺巣 詩郎 歌・小林 千絵
 前述したが、不思議なことにその展開など大部分を忘れていた「牧場の少女カトリ」において、この主題歌だけはよく覚えていた。なんてったって「世界名作劇場」と再開する前もこの曲は空で歌えた位だ。曲調は明るく、またとても印象的なアレンジで演歌的でもあったのはとても印象的で、本放送第一話でこの主題歌を始めて聞いたときのこともキチンと覚えているほど、印象に残るメロディとアレンジだ。
 曲の内容は一人の寂しさを歌うことから始まり、それに対する想いを本作でも印象的なシーンである「糸紡ぎ」に落とし込んでゆく内容だ。当時のポップスと同様に、サビでは印象的に英文を入れて曲を際立たせる手法を使っていて、本作のメッセージを上手く伝え込んでいる。
 曲の背景画像も印象的だ、まずは糸車が無人で回っているシーンから始まって、前奏の時間たっぷりかけてここにカトリの姿が差し込まれるつくりはとても印象的で、主人公をうまく印象付けることに成功している。そしてカトリが家畜番をしたり農作業をするシーンが描かれ、サビでは夕暮れの中をカトリとアベルが歩くシーンに変わると、またカトリが糸車で糸を紡ぐ光景に戻る。そのカトリの周囲の風景が夜に変わると、糸車は再び無人となって停止すると曲が終わるというものだ。これはライッコラ屋敷編の本作の空気を上手く伝えており、同時に主人公カトリのイメージ映像としても上手く作られていて、かつ曲の歌詞とも内容が一致していると言う凄いオープニング画像だ。
 このような印象的なオープニングを置いて、本作は本編に入ってゆくのだ。

2月8日更新
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