「世界名作劇場」シリーズ
完結版について

2月8日・「牧場の少女カトリ」公開

 去る2000年、「世界名作劇場」各作品に総集編となる「完結版」が製作され、BSフジで放送された。これは1年を通じて放送された各作品を45分ずつ計90分の「前半」「後半」に分けて総集したもので、多くの作品が海外児童文学に原作を求めているため今後も新たな視聴層が多いと思われる「世界名作劇場」シリーズならではのものである。原作小説で作品を知った人が「とりあえずアニメを知ってみよう」と思ったところで、全話50話前後の連続ものを見せられるよりは…という判断で製作され、DVDも安価に設定されたものである推定される。
 また、スーパーやホームセンターのDVD売り場などでも格安に販売され、ハローキティの名作シリーズ等と共に子供に見せるDVDアニメの「定番」となっている感もある。

 2007年以降の新作である3作についても、2011年に「完結版」が製作されてDVDが発売されることとなった。
 これを機に当サイトでは、考察が完結している「世界名作劇場」作品の完結版について考察をしてみたい。これは「世界名作劇場」シリーズを考察しているサイトとしてはなかなか見られない試みだと思う。なぜならインターネットで作品を考察するほどのファンならば、普通はこの「完結版」DVDなど不要なはずだからだ。
 紹介順は当サイトでの考察順とするが、ページの作成は気が向いた順になることをご了承願いたい。

作品名 コメント
小公女セーラ 簡単に言えばラストシーンのためだけに物語を総集するという好例が「小公女セーラ」完結版だろう。同時に本編から原作踏襲の部分とアニメオリジナルの部分を上手く繋いで、このDVDが初見の人に強く興味を持たせる良作。
ポルフィの長い旅 物語の構成上、90分の総集編にまとめるのが最も困難と思われる作品であるが、あの長くて印象的な物語をうまく90分にまとめた。ミーナ担当声優による新規収録ナレーションは聞く価値あり。
南の虹のルーシー 「南の虹のルーシー」を余すところなく完全総集、だが総集編の存在意義や製作タイミングによってはそれが逆に仇になる典型である。総集編としては優れているが完結版の「役割」を考えると優れているとは言い難くなってしまうのだ。
愛の若草物語 「愛の若草物語」を総集編にしたら「若草物語」に。「世界名作劇場」オリジナル展開をほぼ排除し、まるで原作小説のようになってしまった総集編。でも本編アニメの雰囲気も壊していないのが不思議。
アルプス物語
わたしのアンネット
視点を主人公アンネットからルシエンに移し、ルシエンが主役に作り替えられてしまったもうひとつの「わたしのアンネット」。総集編の禁じ手である「同じシーンの2度使用」など残念な面も目立ってしまって…。
愛少女 ポリアンナ物語 たった2話分のストーリーで「ポリアンナ物語」第一部を完全総集。物語の視点を主人公では無くサブキャラとし、回想シーン設定における総集編として珍しく上手く行った例ではないかと思われる。
こんにちはアン この完結版を見ると良い意味でも悪い意味でも「総集編におけるキャラクターの使い方」というものを考えさせられる。主要登場人物でも総集編に無理に出す必要は無いという事を教えてくれる。メーテルによる新規収録ナレーションは聞く価値あり。
赤毛のアン 物語が濃縮だと総集編が忙しくなる…前半はこの論理の見本になってしまった。「赤毛のアン」の最小限必要な部分を短時間に全部まとめた場合の良い面も悪い面も見ることが出来る総集編だ。
家族ロビンソン漂流記
ふしぎな島のフローネ
前半・後半それぞれに明確なテーマを持って編集された。物語の屋台骨となる部分が全部カットされたが、物語の「流れ」は上手く理解できる良作だろう。
母をたずねて三千里 「優れた総集編」というのはこういうのを言うのかも知れない、オリジナルの「良さ」をキチンと活かしてほぼ全編を90分にまとめた「完結版」最高傑作と言ってもいいだろう。
ペリーヌ物語 個人的には「世界名作劇場」では1・2を争う傑作だと思う。シリーズ最長話数で内容も深くて濃いこの物語をどのように総集したが多くの人が興味をお持ちのことだろう。
トム・ソーヤーの冒険 ディズニーランドでも取り上げられていてシリーズ中では原作の日本国内での知名度が最も高い作品の一つと思う。そんな「一見さんが多そうな作品」をどうまとめたか、それによってシリーズの行方にも影響がある一作と思う。
牧場の少女カトリ(新作) 「南の虹のルーシー」と同じく原作がマイナーな作品。「こんにちはアン」完結編とは対照的に、主要登場人物の存在をあっさりと消去した大胆な編集によって物語がうまく90分1本勝負にまとまった良作。

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